監督:マヌエル・ウエルガ 出演:ダニエル・ブリュール レオノール・ワトリング レオナルド・スバラグリア、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 1973年フランコ独裁政権末期のスペインで、1人の反政府活動家「サルバドール・プッチ・アンティック」が逮捕された。逮捕の際の銃撃戦でサルバドールは瀕死の重傷、しかしサルバドールが放った銃弾により警察官が1人死亡し、彼は軍事裁判の末死刑判決を受ける。明るくユーモアもあり、誰からも愛された青年サルバドール。ただ自由と正義を信じて活動家として身を投じたサルバドールだったのだが・・・
【感想】 スペイン・フランコ独裁政権下末期の1970年代初頭に正義と自由を求めて反政府活動を行い、後に逮捕・投獄の末に軍事裁判によって死刑判決を受け、世界中の支持を得ながらも処刑された享年25歳の青年「サルバドール・プッチ・アンティック」の半生を映画化。実在人物のお話ってヤツです。最近多いですね。
スペインで40〜70年代まで30年余りに渡ってフランシスコ・フランコによって独裁政治が行われた事は、最低でも高校卒業まで通った人なら誰でも知っている事でしょう。(知らない人はちょっとググれば色々なサイトにヒットします) ・・・と、エラソーに書いてますが、ぴよも世界史の授業で「フランコ独裁政権が」ってサラサラーッと年代を覚えただけでロクにその内容なんて知りませんでしたから(薄涙) だから当然だけど、本作の主人公「サルバドール・プッチ・アンティック」の存在も全く知りませんでした。
反政府活動家、しかも「自由と正義を求めた若き愛すべき活動家の半生」を映画化となると、それはそれは素晴らしい好人物で崇高にして高潔な麗しい人物として描かれているに違いないと思っていたのですが、本作は決してそういう太鼓持ちみたいな美談に仕立て上げないで、むしろ淡々と見せているトコロに好感が持てました。
映画の作りはまず冒頭でサルバドールが銃撃戦の末に逮捕されるという所から始まり、サルバドールが弁護士に自分が逮捕されるまでの人生を語るシーンを見せる事で観客に彼の今までの経緯を説明するという趣向を取っています。
サルバドールという青年は、確かに正義感の強い愛と自由を求める・・・言っちゃえば「当時の極普通の青年」だった、ただ生まれた時代と国が悪かっただけという人だったと思うのですが、運命の巡り合わせが絶妙だったが為に、自ら活動家の中心人物として生きて行く事になってしまった、という印象を受けました。
それだけならまだ「ああ、当時の青年のノリだったらねぇ」程度の話なんですが、彼は自由と正義を求める為の活動をするにはお金が掛かるからという理由で、何と銀行強盗を繰り返すようになる。コレはどう考えても頂けない(苦笑) 言ってる事は至極真っ当なんだけど、やってる事はただの犯罪。自覚があるんだかないんだか判らないけど、よくよく考えてみると彼らのやっている事と道理(言い訳?)というのは、世界中のテロリストの言い分に相通じますよね。
話はサルバドールの独白回想による彼の活動家としての半生が前半の見せ場、そして後半は逮捕後に自分を監視していた看守と心通わせる部分と、いよいよ処刑されるまでの様子を見せていくのがヤマになっています。 最初の頃は「恵まれた環境のボンボンがお遊び気分で活動家を気取りやがって」と、かなり批判的な目で見てバカにしていた看守が、自分の父親に宛てたサルバドールの手紙を読んで感銘を受け、そして心開いてサルバドールと友情を交わすまでに到る様子は、本当に見ていて心打たれましたね。
彼の死(処刑)が、その後のスペインを動かしたのか? そうかもしれない。そうでないかもしれない。皮肉な事に彼の処刑後1年半余りで独裁者フランコは生涯を閉じた。もしかして上手く逃げおおせていれば、彼は死なずとも今のスペインの状態になっていたかもしれない。いやそうだろう。 では彼の死は単なる無駄死にだったのか?そうかもしれない。そうでないかもしれない。 でもこの世に「サルバドール」という若き活動家がいて、彼の処刑が今も世界中で語り継がれて、何がしかの影響力を与え続けているのは紛れもない事実でしょう。
・・・しかし、微妙〜に本作は何やらプロバガンダ臭を感じさせる気がします(^-^; 何がどうとはココに敢えては書きませんが、でも思想操作やらそういう難しい事は抜きにして、日本人にも多く彼の存在を知って欲しいと思うし、他国の過去話だと毛嫌いしないで見て・知って・興味を持って欲しい話でしたね。
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