2007年10月22日(月) |
クワイエットルームにようこそ |
監督:松尾スズキ 出演:内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 佐倉明日香は28歳のフリーライター。ようやく署名入りコラムが書けるチャンスが巡ってたものの、全く文章が書けずにイライラしている。しかも同棲している放送作家の彼とは最近すれ違いが多くイライラ度は更に加速気味・・・そんなある日、目覚めると真っ白な病室でベッドに拘束されていた。大量の睡眠薬をアルコールと一緒に摂取して昏睡状態になっていたと聞かされてもさっぱり記憶が定かにならない明日香だったのだが・・・
【感想】 「大人計画」を主宰する松尾スズキ氏の同名タイトル小説を、自らが脚本・監督をして映画化。 氏は俳優・演出家・劇作家・コラムニスト・エッセイスト、そして小説家としてマルチな才能を多岐に渡って発揮しているクリエイターですが、個人的に彼のキャラクターはかなり好きです♪でも本作の原作は読んでなーい!←いつもの事(^-^;
タイトルの「クワイエットルーム」とは精神科隔離病棟の更に隔離された部屋、ベッドに拘束具で縛り付けになって何も出来ない本当の「隔離部屋」の事を指しています。 主人公の明日香はある日目覚めるとこの「クワイエットルーム」で拘束されている。この部屋に到るまでの経緯を説明されてもそれが本当に自分の身に起きた事なのか、さっぱり記憶になくて困惑している・・・という設定。
明日香の受け答えの反応や様子は一見すると「極普通」に見える。 確かに睡眠薬を過剰摂取したのは事実だろうけど、睡眠薬も常服していると多少耐性が出来て徐々に摂取量が増えるという話は聴いた事があるし、今回はたまたまストレスが溜まって大量のアルコールと一緒に多めに摂取した為に睡眠薬が効き過ぎてしまったという「巡り合わせの悪い事故」だったんだろう・・・まあ、そんな印象を受けます。
ところで、精神科の隔離病棟が舞台という映画って余り見かけませんよね。 ぴよは幸いな事に精神科のお世話になった事がないので実際の精神科の隔離病棟がどんな様子なのかは知る由もないのですが、本作の隔離病棟内の患者の様子等は個人的に「うん。きっとこんな患者がいたりしそうだよな。きっとこんな様子なんだろうなーというイメージに近いな」という感じがしました。
本作はキャスティングが秀逸で、隔離病棟内にいる患者の皆さんは言うに及ばず、冷徹なナースを演じたりょうさんや天然系の明日香担当のナースを演じた平岩紙さんもナイス配役。でもやっぱ主人公・明日香を演じた内田有紀さんと彼氏役のクドカンの組合せはピカイチですな! 映画冒頭から2人の掛け合いには散々吹いたけど、どちらも実にこの役柄に合っていたし、本当に熱演でした。特に内田有紀さんは今までにない?(実は彼女の作品ってほとんど見た事ないかも。イメージ先行で)かなりダークサイドに入った難しい役どころだったんだけど、もしかしたらコレが彼女の素の姿なんじゃないか?と思わせる位のいい演技でしたね。
そんな訳で、映画始まってからずーっとかなりコメディっぽい進行で「カラリと明るい精神病棟話」みたいなお軽い気分で楽しんで見ていたのですが、話が進んで来ると意外な展開が待っていました。
いや、コレは脚本がいいんでしょうね。そもそも上にも書いたけど「この程度の『事故』で自殺未遂呼ばわりされて精神科の隔離病棟なんぞに入れられた日にゃ〜、たまったもんじゃないな」位の気持ちで見ていたのですが、要するに映画前半で見せていた「明日香のちょっぴり複雑な過去話と現在までの到って普通っぽい様子」に、実は後々の展開に対する微妙なヒントのような物が散りばめられていた、という感じですか。
映画を見始めた時に感じた「お軽いコメディ」とは結果的に随分異なる、実は結構ヘビーな内容なんですが、そんな重たいはずの話を透明感のある爽やかな感じに作り上げた松尾氏の手腕が光る作品でした。 何もかもを思い出して初めて自分の気持ちの奥底に触れた明日香の様子に、少なからずストレスや悩みを抱える大人の女性なら何がしか琴線に触れるものがあったんじゃないだろうか?と思いますね。
自分の心の奥に潜むどす黒いモノとようやく真正面から向き合えた明日香なら、きっともう大丈夫。いや大丈夫であって欲しいし大丈夫だと信じたい・・・多分自分も「鬱陶しい女」なんだろうなぁ〜と、多少は自覚のあるぴよにはそう思えた。 もう「鬱陶しい女」じゃないよ。これからはちゃんと生きていける・・・と前向きな気持ちにさせる、世の「鬱陶しい女」に捧げる気持ちの優しくなれる作品でした。コレはなかなかいいです。オススメ♪
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