監督:堤幸彦 出演:中谷美紀 阿部寛 遠藤憲一、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 大阪の下町のボロアパートで暮らすイサオと幸江。元ヤクザのイサオは仕事もせずに酒とギャンブルに溺れる日々。内縁の妻である幸江がラーメン屋でバイトをして生活をしのいでいた。気に入らない事があると直ぐにちゃぶ台をひっくり返す粗暴なイサオに、隣に住むおばちゃんは「別れた方がいい」と言うが、幸江はそれでも彼を愛していたのだ。それは彼女の不幸な生い立ちにも起因していたのだが・・・
【感想】 85〜90年まで「週刊宝石」で連載された業田良家氏の同名タイトル4コマ漫画の映画化。 4コマ漫画の映画化って珍しい・・・「おじゃまんが山田くん」以来?でも山田くんはアニメだったしね。 主演の2人は共に堤監督ご用達俳優の阿部寛サンと中谷美紀サン。この2人はおいしいキャラの組合せですよネ♪
内容は、簡単に言えばヒモ男に尽くしまくる女の話。周囲からは「どうしてこんなクズ男に」と言われるものの、女にはそれでも男を愛さずにはいられない理由があって、それというのも彼女はずーっと不遇な人生で・・・ コレを中谷美紀が演じるって聞くと、多分ほとんどの人が「そりゃー嫌われ松子のパクリやろーっ!」って言いそう(笑)
確かに設定はかーなーりー似てる。 でも松子とはちょっと違うんだなぁ。←全部一緒だったらそれは本当にただのパクリなんだってば(^-^; 松子が「不幸のズンドコ編」で、本作は「裏バージョン」って感じか。裏バージョンって何?って聞かれると困る(をい) 本作は女側だけの一方的な視点ではなくて、あくまでも男・女・その周囲をまんべんなく見せて、一人称視点ではない普通のドラマっぽい仕上がりになってました。
4コマ漫画が元ネタだからなのか?映画冒頭から小ネタが延々と続いて、小ネタを繋げて見せる事で今現在のイサオと幸江の状況説明をしているという感じ。 ネタ同士は余り繋がりはなくて、ただオチが「ちゃぶ台ひっくり返し」で統一させているだけ。このちゃぶ台返しは毎回必ずスローモーションで流して(マトリックス風味)ちょっと笑いを誘う趣向。
って言うかね、本作の予告編を見た時には「これまた堤さんお得意のお寒いギャグ満載で大笑い必至ですネ?」と思っていたのに、蓋を開けると実はそれほど大笑いする程でもない。 もちろん小ネタの個々は結構面白いんだけど「大爆笑」という程でもない。でもネタ的には「にんまり♪」「ほのぼの」という系統でもないので、要するに「こ、これはギャグが滑っているのか・・・!?」という、本当に実に微妙〜な感じ。
正直言うと映画中盤までは「松子ネタが劣化した系統?」位に冷めた目で見てたんですがネ、 この映画は後半幸江が過去を回想するシーンから良くなる。だから途中退席しないように!(笑)
「嫌われ松子」は幸福だったハズの子供時代がどんどん転落するという過去回想だったけど、本作は生まれながらにして不幸でド貧乏のズンドコ状態で、そこから幸江が中学生の頃に出会った「生涯たった一人の親友」、そしてシャブ中の立ちんぼだった幸江と出会ったイサオ、幸江のズンドコ人生に光を与えた2人の存在のエピソードをクローズアップして行く。 「光から闇へ」の回想じゃなくて「闇から光へ」という回想。だから「松子の裏バージョン」と上に書いたんですが(苦笑)
今まで小ネタ繋ぎだったゆるゆるテンポが、ここで一気にドラマティックに変わる。 しかも話がいいんですよ。正直言うとかなりウルウル来ました。ぴよは泣く程じゃなかったけど周囲は泣いてましたね。 そして散々観客の目を充血させた所で優しい優しい大団円。この展開はなかなか良かったと思いましたネ。
でも、なぁ〜んか腑に落ちない。←今になって吠え出すかよ(^-^;
イサオと幸江が出会って大阪にやって来るまでの過去がこのエピソードで、じゃあ何故今イサオはこの状態な訳? 今現在の状態に到るまでに何かなければおかしいでしょ?どうしてそのエピソードは挿入されてないんですか? 映画前半と後半が全然別の話みたいな感じがするんですよ。作りも見せ方もトーンもまるで違うし、まるで同じ主人公の別の映画を繋げただけのような違和感があると言うのか・・・後半はシリアスONLYで笑いもありませんしね。
「小ネタ繋ぎ@笑い系の現在」と「ドラマティック@シリアスで感動的な過去」をもう少し上手に繋げてあれば、もっと見ていて気持ちよかったのになぁ〜と思うと残念なんですが、それでも本作のオチは見ていてとても気持ちがいいです。 「松子のパクリじゃん」と思っちゃった人には本作は向きませんが、ぴよは正直言うと松子より本作の方が好きです。
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