監督:井坂聡 出演:役所広司 今井美樹 塩谷瞬、他 オススメ度:☆☆
【あらすじ】 中堅不動産会社の部長としてバリバリと仕事をこなし、美しい妻と息子・娘にも恵まれて順風満帆の人生を送る48歳の藤山幸弘は、ある日末期の肺がんで余命半年と宣告されて愕然となる。悩んだ末に彼が下した決断は延命治療はせず、今ある命をまっとうするという事だった。幸弘は思いを告げられなかった初恋の人や喧嘩別れしてしまった親友の元を訪ね、自分なりに最後の別れを告げようとするのだが・・・
【感想】 秋元康氏著の初の長編小説を映画化。 実言うと秋元氏の企画ってあんまり好きじゃないんですよね・・・と思ったら、企画じゃなくて原作ですか。と書いている位なので原作未読というのはお約束です(苦笑) 余命半年の末期ガンになった男を今や堂々たるハリウッドスター・役所広司さん、そして彼の伴侶を久々の映画出演だという今井美樹さんが演じています。
この作品、正直言ってぴよにはちょっと評価がし難いですね。 ぴよのパパが正に肺がんで、判った時には医師に「余命半年」と告げられ、本当に半年後に亡くなっているので、何を見ても自分の父親の姿と重ね合わせて見てしまう・・・冷静には鑑賞出来ません。
ちょっと冷静になってこの映画の事を考えると、 「余命いくばく系」の作品は本当に星の数程作られているし、QOL(quality of life)をテーマにした作品も実に多い。 本作は過去数多作られたQOL関連の話と何ら変わらない、非常に平凡な作りの話・・・というのが正直な感想。
原作未読なので本作とどれくらい設定等が違うのか判らないのですが・・・ まず、愛人がいるという設定は必要なかったと思うんですよね。例え原作に登場していたとしても削るべきだった。 余命宣告をされてまず打ち明けに行くのが愛人の所。妻には「苦しめる時間はなるべく短い方がいい」という理由で長男にだけ告白して妻には内緒にする。コレはどう考えてもおかしい。 男の人が本作を鑑賞したらどう思うのか判らないけど、女性の立場からすると「自分の弱い部分(本音)を見せられるのは妻じゃなくて愛人の方な訳?」としか思えないんですよね。物凄く主人公がエゴイスティックに感じる。
それから夫婦の会話が余りにも上品過ぎて、まるでリアリティを感じない。 ぴよ家は普通にタメ口で「○○じゃん」「○○してよ」みたいに会話していますが、世間の夫婦は妻が夫に対して2人きりで会話しているにも関わらず本作のような丁寧語で話すんですか? 前述の愛人のくだり+夫婦の会話シーンを見て、益々「ああ、要するに仮面夫婦なんだな」と思ってしまった(苦笑)
だからホスピスに入ってからの様子もかなり冷えた気持ちで見ていましてね、愛人に「顔が見たい」なんて電話なんぞ掛けちゃったりしているのも「まあ妻にバレたからって所詮数ヶ月の命なんだしな。やりたい放題やっちゃった方が確かに後悔はないわな」ってな感じですよ(苦笑) 最後の最後で「生まれ変わっても・・・」なんて言われても「ウソつけー!」としか思えないじゃないですか(^-^;
凄くいいシーンだって沢山あるんです。 喧嘩別れした友達の所を訪ねるくだりや、絶縁していた兄に再会し、後に兄がホスピスにお見舞いに来てくれるシーン辺りなんて、役者の上手い演技も手伝って実にいい「見せ場」になっているんです。 それから長男にガンを告白するシーンも良かった。長男役の塩谷君のあの何とも言えない表情、アレは正にぴよが自分の父親のガンの余命宣告を聞いた時と全く同じ表情でしたよ。彼はとても上手でしたね。
でも何かしっくり来ない話でした。 実はこの作品を見て何度も何度も涙が頬を伝ったんですが、それはこの映画を見て泣いたのではなく、自分の父親の事を思い出して泣いていただけで・・・正直この主人公にはまるで共感出来なかったというのが本当のトコロ。
ぴよのパパは余命半年とは知らせなかったが、でも既に肝臓に転移していて手術も出来ないステージ4の末期ガンだというのは告知してあった。バカな人ではなかったから自分なりに調べて大体自分の余命は判っていただろうと思う。 パパは抗がん剤治療を積極的に受け、抗がん剤の副作用に苦しみながらも会社に通い、海外出張までして、そして家族と共に過ごす時間も大切にしてくれてよく会話もし、温泉旅行にも行った。 「例えステージ4でも、パパは絶対に諦めない。自分の為、家族の為に最後まで真正面から戦う」と言って頑張った。
今でも自分の父親の事を誇りに思っている。だから本作の主人公には共感が出来なかった。 (・・・って、結局冷静に本作は見れなかったという訳ですがね。苦笑)
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