監督:クリス・ヌーナン 出演:レニー・ゼルウィガー ユアン・マクレガー エミリー・ワトソン、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 1902年ロンドン。上流階級の子女だったビアトリクスは子供の頃からの夢だった絵本を出版させたくて、出版社に持ち込みをしていた。青いジャケットを着たうさぎのピーターの絵に新人編集者ノーマンは魅了され、ビアトリクスと正に二人三脚で出版にこぎつけた。発売するやたちまちベストセラーになり、ピーターラビットはシリーズ化する事になった。そしてノーマンとビアトリクスは恋に落ち、ベアトリクスの両親から「身分違いだ」と大反対されるものの結婚をしようと約束をするのだが・・・
【感想】 全世界で最も多くの人に読まれている絵本「ピーター・ラビット」シリーズの作者ビアトリクス・ポターの半生を映画化。 監督は子豚を一躍スターダムにのし上げた「ベイブ」のメガホンを取ったクリス・ヌーナン氏。氏はベイブの大成功に溺れるどころか「ベイブを超えるテーマに出会うまではメガホンを取らない」と言い、なんと本作はベイブから11年経ってようやく生み出した監督第二作目なんだそうだ。
ピーター・ラビットを知らない人はまずいないでしょう。 特に女の子なら誰でも1度は子供の頃にあの愛らしいウサギさんの絵本を手に取った事があるハズ。実はぴよも子供の頃にピーターが大好きで、絵本全て買ってもらいました。 本作はあの可愛いピーターと仲間達の生みの親、ビアトリクス・ポターの半生という事なんですが・・・
時代設定等、相当入念に取材しているんでしょうね。小道具や衣装、建物など実に忠実に当時を再現しています。 それから本作は実際にビアトリクスが人生の大半を過ごした場所でロケをしているそうで、湖水地方の手付かずの美しい大自然がスクリーンから溢れ出ています。本当に美しいです。
ビアトリクスが生きた時代、上流階級の子女が仕事を持つなんて考えられなかった。お年頃になったら親が家柄に合う男性を連れて来てお見合いさせて、結婚して子供を産んで社交界で笑顔を振り撒いているのが一般的。子女は一人で街を歩く事すら許されず、必ず乳母をお供に従えて行動するのが常識だったようです。
そんな時代に結婚もせずに絵本作家になって印税で飯を食う良家の子女なんて、到底考えられなかったでしょう。 要するに、ピーターのあの愛らしい絵柄とは裏腹に、作者のビアトリクスは実に進歩的で破天荒で革新的で、当時の基準で言うトコロの「常識知らず・恥知らずな女」だったという事でしょう(笑) レニーはこのビアトリクスという女性を、良家の子女らしいおっとりした育ちの良さを感じさせる風情でありながら、前向きで進歩的で地に足の付いた凛とした女性として上手く演じていたと思いますね。
実在する女性の半生を描いている、しかも世界中から愛されているあのピーター・ラビットの作者の半生という事で、とても気を遣って丁寧かつ忠実に再現させているのだろうなぁ、と思います。
でも、何かもう1つパンチが足らない感じはしなくもない・・・ 真摯に作られている姿勢は非常に好感がもてるものの、映画としてはドラマティックさに欠けるきらいはありますね。 ノーマンとのやりとりや2人が惹かれ合っていくまでの様子等、もう少しエピソードを膨らませても良かったような気がしなくもないですし、避暑地から火急の連絡を受け取ってロンドンに戻りノーマンの家に駆けつけた辺りのシーン等は、もう少しだけドラマティックに描いても良かったんじゃないだろうか?という気はします。
でもね、この映画はとてもステキです♪ ビアトリクスがピーター達に語りかける様子、そしてピーター達がクルクルと目を動かしてスケッチブックから飛び出して来るシーンを見て、絵本を手にワクワクドキドキした子供の頃のあの感動がまざまざと蘇りましたよ。 それに、彼女の半生自体が・・・ビアトリクス・ポターという人の真っ直ぐで純粋な生き方、そして自分が子供の頃に大切な「お友達」と出会ったあの湖水地方を、そのままの状態で後世に残したいと願い活動した情熱、あの時代の女性としては本当に革新的な素晴らしい人だったと思いましたね。
正直もう後30分上映時間が長くていいから(本作の上映時間は1時間半程度と、最近の作品としては短め)エピソードを膨らませてドラマティックにして欲しかったという思いはありますが、子供の頃に・・・そして今も尚ピーター・ラビットが大好き♪という方には必見の一作です。
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