ぴよの映画めった斬りコーナー
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【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2007年06月09日(土) あるスキャンダルの覚え書き

監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ
    ケイト・ブランシェット
    ビル・ナイ、他
オススメ度:☆☆☆


【あらすじ】
ロンドン郊外の労働者階級の子供達が通う中学校に、場違いな程美しい美術教師シーバが赴任して来た。長年この中学で教鞭を取る老女教師バーバラは、シーバを見て「彼女こそ自分が求めていた人だ」と、シーバの事を日記に綴るようになる。ある日シーバの授業で起こったトラブルを収めてやった事がきっかけで急接近したバーバラとシーバ。友情を育んでいたつもりのバーバラだったが、シーバが15歳の生徒と不倫関係である事を知ってしまう。


【感想】
英国作家ゾーイ・ヘラー氏著のベストセラー同名タイトル小説の映画化。
主人公のバーバラをジュディ・デンチ、15歳の生徒と不倫関係になるシーバをケイト・ブランシェットという豪華な組み合わせでキャスティングしています。監督は「アイリス」のメガホンを取ったリチャード・エアー氏。

職場や知人に、中年・・・または定年間近の年齢になっても結婚もせず、浮いた噂も聞かず、プライベートでどんな生活振りなのかも杳として知れず、特に親しげな友達もいなさそうな(会話の中に友人の話が出てこない)、そしてやたら物言いが嫌味ったらしくて周囲に異常に厳しく、実はみんな彼女を疎んでいるのだが何故か本人は周囲から尊敬されまくっていると勘違いMAXな・・・正しく絵に描いたような「お局様」「ハイミス」と呼ばれる女性が1人や2人必ずいるでしょう?
そういうハイミス女性が日記を綴るという形で、自分の生き様を独白して行くというお話です。

よくもまあ、こんなにピタリとハマるキャスティングが出来たもんだ、と溜息が出ますよ。
ジュディ・デンチって本当に恐ろしい女優ですね。映画を見ていてバーバラを演じているんではなく、これはジュディ・デンチ自身の話なんじゃないだろうか?と疑いたくなる程、余りにもバーバラという女性にリアル感を出している。
迎え撃つケイト・ブランシェットも、大人の女性の色香に不思議な透明感を備え、更に周囲に流されがちでちょっと危うげな脆さを垣間見せる美しい女教師のイメージにピッタリとハマっていました。

世の孤独な女性達が全てこの映画のバーバラと同じ思考展開をしているとは思ってはいないけど、でもこれは映画としてかなり極端にディフォルメしてあるんだと考えれば・・・正直言ってバーバラの思考展開や考え方って大なり小なり孤独なハイミス達の取っている行動に何がしか被るものがあるだろう、というのがぴよのまず思った事です。

ぴよが知る、何人かの孤独な女性達に当てはまるものに「異常な独占欲」と「支配欲」「名誉欲」がある。
本作のバーバラが正にソレ。誰かと人間関係を構築するのに、常に自分が上から物を見て考えている。自分は尊敬を得られて当たり前の存在だと信じて疑っていないし、自分を疎んじる人間には「天罰」が下るに違いない、いや私が天罰を与えてあげよう位に考えているフシがある。自分の考え方が間違ってるなんて露程も思わない。
自分を守る為なら平気で他人を傷付ける、平気で嘘を言う。これらは孤独な女性に共通する事象だと思う。

作品は孤独なハイミスの人間ドラマを、彼女の独りよがりな独白形式でサスペンス仕立てに演出しています。
バーバラに振り回される周囲の人間の思惑については深く描写はせず、と言うよりもバーバラの独白を観客視線で冷静に突き放して事象を見せるという手法を取って、よりバーバラの独りよがりな様と孤独感を煽るという作りになっていました。

物凄くよく出来た作品だと思うんですが・・・正直余り好きになれないですね。
結局バーバラは過去に人間関係で失敗をし、そして今回も同じ轍を踏み、更にやっぱり自分の間違いに気付く事もなくまた同じ過ちを繰り返そうとする。全く一片の救いもないお話でした。
これが事実でしょう。正直言っていい歳まで同じ事を繰り返して生きて来た人間ですよ、今更誰かが彼女に「それは間違っている」と指摘した所で、逆ギレされて指摘した人は言われもない報復を受けるのが関の山でしょう。

それにしても・・・所詮映画なんだからサ、せめて「何歳になっても人生やり直しが利く」くらいのファンタジー感出してくれたってバチは当たらないでしょうが(苦笑)

そんな訳で、「ミス」ではないが「ハイ」が付く年齢に差し掛かったぴよには微妙に痛い作品でして・・・
自分が同じ事をしてはいないか?チェックしなければいかんな、と自省させられる作品でしたね。自分は決して孤独だとは思わないけど、もしかしたらぴよもバーバラみたいに自分の都合のいいように勘違いしまくってるんじゃないか?と思い始めたら心穏やかでなんかいられない(薄涙)

少なくとも本作を見て「自省しなければ・・・」と思えるだけマシなんだと自分を慰めましょうよ。えぇ。
そして本作のバーバラに「アナタの気持ち、よく判るわぁ〜」と思った人、相当ヤバいんじゃないっすか?(^-^;







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