ぴよの映画めった斬りコーナー
ぴよが見た新作映画・ビデオ・DVDを個人的趣味でぶった斬るコーナー
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【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2007年05月29日(火) ツォツィ

監督:ギャヴィン・フッド
出演:プレスリー・チュエニヤハエ
    ケネス・ンコースィ
    テリー・ペート、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
南アフリカ共和国ヨハネスブルグ。アパルトヘイト廃止後も尚その差別に苦しむスラムに住む少年「通称・ツォツィ」は、仲間と組んで強盗や殺人も厭わない暗い目をした少年ギャングだった。ある日運転手の女性を銃で撃って強奪した車の中に、赤ん坊がいた事を知って愕然とする。思う所あってその赤ん坊を連れ帰ったツォツィは、赤ん坊に触れる事で封印していた自分の過去と向き合う事になる・・・

【感想】
2006年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。
原作はヨハネスブルグ在住でアパルトヘイト廃止に声を上げ続けたという気骨の作家アソル・フガード氏。なんとフガード氏は差別された黒人ではなく、本来なら差別した側の白人なんだそーだ。

アフリカ、特に南アフリカにはいつか行きたいと思っているぴよなので、当然だけどアパルトヘイト〜現在に到る弊害等のかの国の歴史については一通りの基礎知識は持っているつもりです。
でも本作を見て思った。「知識として知っている事と、それを肌で感じて共感出来るか否かは全く別なのだ」と。

ツォツィは、言い方は悪いけど南アフリカ国内に掃いて捨てる程いる「よくある育ちの少年ギャング」
アパルトヘイト世代の無教養で貧乏な両親に育てられ、愛情を注がれる事もなく、粗暴な父から逃げるように家を飛び出してストリートチルドレン化して→やがて犯罪に手を染める、というお決まりパターンの少年。
そんな凶悪少年犯が、あるきっかけで生まれて数ヶ月の赤ちゃんと出会った事で自分の過去を振り返り、そして人間らしい思いやりや感情を取り戻す、といった話。

悪くはない・・・むしろ物凄くいい話なんだけど、何かが足りない。
そもそも当たり前みたいに平然と人に発砲しちゃうような腐れ外道なんですよ。こんな腐れ外道だったら、間違いなく赤ん坊を見つけたた段階で有無も言わさず赤ん坊を撃ち殺すか放置→見殺し確定でしょ。
でもツォツィは何故か赤ん坊を連れ帰る。きっと赤ん坊の姿に自分の報われなかった過去を投影したんでしょう。

愛情を受けずに育ったトラウマもあいまって、いつしか赤ん坊に自己投影して「何とか育てたい」という方向へ心が動き、そして少しずつ人間らしい優しい感情が垣間見える姿には、誰もがジーン♪と来る事請け合いでしょう。

でも、やっぱりやり方が粗暴なんだよね・・・赤ん坊の「生」を尊ぶまで行ったのに、赤ん坊の父親を殺そうとした仲間を逆に自らの手で殺してしまう。その言い訳が「アイツは人を簡単に殺し過ぎる」だもん。
人を簡単に殺すヤツや許せませんよ、ならどうしてアナタも簡単に人を殺してしまうんですか?そもそも強盗目的で入る家をどうして赤ん坊の親の家に選ぶかなぁ?言い訳としては「赤ん坊の生活環境が見たい・子育てグッズが確実にあると判っているから拝借したい」という所なんでしょうが、余りにも安直過ぎます。

確かにクライマックス→ラストシーンは感動します。
ツォツィを演じた役者さんは本作でスクリーンデビューの南アフリカ出身の新人さんのようですが、彼自身このツォツィと似たり寄ったりの経歴を経て本役を獲得されたそうで・・・だからなのか?ツォツィというキャラクターの心の深遠まで見透かすような素晴らしい演技には、演技以上の「魂の叫び」のようなモノすら感じさせてくれました。

それにしても彼の行動・言動の目に余る粗暴さに、正直ぴよは着いていけませんでした。
「知識として知っている事と、それを肌で感じて共感出来るか否かは全く別なのだ」と書きましたが、確かにアパルトヘイトについての知識は持っていたものの、映画を見る時に自分がツォツィの行動を評価?する物差しが「自分が育った環境」という視点なんですよね。

明日食べる物に困る程の貧乏体験をした事もない、親は常に無上の愛を注いで育ててくれた、そんな環境で育ってそれがスタンダードだという感覚の日本人のぴよに、かの国の状況下で育ったツォツィが取る行動の1つ1つがたとえ理解は出来たとしても、到底納得や共感なんて出来ないんです。

感想冒頭で「いい話なんだけど、何か足りない」と書きましたが、
これはもしかしたら足りないのはこの映画の質の問題ではなく、ぴよの感覚の問題なんじゃないか?と思いました。
親からの愛情の渇望感、絶望的な貧困、抜け出せない差別、これらを身に沁みて感じた事のない人間に、この作品の主人公の本当の心の動きや気持ち等、エラソーに語る資格等ないのではないか?

映画自体は素晴らしいと思います。ただ、ぴよには本作に共感出来る程の問題が無さ過ぎるんでしょう(苦笑)








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