2007年04月27日(金) |
ストリングス(STRINGS)〜愛と絆の旅路〜 |
監督:庵野秀明(日本公開版) 声の出演:草なぎ剛(ハル) 中谷美紀(ジータ) 優香(ジーナ)、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 手足や頭から天空に向かって操り糸が伸びているマリオネットの世界。この世界の片隅にあるヘバロン王国は何百年にも渡り戦争が絶えず、国王カーロは自らの罪深き統治を悔やみ、息子のハル王子に国に平和をもたらすようにと遺書を書き自害した。ところが遺書を先に見つけたカーロの弟ニゾは、国を我が物にしようと遺書を破り捨て、王は敵対するゼリス一族の長に殺されたとハルに吹き込む。ハルはニゾの言葉を信じ、父王の仇打ちの為に旅に出るのだが・・・
【感想】 カンヌ映画祭で絶賛されたデンマーク製作の「ドール・ムービー」を、日本公開するに辺り「新世紀エヴァンゲリオン」の監督等で知られる庵野秀明氏が日本公開版用監督になり、オリジナル作品に多少手が加えられているらしい。 公式サイトを見てもオリジナルの作品と何がどう変わっているのか書いていないので、何が違うのかが判らない。そうなると元々カンヌで上映したデンマークのオリジナル作品が妙に気になる所なんですが(苦笑)
今までにもマリオネットを使ったドール・ムービーやクレイアニメ等は数多く作られていますが、既存の考え方だとこれらの職人芸的な作品というのは「いかに観客に人形が演じていると感じさせないか」「いかにリアルに見せるか」というのが一番苦心する部分だったんじゃなかろうかと思う。
ところが本作は全く発想を逆転させて、マリオネットという存在を最大限アピールする設定になっているのが面白い。 普通ならマリオネットを操る糸というのは最も観客に注目してもらいたくない部分のハズ。ところが本作は「操り糸」こそがマリオネットの命であり魂であり、感情を表し人形達の「生」を表現する為の重要なツールになっている。 体の全てのパーツから糸が伸びているけど、やっぱり一番重要なのは頭を動かす糸。頭から伸びている糸が切れるとそのマリオネットは命を失うという設定になっている。
この操り糸には色んな意味を持たせていて、生命を司っているというのも重要だけど・・・例えば自分と心を通わせて愛し合う相手とは天空に伸びた糸の先が繋がっているんだよ、という設定にもなってたりする。これは正に「運命の赤い糸」って感じだし、戦闘シーン等もお互いが傷つけ合う様を見せずに天空から伸びる糸が次々と切れて落ちていく様を見せる事で、戦の無常さや惨さや命の儚さを表現している。 妙にリアルな惨殺シーンを延々と見せられるより、本作の戦闘シーンの方が心情的に訴えられるモノがありましたよ。
ぴよが個人的に「うっわー♪」と思ったのは、ハルとジータが結ばれるシーン。 何となくムフフ♪な感じになってCHU☆した後は・・・最近過激な性描写シーンが当たり前になってる昨今、何もそれらしいものを見せないで「操り糸」だけでこれだけ情緒的で官能的なシーンが作れるって、これはもう本当にスゴイ! 生本番を見せ付けられるよりも(こらこら)断然本作の方が「うふーん♪」な気分になっちゃいます♪
作品が発するメッセージや表現・演出等は本当に素晴らしいと思ったんですが・・・ 正直言って草なぎ君は声優をやらない方がいいんじゃないの?余りにもセリフが棒読み過ぎるでしょ(^-^; 映画冒頭から市村正規さんや伊武雅刀さんが素晴らしい声優っぷりを披露してくれた後に、いよいよ草なぎ君声優のハル王子が登場したら・・・腰が砕けましたよぅ〜(涙) しかし慎吾クンはなかなかいい。ってかスタッフテロップ見るまで慎吾クンが声を当ててるって判らなかった。それから女性陣もそれぞれキャラクターに合ってたと思うし、劇団ひとりさんも全く違和感なし。1人草なぎ君だけ浮きまくってますよ。
アイドルに声優をさせれば話題性も出て観客動員を望めるという思惑は判らなくもない。 草なぎ君だって役者としてドラマに出ている分にはなかなか味があっていいキャラだと思う。 でも「俳優」と「声優」は必ずしも同じ資質ではないと思う。確かに俳優であっても声優として表現力の豊かな才能をお持ちの役者さんも数多くいるのは認めるけど、少なくとも草なぎ君には「声優の資質」は持ち合わせていないと思うんですよ。
正直、ハルの声がもっと声優の資質のある方(又は本職の声優)だったら、本作の評価はもっと高くなったと思う。 日本では吹替版しか公開しないんだから、もう少しこの点は考えて欲しいですよ。作品自体は素晴らしいんですから。
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