監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 出演:ブラッド・ピット ガエル・ガルシア・ベルナル 菊池凛子、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 アメリカ人夫婦リチャードとスーザンは壊れかけた絆を修復する為に、子供を家政婦に預けてモロッコにやって来た。ところがバスの車中でスーザンが何者かに狙撃されて瀕死の重傷を負ってしまう。スーザンを撃った銃の所有者は日本人だと判明。銃の持ち主は聾唖の娘との親子関係に悩み、娘も満たされない思いに苛立っていた。一方リチャード夫妻の子供を預かっている家政婦は、息子の結婚式に出席する為に子供達を連れてメキシコ国境を越えるのだが・・・
【感想】 菊池凛子嬢が今年のアカデミー賞助演女優賞にノミネートされて話題になった作品。 もし彼女がノミネートされなかったとしても、ブラピの新作+役所さん出演というだけで充分話題性はあったでしょう。 監督は「21g」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ氏。名前が長過ぎてアホのぴよには覚えられない(苦笑)
もう今更説明するまでもないと思うけど、タイトルの「バベル」は旧約聖書のバベルの塔のエピソードから名付けられているそうです。かつてバベルの町で人間達が傲慢になり、神に近付こうと天にも届く塔を建てようとしたが、神の怒りに触れて人間達はお互い意志の疎通が出来ないようにバラバラの言葉しか話せなくなり国が分かたれてしまった、という話。 ある事件に近因・遠因に繋がる国も立場も違う人々のエピソードをバラバラに見せて「言葉の隔たり」「心の隔たり」をテーマに綴っていく変則オムニバス系作品、という感じですか。 かつて見た「トラフィック(2002.1.1鑑賞)」という作品と、作り方が結構似ている。
話の一番メインになるのはブラピとケイト・ブランシェットが夫婦役を演じる「モロッコ編」で、このモロッコ編はリチャード夫妻の心の隔たりとモロッコ人との意思の疎通が出来ない言葉の隔たりの2つを核に見せている。更にモロッコ編ではスーザンを誤って撃ってしまったモロッコ人兄弟の模様も見せていて、このエピソードだけで映画1本出来るくらいの厚みがある。 メインエピソードに絡む形で、リチャード夫妻の子供達を預かっているメキシコ人家政婦の話、そしてモロッコの事件に使用された銃の所有名義者・日本人親子のエピソードが入る。
ところで、日本のエピソードは必要だったんだろうか? メキシコ人家政婦の話はまだ直接リチャード夫妻と関わりがあるので見ていて違和感はないけど、日本パートだけが完全にこの映画のメインストーリーから浮いていると思ったんですけどね。 ハリウッド映画に日本人俳優を起用すると日本での興行収入がグッと増えるのを見越して、ムリヤリ日本人エピソードをくっ付けました!という感じしかしない。なんだか・・・この話はぴよにはかなり不快です。
菊池凛子嬢のオスカー助演女優賞ノミニーで注目度が上がるのは当然としても、いくら聾唖の思春期少女とは言えここまですっ飛んだ設定ってのはちょっと・・・確かに性に興味を持って当たり前のお年頃かもしれませんが、いくら会話コミュニケーションが取れない事に苦しんでいても、ここまでゆがんだ性衝動を持つというのは理解に苦しみますよ。 聾唖の方々がご覧になったら噴飯モノじゃねーの?と思ったら、やっぱりその方面から抗議が来ているとか。
・・・と散々ブータレてますが、実を言うと本作の映画の作り自体は結構好きです。 言葉の壁、心の壁、国境の壁、人と人とを隔てる様々な壁を様々なシチュエーションで見せる手法は面白いし、それぞれのエピソードの時間軸を微妙にズラして見せる事で観客を惑わせようとさせつつ、個々のキャラクターの心情の動きを巧みに見せるように工夫されていたと思う。 特にモロッコパートはこの時間軸をズラす手法で、より夫婦の心の動きや彼らの心を隔てていた背景をさりげなく観客に見せる事に成功していたんじゃないかな?と思いましたね。
一緒に本作を見ていた相方は「結局アメリカさんが救われればそれでいいのかよーぅ!」と吠えてましたが(苦笑) そういうもんでもないでしょ。モロッコ人兄弟とあの家政婦さんはすっごく切なかったけど、モロッコ人兄ちゃんの命は助かったんだろうか?助かっていて欲しいし、弟の心も救われて欲しい。それから家政婦のおばちゃん、大国との国境の壁に阻まれて辛い思いをしたけど、息子は優しいいい子に育ったよね。親子の絆は深いですよ。幸せになって欲しい。 人と人を隔てるものがあれば、それを繋ぐ何かもきっとある。そういう希望を感じさせる作品だと思いました。
せめて・・・もう少し日本パートがモロッコネタに絡むようなエピソードだったらなぁ。 インパクトは日本パートが圧倒的にあったけど(そりゃーあれだけ脱ぎ散らかせばな。苦笑)、あれは不快ですよ。 そして実はぴよが本作で一番楽しみにしてたガエル君が・・・トンデモ兄ちゃんだった件(しくしく) でも相変わらずガエル君は可愛かったし、それに本作は音楽もすごく良かったですよ。うん♪
万人受けはしないだろうと思いますが、ツボに入った人にはきっとかなりの高評価でしょう。クセの強い作品ですね。
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