2007年01月18日(木) |
それでもボクはやってない |
監督:周防正行 出演:加瀬 亮 瀬戸朝香 山本耕史、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 就職面接の為に朝の満員電車に乗り込んだ青年・金子徹平は、電車を降りた途端にある女子高生から「痴漢したでしょ」と訴えられて現行犯逮捕された。身に覚えのない徹平は警察署で容疑を否認し拘留され、更に検事にも無罪を主張し続けて結局起訴されてしまう。最初は孤立無援だった徹平だが、無実を信じる母や親友、更には徹平と同じく痴漢の冤罪を訴えている支援グループと知り合って、真実を求めて裁判に臨むのだったが・・・
【感想】 「Shall we ダンス?」以降、ファンに期待されながらもちぃーっともメガホンを撮らなかった周防監督が、11年振りにようやく手塩に掛けて送り出す新作。待ってましたよぅ〜!楽しみにしてましたよぅ〜!
アメリカと違って、日本はまだ「訴訟王国」とはとても呼べない国なので、自分が裁判の原告・被告になった人というのは少ないんじゃないかと思います。もちろんぴよもそのどちらに該当した事もありません。 しかしながら、昨今「セクハラ訴訟」「痴漢冤罪事件」等がニュースを賑わす回数も増えてきた日本。さて日本の裁判制度の実態というのは如何なものなんだろうか?と内心興味のある方も多いと思います。
そんな訳で本作は、痴漢冤罪を晴らそうという主人公の涙ぐましい努力と人間ドラマを見せるコメディ・・・ではなくて、かなりストイックにドキュメンタリータッチで「日本の裁判制度の仕組み」を教えてくれる「手引書エンターテイメント」という全く新しいジャンルの作品に仕上がっていたと思います。 本作の逮捕→裁判に到るまでの過程から結審・判決までの様子はかなり綿密に取材をして脚本を構築したそうで、今の日本の司法制度の闇を体験した事のない日本人に、実際はどうなのか?という部分を赤裸々に晒して考えさせてくれ、しかも説教臭くなく「エンターテイメント」として楽しめるように構築されている、非常に良質な作品でした。
映画は事件発覚から裁判の様子を第一回法廷から時系列に追っていくのですが、この手の法廷・司法モノが苦手な方には結構キツい上映時間だったのかもしれません(本作は邦画にしては長尺で2時間半弱あります) でもぴよは全く上映時間の長さを感じませんでしたね。むしろあっと言う間に結審まで行ってしまったという感じ。 法廷内・外の人間ドラマや、警察・検察庁や裁判官や弁護士等の司法に携わるそれぞれの立場の人間の実情をうまく盛り込ませて見せてくれる事で、より日本の裁判制度の「?」を判り易く観客に伝えていたと思います。
役者のチョイスも良かったですね。 先日見た「愛ルケ」の検事役をやったハセキョーに脱力していたので(苦笑)、本作に登場する新人女弁護士を瀬戸朝香嬢が演じると知って軽く不安になったのですが、彼女はなかなかハマっていたと思いますね。 加瀬亮クンの主人公キャラもリアリティがあって良かったし、徹平の友人を演じた山本耕史クンはもっと良かった。 でも一番のダークホースは、何と言っても登場した時は「ミスキャストなんちゃうん?」と思ったのに、最終的に呪いたくなる程ハマっていた・・・裁判の途中で変わった裁判官を演じた小日向文世サンですよ。
内容等、詳しい事はスクリーンで楽しんで欲しいので敢えてここには書きませんが、日本の司法の仕組みを学校で試験の為にちょこっと習った程度(という人が大半だろう)だという方に、是非「明日は我が身」だと思って鑑賞して欲しい・鑑賞するに値する作品だと思いますよ。
まだ年も改まったばかりなのに、いきなり「今年ベスト1か?」という作品に出会えてラッキーでした♪
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