監督:ガブリエレ・ムッチーノ 出演:ウィル・スミス ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス タンディ・ニュートン、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 1981年サンフランシスコ。5歳になる息子の良き父親であるクリスは、自営で高額な骨密度測定器を医療機関に売り込むのを生業としていたが、サッパリ売れずに一家は家賃も払えない状態になっていた。一攫千金を狙って証券会社の養成コースを受講しようと決意するものの、養成期間の半年間は無給で、更に20人の受講者の中から半年後に本採用になるのはたった1人だと聞き思い悩む。そんな折、貧乏な生活に耐えられなくなった妻がクリスの元を去ってしまう。
【感想】 シカゴで優良企業を経営している実在する億万長者(←イマドキこんな言い方しないか?)クリス・ガードナー氏の半生を描いた作品。当然だけど実在する人物の半生なので実話からインスパイアされています。 更に日本でもファンの多いハリウッド大物俳優ウィル・スミスが実の息子と親子役で共演というのも話題の一作。
何でも製作者はたまたま見ていた番組で、人生の勝ち組筆頭株「クリス・ガードナー氏」が実はホームレス状態から今の地位を築いたのだという「アメリカン・ドリーム」を地で行く半生のドキュメンタリーを見て、「コレは絶対に映画ネタに最高!」とクリス氏に熱烈アプローチして映画化が実現したそうだ。 更に映画化の話を聞いたウィル・スミスは主演だけでなく製作者としても名を連ね、そして息子役は公正なオーディションをしたにも関わらず、たまたま製作者サイドの目に留まったのがウィルの実の息子だったという・・・テメーの息子が自分が出演する映画のオーディション受ける事知らないってどーなんだよ?って感じのツッコミどころ満載なネタな訳ですが。
意外な事に息子が可愛い♪ 本物のパパが相手なんだから親子役としてしっくりハマって当然っちゃー当然なんですが、あくまでも台本のある映画の演技として評価しても息子クンはなかなかお上手だったと思いますね。 アパートを追い出されて地下鉄の駅で夜明かしする「タイムマシン」のシーン、あれは特に良かった。
もうね、ウィルの演技については特に文句はありませんよ。この方生粋の役者さんじゃない割りにお上手ですよね。 それに脇を固める役者も地味ながら芸達者を揃えていて違和感を感じませんし、1980年代という微妙な時代設定をかなり苦労して再現しているようです。街を走る車やキャラが着る衣装・小物等まで細部に渡りこだわりを感じさせてくれて、なかなか地味に金が掛かってます。
と、さっきから「地味」「地味」を連発しているので恐縮ですが、展開も非常に地味なんですよね。 冷静に考えると驚天動地のサクセス・ストーリーなんだけど、見せ方が余りに地味過ぎる。もっともっと煽ってドラマティックに演出したって良さそうなものなのに(普通のハリウッド映画なら絶対にそうするだろう)、この映画は敢えてなのか?ドラマティックな展開を放棄して、淡々と親子愛とクリス氏の遁走する姿を見せる事に終始している。
それが悪い訳ではないけど、どうしても「もう1つパンチが足りない」という印象を受けるのが惜しいんですよ。 いわゆる単館ロードショーにありがちな「地味な良作」という感じ。ハリウッドでなく東欧辺りの、日本では余り馴染みのない国が作って「本国では観客動員数の記録を更新した名作!」なんてキャッチコピーが付くような類。 「ウィル・スミス」というビッグネームを起用した割りに、想像以上に地味で肩透かしを食らった気分と言うのか。
でもね、確かに話はとてもいい。 コレがフィクションじゃなくて実話からインスパイアされている、しかも映画製作に辺りクリス氏ご本人がかなり入り込んで撮影や演出に影響を与えているという点を考えると、本当に驚異的なお話です。 映画のクライマックス、上司にクリスが呼び付けられるシーン以降は本当にジーンとしましたよ。
実際はこの映画よりもずっと地味な努力の積み重ねだったんでしょう。 深く結びついている父子関係だって、毎日ドラマティックなイベントに彩られている訳ではない事も重々承知してる。 でもやっぱり「ウィルの新作」だと期待して見たぴよには「ウソでいいからもっと華々しくやれよ」になっちゃう訳ですよ。
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