2006年11月22日(水) |
トゥモロー・ワールド |
監督:アルフォンソ・キュアロン 出演:クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 西暦2027年。人類が完全な不妊状態になり子供が全く生まれなくなって18年が経っていた。世界の都市はテロ、様々な疫病や内戦等により次々と崩壊、軍隊の強いイギリスだけが何とかその秩序を保っていたものの、不法移民が後を絶たず街は混乱していた。国家的事業に従事するセオはある日ジュリアン率いる地下組織「FISH」に拉致される。彼女の目的は官僚に顔が利くセオに頼んで通行証を手に入れて、ある少女を「ヒューマン・プロジェクト」に引き渡す事だった。
【感想】 英国の女流ミステリー作家P.D.ジェイムズの著書「The Children of Men(人類の子供たち)」を映画化。 監督は「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のメガホンを取ったアルフォンソ・キュアロン氏。キュアロン監督の作品が好きなので、かなり期待して見に行きました♪
この作品、予告編を見ると「近未来SFなんだな。キャストを見ると+恋愛も絡めてヒューマン風味ってヤツか」と想像する訳ですが、これは明らかに配給会社が間違った方向に誘導して観客を集めようと必死になっているという事が本編を見ると明らかになります(苦笑) 設定が2027年ですから確かに「近未来モノ」ではありますが、明らかにSFではありません。多分単なる「近未来モノ」というフレコミでは客の入りが悪くなりそうだと不安になった配給元が、人気の「SFモノ@CGバリバリですっげーハイテクよん♪」という誤解をさせて観客動員数を稼ごうとした、いつもの予告編詐欺テクです。
じゃあつまらなかったのか?と聞かれると、ぴよは本作かなり面白い映画だと思いましたね。 映像なんて凄かったですよ。何でもクライマックスの8分間長回し戦闘シーンが特に話題になっているそうですが、確かにこの戦闘シーンはちょっとやそっとじゃーお目にかかれないクオリティの高さです。 ロンドン市内の細かい描写、ジャスパーの何か懐かしい匂いのする隠れ家の様子も非常に丁寧で好感が持てる。
ところで、映画を見ていても設定がよく判らなかったりします(苦笑) そもそも何故人類が完全不妊状態になったのか、そしてどうしてその状態になって18年も経ってキーが現れたのかという説明は全くありませんし、どうして他の都市が崩壊してしまったのかもよく判らない。 「FISH」のメンバーがどうしてキーを必要とするのか。不法移民は国外追放にすれば済む事だと思うのだが、どうしてわざわざ強制収容所のような街を作ってそこに隔離するのか。 「ヒューマン・プロジェクト」とは何か。具体的にどういう活動をしているのか。そもそも本当に存在するのか。
判らない事だらけなんだけど、コレは観客に主人公セオと同じ目線でこの話を見てもらおうという趣向に違いない、と勝手にいいように解釈した訳です。単なる説明不足かもしれません。真相は判りません(苦笑)
でも、上記の事が何も判らなくても作品の訴えるパワーに衰えが出る訳ではありません。 常々「子供が大嫌い」「子供の泣き声を聞くとイライラする」と公言して憚らないぴよですが、本作の赤ちゃんの泣き声ほど胸にグッと迫った事はありませんでした。 「子供は人類の宝だとぉ?フザけんな!このクソガキめ!」と思っているこの鬼畜ぴよが、赤ちゃんの泣き声に何か神聖なモノを見つけたような、心の底から「あぁ、子供は本当に人類の宝なのだ。平和と秩序の象徴なのだ」と思わずにいられなくなりましたよ。フザけてるのはクソガキじゃなくてぴよの方ですか?ははは、そーかもしれません(苦笑)
確かに話が見え難いし、設定も結局謎のまま放置ですし、破綻してると言われたらその通りかもしれません。 でも戦場に差す一条の光のように、キー達の姿に体が震える程感動してしまったぴよには、もう破綻していようが設定説明放置だろうがどうでもよくなってしまいました。
好き・嫌いがはっきり分かれそうな作品なので万人にはオススメしませんが、少なくともぴよのツボには入りましたよ。
|