監督:中島哲也 出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 福岡から上京して一人暮らしをしている「川尻笙」の元へ、ある日父親が骨壷を持って現れた。聞くとその遺骨は、先頃荒川河川敷で何者かによって殺害された父の姉(笙の叔母)「松子」だと言う。父とは家族の縁を切っていて、今までその存在すら知らされていなかった「松子叔母さん」のアパートに、父から頼まれて後片付けに向かった笙は、松子の壮絶にして悲劇的な一生を知る事となる。その転落の人生は、松子が福岡の中学教師をしていた時代から始まるのだった・・・
【感想】 山田宗樹氏著の同名ベストセラー小説の映画化。 普段なら「原作未読でーす♪」と書くトコロだけど、本作は映画化が決まる前に読んでいました。珍しい事です(笑) ・・・って言うか、映画化が決まる前に原作読んだ人なら、初めて本作の予告編を見た時ぶっ飛んだでしょ? ぴよは初めて予告編のあのポップでエラい楽しそうな映像を見た時に「ま、マジかよ・・・あの恐ろしく暗くて全く救いようのない内容の作品が、どーこねくり回すとこーいう絵になっちゃうワケ!?」と思いましたよ。
そんな訳で本作ですが。 一言で言うと「ウマいなぁ〜!」と思いましたネ。 多少内容が変更されている部分もありますが(例えば笙と彼女のくだり等)、概ね「松子の辿った人生」に関してはほぼ原作通りの「どーしよーもなく暗くて救いようのないズンドコ人生」を、比較的忠実になぞっていました。
本当に出来過ぎなくらいの転落人生なんだけど、それを妙にポップで軽快な調子で明るくスコーン☆と見せてくれる。 あの原作の調子をそのまま映像に再現してしまうと、多分見た人の半数以上が気分が悪くなって途中退場してしまうトコロだろうと思います。それをミュージカル仕立てにしたり、カラフルでキュートな映像を使って「敢えて踏み込んで表現しない」事によって、観客を楽しませながら(謎)松子の悲劇の人生を見せてくれる。
もっとも、踏み込んだ表現はなくてもツボはきちんと押さえてある。だから松子に共感出来る人も結構いそうな気はする。 ぶっちゃけぴよは原作を読んでる段階から、「松子」という女の人生に全く共感を持てなかったんですが(をい)、少なくとも松子が「愛されるより愛する人生」を選んだ事、ただ「ただいま・おかえり」が言える相手が欲しかった松子の切なさには、同じ女性なら誰もが何かしら考えさせられるモノはあったと思う。
という訳で、中盤までは「想像してたより結構いいやんか♪」と思いながら見てたんですが・・・ 正直言うと後半の「松子の晩年」シーンが長過ぎた。全部いらないとは言わないけど、少なくともぴよには「光ゲンジ」云々のくだりはいらなかった。ありゃークド過ぎますよ。
予告編でも流れていた伊勢谷クンの「松子は俺が殺しましたぁー!」の熱演シーンの後は、サラリと松子のその後の人生を見せるか、もしくはその前に沢村アスカとの会談シーンで、松子の死の直前までのくだりを全部見せちゃった方がスマートだったんじゃないかなぁ・・・正直ダレましたね。「まだ終わらんのかい!」って思っちゃった(苦笑)
予想していたよりはずっと面白かったけど、本作の1番の疑問は「どうしてこんなに暗い話を敢えて映画化したの?」
もっとこの映像のテイストに似合う話はいくらでもあっただろうに、何故わざわざこんなに救いようのない話を敢えて選んで明るく作ったのか、本当に理解に苦しみます。 何もこんな難しい題材を選ばなくても、ポップでカラフルでキュートな映像を活かせる話はいくらでもあっただろうに・・・
原作のトーンを知っているぴよには、カラフルでキュートな映像が延々続くのが少々鼻に付いてしまいました。 すごく勿体無い気がするんだよね。もっとストレートに楽しめる話にこの映像を被せて欲しかったなーと思いますよ。
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