監督:クリスチャン・カリオン 出演:ダイアン・クルーガー ギョーム・カネ ダニエル・ブリュール、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 1914年、第一次大戦下のクリスマス・イブ。フランス北部の激戦地でドイツ軍、スコットランド軍、フランス軍が相対するノーマンズ・ランド(敵同士が相対する事で無人状態になっている空間)で起こった奇跡・・・ドイツ軍の塹壕でクリスマスソングを歌ったドイツ人テノール歌手の歌声に、敵ながら思わず拍手をしてしまった事がきっかけになり、3国の兵士達が塹壕から出て来てノーマンズ・ランドで一夜限りの交流を深めるのだったが・・・
【感想】 今年のアカデミー賞・外国語映画賞にノミネートされた作品(受賞はしませんでした) 本作は事実を元に作られていて、映画のラストに「1914年にこの地で交流した兵士達へ捧ぐ」という一文があります。
まあ手っ取り早い話が「ヒネった反戦映画」なんですが、地味ながらなかなか気持ちのいい描き方です。 誰でも判り易い話の展開で、「音楽は世界の共通語」「音楽が敵国同士の心を氷解させて交流する」という部分が柱になっている訳ですが、その柱に小さなエピソードをチョコチョコと加える事で、単なる「国や政治は対立していても、個々の人間同士は分かり合えるモノなのだ→反戦」というノーテンキな展開だけにしないで、色々考えさせられる作りになってたなぁ〜と思いましたね。
それは例えば スコットランド軍の、兄弟で志願兵としてやって来て兄をドイツ軍に殺されてしまった弟。 「一夜限りの停戦」に和む兵士達の中、1人ノーマンズ・ランドのどこかにあるハズの兄の亡骸を探している。ドイツ兵が一緒にお酒を飲もうと近付いて来た時の、あの底なし沼のような暗い瞳。
ドイツ軍将校は「俺はユダヤ人だからクリスマスはないけれど・・・」と語る。 ユダヤ人にとってイエス・キリストの誕生日はお祭りでも何でもない日だが、多くのドイツ人・英国人・フランス人がキリスト教徒で、この日が彼らにとってどれだけ大切な日なのかを受入れた上で、自らも交流を楽しんでいる。 加えて・・・これは第一次世界大戦の話なので「ドイツ軍のユダヤ人将校」が存在しているという歴史の皮肉。
他にも、秀逸なエピソード(ぴよは特に破門になった神父のエピソードが好き♪)があるんだけど、そのラストは決して微笑ましい麗しいシーンだとは言い難い。 ドイツ軍の兵士達が、交流した際に覚えたスコットランド民謡をハミングしながら向かう次の戦地は・・・(涙) 「戦争」に翻弄されながらも垣間見せた「人としての良心」を嘲笑うかのような結末(これが事実だったんだろう)には、空しいような切ないような、何とも複雑な気持ちにさせられました。
と、大絶賛したいトコロなんですが。 この作品に「女性」の存在は必要ですか?全く必要ないと思うんですが・・・やっぱり映画には「華(ヒロイン)」がないと間が持たないと製作者サイドは考えているという事なんでしょうかねぇ。 正直言って、彼女の存在がこの映画で描かれた「感動の実話」を「嘘臭く」させてしまったような気がします。
予告編ではヒロインの存在がかなりアピールされていたので、もっと彼女が活躍(謎)するストーリーを想像していただけに、中途半端な彼女の存在がかなり鼻に付きましたね。 まあ、彼女の歌のシーンは確かに良かったから(どっちだよ)文句垂れ過ぎるのも気の毒ですが。
この作品には既に「可愛い猫ちゃん争奪戦」という、ほのぼのエピソードを用意してるじゃないですか!(笑) 「美人ちゃん」なんかいなくったって、この映画が発するパワーが落ちるとは思えません。むしろ美人ちゃんがこの映画を安っぽくさせてしまったんじゃないか?とすら思えて残念でした。
でもとってもいい話ですよ。 ベースは「事実」ですから・・・人の心を動かすのは「脚色」じゃなくて「事実」なんですよね。
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