監督:堤幸彦 出演:渡辺謙 樋口可南子 坂口憲二、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 広告代理店の部長・佐伯は、一人娘の結婚が決まり、更にビッグプロジェクトもモノにして順風満帆の充実した毎日。ところが50歳を目前にしたある日から、突然の体調不良と物忘れが激しくなり、度を越した様子を心配した妻・枝実子が渋る佐伯を伴い病院に検査に向かった。検査の結果「若年アルツハイマー」だと宣告されて慟哭する佐伯だったが・・・
【感想】 第18回山本周五郎賞、2005年「本屋大賞」の第2位に輝いた荻原浩氏著の同名小説の映画化。 本作を読んだ渡辺謙氏が映画化を熱望し、今回主人公「佐伯」と演じると共に「エグゼクティブ・プロデューサー」として初めて映画制作にも参加したんだそーです。
「若年アルツハイマー」ネタというと、昨年公開されて大ヒットした韓流映画「私の頭の中のケシゴム」が記憶に新しいところだと思うんですが、「ケシゴム」が若者向けファンタジーだとすると、本作は「そろそろアルツハイマーになってもまあおかしくはないか?でもちょっと早いよねぇ」くらいの微妙な年齢の熟年夫婦を襲う、かなりリアリティのある設定の話です。 「ケシゴム」の記憶が新しい今公開になって損なのか?それとも「ケシゴム」で若者にもグッと知名度の上がったアルツハイマーを題材にする事で、本来熟年層しか期待出来ない観客の幅を若者まで広げる事が出来るのか!?
と言う訳で、どうしても「ケシゴム」と比べたくなるのが心情ですが・・・ 本作の方がぴよにはうーんとうーんと身につまされるモノがありましたね。
まず、もし自分が若年アルツハイマーだと診断されたらどういう反応をするだろう・・・そう考えた時、ぴよもきっと本作の佐伯のような反応をするだろうと思っていたんですよ。 それを支える側だって、病気だと判っていてもずーっと一緒にいればイライラして、つい相手にぶつけたくなるだろう。
その後の展開も「実際に自分がこの病気になったら、きっと同じような反応になっちゃうだろう」「実際に自分の連れ合いがこの病気になったら、きっとこうするしかないだろう」という、猛烈に身につまされるネタのオンパレード。 多少「そりゃーキレイ過ぎやしないか?」と思える場面もありましたが、多少は麗しい姿がないと救いがありませんヨ。 渡辺謙サンの本作に対する思い入れを強く感じさせる迫真の演技でした。彼の慟哭する姿は涙なしに見れません。
ラストシーンの枝実子は、ここまで散々苦労したのに遂に・・・という絶望なのでしょうか? ぴよには彼女の姿が「悲しくて遣り切れないが、これでようやくこの人の前で堂々と泣ける」という、何か諦めの境地と言うか少しサッパリしたかのような表情に見えました。 実際にこの病と戦う本人、そしてそれを介護していく家族がどんな気持ちになるのかは判りませんが、もし自分や家族が同じ病になったとしたら・・・この映画のような展開になるのかもしれない。全く違うかもしれない。 それはなってみなければ判らないけど、この映画のような心の動きはあるだろう・・・と思わせるリアリティがありました。
若者が見て楽しめる類の作品ではありませんが、見て決して損はないだろうと思いますよ。 ただ、普通の中年サラリーマン家族の悲劇なので、展開はとっても地味です。だから夫婦どちらかのキャラに感情移入が出来ないと相当辛い(面白味がなくて退屈な)映画になってしまうかもしれません。 でも若年アルツハイマーは20代でも発症例が報告されてます。他人事と思わずに自分の身になって考えてみましょうヨ
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