2005年08月08日(月) |
ヒトラー 〜最期の12日間〜 |
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル 出演:ブルーノ・ガンツ アレクサンドラ・マリア・ララ コリンナ・ハルフォーフ、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 1945年4月20日ドイツ・ベルリン。ソ連軍の激しい砲火の中にあって、ヒトラーと彼の側近達は大統領官邸の地下要塞に避難していた。もはや誰もが敗戦を確信しながらも、既に正常な判断力を失ったヒトラーはありもしない軍力をあてに最後の巻き返しに躍起になっていた。狂気の独裁者を前に腹心達は自分の今後の身の振りの選択を迫られる。そんな地下要塞でずっとヒトラーに従ってきた秘書のユンゲは、ある日ヒトラーから遺言の口述筆記を頼まれたのだ。
【感想】 近代史において・・・いや、もしかしたら世界史上において?最も罪深き独裁者としてダントツのナンバーワンの座に君臨しているであろう「アドルフ・ヒトラー」の最期の12日間を描いた作品。 本作の脚本は歴史家ヨアヒム・フェスト著の「ダウンフォール:ヒトラーの地下要塞における第三帝国最後の日々」と、ヒトラーの秘書であり本作の語り部にもなっているトラウドゥル・ユンゲ嬢の回想録「最後の時間まで:ヒトラー最後の秘書」の2作が元ネタになってるそーです。
この映画が話題になっているのも、映画史上初めてヒトラーの「人間らしい部分」を描き出している事。それからドイツ人にとって最もタブーだとされているヒトラーネタを、ドイツ人が映画化したという事でしょう。 日本で考えると東条英機をヒーローにした映画を作るとか?それよりもっとタブーネタなのかな?
今どうしてヒトラーなんだろうなぁ?と考えてたんだけど、戦後60年経ってドイツ人にとってヒトラーという狂人に振り回された時代が既に過去のものとして語られるに足る物になったという事なのか。 それとも21世紀になっても尚世界で続く戦争に対して「戦争ほど人を狂気に陥れるバカげた事はない」という警鐘を誰かが鳴らすには、その狂気に翻弄されたドイツ人が自ら立ち上がって表現するしかない、と思ったのか。
「ヒトラーの人間らしさについて触れている」という事で、世界中で随分物議を醸し出している本作ですが、ぴよは見ていてヒトラーのプライベートな一面を見たからといって「だからヒトラーはそんなに悪い人じゃなかったんだ」とも「ドイツ国民に愛されたのも納得出来る」とも思えませんでしたがね。 犬を可愛がったり、愛する人と死の直前に入籍したり、女性や子供に優しい言葉を掛けたり・・・そんな事は彼が犯した数々の極悪非道な所業に見合う程の大層な事じゃない。「それくらいはやって当たり前」のレベル。
むしろ恐ろしいと思ったのは、あれだけヒトラーに忠誠を尽くした腹心やドイツ国民すらも、彼は事も無げに切り捨てて当たり前だというスタンスでいたという事でしょう。 恐ろしい程緻密に作られた「ヒトラーの理想のドイツ予定ジオラマ」を前に、彼は「国民なんてどーでもいい」とサラリと言ってのけるのだ。国民不在でこれだけの理想郷を作って、一体お前は誰の上に君臨したいと思っているのだ?
この戦況下において、本気なんだかやけっぱちなんだか「総統に最後まで着いて行きます!」と語るヤツから、冷静に状況を判断して早々に逃げ出すヤツ、はたまたヒトラーが自決したと判っていても尚受勲してみたりアカ狩りしてみたり・・・ 戦争を知らない世代のぴよが見ると「アホちゃうか?コイツら」としか思えませんが(苦笑)、これこそが戦争がもたらす狂気なんだろうし、日本も時同じくして似たような状態だったのか?・・・と思うと、本当に寒気がしましたねぇ。
ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツ氏の鬼気迫る演技には拍手喝采! つーか、ヒトラーが蘇ったんじゃないか?と思えるくらい似てるんですけど・・・ホントに怖いくらい!! 本作、2時間半超えという結構長尺の作品ですが、少なくとも退屈するヒマはありませんでしたねぇ。
これは反戦作品なのか?それともヒトラー擁護作品なのか?単なる史実ドラマなのか? ぶっちゃけぴよには製作者側の意図が判らなかったけど、これは受け手次第って事なのかな・・・
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