監督:ジョゼ・ジョヴァンニ 出演:ブリュノ・クレメール ヴァンサン・ルクール リュフュス、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 殺人事件の犯人として逮捕され、死刑判決を受けた息子マニュに何とか大統領の特赦を受けたいと、父親のジョーは毎日刑務所の前にあるカフェに向かい、情報収集をし、そして足を棒にして遁走していた。賭博師のジョーのせいで一家は大きなホテルを手放しており、マニュとジョーの間は長年罵り合いが絶えなかった。マニュに嫌われている事を自覚しているジョーは自分がしている事を一言も息子に告げず、面会に行くとただ黙って息子と見詰め合うしか出来なかったのだ。
【感想】 2001年フランス作品。 本作の監督ジョゼ・ジョヴァンニ氏の自伝的小説の映画化で、本作の脚本も氏が手掛けています。
それにしても、全部が事実と一緒ではないでしょうけど、少なくとも映画中の一家は何ともスゴいです。 第二次世界大戦後にパリでギャングになったマニュは、ある殺人事件に関わったかどで死刑宣告を受ける。マニュの兄貴もギャングで行動を共にしていたものの、逮捕後に脱走した挙句に偽造旅券を手に入れる為にトラブルに巻き込まれて殺されてしまう。
更にスゴイのは両親ですわ。 そもそも兄貴の脱走の手引き?をしたのは親父だし、その親父の職業ってのが「賭博師」ときたもんんだ。 母親くらいは真っ当なのかと思うと、ルーレットで一山当てて息子の減刑活動費を捻出しようってーんだから、どう考えたってまともな家庭だとはお世辞にも言えない(笑) そもそも息子達をギャングの道に引き入れたのは、母親の実兄(叔父)なんだから・・・一族腐ってますな(^-^;
さて、映画についてですが。 全般通して服役中のマニュの方ではなく、親父のジョーの視点と行動を追っていくという作りになっています。クライマックス以降はマニュの独白形式にバトンタッチしますが、映画の大筋は父親の行動を追う形。 どうしてマニュが死刑囚になっているのか、どうしてマニュとジョーは仲が悪いのか、等の物語の背景は映画が進む段階で少しずつ明かされていくという見せ方になっています。
これがまた・・・恐ろしく淡々としてて、ぜーんぜん話が展開して行かないんですヨ(^-^; それでなくても死刑囚の息子の減刑活動をする親父の話ですからね、派手な展開もなければ絵的に楽しませてくれるようなエンターテイメントでもない。 「無実なのに投獄されている息子の冤罪を晴らすサスペンス」ならもう少し面白い展開も期待出来そうですが、少なくとも事件に関わっているのは事実なだけに(ただ殺人自体は犯していない)サスペンスという展開も在り得ない。
ダレるにゃ〜・・・こりゃ〜ダレまくりですにゃ〜・・・
と、思いつつもダラダラ見てたんですが、淡々ながらも話が進んでくるとすっかり親父に夢中になってました。 寡黙で自分の心の内をなかなか表に出せない親父。自分の育て方が悪かったという負い目を持ってて、自分は息子達に嫌われても仕方ないんだと自分を責め続ける親父。ロクでもない息子でも、それでも生きていてくれさえいればいいという無償の愛を捧げる親父。
とんでもない親父なんだけど、でも「愛」が溢れてる。 見てる内にジワジワと、ひたひたと、ジーンと、親父の愛に切なくなる。 良くも悪くも、古きよき時代の愛すべき親父がそこにいた。 そしてマニュ(ジョヴァンニ監督)の親父に対する愛が、作品中に溢れていた。
決して面白い展開のある話ではないから、万人ウケする作品だとは思わない。 でもラストはとてもいい気分にさせてもらえる、静かで心豊かになる作品でしたね。フランス映画らしいまったりした作品ですが、たまには食わず嫌いしないで鑑賞してみて下さい。なかなかオススメの一作ですよ。
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