監督:テイラー・ハックフォード 出演: ジェイミー・フォックス ケリー・ワシントン シャロン・ウォレン、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 8歳の時に弟を自分の不注意で亡くし、そしてその9ヵ月後に失明したレイ・チャールズ・ロビンソン。彼は1948年17歳の時に単身シアトルに渡り才能が開花、「盲目の天才」と呼ばれ一躍有名になった。レイはゴスペルとR&Bの融合させて「ソウル」を確立、ロックやカントリー等も彼によって新しい命を吹き込まれて行った。だが成功するレイの裏には複数の愛人との愛憎劇、そして麻薬に溺れる荒んだ生活があったのだ。
【感想】 2004年6月に73歳でこの世を去った「ソウルの神様」レイ・チャールズの自伝映画。 今年のアカデミー賞では「アビエイター」と話題を二分している大物映画だから、みんな言われなくても知ってるよネ。 主演は存命中のレイ・チャールズ自らが指名をしたジェイミー・フォックス。
本作はレイ・チャールズがシアトルに出て来た1948年から麻薬中毒を克服する1965年までを中心に見せています。 その後の活躍も勿論周知の事実ですが、やはり一番レイが輝いていた時代、そしてレイが最も苦しんだ時代はこの時期だと思うので、ザクッとダイジェストにレイの人生を追うだけよりも、この時代を中心に見せているのは正解でしょう。
普通の伝記映画だと(特に製作していたのが本人存命中の場合)どうしても闇の部分にはスポットを当てにくいものだと思うんだけど、この作品は逆に成功部分よりも「成功の裏にあったレイの苦悩と闇」というダークな部分をクローズアップして、敢えてその闇部分を中心に見せているトコロがスゴイと思う。 存命中レイも勿論この作品には自ら精力的に参加していたようですが、自分の「負の歴史」をよくもここまで赤裸々に表現する事を認めたよなぁ〜、本当に心の強い「ソウルの神様」という言葉そのままの人だったんだろうなぁ〜、と思わずにはいられませんね。
内容については敢えて触れるのはやめましょう。 彼のゴシップ記事はネットで調べればいくらでも載っている事なので、調べれば済む事ですから。
ゴシップ記事には載っていないであろう「彼の幼少時代のトラウマ」が、この映画のキモでしょう。 「弟の死」がレイの心に影を落とした原点であり、そして終生彼の心を支えた「母親」という存在の偉大さを、この映画は実に瑞々しく表現していたと思う。 「盲目だと呼ばせない」「盲目だけどバカではない」――レイが成功後も何度も口にするそれらの言葉は、幼い頃にレイの為を思って厳しくも愛情深く見守った母親の言葉そのままだった。 視力を失ったレイ少年が耳を目にしてコオロギを捕らえるシーンは、涙なくしては見られない名シーンだったと思う。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジェイミー・フォックスの演技も本当に素晴らしい! 映画評論家のみなさんがこぞって「レイ・チャールズの魂が乗り移ったかのようだ」と大絶賛するのもさもありなん、見ていてついジェイミーじゃなくてレイ本人を見ていると錯覚しそうになるくらいの熱演でしたネ。 「アビエイター」を見ていないから早計かもしれませんが、この作品を見る限りジェイミーがオスカー像を手にするのは間違いないんじゃないかしら!?
さて、大絶賛ですが惜しいと思ったのはラスト。 この映画が企画された段階ではレイ本人が生きていたから、きっと当初の予定ではジョージア州で復権した後に、レイが大ホールで熱狂的な観衆を魅了しているライブシーンを流して「そしてソウルの神様は今もなお人々の心を揺さぶり感動させ続けているのだ。ビバ!レイ・チャールズ!!」ってな終わり方だったんじゃないかなー?と思うんだけど、残念な事にレイは映画制作途中でこの世を去ってしまった。
そのせいだと思う?けど、ジョージア州で復権したシーンの後がペロペローッとナレーションで彼の偉業を称えて亡くなった事を語ってハイ、お終い・・・これはちょっと味気ないんじゃないですか?(^-^; どーせなら、やっぱりラストはレイがピアノを前にして観客を魅了する姿で締めて欲しかった。 誰もが知ってる彼の死を今更スクリーンで淡々とナレーションされるよりも、彼の最も輝いてる姿で幕を閉じてもらった方がずっと話が締まると思うのに。それを望むファンはきっと多いと思うのに。
そんな訳で、映画の作りとしてはもう一歩という感じはします。 でも・・ジェイミー・フォックスは素晴らしかった!音楽も最高だヨ!! 是非是非、音響効果の良い映画館で鑑賞して下さい。帰りにはレイのアルバムを買って帰りたくなりますヨ♪
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