2005年02月04日(金) |
キッチン・ストーリー |
監督:ベント・ハーメル 出演:ヨアキム・カルメイヤー トーマス・ノールストローム レイネ・ブリノルフソン、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 1950年代初頭、スウェーデンでは国内外の主婦の台所での動線を調査し、製品企画等に役立てるようになっていた。新たに独身男性の台所動線調査をする事になり、スウェーデン人のフォルケはノルウェーの被験者イザックのトコロへやって来た。自宅横にトレーラーで横付けし、キッチンを見下ろすような監視台に座って1日イザックの行動を見守るフォルケ。最初は非協力的だったイザックだったが、とあるきっかけで禁止されていたのに2人は会話を交わしてしまう。
【感想】 スウェーデンとノルウェーの合作映画。2003年の作品。 ノルウェーの偏屈な独居老人イザックと、彼の家に「台所動線調査」に来た調査員フォルケとの心温まる交流。 ・・・って、物凄く地味ですよ。おっさんとジジイの心の交流〜♪華やかな展開があったら逆に怖いです(笑)
心の交流がどーのこーのと言うよりも、映画見ながら思ったのは「ここら辺りの国の歴史を勉強しときゃよかった(涙)」 1950年代初頭という時代設定がどーやらこの映画の重要なキーのようです。
第二次世界大戦終戦後間もないこの時代、先の大戦中にナチスドイツに散々な目に遭わされたノルウェー人達は、お隣の国なのに中立をさっさと宣言して知らん振りを決め込み、自分達を助けてくれなかったスウェーデンという国も国民にも不信感をバリバリに持っていたよーです。 もしかしたらそれ以前から元々この両国には溝があったのかも?よく判りませんが、とにかくノルウェー人のイザックはとにかくスウェーデンという国も国民も嫌ってる様子。 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ってなもんで、スウェーデン製のタバコすら嫌ってるらしい。
ここらの時代背景が判っていないと、2人が交流し始めてぐんと距離が縮まるきっかけになった会話の重要性がわかりづらくて辛いな・・・全く知らなくても両国の関係をさりげなく映画中で紹介してくれますけど、それだけではちょっと背景が掴みにくいし2人が急速に仲良くなるのが唐突に映るかもしれないな、と。
この調査では決まり事が色々あって、調査員は絶対に被験者と会話をしたり交流を持ってはいけない・調査に徹してまるで透明人間にでもなれ!とでも調査機関は言いたいのでしょう。 んな事ムリに決まってますわね。誰だって長い時間一緒にいれば会話したくなって当たり前。 てな訳で、イザックとフォルケもひょんな事から会話を交わし、そして急速に仲良くなってついにはイザックのお誕生日会を開くまでの親密度にまで発展。会社にバレたら即刻クビですよー(^-^;
はい。クビになりました(笑) しかもイザックの唯一?の友人だったハズのグラントが調査会社にチクってやんの(^-^; このグラントというおっさんのヤキモチ、尋常じゃありません。ほとんど犯罪スレスレの事やってくれます。
と、ちょっとびっくりするよーな事件(謎)もあるのですが、映画全体として非常〜にまったりしたペースで淡々と話が動いて行って・・・これが不思議な事に全くダレませんでしたね。 もっとも映画に出てくるのはぜーんぶ地味な面したおっさん達。劇的な展開なんてある訳ないですよ。でも劇的な展開はない代わりにジワジワと観客の心に訴えかけてくる、そんな癒し系(?)の人間ドラマでした。
そもそもイザックとフォルケはお互いの事を個人的に嫌ってる訳じゃない。 特にイザック、ただ単に「戦争の時に助けてくれなかったスウェーデン人」という国民感情的な部分でスウェーデン人のフォルケを避けていたという事ですから、フォルケ個人の意見を聞いてみて納得すれば後は「個人的な心の繋がりが持てるかどうか」という事になる訳で。
この映画の「国民感情的に隔たりのある国家間の草の根交流」はとても気持ちのいいものでしたが、日本人もこのネタは考えさせられますよね・・・日本が嫌われてるのは「助けてやったか否か」なんて可愛い話ではありませんが(苦笑)
|