監督:ジャン・ベッケル 出演:ジャック・ヴィユレ アンドレ・デュソリエ ティエリー・レルミット、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 14歳のリシュアンは、父・ジャックが毎週ピエロに扮装して人々を笑わせている事が不満で仕方ない。友達に「お前のお父さん面白いな」と言われるのが屈辱で仕方ないのだ。今日もお祭り会場でピエロを演じる父の姿にうんざりしていると、そこに父の古くからの友人アンドレが声をかけてきたのだ。「君のお父さんがピエロになった理由を教えてあげよう」・・・それはジャックとアンドレの悲しい過去の物語だったのだ。
【感想】 ミシェル・カン氏著の同名小説の映画化。世界15ヶ国で翻訳されたベストセラー小説で(勿論日本でも出版されてます)、本作のリメイク権をいち早くスピルバーグ氏が獲得した事でもちょっとした話題に・・・なってませんか?(^-^; 実はぴよが住んでる名古屋では今日で公開終了で、ギリギリで慌てて見に行った次第。 そんな訳なので、ロクにこの作品の情報も仕入れず(これはいつもの事だけど)映画館に入ると、まずスクリーンに映し出されたのは輝かんばかりの「文部科学省推薦」の文字・・・なんだヨ、つまんなそうな作品だなぁ(をい)
これがね、予想に反してかなり泣かされちゃって!嬉しい裏切りって言うのかしら!?
舞台は60年代フランス(映画中に説明はないけど、キャラクターの年齢考えると結果的にそーなる)、父親がピエロになってる事が恥ずかしくてちょっと呪ってる状態の少年が、どうして父がピエロになったのかという理由を父の親友から聞かされた事で、彼の中で父への見方がガラリと変わるという筋なのですが。 それは単なる映画の大筋の話で、肝心なのは「父親がピエロになった理由」の回想シーンな訳ですわ。
ぶっちゃけ言って、ジャックとアンドレはどーでもいい←いきなり(^-^; ぴよは元サーカスのピエロだったドイツ兵、そしてジャックとアンドレによって人生を翻弄される事になってしまった老夫婦の姿に涙しましたね。彼らは真の英雄だった。
彼らのような「真の英雄」は、あの戦時下においてきっと星の数ほどいただろう。 彼らは誰に自慢するでもなく信念を貫き、本当の正義と勇気を体現し、そして無残に散り、墓碑にその名を刻む事すら出来ずに朽ち、歴史の中に埋もれて誰もその名を語り継ぐ事もない。 しかしながら、その「真の英雄」達の何と高潔だった事か! 更には彼らは自分の身を呈してまで救った罪深き人達を恨む事無く、彼らの懺悔を受け入れ許そうというのだ。 こんなに素晴らしい英雄達が、今の時代に一体どれくらいいてくれるんだろうか?
フランス映画らしいエスプリの効いた会話と、フランス映画らしいもったりした展開を楽しませてくれて、でもフランス映画らしい難解さはなくて、今の混乱した時代に生きる人の誰の心にもズシンと訴えかけるだけの説得力はある。 映画ラストでジャックパパが「よろこびの歌」を歌うのはやり過ぎだろー!と思いつつも、この曲がまた泣かせるからニクイんだよなぁ・・・少々泣かせを演出し過ぎだとは百も承知でハマってる自分が悔しいし!(^-^;
それにしても、主人公のジャックとアンドレに肩入れ出来ないのが本作の欠点とも言うべきか。 決して悪者ではないけど、彼らの所業を鑑みると息子の「ブラボー!パパ!」というセリフは弱い。 英雄に出会って己の所業を心から反省し、自分のせいで犠牲になった人への贖罪でピエロになって、人々に「あの時の自分」のように「心にいつも笑みを!」という精神を忘れないようパフォーマンスを続けるジャクパパは正しいと思うよ。 でもブラボーなのはパパじゃなくてドイツ兵と老夫婦でしょ?ってツッコミ入れたくなっちゃう人は多いかと(^-^;
見せ方にもう一捻り(もうワンクッション)あった方がしっくり来たかもしれないな。 例えば父子じゃなくて、設定を現代にしてじいちゃんと孫という関係とか、語るのが当事者だった父親の友人ではなくて、彼らから後に話を聞いた母親からの伝聞とか・・・
でも、それはあくまでも映画の構成の話。 この作品が発する切なくも心振るわせる「真の英雄の話」は、誰の心にもストレートに飛び込んで来ますヨ!
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