ぴよの映画めった斬りコーナー
ぴよが見た新作映画・ビデオ・DVDを個人的趣味でぶった斬るコーナー
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【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2004年11月18日(木) モンスター

監督:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン
    クリスティーナ・リッチ
    ブルース・ダーン、他
オススメ度:☆☆☆☆


【あらすじ】
1986年フロリダ。娼婦として生きてきたアイリーンは、人生に絶望して自殺を考えていた。「この5ドルを使ったら死のう」と思って入ったとあるバーで、アイリーンはセルビーという同性愛の女性と運命の出会いをする。彼女は生まれて初めてアイリーンを蔑まずに受け入れてくれたのだ。本当の愛を知ったアイリーンはセルビーと共に人生をやり直そうとするのだが、そんな矢先にたまたま取った客に暴行を受けたアイリーンは、思い余ってその男を殺してしまったのだ。


【感想】
「シャーリーズ・セロン@ミューズ」がアカデミー賞主演女優賞を受賞した本作。セロン嬢の美しさは周知の事実ですが、そんな彼女が13キロも体重を増やし、特殊メイクで日焼けした老け顔を作り、下卑た表情に知性のかけらもない下品な言葉遣いに所作という凄まじい役作りをした事でも話題になりましたよね。

どうして美しい人がわざわざ不細工で下品な役をやるのか納得いかないのですが、こういう「役作り」がオスカー選考委員のお気に入りだというのもまた周知の事実(実際セロン嬢はオスカー取ってる訳だし)
まあそれに・・・美女のセロン嬢がわざわざ演じる事に意味があるんだろうな。この連続殺人犯に対して観客が同情するように仕向けようと思ったら、根っからのブス(コラコラ)が演じるよりもセロン嬢が演じた方が肩入れし易いしな。

と思ってたら、全く見当違いもいいとこでした。
この作品は確かに「連続殺人犯・アイリーン」の独白形式のナレーションで話が語られて行きますが、そこには製作者サイドの意図的な感傷や泣かせを全く差し挟まず、決して観客に迎合しない実にストイックな作りになっていました。

確かに彼女の生い立ちには同情の余地があり過ぎるほどある。
しかしながら彼女のとった行動は、差別発言になってしまうかもしれないけれど「いかにも無教養で育ちの悪い人の思考展開」だなぁと、彼女が第一の殺人の後に次々と殺人を重ねてモンスターになっていく過程には、やはり同情の余地はないよなぁとぴよは思ったんだよね。

ロクに愛情も躾も受けず、夢ばかりが先行してしまった無教養な彼女は、娼婦の自分を救ってくれる誰かが、いつか客の中に現れると本気で思っていたのかもしれない。
彼女の夢物語はいつも子供のように無垢だけど、「無垢」でありながら「無知」だった彼女は、いささか現実認識能力に欠けていたと言わざるを得ない。それが顕著なエピソードは、彼女がまともな職を得ようと就職活動をしている時に、履歴書一つ書かずに手ぶらで弁護士事務所の秘書になろうと面接に現れるくだりだろう。

アイリーンと逃亡を共にするセルビーという女性がまたスゴかった。
「どうしてよりによってこの子と出会っちゃったかなぁ」と思わざるを得ませんが(苦笑)、典型的寄生虫タイプのセルビーは、本能的にアイリーンが自分の絶対的庇護者になってくれる事を嗅ぎ取っていたんじゃないだろうか?
セルビーという女性もスゴかったけど、それを演じたクリスティーナ・リッチはもっとスゴかった!
彼女の演技こそオスカーに値すると思うけどなぁ〜(勿論セロン嬢も受賞してしかるべきの熱演でしたが)

男を呪い、そして自分が女性である事も呪い、唯一無二の愛を信じて罪のない人に次々と手をかけたモンスター。
でもアイリーンは元々モンスターだった訳じゃない。彼女を連続殺人犯に導いたのは紛れもなく寄生虫セルビーで、彼女こそが本当の意味でのモンスターだったんじゃないだろうか?と思うんだよね。
法廷でシレっとした表情でアイリーンを冷たく指差すセルビーを見て、アイリーンは何を思ったのか?

余りに痛ましい。
痛ましいけれど同情には値しないし、同情してはいけないとも思う。

だって、アイリーンによって何人もの罪亡き尊い命が奪われているんだもの。







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