監督:マイク・トーリン 出演:キューバ・グッディングJr エド・ハリス デブラ・ウィンガー、他 オススメ度:☆☆☆☆☆
【あらすじ】 1976年アメリカ南部サウスカロライナ州アンダーソン。名門ハナ高校のフットボール部コーチをしているハロルドは、ある日いつもグランド近くを歩いている黒人青年を目に留めて声をかけた。彼は知的障害があり学校にも通わずロクに人と口もきかない。ハロルドは彼に「ラジオ」というあだ名を付けてフットボール部のマネージャーの仕事を与えた。天真爛漫で素直なラジオはたちまち部員達に慕われ、ハナ高校にも通うようになったのだが・・・
【感想】 1996年にアメリカ最大の発行部数を誇るスポーツ・イラストレイテッド誌が小さな記事で紹介するや、たちまち全米の話題をさらった感動の実話の映画化。
アメリカらしいっちゃーアメリカらしい、けれど日本ではなかなかこーいう話が起こらないという「美談」で、これを「偽善だ」と言う人もいるかもしれないけれど、その偽善すら出来ないおまへが何エラソーな事を言うか!と一喝してやりたい気分になりますよ。この映画見たら。 もっとも一喝してやりたいぴよ自身も「じゃあおまへは出来るのか?」と問われると?・・・(をい)
舞台が70年代のアメリカ南部、それでなくても特に黒人差別が激しく仲間意識が強い(逆に言えば排他的)な地域だというマイナス要素に加えて、知的障害というハンデを持ってる「差別のダブルパンチ状態」のラジオ青年。 元々親がこの知的障害児のラジオ君に心から愛情を注いで育てていた事で、ラジオ君も親の愛を受け止めて実に素直で心優しいお子に育ったという土壌があっての美談だと思いますが・・・
なんつっても素晴らしいのは、フットボール部のコーチだったハロルドでしょう! 「なんて気の毒な青年なんだろう」くらいは誰でも思う(それすら思わないヤツすらいる)けど、実際に声をかけて彼を受け入れるというのは特にこの地域の人としてはとても勇気がいる事だったと思うんだよね。 しかもハロルドは地元では誰もが知ってる有名人。スポーツが盛んなこの地で名門校の花形スポーツ部のコーチというのは相当の名誉職なんだろうと想像出来る。 町のおやじ達の溜まり場になってる床屋で、彼は尊敬を持って迎えられている様子が映画中でも見て取れる。 そんな彼が率先して知的障害のある素性も知れない黒人青年を連れ歩くのは相当の勇気がいっただろう。
映画中でもそれは示唆されていて、ラジオを連れて町を歩くようになった当初は、町の人達はみな一様に軽蔑とも好奇とも取れる怪訝な顔でハロルドとラジオを見ている。 もっと言うと、多少ラジオ君が町で認知されて来た後でも彼に対して偏見と差別を持って対峙する輩もいた。 要するにこれは「アメリカにはよくある話」じゃなくて「アメリカでも数奇な部類の話」なんだとぴよは思う訳ですわ。
ハロルドを演じたエド・ハリスが猛烈にカッコイイ♪ ハゲてもとてつもなくカッコイイ♪(をい)、加えてカミサン役のデブラ・ウィンガーの歳を食っても相変わらずの清冽な美しさと言ったら・・・もう出来過ぎなキャスティングですわ。
意外な事に、ちょっと話を聞いただけでも涙モノの感動美談なのに、映画の作りはかなり地味で押し付けがましい「愛と涙溢れるエピソードてんこ盛り」という演出はしていない。今作に関して言えば逆にそれがぴよには好感持てましたネ♪ 実際の「結果的に美談になった話」というのは、みんなが期待している程感動に打ち震えるエピソードにまみれている訳ではなく、この映画のように地味な話の積み重ねで起こるんだろうなぁと思いますよ。
という訳で、涙腺が詰まっている(謎)ぴよは泣く程ではありませんでしたが、心から「ええ話やなぁ」と時間をかけて地味にひたひたと感動が染み込んでくる、そんな気持ちのいい映画でした。 でも映画ラストで実際のラジオ君(今はおっさんだけど)の映像が流れて来た時はさすがにウルッと来たゾ。
今思うと「映画が良かった」のか「この実際の話が良かった」のか訳わかんないんだけど(苦笑)、どんなにいい話だって作り方次第ではクソ映画になってしまうというのを「天国の青い蝶(2004.9.22の感想参照)」で痛感しているだけに、この映画は非常に良質の作品だとぴよは思いますだ。
どうしてこんなにステキな作品が単館ロードショーなんですか??? この映画が上映されない地域にお住まいの方が気の毒で仕方ありませんよ。せめてDVD化されたら見て下さい!
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