監督:ジュリー・ベルトゥチェリ 出演:エステール・ゴランタン ニノ・ホマスリゼ ディナーラ・ドルカーロワ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 グルジアに住むエカおばあちゃんの楽しみは、新しい生活を求めてパリに移住した息子のオダールから届く便りだ。オダールの姉で長女のマリーナはオダールに嫉妬していて、マリーナの娘のアダはオダールおじさんから届く手紙をエカに読み聞かせるのが日課という穏やかな家族だった。 そんなある日、エカの不在中にオダールが事故に遭ったという連絡があったのだ。果たして警察に行って見ると既に亡くなっていた。エカを悲しませたくないマリーナとアダは、さもオダールが生きているかのように装う事にするのだが・・・
【感想】 「あいち国際女性映画祭」で鑑賞した作品。愛知未公開作品ですが、東京ではもう公開してる? 舞台はソ連崩壊後に民族紛争などで揺れ、経済的に困窮が続くグルジア。この国に住む3世代同居の女性ファミリーの家庭の事情に絡めて国の情勢もさりげなく見せるという、なかなか手の込んだ作りの作品です。
ロシアの医大を出たインテリの息子が自慢のエカばあちゃん。でも困窮を極めるグルジアではロクに稼げないと、息子のオダールは新天地を求めておフランスのパリに不法就労している。医師ではあるものの、所詮不法就労の身であるオダールは、建設現場で肉体労働をして日銭を稼ぐしかないという辛い立場だったりする。 こういう背景の補足のように、しょっちゅう停電したり突然水が出なくなったり、国の特産物を製造する会社であっても資金不足で操業停止していたりという「現代グルジアの実情」をリアルに(でも話からは浮かないようにさりげなく)見せてくれる辺り、後の展開にもうまく絡んでいて技アリの脚本だなーと思いましたね。
年老いたエカを悲しませたくない、という理由で嘘をつき続ける事になるマリーナとアダだけどそこにはそれぞれ色んな感情が混ざっていて、アダが良心の呵責に耐えられなくなって母のマリーナに抗議するくだり等、静かなエピソードが多いんだけどズシンと来る話でしたね。
なによりこの映画を素晴らしいものにしてくれたのは、エカを演じたエステール・ゴランタンの存在でしょう。 ゴランタン嬢(?)、なんと御年85歳にして映画デビューを果たしたという女優さん!デビュー作「故郷への道('99)」でアルビ映画祭最優秀女優賞を受賞あそばされ、その後もヨーロッパで数々の作品に出演する人気女優さんなんだとか・・・本作も撮影時にして90歳間際というご高齢でありながら、溢れる存在感と瑞々しい演技で観客を魅了します♪
そんなエカがクライマックスで見せる苦悩の姿と「やさしい嘘」にはグッと来ましたね。 先の展開ミエミエでも(コラ)、それでもジーンとさせるウマイ脚本だったと思う。 何もかも悟って穏やかな表情になったエカ、そしてアダが何を望んでエカに付き添ってパリまでやって来たのかをも知ったエカが手を振る優しい姿、嘆き悲しむマリーナを抱きしめる暖かく力強い手、とにかく「エカ一人勝ち」「ばあちゃんオイシイとこ総取り」の作品ですわ!(笑)
「地味な小品」という印象ですが、含蓄深い良作だと思いましたネ。 ぴよはこーいう作品結構好き♪
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