監督:ランダ・シャハル・サッパグ 出演:フラビア・ビシャーラ マーヘル・ブサイベス ランダ・アスマール、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 イスラエル建国によって分断されたレバノンとの国境地帯にあるとある村。イスラム教・ドルーズ派のこの村に住む16歳の少女ラミアは、少年達と凧揚げに興じたり同級生の女の子と性の知識について話をしたりするごく普通の女の子だった。ある日村の長老会議でイスラエル側に住む従兄との結婚を決められたラミアだったが・・・
【感想】 毎年この季節になると愛知県では「あいち国際女性映画祭」という催し物があって、日本初公開や愛知初公開の女性監督の作品が数多く上映されます(って、過去の感想にも何度も書いてます。笑) んな訳で、今年も映画祭を見に行って来ました。 本作は日本初公開作品で、更にレバノン・フランスの共同制作という変り種。
舞台はイスラエルとレバノンの国境地帯。イスラエル侵攻(と言うか建国の際の国境線の線引き問題かも?)によって1つの村がイスラエルとレバノンに分断されてしまったという特異な状況下のお話です。 実際にシリア−イスラエル間にこういう状況の村があるそうですが、今作はレバノン人の監督さんによって作られた作品なので、舞台をレバノン−イスラエル間に変えてあります。
レバノンサイドに住む少女ラミアは、ある日弟達と一緒に国境地帯で凧揚げをしていて、風に飛ばされた自分の凧が有刺鉄線の向こうのイスラエル側に入ってしまう。それを地雷地帯を踏み越えて凧を取りに行った事で村では問題になり、長老会議によってイスラエル側へ嫁に出してしまえ!という展開になる。
これがねー、映画中で「ラミアを助ける為にはこうするしかない」というよーな会話があるんですが、どうして国境を越えた事に対する処罰がイスラエル側に嫁に出す事で解決するのかというのが、ぴよにはわかんなかったんですよね(^-^;
ちなみにイスラム教・ドルース派というのは、イスラム教の中でも特に閉鎖的な宗派らしく、この派に関する著書は様々出版されているそうですが、1つとしてドルース派の人間による編纂のモノはないそうです。要するに自分達の教義や信仰方針を全く外部に漏らさないようにしているという特殊な宗派なんだそーです。 で、ドルース派は調査によると、未だに長老会議なる会議や家長の独断によって結婚相手を決めたりしてるらしい。
どういう訳だかイスラエル側に嫁に出される事になったラミアは、これまたどういう訳だかイスラエル軍の国境警備に就いている兵士と恋仲になってしまう。 敵国の兵士を好きになってしまったラミアと、敵国の娘を好きになってしまったイスラエル兵士。 あぁ、麗しい「ロミオとジュリエット状態」な訳ですネ(^-^)
結構ベタな展開&ダレる系のエピソードなんだけど、日本人には全く馴染みのない国の、馴染みのない宗教・宗派の、馴染みのない状況下の話なので、結構「へぇ〜!」「ほぉ〜!」という新鮮な驚きが映画中に沢山散りばめられてます。 少なくともレバノン製作の映画ってぴよは初めて見たのですが、男尊女卑のイメージが強いモスリムの方々の、特に女性側の心理や力強い行動力、アケスケな性に対する考え方等、かなり驚かされる部分が多かった&その一端に触れる事がというだけでも「めっけもん作品」だったように思います。
ラストシーンは、見た人の感覚で解釈して欲しいという事だそーです。 (映画祭会場でライン・プロデューサーという役職の方がいらっしゃって、トークショーがありました) それはラミアの現実と夢の交錯だと思う人もいるし、単なる夢だと思う人もいる。またはラミアの魂が成したファンタジーだと受け取る人もいるでしょう。 ぴよはラミアの現世から離れた魂と、イスラエル兵士の魂が呼応し合ったファンタジーだと受け取りました。 要するに「こうであったらいいな」と、観客がラストシーンを創作しちゃってOKな作品だそーですよ。
レバノンでは映画制作の土壌が確立されていないそうで、年間5本くらいしか公開されないそうです。 この作品をきっかけに、もっと日本にも広く中東諸国で製作された映画が紹介されるといいなぁ、と思いましたね。
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