監督:パトリス・ルコント 出演:ジャン・ロシュフォール ジョニー・アリディ ジャン=フランソワ・ステヴナン、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 フランスのある田舎町の駅に訳アリの中年男・ミランが降り立った。シーズンオフの田舎町でホテルが閉まっていた為、たまたま薬局で出会った老人マネスキエの家に泊めてもらう事になった。生まれてこの方一歩もこの町を出た事のない元教授のマネスキエは自由に動き回る流れ者ミランに憧れ、そしてスリッパを履くような落ち着いた生活をした事のないミランはマネスキエの人生に憧れ、中年と老人2人は奇妙な友情を交わし始めるのだが・・・
【感想】 「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」「歓楽通り」等、最もフランス映画らしいフランス映画を撮らせたら右に出る者はいない!と誰もが絶賛するルコント監督の最新作。 アンニュイで美しい恋愛模様を得意とするルコント監督ですが、本作は色気の少ないストイックな男同士の友情を見せつつ、人の心の琴線に触れる非常に含蓄深いテーマを淡々と見せて行きます。
相変わらず手の込んだマネスキエ氏の自宅装飾のシーンを見て「ルコント監督の真骨頂だ!」と大喜びするフランス映画ファンの方は多い事でしょう。勿論ぴよもそんな1人ですヨ♪
そんなこだわりまくったクラッシックな屋敷に住む、外の世界を知らない孤独な老人マネスキエ氏が出会うのは、老人が憧れて止まない「町から町へと渡り歩く自由人」ミラン。 このミランは訳アリでこの町にやって来たんだけど、ミランは逆に「地に足付けて生きる」この老人に憧れている訳だ。 ミランがこの町にやって来た事情をマネスキエ老人がどーしてサックリと判ってしまったのかとか、本来人とコミュニケーションを取るのが明らかに苦手なハズのミランが、どーしてお喋り好きのマネスキエ老人と心通わせる程思い入れを持ってしまったのか・・・等という邪推はこの際だから止めてもらおう(苦笑)
人生の終焉近くを自覚して保守的な人生に飽き飽きしたお茶目な老人と、金と境遇に恵まれていたらこんな保守的な人生を歩みたかったと憧れる中年男・・・簡単に言ってしまえば「ないものねだり」の標的がマッチしてしまった男同士がシンクロしていく様子をただ淡々と見せているだけだったんですが、役者の抑えた演技の生きるウマイ作りの作品でしたね。
お互いがお互いにないものを求めて憧れ、そしてそこから何とかして脱出したいと願っている。 しかしながら人の一生というモノは、そうそう望んだ通りにいかないのが世の常。 マネスキエとミランが飲みに行ったカフェで、店の雰囲気をぶち壊す嬌声を上げる若者にマネスキエ老人が注意をしに行くくだり・・・このシーンはこの映画のテーマを最も端的に表現している名場面だったと思う。
ラストシーンに関しては賛否両論・・・または見た人によっては解釈が違って来ると思うのですが、ぴよはこのラストシーンは「彼らが望んだ(そして観客が望んだ)幻想」を映像化しているんじゃないかと思ったんですけど。
映画を見慣れてない人にはちと退屈な作品かもしんない・・・ でも「フランス映画らしいフランス映画」を堪能しようと思ったら、この作品は必見だと思いますね。
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