監督:佐々部清 出演:水谷妃里 淳評 上野樹里、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 1977年下関市。姉妹都市釜山との親善交流事業として毎年夏に行われる関釜陸上競技大会に出場した陸上部の郁子達仲良し4人組は、同じく競技会に出場していた韓国人青年「安大豪(アンテイホウ)」に出会う。戒厳令で夜間外出禁止にも関わらず郁子に会いに来てくれた安に、お互い淡い恋心を通わせる。 帰国後文通を始めた安と郁子は「来年のチルソク(七夕)にまた再開しよう」と約束をし、仲良し4人組はハングル語を勉強し始めたのだが、双方の両親は文通する事を猛烈に反対するのだった。
【感想】 下関出身の監督・佐々部清氏が故郷を舞台にメガホンを取った下関フィルムコミッション第一回作品。 「フィルムコミッション」というのは映画やTV番組、CM等のロケを誘致する非営利な公的機関で、今回撮影ロケされた下関と釜山には共にフィルムコミッションがあり、尚且つ姉妹都市提携をしているという事もあって数多くの一般市民もエキストラで参加しているようです。 てな訳で、早い話が「ウルトラスーパーご当地映画」ってヤツです。
舞台は1977年〜1978年の1年間の下関と釜山。映画冒頭2003年夏の下関で10年ぶりに関釜陸上競技大会を復活させた郁子が、自分の青春時代を振り返るというアプローチで入って行きます。
ぶっちゃけ、別段どうというヒネリもない「いかにも」なご当地映画な作りでしてね(^-^; ご当地映画らしく、主人公郁子のパパ役は下関出身の山本譲二が映画初出演してるし、映画の主題歌を歌うイルカが先生役でチョロッと出演したり、谷川真理が2003年の「真理」役で登場したり(マラソン繋がりだにゃ♪) 本当に「みんなでこの映画を盛り上げよう!」という『手作り感』がヒシヒシと伝わる安〜い作りなんですが(をい)
意外にテーマは重たかったりします。 日本人と韓国人の民族意識、もっと言えば第二次世界大戦時に日本が朝鮮を侵略し虐待したという忌まわしい歴史を今も引きずりしこりを残す両国の国民感情が、「安青年と郁子の恋愛」を通じて赤裸々に表現されています。
今でこそ日本の流行歌が流れ、夜は恋人達が腕を組みながら町を闊歩するのが当たり前の光景ですが、ほんの数十年前までは戒厳令で夜間の外出は一切禁止、日本の歌を唄う事も禁止されていた・・・それが韓国という国だ。 ぴよ達の世代は韓国や韓国人(朝鮮人)に対して別段特別な感情はありませんが、ぴよの親達の世代以上は今でも朝鮮人を蔑視ししている人も多いし、逆に朝鮮人も日本人に対してかなり悪い印象を持っているでしょう。 今では随分と仲良くなってきたという印象の「日韓関係」ですが、実はこの問題は何ら解決していないし根が深いと思う。
1977〜78年代の流行歌、映画、風俗等をふんだんに見せてノスタルジックを煽りまくり、この時代を生きて楽しんだ懐かしい世代にはたまんねぇ〜!のオンパレードですが、ぴよには何か違和感があったんだよなぁ・・・ 違和感と言うよりも、この重たいテーマを「淡い恋愛」と「懐かしの音楽」いうオブラートで包んで、なにかうやむやに流されてしまったような感じがしたんですがネ(^-^;
郁子の父親の気持ちは変わる事はないし、ご近所の偏見も払拭される事はない。 叔父を日本兵に殺されたという安青年の母親は、きっと今も日本という国と国民を嫌って恨んでいるだろうし、郁子と安青年の話がもし2004年という設定だったとしても、やはり周囲の反対や偏見はあるんじゃなかろうか?
この映画のラストシーンが、「戦争を知らない私達の世代は、手を取り合い共に生きよう」というメッセージなのか、それとも現在は既に日韓両国においてしこりはないんだというつもりで描いているのか・・・そのどちらにも受け取れるしそのどちらにも受け取れないんだけど、ぴよは「ノスタルジックにシメれば万事良しって展開はズルいだろ」って気がしたんすけどねぇ。
映画とは全く関係ありませんが、たまたま先週釜山に遊びに行ってたんすよ。 (映画中、チャガルチ市場の様子とかチョロッと出て来て嬉しかったわーん♪)
道に迷って地図広げてオロオロしてるぴよ達を見て、韓国人のおじさんは日本語がわからないのに、一緒に地図を見てくれて一生懸命場所を指差したりしながら教えてくれた。 地下鉄のキップの買い方が判らなくて自販機の前でウロウロしているぴよ達を見て、地下鉄路線図を指差して「どこに行きたいの?」と聞いてくれて、キップを買ってくれたおじさんもいた。 街を歩いてて、可愛いワンコを散歩させてる人に近付いていって「可愛いぃ〜!」と嬌声を上げているぴよ達に、カタコトの日本語で「日本の方ですか?どこから来ましたか?」と笑顔で話し掛けてくれた兄ちゃん達もいた。
ぴよが出会った韓国人は、みんな日本人にとても優しかったし親切だった。 今も日本人を許してくれない韓国の方も多いと思うけど、でもこんな優しい人達に嫌われたくないな・・・と切実に思ったよ。
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