監督:ロバート・ベントン 出演:アンソニー・ホプキンス ニコール・キッドマン エド・ハリス、他 オススメ度:☆☆
【あらすじ】 コールマン・シルクはユダヤ人初の大学学部長まで登りつめた古典学教授だったが、ある日黒人差別発言をしたと糾弾されて辞職に追いやられてしまう。その心労であっけなく妻を亡くしたコールマンは、作家のネイサンの所に赴きこの出来事を小説にして欲しいと懇願する。この事がきっかけで仲良くなった2人は次第に穏やかな生活を取り戻して行った。 1年ほどしてコールマンは不遇の女フォーニアに出会い、恋に落ちた。かけ離れた年齢差と余りに不釣合いなステイタスに周囲は反対するものの、コールマンの耳には届かない。だが彼には誰にも知られたくないある秘密を持っていたのだ。
【感想】 ピューリッツアー賞作家フィリップ・ロス氏の大ベストセラー小説「ヒューマン・ステイン」の映画化。 メガホンを取るのはこれまたヒューマンドラマ傑作「クレイマー・クレイマー」の監督ロバート・ベントン、主演2人はその演技力には誰もが脱帽!のサー・アンソニー・ホプキンスとニコール・キッドマンという超豪華な組み合わせ。
これは予告編で提示されている内容なのでネタバレではないと思うので書きますが (予告編も見てなくて、更に展開に絡む重要なネタは知りたくないという方はここから先は読まないで下さい)
黒人の親から生まれたのに白人と同じような肌の色で生まれて来たがために、人種を偽り社会の成功者になれた男という設定が、まず日本人には馴染めないと思うんですよ。 実際にアメリカにはこういう例が数多くあるらしい・・・まあ冷静に考えてみれば白人と黒人のハーフ(優性遺伝だから肌の色は黒いわね)同士が結婚して子供を作れば、少なくとも1/4の確立で全くの白人状態の子供が生まれて来る計算になる訳ですから、あってもおかしくない話なんですよね。(メンデルの法則って覚えてます?)
そもそもアメリカに肌の色による人種差別があるからこそ、こういう小説が生まれる訳で。 黒人の親から生まれたのに劣性遺伝の掛け合わせで白人のような肌の色で生まれるという幸運に恵まれた事で、逆に自分の首を絞める事になってしまうという皮肉。
更にこの作品は、アメリカ社会が抱える「膿」の集大成のような設定になってるんだよネ。 人種差別は上に述べたとーり。その他に性的虐待、ベトナム戦争派兵による心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ドメスティック・バイオレンス等、とにかく心と体の闇をこれでもかー!とてんこ盛り状態な訳で。 正直言って見ていて気持ちのいい話じゃないし、単一民族の日本では理解しきれない難しいネタだと思いますわ。
それをアンソニー・ホプキンスとニコール・キッドマンの「傷を負った者同士の恋」によって昇華させようという事なんでしょうけど、ぶっちゃけこの2人が恋人同士という絵ヅラって想像出来ますぅ?(^-^; 出来ないでしょ?出来ないよねぇ〜・・・実際にスクリーンで見ていても違和感アリアリでしたもん(笑) それでなくても日本人には馴染みにくいネタを、違和感バリバリのカップル見ながら理解しろって言うんだから、そりゃー退屈しちゃうのもムリはないっすよ(苦笑)
ネタが暗いから盛り上がる要素がないし、フォーニアがカラスに話し掛けるくだりも唐突な感じがするし、コールマンの青年時代を演じるウェントワース・ミラー君(この作品が映画デビューなんだそーだ)は、どこをどう見てもアンソニー・ホプキンスとは似ても似付かず、まるで別人の話のよーなチグハグな印象しか残さないし・・・
まず、映画の展開がぴよには不満なんですよね。 いきなりオチから入って、オチに到る過程を見せていくという趣向なんですが、この手の暗いネタのオチが見えてると、どんな展開だろーが「でも結局こーなるんでしょ?」で片付いちまいますから(^-^; せめて最初に見せたオチには更にどんでん返しがあって・・・というヒネリでもあればよかったんだけど。
救いは役者の演技力という所ですが、個々の役者の演技がいくら素晴らしくてもキャスティングを間違えてしまうと、肝心の内容に観客が入り込む隙を与えなくなってしまうんですよ。 元々ネタからしてぴよが受け付けない類だったので、誰が演じても結果は同じだったのかもしれないけどネ。
アメリカでは絶対にウケる作品だと思うよ。ただ日本人にはどーなんだろう? 決して出来が悪いとは思わないけど、ぴよはちょっと苦手なタイプの作品でしたね。
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