監督:ガス・ヴァン・サント 出演:ジョン・ロビンソン アレックス・フロスト エリック・デューレン、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 オレゴン州ポートランドにある、ごく平凡な高校のある日の1コマをカメラが追う。 学校に送ってくれた父が泥酔している事に気付いて兄に向かえを頼むジョン。ポートフィリオ作成の為に誰彼なく声をかけて撮影する写真部のイーライ、愚痴話に花を咲かせるオシャレな3人娘・・・そして学校でいじめられて劣等感をもつアレックスと、やはり人生に鬱屈した物を感じているエリックの2人は、インターネットで購入したある物が届くのを心待ちにしていた。
【感想】 「グッド・ウィル・ハンティング」等で知られるガス・ヴァン・サント監督作品。 今作は2003年のカンヌ国際映画祭で、史上初のパルムドール&監督賞のW受賞を果たした鳴り物入りの一作です。
アメリカの銃社会を浮き彫りにさせる作品と言えば、まず頭に浮かぶのは昨年のアカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞のボーリング・フォー・コロンバインですが、本作は正にそれとネタ的には被りまくってます。 ただし、先のボーリング・・とこの作品の大きな違いは、「ボーリング・・」はお手軽に銃が手に入るアメリカ銃社会を痛烈に批判するというスタンスに終始しているのに比べ、今作品はあくまでもカメラは傍観者の立場で貫き、彼らの行動やそれを取り巻く環境や若者の劣等感や優越感等を何の説明もなく、本当に「見せるだけ」に徹している点です。
ぶっちゃけ言っちゃうと、ぴよには「ボーリング・・」よりも今作品の方がかーなーりー寒かったんすよ。 「寒かった」ってのは、よりリアルで鳥肌が立ったっていう意味なんだけど。
田舎のとある高校を舞台に、そこに集う学生の幾人かにスポットを当てて、ただただカメラは彼らの後ろ姿を長回しで追っかけて行くだけ。そこには彼らの人物背景の説明もなければナレーションも何もない。 本当にどこにでもありそうな普通の高校の1コマが、本当にどこにでもいるハズの平凡な目立たない学生2人によって、狂乱の場と化していく恐怖・・・彼らの心理状態を決め細やかにナレーション入れたり脚色したりしないで、ありのままのリアルな状態でフィルムに収めるというのは、映画制作者としてかなり勇気の入る行為だっただろうと思います。
これが、ナレーションがないだけに本当に鳥肌モノなんですわ。
更に恐ろしい事は、この映画は彼らが起こした恐ろしい出来事に対してすら、何の解説も入れなければナレーションも入れず、彼らの真意を明かそうともしないという事。 誰もが簡単に銃器を手に入れる事が出来て、そして誰もが人を殺す事を「楽しむ」事が出来る社会。
ただただそれを淡々と見せる事に終始し、見た者の感情に任せた作りは余りに不親切だとも言えるし、余りに丁寧過ぎるとも言えると思う。
これは遠い国「アメリカ」の話だと思ってはいけない。今の日本は既に病んでいると痛感させる問題作。
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