監督:篠原哲雄 出演:竹内結子 玉山鉄二 香川照之、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 何故か生きながらにして「天国の本屋」で働く事になったピアニストの健太は、天国で幼い頃憧れたピアニスト・翔子に再会した。何故かピアノが弾けなくなってしまった翔子を助け、未完の組曲を作る手伝いを始める事に。 一方、現世では翔子の姪・香夏子が商店街の花火大会で伝説の「恋する花火」を復活させようと遁走していた。ところが「恋する花火」を作っていた職人・滝本は、10数年前の暴発事故がきっかけで花火を捨てて、自暴自棄な生活を送っていた。 実は滝本の恋人が翔子で、この事故により翔子は片耳が聞こえなくなり、彼女は非業の死を遂げていたのだ。
【感想】 松久淳と田中渉の共著「天国の本屋」シリーズの第一作「天国の本屋」と第三作「恋火」を掛け合わせて映画化。 原作本は、絶版寸前だったところを地方の書店主が目を留めてアピール、それがきっかけでじわじわと火が点き、50万部超えのベストセラーになったという、正に「クチコミ伝説」の逸品だそーです。
話は、生きながらにして天国にスカウト(?)されて「天国の本屋」でバイトをする事になったピアニストの健太と翔子の物語と、現世で商店街の花火大会に伝説の「恋する花火」を復活させようと遁走する香夏子と花火師・滝本の苦悩を並行して見せる・・・と思わせておいて、実は映画の主軸になるのは決して交わる事のない「滝本と今は亡き翔子」の恋の物語という、実に手の込んだ脚本になっています。
花火を捨てさせる事になってしまった恋人に罪悪感を残す死者の翔子と、償いようのない傷を負わせて死なせてしまった恋人に対する罪悪感で自暴自棄に陥る現世の滝本の永遠に封印された恋。 これを当人同士が絡む事なく「天国の健太」と「現世の香夏子」の2人がそれぞれに絡む事で、2人のラブストーリーを完結させて行く妙技には、思わずうなってしまいましたわ。
映像もすごくキレイ♪ 全編ALL北海道ロケを行ったそーで、ノスタルジック感のある優しい風景と町並みが映画を支配し、それはクライマックスまで実にいい雰囲気で引き継がれて行きます。
「何故健太は死んでいないのに天国に連れて来られたのか?」という理由探しのヒントとして、心に深い傷を負った由衣とサトシの恋愛エピソードが挿入されていますが、これもしつこくない程度のボリュームで、尚且つきっちり「泣かせ」なシーンも盛り込んで、実にソツがないです。
難を言えば、1人2役という難しい役ドコロだった為か?竹内結子の演技が多少わざとらしく感じた事と、伝説の「恋する花火」が想像していたよりも地味で「フツーの花火やんか」と思った事くらいか(^-^; まあ花火に関しては仕方ないかも?何しろ「恋する花火」は「和火(日本古来の伝統的花火)」だという設定なので、どーしても最近の「スターマイン」に代表される「洋風花火」よりも色や演出が地味になってしまいますから。 (でもラストのスタッフロール画像で挿入されている花火は圧巻でしたわヨ♪)
バラバラに見せているようで、じわじわと「天国と現世」を絡ませ、そしてクライマックスで完全に融合させる。 実はぜーんぜん期待してなかったんだけど、思わぬ「拾い物」をしたよーな、ステキな作品に出会っちゃいました♪
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