監督:カン・ジェギュ 出演:チャン・ドンゴン ウォン・ビン イ・ウンジュ、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 1950年、韓国ソウル。しっかり者の兄・ジンテと気が弱いが心優しい弟・ジンソクの兄弟は、6月25日の朝鮮戦争勃発により強制徴収されてしまった。弟を何とかして退役させて戦地から引き離そうと、ジンテは身代わりに危険な任務を自ら進んで買って出るようになる。自分が勲章を取れば、褒美の代わりにジンソクを退役させる事が出来るからだった。 ところがジンテの急激な変化にジンソクは戸惑い、兄に不信感を募らせるようになる。ようやく勲章を手にした兄がジンソクを退役させようとするものの、既に兄が信じられなくなったジンソクはそれを拒否するのだった。
【感想】 「シュリ」で日本に韓国映画ブームの先駆けを作ったカン・ジェギュ監督の最新作。韓国では既に2月6日に公開になっていて、オープニング新記録を始め次々と新記録更新中。既に観客動員数も1000万人を突破し、正に韓国映画史上最高記録を樹立するのは間違いなし!の超大作。
とにかく映像がスゴイ! 派手なアクション好きのジョン・ウー監督も真っ青になりそーな(をい)爆撃に次ぐ爆撃、銃弾が目まぐるしく飛び交い、あちらこちらで炎を上げ爆薬が炸裂し人が吹っ飛ぶ戦闘シーンは圧巻! カメラワークにもリアリティを追求し、爆弾が炸裂するシーンでは爆破の振動の臨場感を伝える為に、スクリーンの映像自体も大きく揺れ動いて、何がどーなってんだか見てて訳わかんないくらいスゴイです(笑)
話の本筋は、およそ戦争向きではない心優しい秀才クンの弟を何とかして戦地から引き離そうとする兄貴と、戦渦にまみれてかつての思いやりを失っていく兄貴に失望する弟という「兄弟の心のすれ違い」を主軸に、戦争がもたらす狂気と動乱を絡めて見せて行きます。
戦争映画というとどうしても製作した国の側の立場で作ってしまうので、「主人公チームが正義・敵は絶対悪」というスタンスになってしまってぴよはどーにも好きになれないのですが、この作品の素晴らしい点は何と言っても「戦争をするのにいいも悪いもない。韓国の方だって同じ穴のムジナだった」という描き方をしているトコロでしょう。
強制徴収されて嫌々戦場に駆り出されたハズのヤツらが、自分達の平和を守りたいだけだったハズの一般市民が、いつの間にか北朝鮮軍と見ると有無も言わさず虐殺し、進んで「アカ狩り」をして同胞達を殺し合う。 戦争がもたらす狂気の描き込みがリアル過ぎて、思わず目を覆いたくなるほど・・・
上映時間が2時間20分超えと長めですが、トントン拍子に話が展開する割りに兄弟の心の動き・すれ違い・心情等の描き込みは非常に丁寧で、ダレる事は全くなかったです。 主人公の2人の演技も申し分ない。特に兄・ジンテを演じたチャン・ドンゴンは素晴らしかった! 映画冒頭での家族思いの優しい兄の表情が、戦渦にまみれてみるみる阿修羅の光を放つようになる辺り、あまりの迫真の演技に思わず鳥肌がゾゾーッと立って悪寒が走ったわよ!!
結局この戦争の結果は・・・ 何も変わっていないどころか、世界も人の心も益々邪悪な方向に向かっているとしか言えない状況で。 老人の慟哭には涙を流さずにいられませんでしたが・・・戦争を過去のモノとしてその爪痕を嘆くにはまだ早い。 今もまだ世界は日々人を殺し合い、略奪し、陵辱し、狂気を生んでいるんだもの。
この映画は単なる「かつて起こった朝鮮戦争の話」として見るべきではない。 「面白かった」という感想は不似合いな、でも色々考えさせられる「今見なければいけない」作品だと思う。
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