監督:イ・チャンドン 出演:ソル・ギョング ムン・ソリ キム・ジング、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 轢逃げで男性を殺してしまった事で服役していたジョンドゥが、刑期を終えて出所して来た。ところが家族はジョンドゥが服役中に引っ越しているし、明らかに彼を持て余している状態だ。とりあえず職を得たジョンドゥは被害者の家を訪ねるが、被害者の息子夫婦は脳性麻痺の妹コンジュを残し、大きな家へ引っ越しする所だった。 コンジュに興味を覚えたジョンドゥは翌日花束を抱えて、独りぼっちになった彼女の元を訪れたのだが・・・
【感想】 「ペパーミント・キャンディー」の監督イ・チャンドンが「ペパーミント〜」で起用したソル・ギョングとムン・ソリをそのまま使って製作した本作は、男は前科3犯、女は脳性麻痺の障害者という、いわゆる「世間から疎外されている」キワモノ同士のピュアな恋愛を描く意欲作。
・・・というフレコミで見たんですがネ。 ノッケから書いちゃいますけど、ぴよは「感動した」とか「泣けた」とか「ジーンとした」という感想は持たなかった。 はっきり言って「悲しくて苦しくて目を覆いたくなる作品」という印象だったんだけどネ。
公式HPや宣伝コピー等のあらすじを読むと、出所したばかりのジョンドゥが最初に脳性麻痺のコンジュにアプローチをかけるくだりが、「彼女に興味を持ったジョンドゥが行き過ぎた行動から云々・・」と書かれているんだけど、ぴよが見た限りではジョンドゥがとった行動は「出所したばかりで性欲を満たしたいジョンドゥが、女なら誰でもいいと抵抗の出来ない脳性麻痺のコンジュを強姦しようとした」という風にしか見えなかった。
少なくとも、仮にジョンドゥが単にコンジュを「1人の女性」として興味を覚えた末の行動だったとしても、コンジュ側からしてみれば「アタシが脳性麻痺で無抵抗なのをいい事に、犯そうとしたでしょ!」としか思えない状態だったとぴよは思う。 (ぴよがコンジュの立場だったらそう思う)
ぴよが悲しいと思ったのは、この後のコンジュの行動だ。 あたかも強姦まがい(ぴよ的に見れば明らかな強姦未遂)の行為を受けた後、このコンジュという脳性麻痺の女性は、自分を犯そうとしたジョンドゥに自ら連絡を取るのだ。 彼女は強姦まがいの事をされたにも関わらず、それが生まれて初めて自分の事を「1人の大人の女性」として扱ってくれた行為だった事を嬉しく思っているのだ。余りにも悲し過ぎるではないか・・・
それはこの映画のクライマックス、ジョンドゥとコンジュの愛の結実シーン以降に益々悲しい色を濃くして行く。 2人にとって自然に愛し合った結果が、世間から見れば「普通では到底ヤる気も起きないよーな女を犯した変態卑劣漢」としてジョンドゥは扱われるハメになるのだ。
この2人の愛がピュアだったかどーかという問題よりも、彼ら(と言うよりもコンジュという脳性麻痺の女性)に対する周囲の不当な差別と偏見が余りに悲し過ぎて、ぴよは見ていて不快になる程だった。
それだけコンジュ役を演じたムン・ソリが熱演していたという事なんだと思うんだけど。 本当に彼女はこの難しい役ドコロを体当たりで演じていたと思います。作中コンジュが「もし自分が健常者だったら」という空想をするシーンが何度も出て来るんだけど、健常者のコンジュは実に愛らしい美女なんですよ。 その愛らしい美女が実際はこの悲劇的な状態なだけに・・・
余りにリアル過ぎて、ぴよには「何て悲しい話なんだろう」としか思えなかったんだけど。 ・・・役者の迫真の演技ですっかりナーバスになっちまったさ。ウマ過ぎる演技も問題アリって事なんですかね?(苦笑)
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