監督:トミー・ヴィガンド 出演:ウルリヒ・ノエテン セバスチャン・コッホ ハウケ・ディーカンフ、他 おすすめ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 ライプチヒにある少年合唱団が有名な寄宿学校へ入ることになったヨナタン。新しい学校に馴染めるか不安だったが、ベク先生はとても優しいし、寄宿舎の同室の仲間4人はみんないいヤツばかり、ヨナタンはすっかり学校に馴染んだ。 クリスマスが近付き、恒例のクリスマス劇の演目を何にするか迷っていたヨナタン達5人は、自分達の秘密の隠れ家でたまたま見つけた「飛ぶ教室」という台本に心奪われ、早速これを上演しようと練習を始めた。 ところが、練習風景を見ていたベク先生が突然怒り出し、「飛ぶ教室だけはダメだ」と言うのだ・・・
【感想】 ドイツの国民的作家エーリヒ・ケストナー著の児童小説の映画化。 製作プロデューサーは『点子ちゃんとアントン』、『エーミールと探偵たち』で既に成功を収めているウッシー・ライヒとペーター・ツェンクのコンビ。これらの2作品もケストナー氏の小説の映画化だそうです。 本作「飛ぶ教室」の原作は第二次世界大戦前の1932年に書かれていますが、今回映画化に当たり設定を現代に変えて、より観客に馴染み易いように工夫がされています。
時代が昔だろうが今だろうが、思春期の子供の苦悩や葛藤、友情や勇気・正義の物差しというのは、洋の東西を問わず変わらないだろう(変わっていては欲しくない)と思う。 この作品の中に出て来る大人達は、ぴよが子供時代に「こんな大人がいてくれたら」と思っていたそのままの人達。 子供の失敗を頭ごなしに叱らず、まず子供達の言葉に耳を傾け、何が正義なのかを見誤らないで諭しながらも、きちんと子供達を正しい方向に導いてくれる。もしこの映画に出て来るような先生ばかりが学校にいてくれたら、今頃ぴよはうんと高潔で誇り高く慈悲深い人間に成長していた事でしょう・・・(をい)
子供達のキャラクターも、彼らのエピソード実にほのぼのしていて好感が持てる。 タイトルの「飛ぶ教室」の台本でミュージカル劇をやる、というネタは映画中盤に入ってようやく出て来るんだけど、それまでに通いの生徒と寄宿生の対立だったり、隠れ家で出会った大人との交流だったり、様々なエピソードを繋ぎながらクライマックスへの伏線を上手に見せている。
映画全体の展開が割と淡々とゆる〜い感じで流れているんだけど、どのエピソードも自分の子供時代に照らし合わせて、スクリーンを見ながら一緒に胸を痛めたり共感したり懐かしんだりしながら、いつの間にか少年達の生き生きした表情の虜になっちゃってました。
「飛ぶ教室」の台本にまつわるベク先生のエピソードは、1932年原作発表時にはベルリンの壁がなかったので、今回映画化に当たり差し入れたオリジナルのネタなんだと思うけど、これはかなり効果的に使われていたなぁと思う。 逆に言うと、原作ではこの辺りのシーンはどういう設定になってたのか気になりますネ。
正直言って、少年達の日常をただ淡々とエピソードを繋いで見せているだけで、本当だったらそんなに面白い映画になりそうにもない話なんだけど(無茶苦茶言ってるぅ〜)、とにかく見てて気持ちのいい映画なんですよ。
心が温かくなって、優しい気持ちになれる・・・本当にステキな映画です。
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