監督:メノ・メイエス 出演:ジョン・キューザック ノア・テイラー リリー・ソビエスキー、他 オススメ度:☆☆☆−
【あらすじ】 1918年、第一次世界大戦に大敗したドイツ・ミュンヘン。戦場で右腕を失った裕福なユダヤ人マックス・ロスマンは鉄工所跡地に画廊を開いた。ある日ひょんな偶然でポートフォリオを抱えた復員兵の青年に出会った。その青年こそ若き日のアドルフ・ヒトラーだったのだ。 ロスマンとヒトラーは奇妙な友情関係を結ぶようになる。ところが貧乏なヒトラーは、生活の為に軍の宣伝演説をするようになった。ヒトラーの言動に不安を感じたロスマンはもっと絵に打ち込むようにヒトラーを諭すのだが・・・
【感想】 「カラー・パープル」や「インディ・ジョーンズ」シリーズの脚本家で知られるメノ・メイエスの初監督作品。 この映画には製作段階から困難が付きまとい、ヒトラーを題材に取り上げるという事で資金集めに難航し、主演のジョン・キューザックがノーギャラで出るという荒業をこなした事で、何とか製作に漕ぎ着けたんだそーですわ。 しかも、日本公開に合わせて渋谷の映画館でヒトラーの描いた絵画を展示する予定だったのが、世界中から問い合わせが殺到し急遽取り止めになったとか。今もアドルフ・ヒトラーという人物は世界中を震撼させてますね。
ヒトラーが若かりし頃画家を目指していたというのは余りに有名ですね。彼は結局開花する事のなかった自分の才能と芸術の方向性に固執するあまり「退廃芸術展」を開催したというのも、歴史を勉強した人なら誰でも知っているでしょう。 映画中にも、後のヒトラーの「退廃芸術論」を示唆するようなくだりがあります。
この映画のスゴイところは、この「最も映画の題材として扱うのはタブー」と誰もが思うアドルフ・ヒトラーを、実名で堂々と登場させている点。更に彼の軍人としての頭角を現す前、芸術家を目指す純粋な青年時代にスポットを当てるという点だとぴよは思います・・・これだけ新鮮なアプローチの作品なら、誰だって興味持つよねぇ。
まず目を惹くのが、その映像の決め細やかで美しいトコロ。 映画中、部屋の様子のカットインやカメラを引いて俯瞰するシーン等、非常に手の込んだ作りになっていて、1つ1つの小さなショットがそのまま1枚の絵画のような美しさです。(実際にそれをかなり意識して撮影されていると思う) シーンの1つ1つが、フェルメールだったり、セザンヌだったり、ドガだったり、様々な巨匠達の絵画を彷彿させます。
ところが、映画を見ていても何かしっくり来ません。(^_^;) 何がしっくり来ないのかなぁ・・・と思って考えていたんだけど、根本的にこの映画を見に来る人は、この映画のタイトル「アドルフの画集」に惹かれて劇場にやって来ると思うんですよね。つーか、ぴよはそーだったのさ(苦笑) 映画に期待するモノが「アドルフ・ヒトラーの青年時代」という所に力点が置かれていたんですよ。
しかしながら、この映画の原題は「Max」 本来この作品が見せたいモノはヒトラーの青年時代よりも、ヒトラーと交流のあったユダヤ人画商マックス・ロスマンの方だったんだろうと推察する訳です。実際映画中、ロスマンの描写の方が決め細やかだったように思いますし、ヒトラーの内面の描写というのを、映画中から余り感じられなかったんだよね。
ヒトラーはユダヤ人をバッシングしながらも、ユダヤ人画商ロスマンの言葉を信じて彼と交流を交わす。 自分の才能を見出してくれるこのユダヤ人を、ヒトラーは実際のトコロどう思っていたのでしょうか?映画を見ててもヒトラーという人のアイデンティティが、ぴよには見えなかったのよね。
「で?アンタはユダヤ人を排除したいんだよね?それで自分の絵をユダヤ人に託すってどーなの?」
・・・まあ、実際のヒトラーもこんな混乱した男だったのかもしれませんし、この映画の話が事実を元にしているのか、それとも全くの虚構なのかぴよは知りませんので判断付かないんですけどねぇ。 クライマックスのヒトラーが演説する様子とロスマンが祈りを捧げるシーンを交互に差し挟む辺りも、何を意図しているのかがぴよにはよく理解出来なかったんですわ。(>_<)
で、結局この映画の主題って何だったんだろ???(をいぃ〜)
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