監督:佐々部清 出演:寺尾 聰 原田美枝子 柴田恭兵、他 オススメ度:☆☆☆
【あらすじ】 元敏腕捜査員として知られた梶総一郎が警察に出頭して来た。3日前にアルツハイマーだった妻を殺害したと言うのだ。取り調べを進める内に、妻殺害後自首するまでの空白の2日間の梶の足取りが問題になって来た。黙秘を続ける梶だが、どうやら新宿歌舞伎町に行っていた事がわかったのだ。 あんなに愛していたはずの妻を何故殺害し、そして何故その妻を残して梶は新宿まで行ったのか・・・
【感想】 30万部を越す大ベストセラーになった横山秀夫氏の同名小説の映画化。 この原作本は直木賞の選考を巡り「オチの重要な部分が現実に有り得ない設定だ」という事で問題になり、後に喧々諤々の大騒ぎになったので知っている方も多いでしょう。 ぴよは原作未読だったのですが、この「直木賞問題」のニュースをネットで色々見ている内に、オチが書いてあるサイトをたままた見つけて読んでしまったので、オチだけは判っちゃってたんですけどね。
芸達者な役者をふんだんに起用して、なかなか「泣かせ」な作りになっています。 ぴよは「絶対に泣いてやるもんかー!」と頑張って見てたんですが(何もそこまで気張らなくても・・・苦笑)、クライマックスの寺尾氏演じる梶の独白には、思わずポロッと来ちゃいましたねぇ。ウマ過ぎますわ。 つーか、寺尾氏の顔って卑怯だと思うんだよなー。すげー善人そうで、尚且つ泣きそうな顔してんだもん(笑)
原作をきちんと読んでいないので、映画内のエピソードと原作がどれくらい違ったり減らしたりしてあるのか判らないのですが、少々盛り込み過ぎな感が否めないです。
取り調べをした刑事、検察、弁護士、事件を担当している新聞記者、そして裁判官。それぞれこの事件に関わった人達のエピソードをまんべんなく見せてくれるので(つーか、見せてくれ過ぎるので)、どうしても展開がぬるくテンポが悪くなっていると思う。もっと言うと、映画途中から「誰が主人公やねん」って思っちゃう。(^_^;)
それにしても、吉岡秀隆クンが演じた裁判官。全然合ってなかったな〜!(をい) この裁判官のエピソード、もしかしたら全部取っ払っちゃってもよかったかも? それと、鶴田真由ちゃんの演じた新聞記者。上司と不倫してて、その上司と本社栄転を目論んでるらしいですが、何か違和感があるんだよなぁー。彼女の個人的事情は差し入れなくてもよかったかも?
1番の問題は・・・ 原作ではどこまで裁判シーンで空白の2日間の理由についてつまびらかにされているのか知りませんが、少なくともこの映画の作りは先の「直木賞問題」に絡む重大なオチに触れずに進んでいるので、空白の2日間の意味と、何故梶が自殺しなかったのか?という1番肝心な部分が説明不足で判りにくくなっちゃってます。
もしかしたら、敢えて問題になった部分に直接触れないように作ったのかもしれません(その可能性大だな) でも結果的にその部分をきちんと表現しなかったせいで「何となく寺尾氏の泣きの演技につられて泣かされちゃったんだけど、結局何で自殺しなかったの?」という「超・消化不良状態」になっちゃいました。
現実には有り得ない設定だったとしてもいいじゃないか!とぴよは思う。 それよりも、その「問題の箇所」を敢えて避ける事で作品の質を落としてしまう事の方がよっぽど罪だと思う。 原作者の横山氏だって、あのオチの部分にはきちんと触れて表現して欲しかったのではないだろうか?
きっと原作は素晴らしい作品なんだろうと思いますね。機会があったら是非読んでみたいです。
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