監督:パトリス・ルコント 出演:ミシェル・ブラン サンドリーヌ・ボネール リュック・テュイリエ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 ある殺人事件の容疑者として疑われた、強制猥褻罪の前科がる仕立て屋のイール。孤独な彼は余りの潔癖症と人間嫌いにより周囲の人々に嫌われており、売春宿通いと得意のボーリングの腕を披露して小銭を稼ぐ日々を送っていた。そんな彼の生活に変化が起きていたのだ。たまたま自宅の向かいのアパートに住むアリスの部屋が丸見えなのに気付いたイールは、毎夜彼女の様子を盗み見、そして彼女に恋焦がれて行くようになったのだ。 ところがある夜、アリスが自分を覗き見しているイールの存在に気付いてしまった・・・
【感想】 以前からDVDショップやレンタル屋でタイトルだけは見かけていて、異常に気になっていた作品。 過去見た映画の中でも「タイトルに惹かれて」という動機で見た作品で、特に印象に残っていて、尚且つお気に入りの映画の1つに「髪結いの亭主」という作品があるのですが、この「仕立て屋の恋」も髪結いの亭主のメガホンを取ったルコント監督作品でした。(見るまでしらなかった) どーやらぴよは、ルコント監督の作品のタイトルが好きらしい(笑)
この作品は「髪結いの亭主」よりも前(1989年作・日本公開1992年)に作られた作品なんだそーですが、全く古さを感じさせない瑞々しい映像に、ぴよは冒頭から骨抜き状態になっちゃいましたね♪
はっきり言ってかなり感じ悪い・・・つーか、勝手に覗き見して勝手に相手に恋しちゃってる「控えめなストーカー」ちっくなオヤジの恋の顛末の話なんですけど、見てて何故だかイールの気持ちも、そして覗かれてた立場のアリスの行動や気持ちも妙に「こういう気持ち、判るなぁ〜」って思えちゃったんだよな。
あ。別にぴよは覗きの趣味もなければ露悪趣味もないし、ましてや犯罪に荷担した事もないんですけどネ(苦笑)
本当に切ないんですよ。イールという男が。 冷静に考えれば、思いっきり「社会不適合系」の感じ悪いおやじなんだけど、見せ方がうまいのか役者の演技がいいのか、映画を見ている内にイールの恋愛の形がさも「究極の純粋な恋愛の表現」のように感じてしまう。
そして、アリスの取った行動も何故か自然に納得出来てしまった。 この映画を見た大半の人(特に男性)は、アリスという女性の行動を激しく嫌悪するでしょうけど、ぴよはかなり彼女に同感しちゃったんだよね。
自分の生活を覗き見されていたと知ってご機嫌なヤツはいない。 しかしながら、覗き見していたヤツの顔を知ってしまったからには「一体この人どんな人なのかしら?」くらいの興味は持っても当然だと思うし、ぴよがアリスの立場でも、自分の生活を覗き見していたヤツがどんなヤツなのか確かめてみたくなるよーな気がするんだ。 (この映画の場合はそれ以外に、イールに会って確かめなければいけない重要な理由があるんだけどね)
で、実際に会って見ると案外悪い人でもなさそうで。しかも相手が明らかに自分に骨抜き状態になってる(自分の言いなり)と判れば、ちょっと浮き足立っちゃっても仕方ないよな、なんてナ♪(笑) アリスが「私は同時に2人の人が愛せるのよ!」と語るくだりが、それを物語ってるぢゃーないか。
でも本当に守りたいのは恋人なのよね。これもよく判るわ。 だから、クライマックスでアリスが祈るような顔でイールを伺い見た複雑な心境もぴよには痛い程判ったし、裏切られたイールが彼女の顔を見て言ったセリフを聞いた時は、本当に本当に切なくて泣きたくなった。
「笑うだろうが、君を少しも恨んでいないよ。ただ切ないだけだ。でも構わない。君が喜びをくれた。」
この映画の唯一の難点は、そのラストだと思う。 クライマックスの上記のセリフの後に取ったイールの行動は、いささか生臭過ぎて興をそがれたし、その後の展開は全く不必要だったんじゃないかと思うんだよね。
散々切ない思いをさせられたのに最後はかなりシニカルだったのが、余りに惜しかった・・・
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