2004年01月19日(月) |
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア |
監督:トーマス・ヤーン 出演:ティル・シュヴァイガー ヤン・ヨーゼフ・リーファース モーリッツ・ブライプトロイ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 脳腫瘍のマーティンと骨髄腫のルディ。共に末期で余命幾許もないと医師に宣告され、末期病棟の同室に入院して来た。病室に隠してあったテキーラを見つけて2人で飲んでいる内に「天国ではみんな海の話をするのだ。海を見た事のないヤツは仲間外れになってしまう」という話題になった。ところがルディは海を見た事がなかったのだ― 死ぬ前に海を見に行こうと病院の駐車場から車を盗んで「人生最後の冒険」に出かけたマーティンとルディ、ところがこの車はギャングの所有車で、トランクには大金が入っていたのだ。
【感想】 1997年ドイツ作品。日本での公開は1999年だった模様?公式HPを見る限り名古屋では公開していなかったようです。 タイトルの「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア -Knockin'n on Heaven's Door-」はロックの神様ボブ・デュランが1973年に発表した同名タイトルの楽曲から取っているようです。もちろん映画のラストを飾るナンバーはこの曲。 ただしボブ本人の声ではなく、ドイツの人気バンド「SELIG(ゼーリッヒ)」がカバーしているそうです。
話は末期ガン患者2人によるロードムービー系+アクション&ギャグの、最終的にはヒューマンに落ち着くといったトコロか・・・って書くと何やらごちゃごちゃして奇妙な感じがしますが。
これがかなり面白いです!
まず主役の2人、マーティンとルディのでこぼこコンビが非常に息が合っている。 マッチョで粗暴なマーティンと、線が細くナーバスなルディ。お互い決して相容れない、本来なら絶対に仲良くなれそうにもない2人が、死を目前にして破れかぶれの旅に出る事によって、次第に奇妙な連帯感と友情を交わす。 ここの辺りの空気感が絶妙で、見ている観客も映画が進むにつれて2人に妙な愛着が湧いて来るから不思議です。
脇役のマヌケなギャング2人組のキャラクターも気が利いているし、マーティンとルディの旅に絡む全てのキャラクターが、実に活き活きとしていて彼らの「最後の冒険」をより引き立ててくれている。
ギャングと丁々発止したり、警察に囲まれて殺伐とするハズのシーン・・・ハラハラさせられてもどんな窮地に立たされてもコイツらだったら大丈夫♪みたいな妙な安心感とほのぼの感が漂い、観客を裏切らないマヌケな逃げっぷりも何だかスタイリッシュでカッコいい♪
映画全編を通してハリウッド映画の影響を色濃く受けていますが、この作品はそれを恥かしいなんて思っていない。むしろハリウッド映画のいい部分はじゃんじゃんパクってやれ!という前向きな姿勢でどんどん取り入れているのが非常に好感が持てます。 どうも最近「ハリウッド映画を礼賛するよーなヤツは映画を判ってない」的風潮を感じますが、この監督さんはインタビューで堂々と「アメリカ映画大好き!かっぱらえるものは全部かっぱらってやるんだ♪」と宣言しちゃってます。 監督さんの柔軟な姿勢が、この映画を非常に楽しいモノに出来た理由の一つになっているだろうと思う。 本国でもこの点は評価が高く、この映画によって今まで「格調高く芸術性は高いが面白味に今1つ欠ける」というイメージが先行していたドイツ映画に、「娯楽」という新しい流れが作られたと言われているそーだ。
散々楽しませてくれて、最後はやっぱりホロリと来てしまう。 マーティンとルディのでこぼこコンビ、2人のシルエットが切なく、甘く、そして見る者をひたひたと癒す・・・
生命は海から生まれ、そして海に帰る――そんな言葉を癒された心で実感出来る秀作。
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