2004年01月13日(火) |
アザー・ファイナル -THE OTHER FINAL- |
監督:ヨハン・クレイマー 出演:ディニッシュ・チェトリ オットリー・ラボーデ パサン・ツェリン、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 2002年6月30日、世界中が横浜国際総合競技場で熱狂の声を上げた――FIFAワールドカップサッカー決勝戦。正にその決勝戦の当日、アジアの小国ブータンで「もう1つの決勝戦」が行われていたのを知っている人は多いだろう。FIFA公式ランキング203ヶ国中、202位のブータンvs203位のモントセラトが戦う「世界一の最下位決定戦」だ。
【感想】 ぴよはとりたてて熱狂的なサッカーファンという訳ではありませんが、先の日韓同時開催のワールドカップはそりゃー盛り上がりましたよね。サッカー選手の名前なんてベッカムと中田くらいしか知らないよーなヤツ、サッカーのルールもロクに知らないヤツも、あの期間中はみんな「にわかサッカーおたく」になってTVにクギ付けになりましたね。
さて、 このワールドサッカーの決勝戦の当日にブータンで「世界最下位決定戦」が行われていた事くらいは、ぴよもTVニュースで見た記憶があります。 「世界最下位を決めるなんて面白いよね」ってんで、結構マスコミでも取り上げられましたが、ワールドカップが終わってしまえばそんな話題もうたかたの夢。みんなの興味は薄れ、その後を語る者は誰もいなかったと思う。
この映画は、あの「最下位決定戦」を追って、ブータンとモントセラトという2つの国のサッカー事情や国の事情、サッカーが彼ら小国の人達にもたらした物、そしてサッカーの意義、ワールドカップの意義までを問うドキュメンタリー作品。
ブータンはその国土のほとんどが高山という過酷な状況だし、モントセラトはカリブ海に浮かぶ小さな島で、火山活動により国土のほとんどが火山灰に覆われて大被害を被り、サッカースタジアムも潰れてしまったという気の毒な国だ。 そんな不遇な土地に住む彼らだが、サッカーに対する情熱は世界ランキング上位に名を連ねる大国と何ら遜色はない。
何ら遜色がないどころか、サッカーをプレイして国際試合に出場する事、そして他の国々の人達とプレイする事の素晴らしさと本当の意義を、最も理解している人達なのかもしれない。
彼らは私達に語りかける。サッカーをプレイするという事で、言葉の通じない国の人達と、どれだけ素晴らしいコミュニケーションが取れるかという事を。スポーツマンシップにのっとってプレイする事で、お互いがお互いの国を尊重し合い、お互いがどれだけ尊敬の念を持つ事が出来るかという事を。
覚えているだろうか? あのワールドサッカー期間中、対戦相手国を激しく罵倒し合う醜い様がTVで映し出されて辟易した事を。 勝敗だけに踊らされて、したり顔でウンチクを垂れるエセ・サッカー評論家達の得意げな顔を。
ブータンもモントセラトも、そんな醜い所からかけ離れている。 「お互いを知り、お互いを尊敬し合う事が出来る素晴らしいスポーツ、それがサッカーなのだ」という、スポーツの最も崇高な原点だけを見つめて、お互いがフェアにプレイし、そしてお互いの肩を叩きあいながら相手のプレイを褒め称えるのだ。
映画中、ずっと真っ白なサッカーボールが画面を行き来する。 この真っ白なサッカーボールには2つの意味が込められているのだそーだ。 1つは、この「最下位決定戦」はスポンサー名やメーカー名まみれのユニフォームやスタジアムといった商業的側面の強い現代サッカーとは意を異なる、非営利なプロジェクトなんだ、という意思表明。 そしてもう1つは、スポーツの本質とは勝敗やレベル、高度な道具ではなく、純粋に楽しむ事が大切なんだ、という事。
決して上手とは言い難い彼らのプレイする姿に、誰もが胸を熱くする。 試合の最後、アナウンサーが「ブータンでもモントセラトでもない。これはサッカーの勝利だ!」と語るシーンは印象的。
この映画をサッカーを愛する全ての人、サッカーをプレイする全ての人、そしてFIFAに関わる全ての人に見てもらいたい。
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