監督:マジッド・マジディ 出演:ザーラ・バーラミ ホセイン・アベディニ モハマド・アミル・ナジ、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 テヘランの工事現場で軽作業の仕事をする「ラティフ」は、怪我をして働けなくなったアフガン難民の代わりに仕事に来た彼の息子「ラーマト」に、自分の仕事を奪われてしまい、腹いせにラーマトに様々な嫌がらせをするようになった。 ところがある日偶然ラティフ青年は見てしまったのだ。憎いハズのラーマトが、実は女の子であった事を。それからラティフの様子が一変する・・・この気の毒なアフガン少女を、何とかして救いたいと思うようになったのだ。
【感想】 イラン映画だってさ!イラン映画なんて初めて見たかもしんない・・・でもこの映画、すっごくメッセージ性が強くて、正直言ってぴよは中東情勢について勉強不足なせいで、この監督が意図する事の半分も汲み取れなかったんじゃないかと思う。
アフガニスタンという国は、30年以上もの長きに渡り内外の戦乱・迫害が続いており、また近年のタリバンによる過酷な統治の為、アフガン人はやむなく故郷を離れて近隣の国に難民として移住している。舞台になるイランにも実に300万人という数のアフガン人が移り住んでいるそうだ。
そんな気の毒なアフガン人だが、近隣諸国もまた貧しい国が多く、どこの国でもロクな職にもありつけず、非合法の過酷な肉体労働などをして日銭を稼ぐのがやっとの状況・・この映画の主人公「ラティフ」が出会う少女もまた、そうしたアフガン難民の1人で、性別を偽ってまで働かなければ家族は生活していけないのだ。
ラーマト少年が実は少女だったと知ってからのラティフ青年の行動は、それまでと手のひらを返したような奮闘振りで、正直言って突然人が変わったように少女に傾倒していくラティフの心理状態には、ちょっと着いて行けなかったぴよですが(苦笑)それでもラティフの「無償の愛」は、そのまま監督のアフガン人に対する思い、そしてイラン人だって彼らを助けたいんだ、平和な世の中を切望しているんだ・・というメッセージ性を強く感じた。
映画中、ラティフも少女も鳩に何度もエサをあげて可愛がるシーンがある。鳩は「平和」の象徴。 そして「ラーマト少年」の本当の名前は「バラン」というんだけど、バランとはペルシャ語で「雨」という意味だそうだ。この地で春の訪れを象徴する「雨」という名前を持つこの少女の、ラストシーンで見せる微笑は、アフガンの平和を祈り明るい未来を望む(そしてきっと明るい未来があって欲しいという)希望の光を感じさせてくれた。
ラティフ青年は、自分の思いを決して少女にぶつけたりはしない。でもこっそり見つめ、そして自分が出来うる限りの事をしようと遁走する・・それが少女との永遠の別れに繋がってしまうとしても。
この映画をイランの人やアフガンの人が見たら、ぴよとは全く違った感想を持つのかもしれない。 中東情勢に疎いぴよには、ラティフ青年の愛の形になかなか共感出来なかったし、アフガン人の泣き叫ぶ声が実感として受け取れなかった・・・でも、今この時代、この映画を見て、「所詮日本からは遠く、関係ない国の事だ」という考えを捨てて、もっともっとこの地に目を向け、今世界がどうなっているかを知らなければ、一人一人が考えなければ・・と思わされた。
平和ボケしている日本人に、足りない何かを考えさせられる映画。 もっと沢山の日本人に、そしてアメリカ人にも見て欲しい。
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