監督:塚本晋也 出演:黒沢あすか 神足裕司 塚本晋也 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 6月、しの降る雨の続く東京で「心の健康センター相談室」で相談員を勤める「りん子」は、ある日自分の自慰行為やあられもない姿を隠し撮りされた写真を送り付けられた。相手は自分が受けた相談者の自殺志願者だった男・・・夫は潔癖症でセックスレス状態。鬱積した思いを自慰行為や変身願望にふける事で慰めていたりん子は、写真を見て戦慄するが・・・
【感想】 並居る強豪を出し抜き、今年度のベネチア国際映画祭・審査員特別大賞を受賞した塚本監督の新作。
テーマは正に塚本監督らしい「都市と肉体」 青いスタンダード・サイズの画面に、雨が降り続き、変態的な性愛描写と肉体的苦痛と性的オルガスムとが刻み込まれていく・・って、まるまる公式HPの謳い文句をコピりましたけどネ、ぴよは見ていてそんなに「いやらしい」感じしなかったです。
りん子がたまたま電話相談室で受けた一本の電話は、ガンに冒された自殺志願者だった。 余命いくばくもなく、生きる希望などもはや持つ事すら出来なかった男が、りん子の「自分の本当にしたかった事、見つけましょうよ。やってみましょうよ」という励ましがきっかけで、ストーカーに転じて行く・・ってのは、実際こういう電話相談室の仕事してる人が見たら相当怖い展開なんじゃないかと思うんだけど、ただの「変態ストーカー」という感じじゃないんだよな。
話は「都市に巣食う病んだ心→ストーカー」という、一見ありがちなゴチック・ホラーになりそーなネタなんだけど、こういう表現方法を取ったというだけで、実際見て感じるのは「鬱屈した自我の解放と再生」 映画の予告や公式HPを見るとエロティシズムだけが煽られている感がありますが、心を解放してからのりん子の倒錯した自慰行為のシーンは、むしろ清潔感すら感じた。 彼女の目、表情、何もかもが実に瑞々しく生気を取り戻して行く様子が、とても爽やかな感じすらしたよ。
ストーカー役(この映画である意味りん子とダブル主演と言える)を塚本監督自らが演じていますが、この方役者としても相当イケてますわ♪それに塚本監督の声がすっごくいい♪ 巷に溢れる身勝手で独りよがりなストーカーってんじゃなくて、彼の撮る写真にはりん子への溢れる愛がある。りん子の体を真剣に案じ、りん子が望む本当の幸せを、りん子が望んだような形で叶えてあげようという、ある意味「無償の愛」を感じる。それが見ててすっごくカッコいいんだ。 ・・こんな書き方すると、世間の勘違いストーカー諸氏を擁護してるよーな誤解をされそうで怖いけど(苦笑)
シュールな映像と展開、倒錯した世界自体は・・・ぴよにはよく理解出来なかったけど、でも見てて不快な感じはしない。 常に雨が降り続く画面は、精神のCLOSE感と、それから心の汚れを洗い流す清冽な力と、両方を感じる。 なかなか面白い。ウマい。・・・この映画にハマるかハマらないかは、本当に個人の趣味の問題だけ?(笑)
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