監督:ヤン・フジェベイク 出演:ボレスラフ・ポリーフカ アンナ・シィシェコヴァー ヤロスラフ・ドゥシェク、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 第二次世界大戦下、チェコの小さな田舎町にもナチの影が忍び寄りユダヤ人狩りが行われていた。 そんな町の子供のいない夫婦「ヨゼフ」と「マリエ」の元にかつてヨゼフが雇われていたユダヤ人社長の息子「ダヴィト」がポーランドの収容所から命からがら逃げて転がり込んで来た。成り行きでダヴィトをかくまうヨゼフ夫婦。 戦争激化の中、ダヴィトをかくまう為にヨゼフ夫婦の運命は翻弄されていく・・・
【感想】 チェコという国も、そしてこの国の歴史もぴよはほとんど知らないのね。 ただ第二次世界大戦中はドイツが占領して激しいユダヤ人狩りが行われていたというくらいの事は知ってる程度。 そしてこの映画は正にそんな辛く悲しい時代を何とかして生き延びようとしたチェコ人夫婦の涙ぐましい努力と運命に翻弄される姿が、実に滑稽で、それでいて切なく哀しく綴られた物語です。
映画冒頭で1937年〜1941年までを2年刻みで何気ないエピソードを見せながらチェコの時代背景を観客に示して、この映画の本題に入るのが更に2年後の1943年。この作りはとても面白いし、チェコに馴染みのないぴよにもすんなり本ネタに食い付けるよーになってます。
かつては「ヨゼフ」と一緒にユダヤ人に雇われていたドイツ系チェコ人「ホルスト」は、ドイツが台頭して来ると進んでナチに擦り寄ってユダヤ人狩りのお手伝いをしていたり、ナチスの事は忌み嫌っているものの自分と家族の保身の為に収容所から逃げて来て助けを求める「ダヴィト」を冷たく突き放す隣人がいたり・・・じゃあダヴィトをかくまったヨゼフ夫婦が聖者なのかと言えば、それもちょっと違う。 一晩ダヴィトを成り行きで自分の家に置いてしまった手前、今更ダヴィトを追い出した所で、もしダヴィトがナチスに捕まればそれまでどこにいたのか直ぐバレてしまう→自分達がユダヤ人をかくまった事がバレて自分達も殺されてしまう、という「やむを得ない事情」から戦争が終わるまでかくまうハメになってしまっただけ。 当時のチェコ人の複雑な心境だったり置かれた立場が実にリアルに、そしてシニカルに描かれています。
ダヴィトをかくまっている事を必死に隠さなければいけないヨゼフ夫婦の悲哀が滑稽で笑える! 映画中、悲しいハズの場面が滑稽に面白おかしく、そして笑っていい場面が切なく描かれていて、これは本当にあの時代の悲哀を経験したチェコ人の心境そのままの等身大の物語なんだろうと思わされて、特にラストのシーンはジーンとしたわ。
この映画、役名から想像付くと思うけど、
主人公ヨゼフ→ヨセフ ヨゼフの妻マリエ→マリア ユダヤ人ダヴィト→ダビデ
そして妻マリエは夫の子ではない子供をヨゼフの希望通り?に授かり・・・そう。聖書のエピソードをなぞらえるかのようにヨゼフ夫婦というのは「聖家族」を模しているんですよ。 だからと言って決して宗教臭いお説教染みた作りじゃなく、逆に聖書を模した作りだからこそこの映画にリアリティを出して、シニカルでいて哀しい笑いを誘う映画になったんじゃないだろうかと。
「いい人」「悪い人」という区別ではなく、人間というのは「いい面」と「悪い面」を併せ持つ悲しい生き物なのだと教えてくれる、この映画は隠れた名作だねー!チャンスがあったら是非沢山の人に見てもらいたいねぇ〜!
|