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■ 冬の朝に(最遊記)(江流と光明三蔵法師)。
十五夜から二月も過ぎれば、風に冬の刃が混じり始める。 日課でもある庭の掃き清めのため、身の丈ほどもある竹箒を手に少年が庭先へ降りてくる。金鳳花のような繊細な金髪が身ごなしに合わせて揺れた。 じきに、掃除の必要がなくなるだろう。曇天の空を目を細めて見上げながら、少年は身に纏う葉の大半が消えている山木と、来るべき冬を思った。 そしてふと視線を下ろしたとき、彼は意外なものを見ることになる。
「…師匠」 「おはようございます、江流」
早いですね。 そう微笑みながら告げた師に、少年は半ば呆れた。
「何やってるんですか、こんな寒いところで」 「いえね、冬だなあ、と」 「まだ秋ですよ。薄着でこんなところにいないで、早く中へ入って下さい。風邪でも引かれたら困ります」 「まあそう言わず」
師は物腰こそ柔らかでも頑として意思を変えない。いつものことだとわかっていたが、それでも少年は息を吐いた。
「冬には冬を味わう。それもいいものですよ?」 「…寒い中わざわざ出て来るのがですか?」
自分は絶対御免だと言いたげな弟子に師は柔和に笑む。
「あるべきものが、あるべき様にある。それを確かめる。冬の寒さを受け入れるからこそ、春のありがたみがわかるというものです」 「…………」
そうして師は空を見上げた。少年もそれに倣う。 曇天の冷たい空は無感動なほど何も変わらない。しかしこの冷たさが冬への始まりとなり、やがて来る春を待つ気持ちを生ませる。 少年は、師の言葉の意味を考えていた。 今はまだ寒さしか感じ取れない冬の朝。自分はまだ幼いのだと言われた気がした。けれど、そのうちこの朝にも意味を求めて受け止める日が来るのだろうか。この師のように。 そうなれたらいい。いつか、この人のようになれたら。 二人はただ黙って空を見ていた。
*************************** えーあーうー……気分転換? 最遊記です。 久々すぎてすっかり口調を忘れております江流さんと師匠。絶対どっか違う…。 やっぱりコミックス最初から読み直すべきだったか。 外伝読み直してたらなんかふと久々に書くかー、という気分になったのです。書いたっていううちに入らない短さですが。
2003年09月14日(日)
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