僕の、場所。
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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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分からない分からない

年末。
サービス業の彼女は今年も忙しいのだろうか。





何となく連絡を取ってみた去年。
数ヶ月前に交わされた「また会いたいね」を間に受けて。

一度だけ僕の前に現れてくれた今年。
おそらくあれは遠回しな絶縁宣言だろう。
僕を傷つけまいと優しい心で…。

きっと、きっと、もう来年は……







色んな物が壊れた。
もう二度と戻らないが、再生能力はある。
まったく別の物が生まれてくる。

壊れ、また新しくなり、そしてそれらを共にする空間。
すべては変わらない。
変わり続ける毎日は変わらない。


過去に足を引っ張られる事に慣れてしまった僕は
急に自由になっても困ってしまうだけだ。

ゆっくりとゆっくりと
地面を踏みしめて
羽ばたけないで

でも、それで良い。




心臓が16ビートを打ち、打ち、打ちのめされる。
張り詰めた弦は時に簡単に切れてしまう。

また、こんな日常を繰り返すのだ。






どうしてるかな、君は?

もうそれすら知りえなくなった僕を置いて
あの青空に羽ばたいて行ってしまったのかい?
天使のような笑顔、どこにしまっておけばいいのだろう。


一歩

その細い腕を取って泣いたこと、夢じゃない。
そっと撫でながら、それでも袖で涙を隠して。
こんなにかわいい子が、僕より年下の女の子が、
どうして苦しんだり泣いたり傷つけたりしなくちゃいけないんだろう。
僕だって判らないわけじゃない、それでもやっぱり。
どうしてこの子が。どうして。

なあ、こんな他人にわかる事が、どうして近い人間に分からないのだろう。

あなたが彼女を愛する以上に僕は彼女を大切に思う。
僕なら彼女を怖がらせたりしない。
泣かせたりしない。
一人になんてしない。
ひどい言葉を浴びせたりしない。
もっと、もっと、強く。





君の傷跡を撫でて少し怒ったこと、まだ覚えている。
それは僕が過ちに気づく前の話で。
どうしてなのか理解に苦しんだ。涙が止まらなかった。
やめてほしかった。
そんな悲しいことをしないでほしかった。

けれど
それは間違っていたらしくて

ただきっと感化されたと知れば君は嫌がるかもと理解を示せずにいた。
僕は立ち止まりただ見守った。
ひとり歩いていく君を、遠く小さくなっていく君を。
僕にとってそれはきっと必要なギセイだったのだろう。
だから今少し成長した僕が存在するのだし理解も深まった。
けれど、けれど、やっぱり。
やっぱり。





シンクロさせているわけじゃない。
代わりだなんて思ってない。

けれど、
一つ大きくなった僕は今も まだ何かを探しつづけている…。


どうでも良いのだが

朝、ではなく昼に目覚めると既にルームメートは出かけていた。
玄関を見れば奴の一番のお気に入りの靴が消えている。
コート掛けからは一番気合の入っていたコートが消えている。
おめでたい奴だと呟く俺には今日の予定はない。
ヒーターをつけずにパジャマのまま動き回れるほど、気温は低くないというのに。
面倒だから電話も無視しておいた。
昼間っから暇人こいてるなんて不名誉なことだ。
いや、別にそれは今日が基督さんの誕生日の前日だからでは無い。
そうだ、本来そんな物には目もくれずに業務に励むべきなのだ。
昨日、バイザーが倒れて仕事にならないから臨時休業だなどと連絡が来なければ、俺はお客様と自分の生活のために笑顔でせっせと働いているところなのだ。
断じて、暇で暇で仕方ないのではない。明日からの激務に備えて体力を温存しているのだ…。
かといって今日外出する気にもならない。
街へ行けば電気が無駄に消費され、見目麗しくもないカップルがあたかも皇帝皇后のように偉そうに闊歩しているに違いない。
そんな落ちこぼれた日本など目の当たりにしたくもない。
大体にして基督さんの誕生日は初夏あたりの筈じゃなかったのか。
こんな季節に馬小屋に置かれちゃさすがの基督さんだって死んでしまう。
そう、それよりも年末の準備をするべきだよな。俺はキリシタンではない。
そろそろ食材もなくなってきた。スーパーにでも行くべきだろう。
おせちなんて別に良いとして、俺は餅が食いたい、餅が。
それに年越し麺類の調達も必要だ。だいたい正月といえばカレーだ。
郷里の両親もそろそろうるさくなる頃だ、いつ帰ってくるのかと。
ついでにいつ嫁さんを貰ってくるのかと煩くもなる頃だ。本当に煩い。
まあ、兄貴が彼女と結婚するまでは俺に火の粉も飛んでこないだろう。
俺は独身気分を満喫する事にして、そうそう今日はどうせルームメイトも帰ってこないだろうから(女連れで帰ってきたら締め出してやる)美味い酒でも飲もう。
そうだそれがいい。
よし、美味い酒でも買いに行くか。


3秒前

敬愛する師の誘いを断って
尊敬する先輩の妨害を振り切って
二時間の遅刻だけど
ほら
君の前に現れただろう

ちらちらと雪の舞う夕暮れ
白から灰色に変わりゆく中で

不安な気持ちにさせてごめんな
だからそんな
大きな瞳から涙を零さないでくれよ
俺は
俺は

流れる黒髪 手袋したまま するりと撫で
1つの傘の下 寄り添って 囁いて
また 君の笑顔が見れるかい


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 僕の部屋は6畳一間だ。ただの学生なので大して良いアパートでもない。大学よりも附属特別図書館への利便性を優先した結果、バス路線も少ない変なところに借りてしまったが、まあそれなりに愛着のある部屋である。
「大学へは行ってるんですか?」
 アパートに着き、そこが本当に学生街というより住宅街の中だと知ったらしく、もっともな質問をカヤから受けたが、それには自信を持って答えられる。イエスだ。
「僕が行かなきゃならないのは週に一回だけだ。他の日はずっと図書館に居る。でも…」
「………」
「…でも、もう無意味かもな」
 喋りながら、安っぽい階段を上がる。ポケットから取り出した鍵でドアを開ける。手探りで明かりをつける。靴を脱ぐ。
 こんな何年も続けてきた動作さえ、きっと無意味な物になってしまう。この女の子に会って、僕はこの世界に違和感を覚えた。現実の何たるかを知ってしまったからだ…。
 カヤは、開いたドアの手前一歩下がったところで立ち止まっていた。また、僕の顔をじっと見つめる。
「あんまり綺麗じゃないけど、まあ、お嬢様、どうぞ」
 照れくさくなったのでわざと大げさに礼をして、セーラー服の女の子を招き入れた。
「…おじゃまします」



 正直、少しばかり緊張している。
 大学院生の自分、そして部屋に女の子。ぶっちゃけた話、可愛い子だ。
 久々に誰かの手料理を家で食べた僕は少なからず感動していた。
 しかし、これもまた正直な話、この子を相手にどうこうしようとは思わない。
 彼女が作ってくれた夕飯――まあ、ただの炒め物だが――は美味しく、僕の作り溜めしておいた煮物を彼女は誉めてくれた。そして今テレビを見ながらコタツでお茶を飲んでいたりする。
 これはしばらく忘れていた、団欒というもの。
「わあ、酷いニュースでしたね今の…」
「そうだなぁ…あれじゃ被害者も浮かばれないな」
 もしかして僕の探し物はカヤなんじゃないか…とさえ思える、この安堵感。不思議な少女だ。
「ところで、アキトさん。明日なんですが」
「え」
「何ですか?」
「いや……」
 団欒していたのに…。やはり、やはり、現実は僕を見つめているのか。なら僕は睨みつけてやろう。リモコンで、テレビの音量を少し下げた。手頃なBGMになる。
「私、実はこの町に来たのは1週間前です。でも、アキトさんは何年も住んでいますよね」
「4,5年かな」
 大学に入った頃から住み始めた町だ。一度引越し、独り身の気軽さであちこち歩き回りもした。今では近所のおばさま連中の中では好青年として認識されるに成功した。
「で、アキトさん。どこかココだ!っていうポイントはありませんか? …私は骨董屋さんなんかを主に探していたのですが…」
「骨董屋…ってことは、やっぱりあの扉の鍵を探した方が良いのか」
「そうですよ! 何言ってるんですか。扉が見つかっても鍵が無くっちゃ開きません」
 どうやら本人怒っているらしいが、湯飲みを両手で持っているのであまり迫力が無い。一生懸命な様子が可愛らしくもある。いや、贔屓目じゃないぞ決して…。
「鍵掛かってるとも限らないし、それに何なら力ずくでも開くさ」
「だめですっ、そんな野蛮な」
「野蛮って」
「ちゃんと…ちゃんと段階を踏まなきゃいけませんっ。そういうものなんです」
「………そうか」
 コタツに入ったったまま寝転がって腕を伸ばして本棚。一番下の地図を引っ張り出す。
 起き上がってそれを見せると、カヤは嬉しそうな顔をしてくれた。

 ……そうだ。あの扉を探し出して開ければいい。
 白い雲と透明な風と、そしてその向こうに。




「……じゃあ、明日はこの辺りでいいか? 一応僕の良く知ってる、少しおかしな区域だ」
「はいっ」
 色々書き込んで説明した地図を見ながら、カヤは元気よく返事をする。そして、それはまた僕に再認識させる。客観的に見ればどうなってもおかしくないこの状況を。
「カヤ…」
 明日の予定を組み、面白いテレビ番組も無く、そしてする事が無い。後は、寝るだけだ。何となく、どちらも風呂に入るとは言い出さなかった。初冬だし、一日くらいは、まあ良いだろう。
 そう、そして本当に後は寝るだけなのだ。
「何ですか?」
「えーと…どこで寝る? 一応布団なら」
「コタツで良いです、暖かいですし」
 新聞紙被って寝るのに比べれば遥かに良いです、なんて続けて笑いながら。ベッドに寝ころんで布団を被って寝ている僕は、何もいえない。
「…何ならおにーさんの胸の中で暖まるか?」
 掛け布団を捲って、布団をぽんぽん。悪い人っぽく笑ってみる。
「いえ、いいです」
 ……即答されてしまった。



「アキトさん、おやすみなさい」
 そして、カヤはセーラー服のままコタツで寝てしまった。
 僕は、なかなか眠りにつけなかったのだが。
 暗い部屋の中で誰かの寝息が聞こえてくるなんて、緊張以外の何者でもない。
 だが、色々あった今日はさすがに疲れていたようで、薄暗い空に鳥の声が聞こえる頃ようやく睡魔に襲われた。
 僕はそのまま、深い睡眠に引きずり込まれてしまった。




始めから
1つ前
1つ後


カット

泣かないが少年が一人
いつも元気に走り回っていました

太陽から生まれてきたような
本当に本当に優しい心と
誰かを愛する幸せを知っている子でした

だから

だから
誰も気付かなかったのです

少年は泣けないのです

「あなたと居ると楽しいわ」
「君は明るくて良い子だね」
「元気がいいね」
「いつも笑ってて、本当にかわいい」

少年は泣けないのです

「うん、僕はいつも笑っていたいよ」




泣くことを忘れてしまったのです





白い服の行列を見ても

真っ赤な液体を見ても

暗闇を知っていても

どうやって泣いていいのか忘れてしまったのです
笑い方は知っているけれど
泣き方は覚えていないのです

少年は思いつきました

じゃあ
赤い涙を流そう






笑って

笑って

笑いながら

冷えた刃を手に取るのです


届かないけれど

君が
君が
君が大事なんだよ



うるさい、そんな事判ってる解ってる



関係ないんだ


君が大事で仕方ないんだよ




どうか悲しんだりしないで
どうか傷ついたりしないで
どうか泣いたりしないで
どうか誰かに助けを求めて



君は強い子だ
僕も知ってる

けれど君は 時折ひどく不安定で
つい僕は腕を差し伸べたくなるんだよ
きっと
君はその腕を振り払うだろうけれど



君の隣や目の前が僕でなくても良い
ただ
君が心から笑顔で居られるのならば




どうかどうか
その繊細なガラスにヒビを入れたりしないで
補強剤の下には柔らかい綺麗な羽根が眠っているのだから



僕には まだ君が忘れられなくて


日暮れ前、街の一角。

雑貨屋に足を運ぶ人というのは、幸せだ。

雑貨に意識をやる事の出来る人。
雑貨を眺める余裕のある人。
雑貨を買う余裕のある人。
雑貨を並べておく心境の人。
雑貨を買ってプレゼントする相手のいる人。

こうしてレジに座っていると、
ついその人間模様を推測したくなる。

最近は男子高校生がちらほら見える。
彼女にプレゼントでもするのだろうか。

カップルで来る人たちもいる。
僕の仕入れた雑貨で彼らが幸せを分かち合えるなら、僕も幸せだ。

手頃な値段の、それでもデザインの素敵な指輪を買った人がいた。
ご自宅用ですかと訊ねると、少し迷ってからハイ、と答えた。
自分でラッピングするもまた楽しみだろう。

複数のクリスマスカードを買った人もいた。
明らかに一枚だけ差のつけられた上質なカードに微笑がもれる。

小さな子供を連れて、来年のカレンダーを買っていった人もいた。
カラフルで大きな数字のカレンダーは家庭に華を添えるだろうか。

最近入れたユニークな温度計を手にして値段を見て悩んだ表情をして、しばらく名残惜しそうに触りながらも何も買わない人もいる。
気に入ってもらえたようで僕は嬉しい。儲けにはならないけれど。

さて僕はどうしようか。
飼い犬に新しい首輪でも、買って帰ろうか。


暖かな枷

銀の
リング

きらきら

大きすぎた枷
すぐに抜けてしまうよ
ほら

ちゃんと
つなぎ止めておいてよ
眩しい 光で

君の元へ



すべては過去
君は
君たちは

もう手の届かない世界


愛玩哀願

この世界の中で
呼吸をする術を知らない人形は
ただ笑いながら椅子に座っている

女の子が駆け寄って抱きしめて
男の子が走ってきて放り投げて
お母さんが洗濯機に放り込み
猫が咥えて

それでも笑い続けるお人形

あなたに愛されたかっただけなのよ
そのために私は作られたのよ

笑顔の底に声が滲む
それでも人形はおしゃべりが出来ない



ある日ある時
不思議なお爺さんがステッキで
そっと頭を撫でてくれる

そうすればわたしは息が出来るのよ
きっと私はおしゃべりも出来るのよ
そう、きっとね

愛されるだけなんてつまらない
わたしもあなたを愛したい

希望の裏に祈りだけが響く
それでもお人形は呼吸が出来ない



未来なんてないの
人形は人形のまま
笑ったまま
おしゃべりの出来ないまま
わたしは朽ちてゆくの


さよなら

慣れているはずだった
いつもの挨拶だと思っていた
平気だった
別に何も思わなかった
それは仕方ないことで
素直に受け入れられていた

それが変わったのは
君と出会ったからだ

その一言で激しく動揺した
有効期限はいつまでだろうと
See you again なのか Good-bye なのか
深く深く響く君の声は
不安を掻き立て
残された夜に涙する

ひどく傷ついた君を
暖める事もかなわずに



今ひとたび
君の言葉
「さよなら」

打ちのめされる僕は
まだ
一人で


sea red

海辺は赫に染まっていた。

肌をさす冷えた海水に足首を飲み込ませ。

足の裏の砂も赫だった。

ただ風だけが穏やかで。

夕暮れ時の寂しさはいや増しに増し

咆哮を上げる。

誰も訪れることのない赤い世界に

波の音が絶え間なく。

大海に委ねることの出来ない愚かさよ。

更に一歩力強く、前に。


軽く

飛んでいってしまおう
どこまでも
空はこんなにも果てがないのだから


考察及び推測ならびに仮説の提案

僕の声は
声にならずに 溜息ひとつ

君の存在に触れたくて
まだ忘れられなくて
声が
手が
笑顔が
僕をこの世に繋ぎとめる

どうして

どうして僕は此処にいるのだろう

もしも

もしも消えたらどうなるのだろう

君に会えなくなるのだろう
君は泣いてくれるのだろうか

こうして僕の存在を問う僕は確かに存在している
君と同じ言語の
君と同じ統治体制の
君と同じ陸地に
君と同じ時代に存在している

それだけで僕の存在理由は充分では無いだろうか

凍える夜に
祈る


管理人ですが。

今日分かったのですが、どうやら僕のメールアドレスのうち一つ、masato@pub.toが無効になっていた、らしい。
(私信:雪子さん、貴女のお陰で気付きました。ありがとうございます(一礼)

pub.toのアドレスは当日記をコンテンツとして含むホームページ「狂気乱舞」で使っているものでして。

ごめんなさい……! あわわわわわ。

もしかすると、狂気乱舞からメールを送って下さった方なんて居られるんでしょうか。
ほとんどenpituさんからの来訪なので大丈夫かな、とも思っていますが。(有難う御座います)
下にありますメールフォームで使っているアドレス、masato_kan@anet.ne.jpは無事に連絡がつきますゆえ。

ともかくですね、えーと、以前に管理人にメールを送ったのに返事も何もないじゃないかナメてやがるのかテメーこの野郎、といった塩梅になっていましたら申し訳ありません。
いや、誰も使わないからアカウントが消えたのだから、それは無いのだろうか。
それでも可能性はありますので…。
そんな事態の方、宜しければ重ねてお送りください。管理人、頂いたメールには何らかの形で反応を返す人間ですので、何も反応がない場合には何らかのトラブルがあったと考えられます…。

それにしても、連絡のつかないメールアドレスを置いておくなど、言語道断ですね。
特にうちはBBSを置いていないので、メールが唯一の連絡手段となっていますのに。
迂闊でした。申し訳ありません。

2002年12月12日をもって、サイト内全ての管理人のメールアドレスをmasato_kan@anet.ne.jpに置き換えましたので、ご容赦を。
時々は、管 理人カンリニンではなくてカンマサトだっけ、と思い出してくださいませ(笑)。
実は僕自身も「かんりにん」と打ち込んで変換しているのですが。










余談ですが。

こうやって管理人だと名乗っている日記を除いて、すべてenpituさんの「文芸」ジャンルに帰属するものを書いています。
……少なくとも建前では。

僕の実体験を元にしたもの、友人や知人の話を元にしたもの、あるいは完全な独創、というのが主です。それらをミックスしたものもあります。

僕のプライバシー保護のため(腐ってやがる)、あとがきや解説めいたものは書かない事にしていますが、気になる方はどうぞ。




そしてenpituユーザーさんへ。(特にmy追加して下さっている奇特な方々へ)
ご存知でしょうがenpituでは一日に一つのテキストしか書けません。
なので僕はしばしば過去の日付で新しいテキストを追加しています。毎日更新しているわけでは決してないのに、過去の日付はほぼ埋まっているのはそのためです。
宜しければ時々覗いてやってください。
…以上宣伝でした。



それでは、皆様、良いネットライフをお過ごしください。


逃げ出したくて
走り出したくて
駆け去りたくて
消え失せたくて

全て抹消して
溶けてなくなりたい



未練さえなければ
黄色のラインを踏み越えたい

嗚呼


記憶に寄せて

長い指
持て余した煙草
埋まる灰皿

爪は美しく彩られ
銀の指輪光る

朝日の中の風景
1コマ
スローモーション

ふ、
と見惚れる黒髪





僕は白いベッド
白い天井
淡い黄色のカーテン
運動場のざわめき

消毒液の匂い、
ではなくて
医務室の匂い


風が刺して痛む頬


花瓶
菖蒲

包帯?

煙草の匂い
君が居るのだろうか
意識の戻らない僕






朝日は部屋を満たす
全て
白く浮き上がる

ソファにもたれ
ぷかぷかと
煙を吐き出し笑う



風景

スローモーション


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「アキトさん」
「…ん」
「寒くありませんか」
「さみーよ」
 自分でも分かっている。寒いと僕は不機嫌になるのだ。つい、つっけんどんな受け答えになってしまう。ポケットに手を突っこんで使い捨てカイロをおもちゃにしているが、それでも寒さの苦手な僕には辛かった。
「わあ、息が白くなりますよっ」
「……さっきからずっとだろう」
 何が嬉しいんだろうか、カヤは嬉しそうに跳ねながら歩いている。
 僕も歩いていた。一時間座り続ける事に僕が耐えかねて、とりあえずぶらつこうと提案したのだ。
「…カヤ、はさ」
「何ですか?」
「寒くないのか……」
 見慣れない制服。その上にコートも何も着ていない。僕なら確実に凍死しているだろう。
「ええ、平気です」
「そうか…」
「………」
「…………」
「…見つかりませんね」
「……悪ぃ、何も探してなかった」
 僕は正直者だと思う。しかしあえてここは別の話題を選んだ方が得だとも思う。
「ところで、一応聞いておこうと思うんだけど」
「私に分かる事でしたら」
「十分だ。…僕は、何者だ?」
 ただの学生だと思っていたが、実はそうではないらしい。三流ドラマか漫画でありがちな設定でウンザリだ。しかしこれが現実か。小説より奇なり、である。
「アキトさんはアキトさんです。えぇと…大学生さん、ですか?」
「ああ。でもそれくらい僕も知ってる。そうじゃなくて、だ」
 もう太陽は沈んでしまった。今から、気温は下がる一方だろう。
 白い息を吐いて、カヤは口を開いた。
「…私と同じです。探し物をしている人です」
「君と同じ?」
「そうです…。全部、初めから決っていたんです。私はアキトさんと出会って、こうして歩きながらお話する…そして一緒に探すんです」
「初めからって、いつからだよ」
「それは分かりません。けれど私は、二年前に気が付きました。それからずっと、アキトさんを探していました」
 カヤは鞄を持つ手を強く握った。二年も探していたのか。ならば彼女にとってそれはとても長い期間だろう。
 しかし僕としても何か釈然としないものでいっぱいだ。
「あれはさ…探さないと駄目なのか?」
 面倒くさいとか今のままで良いとか、そういうんじゃなく。誰かに仕組まれているようで気に入らないのだ。
 放っておいても問題にはならないはずだ。今まで僕が気付かずに毎日を過ごしていたように、これからも学校と家と図書館とスーパーを往復する毎日が続いてもおかしくない。
「何か、変わるのか?」
「……」
「僕は面倒くさい事はきらいだ」
 見つけたコンビニに入る。店内がやけに明るく、僕は何故か不快感を得た。が、それを無視して熱い飲み物を物色する。カヤの分も充分買えるくらいの金は持っている。
 そのカヤは眼鏡が曇って困っている。一しきり笑った後、彼女の選んだペットボトルを手にレジへ向った。
「…ここで良いか」
「ええ、構いませんよ」
 コンビニの照明を背に受けながら、駐車場の輪留めに腰掛ける。肉まんを半分に割って差し出し、僕も食べる。ちなみにカヤは温かい紅茶、僕はお茶を持っている。
「すみません、アキトさん」
「や、中学生におごらせるわけにも」
「高校生ですっ」
「…………そりゃ悪い」
 高校生、か。
「カヤは…探したいんだな」
 暖かい物を口にしたからか、僕に少し余裕が出てきた。また本題を復活させる。
「……はい」
「僕も、一緒に探した方が良いか」
「…さっきアキトさんは一緒に探してくれると言いませんでしたか?」
「う」
 大口で肉まんを食べる。お茶で流す。
「…………ああ、そうだったな」
「アキトさんにとっては、必要ではありませんか? 今のままで良いのですか?」
「そう、そこが問題だ」
 to be or not to be, that is a question.そんなフレーズが頭をよぎった。
「僕にはあまり大きな問題じゃないんだ。僕は…そうだな、このままで良いとも思ってる。でもきっと、見つけた方がベターだ」
「…私は」
 カヤは、白い頬を少し赤くしていた。紅茶は充分に熱かっただろうか。
「私は、やっぱり今のままは嫌です。早く…出来るだけ早く見つけたいです」
「そう、か…」
 それはそうだろう。二年間も僕を探して、そしてこの町へ辿り着いたのだ。ここらの子ではないと思うのは僕の勘だが。
「……さて、カヤ」
 僕は立ち上がった。冷えた手も暖まっていた。
「もうそろそろいい時間だ。バスが来る」
「アキトさん」
「カヤ、ちゃんと泊まるところはあるのか?」
 無言でカヤは立ち上がる。スカートの裾を手で直して、僕の顔をじっと見た。初めて会ったときと同じだった。そして、首を横に振った。
「……どうするんだ」
「………すみません」
「いや、謝らなくても良いけど」
「えぇ…」
「…僕の部屋へ来るか? …………言っておくが、何もしないから」
 時折友人や知人が泊まりに来る僕の部屋には、布団が一式余分に置いてある。今ならコタツもある。
 ただし、女の子を泊めた事はない。
「……何も、しませんか?」
「約束する」
「…一晩、厄介にならせて下さい」
 カヤは深々と頭を下げた。髪が前にさらり流れて、つむじが見えた。
「約束を守るという約束も守るよ」
「はい」
 また僕は歩き出す。
「明日、一緒に探そう」
「はいっ」
 明日中に探し出せなかったらどうしようか、というのは何故か頭に無かった。
 まあ、僕もそれなりに欲しているかもしれない。探せば得るところはあるはずだ…。
 とりあえず今晩は一人で寂しく飯を食べることはないのだと思うと、少しだけ嬉しかった。
 隣でカヤも歩いていた。










人事担当の悩み

世間では12月はクリスマスの月らしい。

アメリカやカナダのカレンダーを見てみたら、
12月25日はしっかりと休日の印がついている。

クリスチャンでもないくせにバカ騒ぎをするくらなら、
日本も休日にしてしまえばいいのに。
他の宗教信者に対してそこまでする度胸も無いのだろう。


そんな事を考えながらシフトを組んでいると、
やはりバイトの子達は25日、休みたがっている。

男女関係なく、だ。



悪いけれどバイト入ってくれないか、と聞いてみる。
仕方ない、特別手当で時給を50円増やしてみる。

女の子の一人は本当にすみませんが、と断った。
別の女の子は、少し考えてから承諾してくれた。
もう一人の女の子は、午前中だけなら、という。

男の子は既に二人確保できている。特に何も言うまい。
断った二人のうち、一人はやはり断られた。
もう一人は夕方までに帰してくれるなら、と言ってOKした。


当の自分はといえば、もちろん妻子を置いて仕事だ。
バイトの子達に無理を言ったのに、責任者が休んではだめだろう。


もともとケーキのような甘い物は苦手だし、
娘が寝てからプレゼントを枕もとに置くには絶好だろう。
そういうと妻はしぶしぶ頷いた。

自分も妻も、もちろん娘だってクリスチャンではない。
洗礼を受けるどころか、聖書だってまともに読んだ事も無い。
キリストの復活祭はその存在すら知らない人も多いというのに…。
何故こうもクリスマスで人々は騒ぐのだろうか。
誕生日など誰でも誕生するのに、しかもその日付も正確ではない。




と、言いながらも自分の仕事場、レストランでは
しっかりとクリスマス特別メニューなどと銘打ってシェフが頑張って企画している。
そして自分さえ、制服の胸にヒイラギの葉を飾る事になっている……。



シフト表を組み終わり、掲示すると一つため息をついた。


たまにゃこんな日もあるさ


somewhere



君の横には誰が居ますか

君の目の前には誰が居ますか

君の心の中には誰が居ますか

君と同じ場所には誰が居ますか




僕は何処にいますか

それとも

何処にもいませんか


死にゆく全てに

白んで行く空の色
静かに滴る下草の露
知らない少女の仕草にぞっとする

すんなりと静まった水面下
草原のさわさわ
そっと死にゆく三十五度

さざめく波

背筋にしっかり差し込んで
彷徨い歩く戦場の町

視線 したたかに
削除 さっぱりと
静寂 そそくさと
崇拝 ささげ
装弾 すばやく

作業は進む


落下

どうか壊してしまってください

もう二度と悪戯のできぬよう

羽根をもいで 脚を切って

手錠でつなぎ止めてください

赤く染まる腕は罪の表れでしかないのだから

この命などで償える物ではありえない




大地に繋ぎとめられる資格など持っていない

地に還る呪文も忘れてしまった

滴る赫を飲み込む海も

広がる闇を包み込む空も

誰の物でもない




刻み込み流れて行く一秒をどうか

どうか僕以外の為に費やしてください

もう

もう二度と悪戯のできぬように

僕など消え失せてしまえばいい


風に吹き飛ばされし 言の葉の叫び

永遠を絶たれ 突き落とされし言の葉

いかに 弔ひの念 途絶えずとも

その命絶へ 消ゆるる時まで


諮問

どうして彼女を愛するなどと言うのだ?

「私が誰を好こうと私の勝手だ、放っておいてくれ」

亡くした『彼女』の代わりじゃないのか?

「うるさい」

どうせ代用品なのだろう。愛しているなどと、心から想っているのか?

「当たり前じゃないか、お前に言われる間でもないさ」

本当にそうか?
仮に『彼女』が誘ったらどうする気だ?
お前は彼女より『彼女』を取るだろう?

「うるさいっ」

『彼女』だけじゃない。他にもいるんじゃないのか?
呼ばれればすぐにでも飛んでいく相手が…

「…お前には関係のないことだろう! 放っておいてくれ!」

痛いところを突かれたから怒っているのか? 分かりやすい奴だ…

「………いい加減にしろ」

彼女を抱きながら『彼女』と重ねている事くらいお見通しだ。

「そんな事は無いっ、彼女は彼女だ」

嘘をつくな。所詮、お前に人を愛する事などできやしない。

「じゃあお前はどうなんだ! 人苦しめるだけが能か!?」

そうだ。だからこそ存在する身だ。
お前がそれを望んだのだろう? だから出てきたまでだ。

「…っ」

俺なら、他人を愛そうなどと下らん事は思わないね。

「私は彼女を愛しているんだ……」

『彼女』のことも、だろう?

「……悪いか」

悪くないとでも思っているのか?

「だから私は…」

どうした?

「だから、だから私は……泣いているんだ…」


more different


My追加?
意見感想苦情文句罵倒その他所見