僕の、場所。
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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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所為

君が笑ってくれるから 僕も笑える
君が泣いている時は 僕も泣きたくなる
君が生きている だから僕も生きている


君への

声にならない言葉 たった五文字
「     」 なんて
恥ずかしくて言えたもんじゃない


not but

君の体だ

君の自由にしたらいい

ただ僕は

君が悲しんでいるのが辛いのだ





僕の体だ

僕の自由にしていいはずだ

ただ君は

僕が死んだら悲しんでくれるのだろうか


NOT FOUND  text2.realizing

「アキトさん、で合ってますよね?」
 得意げな笑顔…可愛い。とりあえず頷いておくことにする。すると何やら一しきり喜んだ後、彼女は自分を指差してこうのたまった。
「私の名前、当ててみてください」
「そんな無茶言われても困るって…ていうか君はなんで知ってるんだ僕の名前」
 不意に僕は馬鹿馬鹿しくなってきた。どうして一時間に一本しか走ってないバスを見送ってまでこの女の子の相手をしているんだろう。そろそろ日も暮れる、実際さっきより寒くなってきている。僕は寒いのが嫌いだというのに……どうしてここまでしてカヤに付き合っているんだろうか。
「……」
「アキトさん?」
「………君…」
 誰だ。カヤって誰だ。この子は誰だ。…僕は誰だ。
「ちょっと待ってくれるか? その…そう、僕はアキトで間違いない。ヤスハラアキト」
「えぇ。良かった。それで、私の名前は分かりますか」
「分からないよ」
「……」
「分かるわけないだろう? 僕はさっき君と会ったんだ」
「……本当に、分からないのですか?」
「………」
 さっきまで浮かれていた彼女が、急に少し小さくなった気がした。俯いて、というより顔を上げるのをやめて、押さえた声でさらに繰り返す。
「本当ですか?」
「………」
「…………本当に本当に、私の名前が分かりませんか」
「……カヤ」
 言ってみた。言ってしまえば何かが始まってしまう気がして、正直怖かったが。
 しかし、何の効果音も背景も出現はしなかった。相変わらず、人通りは僅かながらも途絶えない町のバス停ベンチ。夕暮れに学生二人。なんともありがちな風景だ。
 それでも僕は初めて会った女の子の名前を口に出した。
「ありがとうございます」
 そしてカヤは笑った。
「意地悪しないでください、アキトさん。」
「いや…だって普通は分からないものだろう……」
「でも分かってくれましたよね」
 そんな嬉しそうに言われると、全くつかめない事情なんかどうでも良かった。
 バス停で偶然出会った女の子と仲良く話をしている。それだけ見てみればかなりラッキーといえる事態だ。それも女の子は可愛いときた。中学生だろうか高校生だろうか。セーラー服を着ているのだから学校に通っているはずだ。そう、どこの学校だろうか。僕の見たことのない制服だ。遠くの学校なのか…いや、それならこの時間にいるのは不自然か? いや、そこまで詮索するのは失礼だよな、僕だって中学の頃からよくサボって電車で遠出したものだ。
「よしっ、探し物一つ発見っ」
 たまに悪意丸出しの笑顔のオニーサン方に囲まれては軽くゲーセン代をたかられたりしていたが…………待てよ今何か聞こえたか。
「…カヤ、さん」
「カヤで良いです」
「……カヤ。探し物をしているんだろ?」
 そう言うと、カヤはまた嬉しそうに頬を緩める。
「今、見つけたって言わなかったか?」
「はい。ひとつ、見つけました。アキトさんです」
 やっぱり、聞こえたのは幻聴や何かではないようだ。カヤはそっと、僕の手に触れた。細い指が冷たくて、やはり初冬であることを思い出させる。そして、カヤが探しているもう一つも「思い出させ」た。
「…………カヤ」
「…何ですか、アキトさん」
 頭の中に浮かぶイメージをもう一度追う。まだ追える。大丈夫だ。
「僕も探そう。というか…僕もそれを探している」






羨望

君は泣いてくれますか


欠けた歯車の歯

僕が一人死んだ。

ばいばい。

もう、生き返ることの無い僕、ひとり。

定冠詞をつけてのこの僕を欠いてしまって、

この世界はとても歪んでしまった。

もっとも素直でもっとも壊れやすい僕を失ってしまった。

装飾されて塗装され強化された僕しか残っていない。

興味もなく気力もなく遠くに居る僕しか残っていない。

舞台の上の僕しかいない。

「管理人」は一人しか居ないが内部に実にたくさんの管理人を飼っている。

不慮の事故で亡くした一人を深く深く追悼する。

歪みきった世界で生きていこう。


アルビノ

一匹の白いうさぎがいました。

うさぎは、野原で暮らしていました。

うさぎは、白い毛皮でいられる冬が大好きでした。

「見て見て。ぼく、真っ白でしょう」

お日様に自慢して、お月様に自慢して、お星様にも自慢しました。

お日様は暖かいひなたを作ってくれました。

お月様は真ん丸く笑ってくれました。

お星様はぴかぴかと嬉しそうにしてくれました。

うさぎは誉められたと思って大喜びでした。

真っ白な毛皮が大好きなのです。





あるとき、一匹の茶色のうさぎが向こうから歩いてきました。

うさぎはびっくりしました。

冬になるとうさぎは白くなって、きれいになるのが普通です。

「どうしたの? もうすぐ冬なのに、白くないの?」

「旅をしてきたんだ。ここはとても寒いね。それに君、とてもきれいな毛皮だね」

茶色のうさぎは言いました。白色のうさぎはそれを聞いて喜びました。

「此処ではね、寒くなると辺りが真っ白になるから、ぼくたちも真っ白になるんだ」

「へぇ。うらやましいな」

「今も少し雪があるね」

白色のうさぎは、ほんの少し積もった雪を前足で触りました。

とても冷たくて気持ち良い雪です。そしてうさぎの前足と同じ色です。

その時、とても大きな音がして、白色のうさぎはびっくりしました。

「だいじょうぶ? びっくりしたね――」

そう言ってから、白色のうさぎは、もっとびっくりしました。

茶色のうさぎが、いつのまにか寝ているのです。

「どうしたの? びっくりしすぎたの? ねえ」

ほっぺたを触ってみました。茶色のうさぎは目を覚ましません。

耳を触ってみました。茶色のうさぎは目を覚ましません。

おなかを触ってみました。茶色のうさぎから赤色が出てきました。

白色のうさぎの前足は赤くなりました。

「どうしたの!? どうしたの!? 痛いの!?」

茶色のうさぎは目を覚ましません。

茶色のうさぎは目を覚ましません。

もういちど、大きな音がしました。さっきと同じ音でした。

茶色のうさぎが少しだけ動いて、赤色が跳ねました。

跳ねた赤色が、白色のうさぎの目に入りました。

目が痛いのでびっくりしていると、うさぎたちが皆怖がっている音がしました。

二本の足で歩くどうぶつの足音です。

白色のうさぎは、お母さんに言われていたとおりに、いちもくさんに逃げ出しました。

赤色のはいった目が痛くて、涙がたくさんたくさん出てきました。

赤色になった前足が、白い雪にてんてんと印をつけていきました。





その日の夜は、たくさんの雪が降りました。





次の日に、雪が止んでから、白色のうさぎはまた遊びに行きました。

茶色のうさぎを探しました。おいてきぼりにしてしまったからです。

昨日茶色のうさぎに出会ったところには、何もありませんでした。

ずっと待っていても、ひょこっと顔を出したりしませんでした。

うさぎはさみしくて、泣いていました。

目は、昨日からずっと赤いままです。でも昨日よりもっと赤色でした。

その次の日も、もっと赤くなりました。

その次の日も、もっともっと赤くなりました。

もっと、もっと、もっと、赤くなりました。

白色のうさぎは、もう、どうして目が赤いのか思い出せなくなりました。

でも、白色のうさぎの目はずっとずっと赤いままでした。


古都

何故だろうか
覚えていて欲しいと思った
何かちょっとしたきっかけで
僕の名前を思い出して欲しいと思った
年に一度あるかないかでいいから


偶然僕のと同じ色の眼鏡フレーム
少しまとまりの悪い黒髪、肩まで
皮肉っぽく笑う口元
華奢な腕には重そうな荷物
白い手首に残る傷痕、深く長く


鍵は開け放たれ
今は少し幸せそうに見える君
遠くから眺めやって安堵する僕を
まだ君は覚えていてくれるのだろうか
また思い出してくれるのだろうか


ただそれだけで僕は幸せなのだ


ごちゃ混ぜのざわめきの中
会いたかったよと
笑って近づいて手をとって
壊れた時計がまた動き出すかのように


NOT FOUND  text1.meeting

 少し肌寒かった。僕はバスを待つべく、青色の安っぽいベンチに座ってぼんやりとしていた。時刻表どおりに来るバスなんか無い。コートのポケットに手を無造作に突っこんで、向こう側の歩道をなんとなく眺めていた。
 英会話教室のチラシを配る女性の脇をすり抜けて足早に歩く大人たち。懐かしい学生鞄を持って笑いながら帰る中学生。自転車もいくつか視界を流れた。車道の車は少し渋滞しているようだった。車の中で談笑している仲間たち。こんなに騒がしいのに何故かとても静かだった。
 飽きてきたので首を回すと、いつの間にか僕の横に女の子が居た。この子もバスを待っているのだろうか。脇に置いた鞄の中を探るついでに、正確には探るふりをして、少しだけその子を見た。見慣れないセーラー服だった。どこの私立の学校だろうか。頬にかかる髪と眼鏡で顔はよく見えないがきっと可愛いのだろう。いや、そうであって欲しかった。それでこそこの寒い中バスをひたすら待つ事のメリットが生まれるというものだ。
 鞄の中から適当にノートを手にとって少しめくり、満足した様子を装って、もう一度それを鞄に戻す。バスはまだ来ないのか、と時刻表と腕時計を見比べようとした時、僕のコートの袖が引かれた。
「あの…」
 女の子だ。控えめに僕の顔をうかがっていて、これはもしかしたら僕がアヤシイ人間じゃないかどうかを見極められているのだろうか。僕は人の顔を凝視するのが苦手で、つい白いセーラーリボンを見ていた。どうせなのだから顔も見たかったのだが。
「…あの、わたし…探し物をしているのですが」
 きれいな声だった。透き通るような声に、何故か僕は少し照れた。しかしそれを表に出すほど僕は簡単に作られていない。
「探し、物?」
「えぇ…ずっと探しているのですが…見つからなくて……」
 ちょっと待ってくれ。この子は何を言い出すのだろうか。僕にどうして欲しいのか。探し物なんて僕には関係ないはずなのに。正直僕は戸惑う。
「それで、…えーと僕が持っているとか? 何も拾ったりはしてないけど…」
 バスが、来た。プシゥーとあの音を立ててドアが開く。乗り降りする人々。くぐもった運転士のアナウンス、そしてドアは閉まる。
 僕はまだベンチに座っていた。隣の女の子も座っていた。バスは行ってしまった。
「……あの」
「バス、良いの?」
「わたしは…えぇ。でもあなたは…」
「…ま、良いだろ。それで、その探し物って何」
 僕はどうかしたのだろうか。あと1時間待たないと次のバスは来ないというのに。
「え…」
「あと1時間だけで良いなら、手伝おうか? 座ってるよりましだ」
 情けない事に、このとき僕は初めてその女の子の顔をちゃんと見た。簡単に言ってしまえば可愛い子だ。驚いてから嬉しそうに笑う、すると少し幼い感じさえする。いくつなのだろうか。制服のセーラー服はこげ茶。少なからず好印象。よし、おにーさんちょっと頑張っちゃうおうか。
「ありがとうございますっ、アキトさん」
「へっ?」
 可愛い子を前に間抜けな声が出てしまった。目の前の女の子は嬉しそうに微笑んでいるが。
 何故、僕の名前を知っているんだ、この子は。







color of...

てとてと一生懸命に走ってくる君
おいでおいで微笑んで僕
遠いトコよく来たね、といつもの挨拶
君のためなら、と変わらない返事

散歩でもするかい?
聞いてみたら無邪気な笑い顔

まさかあっけなく壊れてしまうとはね




僕が君のもとへ赴く番だ
たしかこの花が好きだった気がする、なんて
何気なく摘んだら届けたくなったんだ
手折ってしまって花には申し訳ないが
君は喜んでくれるだろうか?

この空の向こう側に君は居るんだろう?
すぐ行くから少し待ってて
もうすぐ…星が落ちるから

あの愛くるしい笑顔をまた見せてくれるかい


嘲笑

うるさい うるさいよ

何が可笑しいんだよ 言ってみろ あぁ?

僕が何か笑えることでも言ったかよ

鼻で笑うなんて 頭おかしいだろお前 なあ

僕がこうだって 知ってる筈じゃないのかお前は

不自由なカラダで生きてるって分かってるんじゃないのか

こんなもの要るかよ 要らないだろう

切り刻んでやる

使えないものなんて要らないんだろ 

壊してしまえたら 終わりにできたら 幸せだ

輝く刃に映る顔 歪む 赤く染まって きれいなんだ

お前なんか知らない もう 僕の世界にお前は居ない

飛沫を上げて生まれ変わる もう もう この世界に

赤く染まる手は要らない


夜空に

きっときっと
貴方に幸福の風が吹く事を祈っています
凍える夜にも雲の向こうに星は在るのだから


at night

「ごめん、会いに来てほしいんだけど」



そう言われて即座に家を飛び出せる相手が、居るだろうか。

居るとしたら誰だろうか。複数だろうか単数だろうか。






僕はおそらく己のエゴイズムだけで走り出せる。








深夜でも何でも構わないから、
切羽つまった時は連絡してくれて良いんだよ。
大丈夫、時間の不規則な生活してるから起きてる場合も多いんだ。
走ってる間に朝になるかもしれないけど、
言葉くらいなら飛ばせるから…。

エゴだという事は十分承知。
それでも誰かに安堵くらいは…。


I'm on the top of the world looking down on...

ビルの屋上に立って見下ろしていた。
道を歩いている人はゴミのようで、うじゃうじゃ居た。
この中の一人くらいが居なくなっても別に構わないんだろう、この世界は。
車さえ、オモチャみたいだ。
このビルより低いビルの屋上、壁、窓、その中に居る人たちも見えた。
どれも下らない、俺には関係ない、そして彼らも俺に関心もない。
ただ、あいつらよりも空に近いのだと思うと少し嬉しかった。
このまますっと羽ばたけるような気がしていたけれど、やっぱり羽根なんか無い。
空は変な色で曇っていたから、飛べなくても良かった。
でも風が小枝を揺らすくらいで滑空には丁度良かっただろう。
そうだ、羽ばたくよりも滑空する方が気持ち良いだろうな。
こんなゴミみたい人たちに紛れて生きるなんて最悪だ。
俺だって今からエレベータを降りて地上を歩き出せば、あのゴミたちの仲間だ。
そうして、今の俺みたくしてる他のヤツにゴミ扱いされるんだ。
そんなのはどうしても我慢ならないと思った。
あの小さなたくさんに紛れてしまうのなら、いっそ存在したくない。
足元すぐの地上を見た。
庇も何もなく、地上に植え込みも車もない。
ただ歩道にゴミみたいな人が何人か歩いている。死んでから殺人罪に問われるのは癪だった。
このビルの階分だけの窓と壁の互層が見え、ちょうど透視法の参考図のようだ。
覗き込んでいた俺の首筋に冷たい雫が堕ちてきた。
危うく、「死んでから殺人罪に問われる」ところだった。
ピントを戻すと屋上の地面に斑点が次々と打たれているところだった。
薄汚い灰色と茶色の中間色は、見ているうちに濃い色に変わった。
水が反射して目障りな陰影までついている。
ゴミのような人たちはというと、走ったり、カラフルな傘をさしたりしている。
所詮はゴミでしかないのに傘程度で個性を出しているつもりなんだろう。
俺の制服もすっかり水分を吸ってしまったが傘なんて差すのは邪道に思えた。
足元に転がっていたビニール傘を一つ蹴り落とし、歩道で困っているヤツに一方的に貸してやった。
到達するまで、4秒。俺は良い事をした。
眠くなったので、雨で流された屋上に寝転がった。もちろん仰向けに。
さして勢いの強くない雨粒が体を叩く音が気持ち良かった。
最高の子守唄だと思ったので目を閉じて意識を手離してみた。


テスティング

知ってますか
僕の
想い


不安で不安で

怖くてたまらないのに
それでも君が


君がいるから

君が

管理人、キレる。

改めて一言ことわっておきますが今日は2002年11月12日ではありません。
日付が意味の無いものだと書いてあるそのままの意味です。


管理人、キレる。

僕だってキレます。キレやすい現代の子供たちですよ。
子供って歳かだと? うるさい僕のことなんか放っとけ。
合成着色料ふんだんに使ったお菓子をもりもり食べて
キレやすい大人になって将来の日本を支えていくのですから。
嘘ですよ。
気が狂っているのです今日の僕は。




親しい、そう、一応建前では親しくしていたつもりの人間に裏切られた。
裏切り? いや、向こうは当然の権利を行使しただけなのだが。
僕はそいつがその権利を持つのは良いが行使しないでいてくれと
願い頼み約束し、そしてそれを頑なに信じていたのだ。
そうだこの世は信頼で成り立っているのだ。社会学者が言っていた。

最悪だ。そんな世界。信頼などという脆いもので支えられた世界など。

あの無様な顔といったらどうだ。
馬鹿にしたような顔で突っ立って。一言、俺に真実を伝えたのだ。



お前は分かってるのか!? お前は俺がかろうじて現世に繋ぎとめられている綱を切ったのだ。
分かっているのか! お前がしたことは俺をこの世から抹消する行為だ。
お前の顔なんか見たくない。声も聞きたくない。存在すら邪魔だ。
俺が、俺が、本当にかろうじて握り締めていた繋がりを…!
分かってなどいないのだろう!
分かってやっているのだとしたら俺はお前を殺してやる。
哀れなことにそれが分からない無知なお前だから俺は何日か経ったらお前を許してやろう。
どうせ、俺のためだとでも言うつもりだろう。どこがだちくしょう。
記憶にある中で5本の指に入る最大級の裏切りだ。
お前との取り決めなんかこれから先一つとして信じるものか。
覚悟しておけ。俺に嫌われた人間の行く末を。




この世界が残っていて良かった。
此処で僕の告別式でもやろうか。


晴れ間に思う

珍しくこんなに天気の良い日などには
君に遊びに来て欲しいと思う
遠くから来るであろう君には
僕の街を良いように印象づけたいんだ


信じてもらえるかな

まだ君の体温が残っているのを
まだ鮮明に思い出せるのを


ひたり ひたり

ひたり

ひたり



血塗られた足跡 続く

赤黒く

億万人の血に染まった大地では

同化してしまう



きっと彼女には分かるはずだ

僕のつけた足跡が

分かるだろう?

同じ匂いのはずだから



ほら

そこにあるだろう

一際黒くくすんだ

行き先を失って途方に暮れた足跡が



ついてきてくれるかい?



暗闇を振り返って訊ねる

返ってくるのは静寂ばかりだけど



ひたり

ひたり


runrunrun

駆け足で
やっとだというのに




待ってくれ
僕を殺さないでくれ 頼むよ
死ぬのなら自分で死にたい
待て 落ち着けよ なぁ

僕が何をしたというのだ
えぇ? お前に何か不利益をまいたか?

ただ静かに暮らしたいだけじゃないか
ほんの少しのわがまましか言ってない
ここに存在する事くらい良いだろう
なぁおい
これでも僕は一生懸命なんだ
ふざけてるように見えるかもしれないけど

信じてくれないのか
僕はもう一杯一杯なんだ
これ以上なんて走れやしない

死にたくないんだ
殺さないでくれ
まだ終わってない事があるんだ
会いたい奴もいるんだ
生きる事も許されないのか
僕は 僕は





息切れで頭が痛いのに
叱責の声止まず


White __________

ずっと後姿を見ていた気がする

白い服が眩しくて俺は目を細める
夕陽か朝日か 弱い光が差し込む部屋
お前は机に向って何かやってる
俺は椅子に座ってただ見てる

ガラスの触れる音
液体の沸騰する音
お前の指が神経質に机を叩く音
時々聞こえる鼻歌および舌打ち
何を作ってるのか変な匂い
そしてお前の後姿

そんな印象ばっかり

いつも馬鹿な話で笑ってるのに
からかわれて怒ったり
じゃれたりしてるのに

どうしてだろう
その笑顔より仕草より
凛として在る後姿が鮮明に
俺の記憶に染み込んでいる


So,

Which is the truth?
Do you know?
Do I know?
No!
I REARY don't know!
What means do it say?
I don't know...


but ONLY last Four.


yours

どうかどうか
消えてしまわぬよう
手を組み 祈る

ふと口をついて出るのは
君の名だった


マフラー

凍えた指で
ふかふかのマフラー握って
さて
あのマフラーは今どうしてるだろう






「ありがとう」

喜んでくれたヤツは切り捨てられ
ぼくはひとり先立つ
光の地へ

重すぎた想いは地の底へと堕ち
ひらり
一本の羽根だけが空へと舞った

いっそ捨ててしまえ
引き裂いて
切り刻み
火をつけて
灰をばら撒け

ぼくはもう居ないのだ

もう忘れてしまえ
すべて消し去って
完全に無くしてしまえ

掴んだ藁は暗い海の底に沈んでしまったのだ


意地

分かってなどないくせに
分かってなどないくせに
分かってなどないくせに

よくも
そんな偉そうな

お前のような人間がいるから
お前のような人間の考えのせいで
苦しんでいる弱者や少数派が この世には掃いて捨てるほど

歯を食いしばって
泣いたりするものかと
必死に必死に必死に

お前が息をするのも同然に出来る事でも
どうあがいても出来ない人間が居る事を
お前のすぐ傍に居る事を
忘れないでくれるな
忘れないでくれるな

努力だの練習だの
そんな事でなど解決できない「不自由」を持つ
的外れな叱咤やアドバイスなど毒でしかないのに
それを好む偽善者のなんと多い世界だ

なぁ

弱者の意地を知っているか
己が弱者だと認識している者の意地を
嫌悪と同情の果てに勝ち得た意地を

分かってなどないくせに
分かってなどないくせに

よくもそんな。


いたいの

「せんせい」

どうしたのかな?

「おなかがいたいの」

どれ、先生に診せてごらん。

「ここがいたいの」

なんともないよ?

「でもいたいの」

どんな風に痛いの?

「ぎゅーってなるの」

まだ痛い?

「ううん、いまはいたくない。でもさっきはいたかったの」

さっきって、いつ?

「さっき…」

ちゃんとお話してくれないと先生分からないな。

「いたいの」

痛くなったの?

「うん、ぎゅーっていたいの」

なんともないんだけどね…

「せんせい」



「いたいの」



「せんせい」



「せんせい」



「せんせい…」



「いたいの……」


冷ややかな月

この凍える夜
君は何をしているだろうか
何処に居るだろうか

ちゃんと暖かくして
君は冷え性なんだから特に手と足に気を付けて
好きなチョコレートでも買って
東に向かう電車の中かな
ちゃんと眠れているかな
嫌な夢でも見てないだろうか

重い荷物
疲れたら足元に下ろしても良いんだよ
出来る事なら僕が持ちたいけれど

一人で歩く君
出迎えてくれる人は居るだろうか
「ただいま」には「おかえり」と暖かく答えたい

自分の生活に追われながら
君を思う時
少し懐かしく
そして少し寂しい思いに縛られる


more different


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