2003年12月30日(火) |
2003 Last date |
午前7時。 暑さで目覚めたみたいだ。 寝たのはきっと午前3時頃のはず。
相変わらず彼の腕はあたしの頭の下にあった。
腕枕大王だなぁ。
そんなことを思う。 今まで長いこと一緒に暮らした男は、明け方になると、必ずあたしを腕枕から放り出した。鬱血して痛かったんでしょうね。明け方放り出されて、あたしはまた強制的に男の腕をとって、頭を乗せていた。
今のところ、彼には放り出されたことはないように思う。 ただ単に眠りが深いだけかもしれないけど、気持ちよく眠っている時に放り出されるのは辛いものだ。
目覚めたあたしはトイレに立つ。 睡眠導入剤はいつもきっかり4時間で目が覚める。 今日も4時間。
古いヒーターが室温を上げている。 少し弱く設定して、またベッドに戻った。
次に目覚めたのは、彼の携帯のアラームだった。午前9時。 当然彼は起きない。あたしもぐずぐずと彼にまとわりつく。
お約束のように唇で彼を弄んでみたり、乗ってもイイ?と聞いてみて、跨って動いてみたりした。やはり起きない。起きないけど、あたしは動く。
寝ている女に無理矢理乗ってる男の気持ちが少しわかる。 とりあえず、自分がイクことだけが目的なのです。 1泊で1回ってなんとなく淋しいし。 夜は夜で満足するんだけど、もう一度朝にシタイとあたしはいつも思うみたいだ。
昨夜の余韻ですぐに果てるので、お手軽です。
意地悪をして、全体重をかけると、あたしの身体の下で寝ている彼の眉間に縦皺が走った。
「ううううううむ。」
「重ひ?てかさ、もう起きる時間ですよ。」
「はぁ…。」
あたしはシャワーを浴びに立つ。 シャワーを浴びて、途中まで化粧をして、彼の今日の用事に間に合わないといけないので、ホテルをチェックアウトした。
車の中で、変なCDを聴きながら、他愛もない事を話す。 高速道路は年末だけどスムーズに流れている。 彼の車がスピードを上げて、1台の車を追い越した。 走行車線を走っていると、追い越した車にまた追い越された。
と同時にその後ろから覆面パトカーが!
彼が笑う。
「いやぁ。いい年末だよ。怪しいと思ったんだよ。後ろにいたからさぁ。でも1人しか乗ってなかったんだよねぇ。」
「覆面?」
「うむ。助手席リクライニングだったしね。怪しいと思って前の車を抜いたんだよ。警察も年末だからがんばってるねぇ。いやぁ。楽しいねぇ。」
「良い年末なのね。」
窓の外を見ていると、雪化粧をした富士山がとっても綺麗に見えた。
「うわぁ!富士山だよ、富士山だよ!雪だよ。こないだ見た時は雪なかったからね。やっぱり雪がないとダメだよね。」
子供のようにはしゃいで、あたしは携帯カメラでシャッターチャンスを狙う。 流れるように走っているから、なかなかうまく撮れない。
「午後からはまた富士山にでも行ってみますか?」
彼がそう言った。
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「駅で降ろしますから、終わるまでテキトーに時間をつぶしておいてください。」
「ん?どこの駅?」
「○○。」
「駅から遠いとこなの?」
「遠くもないが近くもない。スーパーとかあるからテキトーにしといておくれ。」
「じゃぁ電話を下さい。」
彼の用事が済むまで、あたしはひとりで時間をつぶさなきゃならない。 駅前で車を降りる。小さな駅だ。 駅のロータリーも小さい。 スーパーと電器店があるビルがあったので、そこで時間をつぶす。
…どれくらい時間かかるんだろう?
予想が付かないので、スーパーの一階から四階までゆっくりと時間をかけて回った。 それが終わると今度は電器店を見て回った。 冷蔵庫の新しいのが欲しいだとか、PCのプリンターが欲しいだとかデジカメが欲しいだとかそんなことを考えながら歩いて回る。
まだ連絡はない。
駅ビルから外へ出ようとテクテク歩いていくと、ほんとに何にもなかった。 あまりにも何もないので、反対側を歩いていくと、普通の建物に見えたところがパチンコ屋だった。時間をつぶすには良いかもしれない。
2000円のカードを買って、しばらく遊んでやっぱり負けた。リーチはかかるけど、まったく揃う気配がないし。これ以上突っ込んでも一緒だと思って、そこを後にする。 スーパーのベンチに座ってると、彼から電話があった。うまくとれなくて、折り返してかけると、もう終わったらしい。慌てて、外へ出る。
「思ったより早かったね。」
「うむ。そだね。」
「だいじょぶなの?」
「ん?だいじょぶだよ。さて、飯ですな。とりあえず富士の方へでも行ってみやふ。」
来た時は高速だったけど、こんどは一般道で、引き返す。 BGMは”一発屋”とかいう変なCD。メリージェーンつのだ☆ひろの話をしたり、円ひろしも一発屋だねと語ってみたり。話題にはことかかない。
富士山に行く前に飯だ飯だとステーキハウスへ連れてってもらった。
ミディアムでヒレステーキ150g。 レアでサーロイン300g。 お腹がいっぱいです。
そして、今年二度目の富士山。 登って行くと、どんどん残っている雪が多くなって、休憩所手前のスノーランドではスキーをしてる子供達が見えた。
せっかく上がって来たのに、休憩所からは全く見えなかった。残念。
まだ時間はたっぷりある。 どこへ行こうかと相談して、前回いった温泉に行く事にした。 せっかく行ったのに、年末なのでお休み。これも残念。
行くところがなくなったので、トイざラスにでも行こうと、車を走らせる。 あたしはプチブライスという小さな人形を買う。ここもそんなに時間がつぶせる場所じゃぁないね。
「さて。どうしようか?」
「えっと。まだ時間はあるけど」
「こんなとこじゃぁ、~*Yuuちゃんにくわへて貰う事も出来ないなぁ。」
「え?」
ちょっとドキっとした。
車に乗ってまた少し走ると、昨夜泊まったホテルの近くだった。あ、こんなとこまで戻ってたのね。
「えっとー。ホテル行って休憩します。」
「はぁ。風呂ですな。」
「あい。風呂です。」
「そかそか。」
「だってくわへて貰うとか言うからぁ。」
「そかそか。くわへたひのね。」
「くわへ納めます。」
どこにしようかと考えずに、目についたホテルに入る。 そして、そこは昨夜泊まったホテルの隣だった。
24時間以内にホテルのはしごをするのは初めて。
部屋は小さくて、ベッドだけでいっぱいで、ソフトSMとか書いてあって、壁にX型の張りつけ台があった。でもそれだけで、その他の装飾はくまのぷーさんという、まことにミスマッチな部屋。
彼が用事の電話をしている間に、あたしはお風呂にお湯を溜める。 昨夜のホテルにはバスバブルがなかった。今日のホテルにはちゃぁんと備え付けてあった。
勢いよくお湯を落とすと、お風呂が泡でいっぱいになる。
「どこらへんがSMなんでしょうね?」
「うむ。張りつけ台でしょう。これがソフトなのかもだ。」
泡風呂に入る。わーい泡だぁ泡だぁ。気持ちいいねぇ。 泡風呂で戯れて、特殊椅子の使い方をふたりで考察して、実践して、マヌケっぽい。
「ねへ。ソープとか行った事ってないの?」
「なひよ。」
「じゃぁ使い方わからないんだよねえ。」
「なんか秘密の使い方があるかもだよ。」
「ネットで検索しないとね。」
ベッドで戯れる。 あたしは思う存分に唇と舌で彼を愛撫して、また意地悪な事を言われて、それでも濡れてしまう。
「濡れてるだろ?」
「濡れてないよ。」
「入れてみようかなぁ…。すんなり入りますが。」
「おかしいですね。」
「弄ばれたりすると濡れるかもです。」
あたしが望んでいるようにしてくれる。 身体のどこかを噛まれると痛くて涙が出そうになるけれど、それが感じる。 嫌な事をされているという状況に濡れる。
どうにでもしてほしいと。 もっと辱めてしてほしいと。 無理矢理にでも犯して欲しいと。 恥ずかしい姿を見て欲しいと。 いやらしい言葉でいじめられたいと。 あたしはいつも思っているのかもしれない。
はじめて経験すること。 それはかって、あたしが他の男には激しく拒否した事だった。 なぜか、この日はあたしは拒否しなかった。 むしろあたしから望んだのかもしれない。
変わる。 変化する。 確実にあたしの中が変化している。 怖いという想いと未知への興味と 痛みと恐怖といろんな感覚が混ざりあっていた。
今年最後のセックスは痛くて怖くて、それでいて不思議な快感で あたしはあたし自身のこの1年の変化に自分で驚いていた。 不思議なセックスだった。
あっと言う間に時間は過ぎて、外に出るともう暗かった。 新幹線の指定席ととらないと。
駅までの間に、さっきのセックスを反芻する。 思い返してみるととても恥ずかしかった。
駅に着いて、指定席を検索するとすべて満席。 年末30日の夜だものね。仕方ないかも。 それでも、ハードなセックスで疲れたあたしは座って帰りたかった。 奮発して、グリーン車。
…いいよね。今年1年がんばったんだから。
自分に言い訳しながら、えいっと買ってしまった。
一緒に何か食べたかったけど、駅の近くには店もなかったし、時間もなかった。 仕方なく、コンビニで車内で食べる軽食と飲み物を調達して、あたしは駅まで送ってもらう。
駅前は見送りの車は迎えの車でいっぱいだった。 慌ただしい別れ。
「また来るね。」
「あい。」
「また来てね。」
「あい。」
「ありがとう。」
「いへいへ。」
助手席から降りる時に彼が言う。
「はぁい。お疲れ様でしたぁ。じゃぁ。」
「じゃね。気をつけて。」
彼の車が出るのを見送って、あたしは改札に向かって歩く。 不思議と、切ない淋しさがなかった。
初めてのグリーン車から彼にメールを送る。 お礼の言葉。
やっぱりレスはない。
そだね。いつもそうだよねぇ。別れた後は放置が習慣。
フっと笑って、あたしはリクライニングを倒して目を閉じる。 あれだけいつも眠れないあたしが、この日はすぅっと眠る事ができた。
きっと小さなシアワセなんだろうと思う。
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今年1年ありがと。 今年最後のデートありがと。 日本ブレイク工業の社歌のCDもありがと。 やんこまりたいもありがと。 英字新聞で包んでくれた脱力グッズもありがと。
来年もテキトーによろしくです。
犬ですから。 いつでも尻尾振って待機してます。
2003/12/31 ~*Yuu
2003年12月29日(月) |
2003 Last date |
ひさしぶりの2連休。
あたしは1日中家を掃除していた。 年末だし。 もしかすると彼が来るかもしれないし。
何度か電話で話していた。
「ねへ。年末だうするの?」
「うーむ。わかりません。」
「もうすぐお休みでしょ?こっち来て。」
「行けるとしたら、前半だなぁ。」
「30日がお休みだから。」
「多少前後するかもしれないが、善処しておきます。」
はっきりと答えは出さない人だ。 できるかどうかわからない先の約束は彼は絶対にしない。 だからいつもあたしはギリギリまでヤキモキして待つ事になる。
多少前後するかもしれないと彼が言うので、仕事場のスタッフの子に話して、休みを替わってもらって、2連休できるように調整した。 あとは彼からの連絡を待つだけ。
28日。連絡はない。もう彼は仕事も休みになっているはずなのに。 明日からやっとあたしの休みだというのに。メールを送ってもレスはなかった。
29日。お休み。相変わらず連絡はない。 どうするのか?どうなるのか?そう思いながら、考えないように考えないようにとあたしは家を綺麗にすることに没頭する。
ゴミを出して、布団を干して、洗濯をして、掃除機をかけて…。 年末だということもあるけれど、いつ彼が来てもいいようにと思っていた。 急に来る事もある人だから。急に来てもいいように。
何度かメールを送る。相変わらずレスはない。 もしかするとダメかもしれないなと、そう思って、期待はしないようにしている。 でも心のどこかで、もしかすると来るかもしれないと、ほんの少しだけの希望。 1日に何度も携帯をチェックする。やっぱり返事はない。 その度にあたしは声に出して言った。
「チキン様のばか。」
きっと10回は言っただろう。もう最後は半泣き状態。
ほとんど掃除が終わって、窓の外はもう暗くなっていた。やはりまだ連絡はない。 もう、絶望的…かな?
お友達が夕方来るかもしれないと言っていたのでメールを入れてみた。
「晩ご飯一緒に食べよう。」
そのメールにもレスはない。 彼にもメールを入れてみた。
「連絡下さい。」
相変わらずレスはない。 みんな年末で忙しいんだよね…。なんだかひとり取り残されたようで少し淋しい。
久しぶりに1日中動き回って疲れたので、お風呂にお湯を張ってゆっくりと入った。 お風呂から上がると、お友達からの返事のメールが来ていた。
「9時頃になるけど待っててくれる?」
あたしはもう彼は来ないと思っていたので、待つよとメールを入れた。 こんな時間になっても何も言って来ないのはきっともう無理なんでしょう。
彼女が来たらでかけられるように、洋服だけ着替えた。スカートにセーター。お休みの日くらいスカートがはきたかったから。いつも素敵な彼女と一緒に出かけるのに、ジーンズは嫌だったし、少し鬱気味だったから、華やかな気分になりたかったのかもしれない。お風呂上がりなので、お化粧はまだいいやと思ってしなかった。
少しブルーな気分でCDをかけてぼーっと聴いていると急に携帯が鳴った。彼からの着信音。予想もしていなかったので慌てて出る。少しドキドキしてる。こんな時間の電話…もしかしたら。
「こんばんわ。」
「こんばんわ。」
「業務連絡です。実は今日出張してました。」
「え?出張?どこ?」
「東京。」
「…そなの。」
「いやぁ、そこから飛行機で行こうかと思ってたんだが、実は明日しなければならないことが出来まして、結論からいうと、今回は無理です。」
「え…無理なの?」
「あい。」
「じゃぁ、来年まで逢えないの?1月は無理だよね。忙しいし。…2月とか?」
「そんな先の事はわかりません。」
「期待してたのにぃー。諦め切れないよう。」
「はぁ。」
「明日はそれだけなの?他は何もないの?」
「ないよ。」
「じゃぁ、あたしが動けば逢える?行ったら逢えるの?」
「うむ。大丈夫だね。」
「じゃぁ、行く。明日行く。」
「あい。」
そんな会話をして、急遽明日、あたしが行く事にした。 時計を見ると7時40分だった。彼の住む町へ行く新幹線は最終がもう出たところだった。 もう少し早く連絡をくれていたら、今日行けたのに…。それが悔しかった。
思いついて、ネットで検索をかける。 少し手前まで行く新幹線が8時半にあることがわかった。
間に合う!
すぐにメールを入れた。
「途中までなら今日中にいけるかも。」
「良いよ。」
その返事を受け取った瞬間、あたしはスカートをジーンズに着替え、鞄に下着と最小限の化粧品と長袖のTシャツを詰めた。
携帯が鳴る。
お友達だった。
「今から高速乗るから、あと少しで…。」
「ごめん、今から急遽彼んとこ行くことにしたの!」
手短にそう言って、電話を切った。 バッグを掴んで、走るように家を出た。
時刻は午後7時50分。 時間は40分しかない。最寄り駅まで車を飛ばす。
もしかすると間に合わないかもしれない…。
普段なら20分かかる道のり。最寄りのJRの駅から新大阪までは15分程かかる計算。 信号無視を1回した。制限速度は軽くオーバーした。 駐車場に車を入れる。8時4分。 駅に走る。切符を買う。
掲示板に8時7分快速と出ていた。階段を駆け下りて、列車に飛び乗る。
新大阪に着くと階段を駆け上がった。 券売機でチケットを買う。空席検索の時間ももどかしい。
指定席…空席なし。
自由席に変更して、チケットを受け取って、自動改札を通った。
慌てて出てきたので腕時計を忘れてしまったので、携帯で時間を確認した。まだ5分ほど余裕がある。何も食べてないので、サンドウィッチと飲み物と雑誌を買って、雑誌を買ってホームに上がると、ちょうど新幹線が滑り込んで来たところだった。 新大阪始発だ。だから自由席はガラガラ。助かった。
乗り込んで席に着いて、やっとほっとした。 「無事に乗れました」と彼にメールを入れ、デッキに出てお友達に電話をかけて事情を説明する。彼女は急にキャンセルしたあたしに「気を付けていっておいで」と言ってくれた。
席に戻って、ふと我にかえると、化粧もせずに慌てて来たことを今更ながら恥ずかしく思った。そして、思いついて携帯ネットで列車検索をしてみる。
え?うそ?
検索結果には、 8時半と9時台の2本の新幹線。
…これが最終じゃなかったのね。
家で検索したときは、この1本しか出なかったので、勝手に最終だと思い込んでいた。なんておばかさんなの!思いこみで、スッピンでずっと走って来たのに! そんなことを考えると、誰も見てないけどあまりの恥ずかしさに顔が赤くなった気がした。
でも、ま、いっか。早く着けば早く逢えるし。 それよりもお化粧しなきゃ。
貴重品と化粧ポーチを持って、あたしは洗面台のある連結部にゆっくりと歩いていった。
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自由席はガラガラだった。
ふたりがけの窓際に座って、雑誌をぱらぱらとめくる。すみからすみまで目を通す。 時間を確認すると、まだ1時間も経っていない。
仕事場のスタッフに今日の様子をメールで聞く。 明日の指示を出して、よろしくねとメールのやりとりを終えた。
まだまだ到着まで時間がある。
買ってきたお茶を飲んで、目を瞑ってみる。眠れない。なかなか時間が経たないのがもどかしい。ふと気付いた。あたしは彼と逢ってからどこへ行くだとか、どうするだとかまったく考えていなかった。ただ、少しでも長い時間一緒にいられると思って、慌てて出てきただけ。
ああ、どうしよう。
晩ご飯は食べたのかしら? 車で駅まではどれくらいかかるのかしら? 部屋には一度帰ったのかしら? 明日の用事は何時頃なのかしら?
何も確認していなかった。ただ8時半の列車に乗ることしか考えてなかったから。
今日はどこに泊まるのかさえも考えていない。 「よいよ。」のメールを見て、反射的に家を出てしまった。
時間を確認すると、あと10分ほどで到着時間。
「もう少しで着きます。どこ行けば良い?」
そうメールを送信して、真っ暗な窓の外を見ていると、徐々にスピードが落ちてゆくのがわかる。ああ、ほんとに来ちゃった。
新幹線が停車する。 荷物を取って、あたしは出口へ向かう。ドアが開く。
「寒っ。」
外は寒かった。 長袖のTシャツを持ってきて良かったなと思った。 でも、デート用の服装じゃぁないわ。考える暇もなかったもの。 ただ、きっと寒いだろうと思ったからジーンズに履き替えただけ。 色気も何もないダウンジャケットを着てきたことを少し後悔。
改札を出る前に少し戸惑う。改札は2カ所あって、どちらを出ていいのかわからない。 彼から連絡があるまで待っていようと、待合室へ入ったとたんに携帯が鳴った。
「どちらですか?」
「まだ改札出てないよ。どっちに出れば良い?」
「どちらでも。」
「うんと。」
「じゃぁ、淋しい方で。後2−3分ほどで着きます。」
「あい。わかりました。」
指定された改札口を出て少しすると見慣れた車が走ってきた。 一月半ぶりだ。
車に乗り込もうとすると、助手席はCDやMDでいっぱい。
「ちょっと待っておくれ。」
「あい。」
彼が荷物を後部座席へ移動するのを待って、あたしは車に乗り込む。
「こんばんわぁ。」
「こんばんわぁ。」
「だいじょぶなの?」
「ん?だいじょぶだよ。」
「ていうか、まだご飯を食べてないんだよ。ガソリンも入れなあかん。 あなたは食べたのですか?」
「新幹線の中でサンドイッチを食べました。」
「はぁ。じゃぁテキトーに向かってみよう。」
スタンドを探して、ガソリンを入れて、ファミレスに入った。 車の中では相変わらずくだらない会話しかしていない。
仮面ライダーがどうだとか、アニメの話題とか。そんなのばかり。
ファミレスで彼は鶏の唐揚げとピザを頼んで、あたしは少しだけとオニオングラタンスープを頼む。料理が来るまでの間も、普通に話す。一月半ぶりなのに、全然久しぶりなかんじがないのが不思議。
「さて、行きますか。」
彼がそういって席を立つ。 会計を済ませて外に出ると、やっぱりとても寒かった。
車を走らせながら彼が急にあたしに聞く。
「それはそうと、勝手に群生している場所へと向かってますがよろしいでしょうか?」
「あい。よろしいです。とうか、そこしか泊まる所ないでしょう?」
「はぁ、そうですね。ではどこが良いすか?」
「どこでも。でも年末だし空いてるのかなぁ?」
ラブホテルがいっぱい。 毒々しい程のネオン。どこも少し古ぼけた感じがするのがたまにきずです。 少し洒落たところはやっぱり満室。
「そこは泊まり高いよう!」
「そか。」
「あい。どこでもいいけど、やっぱ高いのはダメでしょう。」
「じゃあ、ここは?」
「あ、ここでいいよ。」
ワンルームワンガレージ。 ガレージの上に部屋があるタイプ。 荷物を持って、トントンと階段を上がって部屋に上がった。
「うわぁーーーーー。すごひねぇ。」
「うむ。いい感じだな。」
すごいレトロな感じでした。 今時、エアシューターでお支払いするっていうのもすごい。 幾何学模様のカーペットだとか、天井が鏡張りだとか、古いヒーターだとか。 でも、そゆのはぜんぜん気にしない。 なんていったって、あたしたちは以前、最低ランクのラブホテルを経験したし。 あたしはさっそくお風呂にお湯を入れはじめた。
ソファに座って、持ってきたものを彼に渡す。
「あい。これ。」
「なんですかあ?」
「クリスマスプレゼントです。」
「はあ。それはどうも。」
「開けてみてください。」
「あい。」
「えと。XLにしてみました。良いやつらしいです。普通に着れるでしょ?」
「あい。普通に着れますね。」
「それは良かったです。」
これで彼にクリスマスプレゼントを渡す事ができた。 あたしが貰ったものは甚だしく脱力グッズだったけど。 やっぱり、普通にクリスマスっぽいこともしたい。
お風呂がいっぱいになった。 相変わらず彼は潔く、テイっと着ていたものを脱いでしまって、風呂だ風呂だーと入っていく。お湯の中で少し戯れた。
「絞ってみやふ。」
「何も出ませんよ。」
「…出たぞ。」
「はっ。ほんとだ。なんで出るんだろふ。」
飲んでいる薬の作用で、あたしは「おっぱい」が出るようになっているらしい。笑 逢うたびにそれを確認されて、なんだか恥ずかしいような情けないような…。
あたしはお風呂から上がって、洗面所で顔を洗う。 さっぱりとした気分でベッドに横になった。
「さてと。とりあへずくわえるか?」
「うんと。くわへなひよう。」
「ん?何から始めるんだ?」
「キスから始めてください。」
「うーむ。小さいところからくわえていただこうかと思ったんだけどね。」
ひさびさのキス。 何もかも一月半ぶりです。
久しぶりのセックスは、ちょっと痛くて、それでいて気持ちよくて、たまらなくて、声が出てしまう。それを抑えようとすると、別に出してもいいんじゃぁないか?とか言われて、あたしは抑えることを止めて声を上げる。
何度もあたしはイッて、疲れると離れて、何度かあたしは彼を口に含んで愛撫する。 嗚呼間を押さえ込まれる無理矢理な感じにあたしはまた欲情する。
「お口でイッテしまおうかなぁ。」
意地悪をするかのような彼の声が頭の上で聞こえる。
「ヤだ。それはヤだ。」
「中でいって欲しいのですか?」
「当たり前です。」
最後はあたしの中でイッテ。
動きが激しくなって、彼がイクよと言う。 あたしも、もう一度果てる。
終わって離れようとする彼をあたしは制止する。 「も、少し、このままで。」
中でイッタ後の余韻がたまらなくイイ。 しばらくの間、あたしはそれを味わっていた。
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「ねへねへ。明日、何時出発?」
「うーむ。午前中には着きたいなぁ。」
「そかぁ。じゃぁ逆算して下さい。」
「10時ってとこだな。」
「じゃぁ9時にアラームを。」
「俺は9時45分でも間に合うよ。」
「あたしが勝手にくわえて、勝手に乗る時間も含めて9時です。」
「はぁ。」
携帯アラームを彼がセットして、あたしは睡眠導入薬を半錠飲んで、ベッドに潜り込む。
一月半ぶりの腕枕。しあわせー。
「暑いよ。」
「ん?暑い?」
「いや、~*Yuuちゃんの身体が熱いんだよ。」
「そかぁ。相変わらず寝付きはいいんだよね。」
「うむ。寝起きは悪いけどね。」
「ものっそい悪いね。」
そんな会話をしながら、薬の効き目もあって、あたしは知らない間に眠っていた。
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