お茶の間 de 映画
楽天広場blogのHappy? おちゃのま*しねま の記事の保存庫です。
よろしかったら母屋に50音順リストやBBSもありますので、遊びにいらしてくださいな♪

2004年11月30日(火) 「ベオウルフ」古代叙事詩を荒廃した未来を舞台にB級感バ〜リバリで展開♪

『ベオウルフ』【BEOWULF】1998年・英
監督:グラハム・ベイカー
脚本:マーク・リアヒー/デヴィッド・チャップ 
撮影:クリストファー・ファルーナ 
音楽:ベン・ワトキンス
 
俳優:クリストファー・ランバート(ベオウルフ)
  オリヴァー・コットン(城主、フロスガール)
 ローナ・ミトラ(城主の令嬢、カイラ)
ゲッツ・オットー(ローランド)
レイラ・ロバーツ(女の夢魔(怪物グレンデルの母
ブレント・ジェファーソン・ローワ(武器庫長)

ストーリー用ライン


荒廃しきってかつての文明の面影はどこにもなく、どこか中世の雰囲気が漂う未来、ある領主の城がそびえる荒野。
人々は恐怖と呪いに支配され荒みきっている・・・。

亡骸を葬る炎が、城のチューリップ状の屋根から絶えず煙を
はき出し、辺りを禍々しい空気で染める。

今夜もまた、怪物グレンデルが城で暴れ、兵士たちが命を落とした。男勝りの美しい姫君カイラは、今夜こそ自分も出陣するというが、城主である父は許さない。

怪物はぎりぎりひとの形を留めているが、夢魔の如く神出鬼没で恐ろしく強く、手がつけられない。
城主自ら武器を手に怪物に立ち向かうも、怪物は「お前は殺さない」と唸り声をあげるのだった・・・。
一暴れしては、闇に消えてゆく怪物・・・・。

無論、皆このような城、抜け出したい。城に憑いている悪鬼なのだから。
だが、城の周囲には、城の呪いと穢れを城中だけに留めておくべく、大勢の武装兵が取り囲み、女子供であっても逃げ出してきたのを見つければ悪魔祓いと称して惨殺するのだ。

逃げ場のない城の者たちは夜は恐怖と戦闘で眠れず、昼は厳しい訓練のため憔悴しきっていた。そろそろ食料も底をついてきていたのだ・・・。

そこへ、銀髪の精悍な男が闇色の馬にまたがり登場する。
彼の名はベオウルフ。
武装兵と一戦交え、自ら望んでこの呪われた城にやってきた。

目的は、怪物退治だ。

だが、城のものは正義の味方の登場だなどとは思わない。
先日訓練中に変死した城主の娘婿(カイラの夫)の一族が偵察に来たと警戒している・・・。

ベオウルフは悪魔と人との間に生まれた呪われた男。
邪悪なものに惹かれて世界を旅し続けているのだ・・・。

次第にベオウルフの強さを知り、頼りにするようになる城の人々。
だが、ベオウルフの邪悪さを惹きつける能力により、怪物は
夜となく昼となく頻繁に出現しては以前よりもより残忍に殺戮を
繰り返すようになる。

それに平行し、城主は夜な夜な淫靡な娼婦の悪夢にうなされる。
女は、姫君カイラに想いを寄せる城の護衛隊長の前にも姿を現す・・・。
この女はいったい誰なのか。何が目的なのだろうか。

苦戦の末、ベプルフは怪物を倒し、切り取った片腕を城主に差し出す。
悪夢は去った、と城は祝賀ムードに包まれた。

だが・・・・・。


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コメント用ライン


デンマーク王とカインの末裔の呪われた物語である古代叙事詩、
「ベーオウルフ」(岩波文庫にもあったような)のSFバージョンです。どこが“えすえふ”なの?と訊かれると〜〜、
まぁ、時代設定が未来なのは、あのチューリップ型の焼却炉とか、城の微妙にハイテクな(ヘンなエスカレーターというかはしご昇降機というか)あたりを見ると、そうかなぁ、と。
あ、あと最初に殺される娘がグリーンのレースつきのパンティ
はいてましたね(どこ見てるんだ

武器もなにげに楽しい工夫がいっぱいの仕掛け武器で、
えすえふっぽいの。
怪物もファンタジー要素(ダーク・ファンタジーですよ)バリバリ
だしね。

えーと、今度(予定では2005年)「ベオウルフ(Beowulf & Grendel)」を再び映画化、公開するようですね。主演はジェラード・バトラーで。でっかい俳優びしばし使っているようなので、
私好みのB級にはならないかもな〜と思ってみたり。
もともとはカインの末裔がらみのアンチ・キリストものですからねぃ、どーんと金かけてもB級になりますように(祈
指輪物語みたいに壮大なのにするのかな〜・・・・。
英語のサイトはあったんですが読むのしんどいのでいいや(笑)

わ〜いw やっぱりクリストファー・ランバートは今回も
不死身というか不死者(笑)「ハイランダー」シリーズ万歳。

あの銀髪と表情の乏しい(演技でしょう)風貌が、なにかこう、
この世のモノでない雰囲気を漂わせています。

ところでコレ、漫画でいうなら「ベルセルク」の時代感覚と世界観っぽくないですか?
そして、ゲームだと、もうモロに「デビル・メイ・クライ」の世界。音楽も血湧き肉躍っちゃうあの感じですね。
で、ラスボスにあたるグレンデルの母親は、ゲームの「パラサイト・イブ」の第三形態(3だったかなぁ、とにかく最終形態)にかなり似てる!
両方とも好きなゲームだったもんで、懐かしさを感じてしまった。

さて、ストーリーですか?
まぁ、いいじゃないですか、とってもシンプルで、アクションを
楽しむのの邪魔にならなかったですよ♪♪
オチのまとめかたも、とても正当派で好感度大。

さぁ楽しいツっこみタイムです。

★くどいようですが、最初に死んだお姉ちゃんのおへそとレースのパンティに萌え←ここ、無視してください。

★甲冑つけた男見るとどんなブザイクな男でも身も心も捧げたくなってしまう甲冑マニアの女性の皆さん、衣装がモロこちんこちんの
やや笑える甲冑で萌えます←これは共鳴してくれる人がいそう。

城主、ひとこと「こりゃ見えん。」に大爆笑。
目のところが空いていない兜じゃそりゃ見えないでしょう。

★えーと、よく頑張りましたね、ベオウルフさん。
ところで、城がほぼ全滅してますが。

★つまり彼は救世主ではないんですな。
邪悪なモノと闘うのが人生(人かどうかあやしいが)の目的ですんで、敵を倒せれば、後は野となれ山となれってことで。

★そこが好きだな〜。正義の味方じゃないんだもん。
強くてかっこいいのに、城、全滅だよ(笑)
敵を滅ぼしてあげても感謝してくれる人がたった1人を除きみんな死んじゃってますよ(汗

普通さ、ばんざーい、ありがとう!って感じでこのテのものは
幕を閉じがちじゃないですか。
荒野にぽつねんと2人。
グッジョブ!! 

大変ですね。
邪悪なものと闘ってないと、自分が邪悪になっちゃうんですよ。
ってことは、邪悪なものと戦闘中にクビでも落とされないかぎりは
死ねないゾンビ男ですね。

よ〜〜く考えよ〜〜♪ ヒーローはゾンビだよ〜〜♪

個人的希望。
あくまでも銀髪の貴公子ランバート様で続編を激しくキボンヌw
呪われた血をひいてはいるが人間の血のほうが濃い、ベオウルフジュニアが誕生してぇ、なんかやってください(なんかって・・・


・・・・オススメターゲット・・・・

甲冑マニア。
中世っぽい雰囲気が好き。
中世っぽい雰囲気にバリバリテクノな音楽は合うと思う人。
華麗なバック転で身をかわして逃げる主人公に、「あのー、たぶん走ったほうが速いと思います」とツっこんであげたい人。
ヒロインの、ドレスからこぼれ落ちそうなおっぱいの谷間に
見とれていても物語の展開についていけると言われると、つい
見たくなる人。



2004年11月28日(日) 「ボクシング・ヘレナ」美女の虜になってしまった男が彼女の四肢を切断し、文字通り“虜”にし監禁する。

『ボクシング・ヘレナ』【BOXING HELENA(箱詰めのヘレナ)】1993年・米
監督: ジェニファー・チェンバース・リンチ 
脚本: ジェニファー・チェンバース・リンチ
撮影: フランク・バイヤーズ 
音楽: グレーム・レヴェル
 
出演: シェリリン・フェン(ヘレナ)
ジュリアン・サンズ(医師、ニック)
カートウッド・スミス(ニックの同僚、アラン)
ビル・パクストン(ヘレナのセックス・パートナー、レイ)
ベッツィ・クラーク(ニックの恋人、アン)

ストーリー用ライン


エリート青年外科医師、ニックは医師としての腕前もよく、患者にも同僚にも優しい美青年だ。

彼は裕福な家庭で育った。名医の父、美しい母。
だが、仕事しか頭にない父にも無視され、性的には魅力のない父に
愛想をつかし豊満な肉体をもてあました母は、昼となく夜となく
客人たちと情事にふけっていた。

その美しく妖艶な母の淫らさ、そして邪魔もの扱いされた記憶は
ニックのトラウマとなる・・・。

そんな母も年老い、天に召された。
特に感傷はないはずだった。

難しい手術を終え、同僚とバーで一杯ひっかけていると、
奥のほうに妖艶な美女が・・・!
ヘレナだ。
たった一度だけ、抱いたことがある。もう何年も前のことだ。
雷に打たれたように怯え、バーを逃げ出すニック・・・。

何年かぶりで訪れた母の屋敷に取り憑かれたニック。
情事の後で、乳房を露わに冷たい目で自分を見下ろす母を
思い出したのだ。
ここで暮らすことに決め、恋人のアンを夕飯に呼んだ。

病院勤務の清楚なアンが料理を作っている間に、
ニックはジョギングに出るふりをして、ヘレナの自宅を覗きに・・・。

精悍な若い男との淫らな行為にうっとりとふけるヘレナの姿を見、
ニックは何がなんでもヘレナを手に入れようと決意する・・・。

もう、ニックは仕事もアンも興味がなかった。
引っ越し祝いと称してパーティを催し、ヘレナも招いたが、
ヘレナはニックになど目もくれず、他の男と闇に消えた。
ニックを鼻で嗤って・・・。

この夜、ニックはヘレナのバッグから住所録を抜き取って隠していた。もちろん、もう一度逢う口実を作るためだ。

怒り狂ったヘレナがニックをののしりながら屋敷の外に飛び出すと、暴走してきた車にヘレナが無惨にも轢かれてしまう・・!!

数週間後。
ニックの屋敷には、両足を切断されたヘレナが女王のように花だらけのベッドに寝かされていた・・・。

ヘレナは悪態をつき、早漏のニックをあざ笑い、車いすで暴れる。
ニックはヘレナの両腕も切断してしまうのだった・・・。

祭壇のように花で飾り立てた椅子に胴体だけになったヘレナを恭しく置くニック・・・・・。

食べさせ、化粧させ、24時間ヘレナにつききりだった。
所有物として愛しているのか、女として愛しているのか
はっきりしろと迫るヘレナ。
だが、ニックにはその違いが理解できない・・・。

女として愛しているのならセックスしてみろと迫るヘレナ。
だがニックは崇拝するヘレナに怖じ気づき、キスもできない・・・。


この歪んだ愛に行き着く果てはあるのか・・・・。


残念ながらビデオもDVDも発売されておりません・・・・。
レンタルビデオ屋さんにはけっこう置いてあります。

コメント用ライン


マドンナが出演を拒否、キム・ベイシンガーが途中降板して
その訴訟費用がとんでもない大金だったことなどもこの作品の本質とズレたところでイメージを悪くしている。

でも、キムは出なくて正解ですね。

1994年のラジー賞でワースト監督賞を受賞(?)。
D・リンチの娘だけあって、倒錯愛の描き方と官能美に関しては
文句なし、だが、
あらかじめ、申し上げておきますが、映画の展開で最も嫌われる
「妄想(夢)オチ」です。
なんでわざわざバラすかというと、例えばクローネンバーグ監督の映画のような凄惨なラストや、逆に「ミザリー」のような逆転勝利を期待してご覧になると、この2時間を返せ〜〜!!と
叫ぶことになる可能性が高いから。

一応、オススメの映画を紹介するというスタンスでいますので、
ストーリーが面白いのか、ディティールが面白いのか、テーマ性が面白いのかを明記しておかないと、いかんと思ったのですよ。

あまりにもおすすめ度数の低い(あくまでも主観で)ものは、公の場でけなす必要性を感じないので、日記に載せないことにしています。

ここで書いているということは、好き嫌いのいかんに関わらず、
紹介しておきたい、と思うからです。

映画全体の雰囲気は、
(「ミザリー」+「コレクター」=愛から監禁)÷「ZOO(P・グリーナウェイ)の美意識」かな〜?

「ZOO」の世界観にかなり近い美学かなぁ?

事故以降が彼の妄想であろうことは、予測がつきました。
なぜなら、すべてが彼の望み通りであるから。
好きな女を監禁し、かつ、彼女に“罵られ続けること”。
母にされてきたこと=“罵られ軽蔑される”こと。
歪んだ究極の愛情表現であり、ヘレナに股を開かれて受け入れられてしまうことは、言葉とは裏腹に、ニックの望むところではないのです。

だから、ヘレナに求められたとき、妄想は幕を閉じます。

もうちょっと物理的なところからゆくと、
キスもできない女神的な(実際、ミロのヴィーナスと混同している)存在の彼女の、シモの世話ができると思います?
彼女の股に触れておしっこやウンチの世話ができるはずがありません。見たとたん、早漏の(実際にはたぶん違う、そう自分を卑下している)彼はお漏らししてしまうでしょう。

常に新鮮な大量の花が飾られていること、収入はどうした、
ヘレナの着せ替え人形のようなドレスはどうした、
越してきたばかりの母の家に大手術が行える研究室などあるわけがない、車いすを動かせないようにするだけなら、手を肘掛けに縛ればよいだけのこと、2週間以上行方不明になれば自宅に警察の強制捜査が入るのが普通、洗濯はせず、一度来た服は二度と着ない、など、あまりの現実味のなさに、これは
妄想だなと予測しつつ見ていました。

そういう意味で、ミロのヴィーナスが倒れて(理想の崩壊)、
夢が終わる、というのは理にかなっているというか無理がないというか・・・。

もっと薄汚い雰囲気だったら(クローネンバーグみたいに)、
とことんの破滅を期待できたのだけどね。
両手両足のない人は、あの椅子では倒れずに座るのは不可能。
実は、計算されつくしているのじゃないかしら?と思ったわけです。

いきなりの、なんちゃってね、妄想でしたw っていうオチとは
ちょ〜〜っと違う。

ストーリーは、確かに妄想オチ。
だけれども、映画が描こうとしたのは、その妄想の部分なのです。

結末よりも、主人公の心の世界をメインテーマに描いた作品だと
考えていいでしょう。

ジュリアン・サンズの妖しい美しさと哀れさ、シェリリン・フェンの、冷たい気品と生臭いフェロモン臭が同時に漂う不思議な魅力、
きわどいバランスの上にあぶなっかしく儚く存在する映画なのです。

ごく個人的な趣味を言えば、最後まで堕ちてほしかったけどね(笑)
「ZOO」じゃないけど、両足を腿で切断された娼婦は足を決して
閉じられない。死ぬまで股を開き続け愛され続ける。
両手をも失ったヘレナは自慰にふけることも許されず、ニックに
悦ばせてもらうしかない。
そのへんまでつきつめれば、R-18指定のすげー作品になっちゃったでしょうねぇ。







2004年11月27日(土) 「サタデー・ナイト・フィーバー」お気楽ダンス映画だと思ってました。めちゃめちゃ正当派の苦悩と鬱屈と闘いながら成長する青春映画。

『サタデー・ナイト・フィーバー』【SATURDAY NIGHT FEVER】1977年・米
監督:ジョン・バダム 
原作:ニック・コーン “Tribal Rites of the New Saturday Night"
脚本:ノーマン・ウェクスラー
撮影:ラルフ・D・ボード
音楽:ビー・ジーズ/デビッド・シャイア
振り付け師:レスター・ウィルソン

出演:ジョン・トラヴォルタ(トニー)
カレン・リン・ゴーニイ(ステファニー)
バリー・ミラー(ボビー)
ジョセフ・カリ(ジョーイ)
ドナ・ペスコウ(アネット)
ジュリー・ボヴァッソ(フロー)
ポール・ペイプ(ダブルJ)
マーティン・シェイカー(トニーの兄)

ストーリー用ライン


70年代、ブルックリン。
川を1本隔て、リッチなインテリたちが住まうマンハッタンが見えるが、ブルックリン生まれはブルックリンで育ち、そこで朽ちる。
貧民街からの脱出は簡単じゃない・・・。
そんな時代と場所。

イタリア系移民の一家に育った青年トニーは二十歳。
月〜土曜の昼まで小さな金物店で真面目に働いている。
商品の知識も豊富で、常連や雇い主からも信頼されているが、
別にこの仕事が好きだとは思わない。
稼ぐためにやってるだけのこと・・・。

彼の家族は、父は失業しており、母が生計を立てている。
トニーの給料なんぞ、わずかばかりの食費を入れたら、週末使っておしまいだ。
兄は家族の・・・正確に言えば母の・・・誇り。
神父になり、今は家を離れている。

優秀な兄と比較され嫌みを垂れ流され、夕食の時間も刺々しい空気。そんな家にトニーの居場所はなかった。

さぁ、一週間分のストレスを発散し、生きている実感を味わう時が来た!土曜の夜だ。

ハデハデな柄物のボディシャツ、ピッタピタのギャバンのパンツ、
ごっつ厚底のプラットフォームシューズ。
髪だって1本も乱れてないぜ!
ビシィィィッとキメたトニーは、いざ町のディスコへ繰り出す。

この町はカオの連中と合流、ディスコへ到着すると、
仲間たちはまず酒とオンナだ。

でもトニーはどっちも興味ない。呑むと足がもつれるじゃないか。
女なんて漁らなくても、しつこいファンはいっぱいいる。
いっぺん寝てやったアネットはもうステディのつもりで
つきまとう。
でもヤってる時間があったら踊りたい。

もうじき、このディスコでコンクールがあるのだ。
賞金もデカい、プライドだってある、絶対優勝したい。
とりあえず、まぁまぁ踊りの巧いアネットをパートナーに
練習することに。

颯爽とフロアに降りると、“キング”の登場にサっと道をあける
若者、彼に当たるスポットライト。
誰も真似できないめちゃイカした振り付けで皆を魅了する。
この瞬間だけ、トニーは全身の細胞が生き返る気がする。

今夜は見慣れない娘がいる。ステファニーというらしい。
なんだかこの辺のブルックリン娘と違う・・・。
ソフィスケートされた身のこなしと卓越したダンスのセンスに
驚愕するトニー。

なんとかして彼女をパートナーにコンテストに出場したい!
ステファニーに頼み込むが、いかにもブルックリン男な貧乏くさいトニーに、ステファニーは嫌悪感を示す。

彼女はマンハッタンのオフィスで働いており、毎日有名な文化人と
あうのだと自慢話ばかりで、なんともいけすかない、高慢ちきな娘だ。

だが、トニーはどことなく気づいていた。
気取った態度の影の孤独に。攻撃的で高飛車な言動の根底にある、
自分をより高めたいと必死な向上心に・・・。

利発なステファニーも気づいていた。トニーが下心で女に声を
かけるようなつまらない男じゃないことを。真剣に踊りを愛する
ことを・・・。

反目しあいながらも少しずつ、近づいてゆく2人。

近づいてくるコンクール。
だが・・・・。

神父だった兄が聖職を棄ててしまったのだ。
一家の危うかった絆は脆くも崩壊する。
兄もまた、無償に親に愛されない孤独な存在だった・・。

親友が愛しているわけでもないただのGFを孕ませてしまった。
カトリック信者に中絶は許される時代ではない。
でも、結婚なんて気が重すぎて・・・。
苦悩して必死に相談をもちかける友に、トニーは冷たかった。

・・・自分のことだけで、精一杯だった。

コンクールの夜、トニーは自分の生き方の薄っぺらさと直面することになる・・・・。


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コメント用ライン


つい最近、デジタルリマスターされて映画館で上映されたようですね。パパイヤ鈴木おぢさまの影響力もあろうし、最近、また人気沸騰中のジョン・トラヴォルタの出世作を見直そうという動きもあろうし。
そういえば、ケツメイシのPV「君にBUMP」がどっかで
観た景色だよな〜と懐かしく思っていたら、コレだ(笑)

BUMPだもんねぇ、モロですよ。リマスター記念の公式サイトを見たら、“パクってごめんねw”てなノリのケツメイシからのメッセージが(≧∇≦)/  いやいや、リスペクトめちゃ伝わってきますから。

踊りのことは、詳しくないです。見るのは好きだけど、
踊ったことがございません。
ディスコにもクラブにも行ったことないですから。
箱入り娘でしたんで、学校と自宅の往復の日々でございました。
くそ、もっと遊んでおくんだった(激しく後悔)。

本題からズレましたね。

じゃこれは延々、ダンスしている映画か?
いやいや、とんでもない。
あまりにも、ダンスシーンが鮮烈だったから、そして今まで
なかったから(当時ね、無論)、衝撃的だったんでしょう。

映画全体の割合からいって、さほど、ディスコでフィーバーしている時間の割合は多くないです。逆に「エ?これだけ?」という気すら・・・。

それだけ、ちゃんとした青春映画なんですよ。
アメリカが当時抱えていた貧富の差、地域格差の問題。失業。
人種の問題。家族の崩壊。信仰の問題。かなり網羅しています。

コミカルなところで「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」、
シリアスなところで「ミスティック・リバー」。
嫌だ嫌だ思いつつ、ツラい思い出を抱えつつなぜにブルックリンから脱出できないか。
現代の日本人が、「気分をかえて引っ越しゃいいじゃん?田舎から東京出るようなもんだろ?」なんて思ったら大間違いです。
70年代ブルックリンはスキッド・ロウだもの。

その状況下だからこそ、ステファニーの藻掻きがトニーの
ハートを打つのです。

井の中の蛙だった自分を知り、大海の恐ろしさを覚悟しつつ、
跳び発たんとする青年と娘。

ラストシーンの2人の白い衣装は、これからなんだ、という
白紙をイメージさせて爽快な後味を残す。

実に賞味期限の長い、普遍的なテーマを扱った愛される映画だ。





2004年11月26日(金) 「ティコ・ムーン」奇病に苦しむ月の独裁者一族の暗殺を巡り、記憶を無くした反乱軍の英雄、謎の美女と渋いおじさんが華麗に暗躍する。

『ティコ・ムーン』【TYKHO MOON(名前です)】1997年・フランス=ドイツ=イタリア
監督・原案・脚本:エンキ・ビラル
撮影:エリック・ゴーティエ Eric Gautier
音楽:ゴラン・ヴォイヴォダ
主題歌:ブリジット・バルドー“Mr.Sun”
 
出演:ジュリー・デルピー(レナ)
ヨハン・レイセン(アニクスト、ティコ・ムーン)
リシャール・ボーランジェ(グレンバール)
ミシェル・ピッコリ(月の支配者、マクビー)
マリー・ラフォレ(マクビーの妻、エヴァ)
フレデリック・ゴーニー(マクビーの末息子、コンスタンチン)
ヤン・コレット(マクビーの双子の息子、アルヴイン/エドワード)
ジャン=ルイ・トランティニャン(マクビーの主治医)

ストーリー用ライン


いつとはわからない、きっとはるか未来の、ここは月。
独裁者マクビーが支配しているが、政治に意味などなく、
人々は無気力だ。

フランス語が標準語で、英語は禁止されている。
どことなく昔のパリの面影と中東の雰囲気がミクスチャーされた不思議な街並み。
街といっても、絶え間なく降り積もる白い砂で何もかも真っ白。

かつては盛んだった独裁者打倒闘争で、街並は破壊され、エッフェル塔@月 も半分欠けている・・・。

だが、革命を粛清したとはいえ、独裁者マクビーは安穏と日々を過ごしているわけではなかった。

マクビー一族は細胞を破壊される奇病に冒されていた。
首筋に水色の大きな痣。
マクビーにも、自分の双子の弟にも、双子の息子にも痣がある。
ないのは、妻のエヴァと、まだ若い末息子のコンスタンチンだけ。

マクビーは死を恐れ、永遠に生きられる方法を模索していた。
今は、ブタの内臓を定期的に移植してどうにか生きながらえているのだが・・・・。

マクビーを苛立たせているのは、病だけではなかった。
20年前に死んだはずの反乱分子のリーダー、ティコ・ムーンの
自伝が闇で出版され、ベストセラーになっているのだ。

ティコ・ムーンは、20年前に捕らえ、そのタフな脳細胞と神経と臓器を、すべてマクビーに移植する手術の途中、病院が火事になり、そのままティコ・ムーンは姿をくらましたのだった・・・。

いや、生きているかどうかはわからない。本は第三者の手によるものかもしれない・・・。
とにかく、わずかでも生きている可能性があるならば、完璧に適合するドナーであるティコ・ムーンを、再び捕らえ、今度こそ手術で細胞をいただき、自分は170年間、冬眠する、それがマクビーの狙いだ。

かくして、月の住民すべて(400万人いる成人男性のみ)に、
耳から採血検査を行いティコ・ムーン探しが始まった。

当のティコ・ムーンはといえば、20年前に手術で脳をいじられかけたせいで記憶を失い、今は彫刻家アニクストとしてひっそりと孤独に暮らしていた・・・・。


さて、マクビーの独裁を、地球も見過ごしているわけではない。
新国連は、2名の暗殺者を月に送り込み、マクビー一族の命を絶つよう命じる。

マクビーの双子の息子たちが統括する秘密警察の力をもってしても、殺し屋は1名しか始末できず、次々とマクビー家の者が
殺されてゆく・・・。

1人目の殺し屋を片づけたのは、謎めいた真っ赤な髪の美女、レナ。彼女はティコ・ムーンに接近する。目的はティコの暗殺なのか?彼女の正体は・・・??

そしてもう1人、謎めいた男がティコ・ムーンに接触してきた。
自称、アメリカ人ジャーナリスト、グレンバール。
どうやら彼はティコを守ろうとしているようなのだが、理由、所属は謎だ・・・・。

マクビーの末息子、コンスタンチンは、苦悩していた。
自分だけ、青い痣がない。それは、奇病の発病を恐れなくてよいという安心材料にはならなかった。
いつ痣が出る・・?今日か?明日か?毎日鏡をおそるおそる見る。
いや、あるいは、自分は本当はマクビーの子ではないのでは・・・?自分の父はもしや、ティコ・ムーンでは・・・?

記憶の戻らないまま、マクビーの野望に立ち向かうティコ・ムーン。
ティコの生きる原動力は、ただひたすらに、愛するレナを守りたい、その一念に貫かれていた・・・・。


楽天では売り切れです。
アマゾン他でDVDは入手可能。
中古ビデオはここで購入可能(1980円)
ビデオパッケージが見られます。
私はレンタルビデオで鑑賞しました。

コメント用ライン


ん〜〜w 固ゆで卵じゃなくてハードボイルドぉ。

色彩がまずツボ。青いトカゲ(ブルーイグアナ・・?)、
鮮血のような紅い髪、白い街、トリコロ〜〜ル!

粘着質な感じのするアメーバ状の水色の痣というかシミ。
「君の静脈が好きだ」←こんな口説き文句初めて聞いたぞ

ガタカでもそうだったけど、宇宙船だけど宇宙は描かれないという
お金かけないSF!
丸窓の外に地球と月面がちょびっと見えているだけで、
ここは宇宙船の中でぃすw と無理矢理納得させる力業!(笑)

フランス語以外を喋ると身に危険が及ぶっちゅー設定!
でも住民はなんか中東っぽいのも無国籍風を無理矢理醸し出していてとれびあん。
無国籍モノに不可欠なアジア要素はっちゅーと、日本酒飲んでます。娼婦はチャイナ服です。
さすが、おふらんすSFざぁます、とれびあぁぁぁぁぁ〜〜ん。

とにかく、ジュリー・デルビーの美しさがたまりません。
トイレの花子さんみたいな黒髪おかっぱから、真っ赤なボブ鬘、
そして恐らく地毛の眩しいブロンドまで披露してくれます。

そして主人公のティコ・ムーンを圧倒的に抜く存在感の、
渋いリシャール・ボーランジェおぢさま・・・・。

この麗しい2人の会話がまた凄いよ。
「ひとを殺す作家はきらいよ」
「恋する娼婦は嫌いだ」

シビれます。

マリー・ラフォレはなんだかクレオパトラっぽくて妖艶ですし、
かの名優ジャン=ルイ・トランティニャンがポコっとご出演していたりもします。

そうかと思うと、砂漠のガソリンスタンドの婆さんのど根性っぷりを笑うコミカルな要素もあり。

ストーリーはこの際、いいのです。
無重力制御装置もいい加減、ゆで卵はふわっと浮くのに
紙はバサっと落ちるとか、水と空気はどこから持ってきた?
とか、どーでもいいです、気にしません(笑)

でも、この映画、視覚的な部分だけじゃなくて、私のツボをつく
部分が他にもある。
またしても「記憶」です。

今まで、他のSF映画で「記憶こそがアイデンティティーである」
ということを話題にとりあげてきました。
SFの主人公はどういうわけかやたらと記憶喪失です(爆)

「ダークシティ」では記憶のない自分が、存在しているかどうかもあやしく主人公は不安になります。

「JM」では、失われた記憶にはあまり興味がない主人公ですが、
幼少時の記憶に僅かながら郷愁を感じています。
それを犠牲にしてこの仕事を得ている主人公を、ヒロインは
ヘンだと思います。
そして彼は、これから先、記憶できなくなることを激しく恐れます。

「ティコ・ムーン」の主人公。
ぜんっっっっぜん、記憶に執着しません。それはもう、潔いほど。

“人は歴史や記憶にしがみつく。
自分を知れば、他のことがすべて知りたくなってしまう。
だから記憶なんて興味ないのさ、今を生きたいんだ”

で、伝記をポイッ。

おおお、と思ったのですよ。
うだうだしてない。嗚呼、ハードボイルド。漢だねぇ、兄さん。

でも、オンナは記憶に生きるいきものなのです。
エヴァは、ティコが自分を覚えていてくれた、否、思い出してくれたことに感動します。
恋の記憶は、「思ひ出」となり永遠に消えずひたすらに美しい。

ああ、やっぱりこういうトコがおふらんす映画の美点だわ。
SFなのに妙に古き良き香りがするんだよ・・・。



2004年11月25日(木) 「幸せになるためのイタリア語講座」ドグマ95初の女性監督作品。毎日大変で生き方も不器用な可愛いオトナたちの恋模様。

『幸せになるためのイタリア語講座』【ITALIENSK FOR BEGYNDERE(初心者のためのイタリア語)】2000年・デンマーク
★2001年ベルリン国際映画祭 審査員賞

監督・脚本:ロネ・シェルフィグ 
撮影:ヨルゲン・ヨハンソン 
 
俳優:アンダース・W・ベアテルセン(牧師アンドレアス)
ピーター・ガンツェラー(ホテルマン、 ヨーゲン)
ラース・コールンド(レストラン店長、ハル・フィン)
アン・エレオノーラ・ヨーゲンセン(美容師、カーレン)
アネッテ・ストゥーヴェルベック(パン屋、オリンピア)
サラ・インドリオ・イェンセン(ウェイトレス、ジュリア)

ストーリー用ライン


デンマーク、コペンハーゲン近郊の小さな町、冬。クリスマスも近い。

◆アンドレアス◆
教会に、オルガン奏者に乱暴して謹慎処分になった(本当は信仰を棄てたため)ベテラン牧師の代理として、まだ若い牧師アンドレアスがこの町にやってきた。
期限がはっきりしない仮滞在のため、当面、ホテル住まいとなったアンドレアス。
たどたどしい説教や手際の悪さにも、教会のボランティアの中年女性は寛容だ。

◆ヨーゲンとジュリア◆
アンドレアスが滞在するホテル。
中年のホテルマン、ヨーゲンは勤勉で誠実。
今、深刻に悩んでいるのは、4年間インポなこと・・・。
アンドレアスに苦悩を相談しながら、
イタリア語を習っているんですよ、とはにかむ。

実は、ヨーゲンがイタリア語を習う理由は、恋する女性がイタリア人だから。
ホテル内のレストランのウェイトレス、ジュリアはデンマーク語は
ほとんど話せないのだ。

そのジュリアは情熱的なイタリア女性の風貌とは裏腹に、夢見る
乙女。熱心なカトリックで、いつも聖母マリア様に恋の成就を
祈っている処女だ。
彼女が想いを寄せるのは、ヨーゲンなのだが、この2人、互いの気持ちに気づいていない。
その上、ヨーゲンは極端にシャイ、ジュリアは好きな人の前に出ると、気持ちと反対のコトを言ってしまう恋のビギナーだった。

◆ハル・フィン◆
ジュリアの働くホテル内レストランの雇われ店長、ハル・フィンは、元サッカー選手。イタリア語はペラペラで、いつもジュリアに仕事ぶりに難癖つけては大喧嘩。

ハルはなにせ態度が悪いの何の。
客を罵倒する、ココアをぶっかける、注文は無視する・・・。
ホテルの支配人は、クビにしろとヨーゲンにしつこく言うが、
ハルはヨーゲンの親友だ。・・・言い出せないよ・・・。

せめて、髪を整えたらどうかな?ボサボサ長髪でレストランには不向きなハルに、遠回しにヨーゲンが勧める。

◆カーレン◆
仕方なく美容室に向かったハル。
3つしか椅子のない小さな、でもこぎれいな美容室。
もう若いとは言い難いカーレンが1人できりもりしている。
カーレンに髪を洗ってもらうハルは恍惚としている。
初対面なのに、どこか心触れあう2人・・・。

だがその甘い雰囲気をブチやぶったのは、病院を脱走してきた
カーレンの老母。ガンとアル中で心身ともにボロボロの老母の
介護で、カーレンに青春はなかった・・。でも、どれだけ母に罵倒されても、母を愛している。それが親子というものだ。

◆オリンピア◆
ハルが菓子パンを買いに通うパン屋で働くオリンピアは、自宅で
老いた父を介護している。まだうら若き彼女にも、青春はない。
仕事が終わると、娘に毒舌を吐きまくる孤独な父の世話をせねばならない・・・。
オリンピアの母は、彼女が赤ん坊のときに家を棄てイタリアに去ったと父は言う。イタリア人でオペラ歌手だとか・・?

オリンピアは、このぐるぐるな毎日を変えたかった。
字もヘタっぴ、フォークもちゃんと使えない、ドジばっかで
42回も転職しているダメ子ちゃん。自分でわかってるのだ。
変えたい、変わりたい。

市役所で週に一回、夜にやっている初心者向けのイタリア語講座に
入ってみようかと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

イタリア語教室は、今7人。
中年の仲良しご婦人3人組と、ヨーゲン、ハル・フィン、アンドレアス、オリンピア。

今夜もイタリア旅行を想定したレッスンが進むが、講師が心臓発作で倒れてしまい、一命は取り留めたがもうレッスンは無理だという。

後任は、ネイティブ並に話せるハル・フィンに決まった。
彼に会いたくて、カーレンも参加。2人は熱烈な恋に落ちた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もう一組、不器用な2人がいる。
アンドレアスに恋こがれるけど、おどおどするだけのぶきっちょオリンピア。
妻を失った哀しみから立ち直ろうとしながら、オリンピアの想いに
気づき、心揺れだしているアンドレアス・・・。


みんな、懸命に毎日を生きてる。
一喜一憂したり、泣いたり怒ったり、困ったり、頑張ったり。
結構いいトシをして、生き方も恋にも不器用なオトナたちが、
みんな揃って笑える日は来るのでしょうか。


幸せになるためのイタリア語講座 デラックス版 ◆20%OFF!<DVD> [AFD-10717]


コメント用ライン


ドグマ95作品ですけど、ほとんど手持ちカメラの揺れは気になりません。最初の数分だけ、ちょっとグラっとしますが。
オールロケ、自然光、BGMなし、など、2年後のやはり女性監督作品、「しあわせな孤独」よりも正当派ドグマらしくありながら、女性監督らしい視点が、今までにないドグマ作品に仕上げています。

ドグマっていうと、どうしてもラース・フォン・トリアーが提唱しただけあって、リアリティの追求ゆえに、人間の醜さ愚かさを
これでもかとえぐり出す暗い作品が多い。

でもこの作品は、映画が始まる瞬間の「ドグマ認定作品」の
お約束の看板をうっかり見逃せば、ドグマだと気づかないかも
しれないですよ。

ドグマが発祥した頃よりも、デジタルカメラの性能がグっと
上がったのも勝因の1つでしょう。手ブレ対応、高画質。
かつてのドグマのような、ザラザラの粗い画面ではありません。

ドグマ95を敬遠している方にも、安心してオススメできる作品です。酔いませんよ。

登場人物がイタリア語講座に顔を出す理由は皆、さまざま。
純粋に勉強したいからという人もいれば、義理でとりあえず顔を出してみたら仲間と気があって、という人も。
好きな人に逢える口実になるから、という人もいるし、自分のアイデンティティーを求めて顔も覚えていない母の母国語を知りたい人も。イタリア人に恋をしちゃったからという人も・・・。

恋も友情も、人生の方向転換も、きっかけなんてなんだっていい。
彼らはとんでもなく不器用だけど、みんな前を向いてる。

それでいて、全然、がむしゃらじゃない。おいおい、もうちょっと焦れよ、と苦笑してしまうほど、明日があるさぁ、と構えている。

明日のことが考えられないほど追いつめられてしまったとき、
あなたのぐしゃぐしゃの鼻水を拭くティッシュをくれて、珈琲を入れてくれるひとがいたなら、なんてステキな人生でしょう。

なんかもう、懸命に伝えたくて心の底から話しかけたときに、言葉はあまり通じていなくても、ハートが伝わって、あなたの手をキュっと握って微笑んでくれるひとがいたなら、なんてステキな人生でしょう。

親が遺産のひとつも残さず逝ってしまったとタメ息をつくときに、
あなたを遺してくれたじゃない、といってくれるきょうだいがいたなら、なんてステキな人生でしょう。

ケンカして、仲直りするきっかけが掴めなくて心が痛いとき、髪に触れて、見つめ合って微笑んだら“ホントにごめんね”って通じ合うひとがいたなら、なんてステキな人生でしょう。

素直になること。
それが幸せになるためのファースト・ステップだって、この物語は教えてくれる。

新しい言葉を習うとき、年齢に関係なく、赤ちゃんみたいになる。
耳で聞いて、そのまま口に出してみる。
反骨精神バリバリじゃできないコトである。

新しいコトバを習おうと初心者クラスに集まった人たちは、
社会的地位や収入や年齢が違っても、おんなじ一年生。
間違えても、恥ずかしくないよ、誰も笑わないよ。

人生、思い立ったが吉日、いつでも新しい一歩を踏み出すことができるんだと、スクリーンの中の彼らの笑顔が励ましてくれる。



2004年11月23日(火) 「JM」キアヌ×ビートたけしによる超B級わさび醤油味サイバーパンク。ヤクザから逃げつつイルカに助けを乞え!(笑)

『JM』【JOHNNY MNEMONIC(記憶屋ジョニー)】
※ビデオ発売時タイトル:JM/ジョニー・ネモニック
1995年・米
監督:ロバート・ロンゴ 
原作・脚本:ウィリアム・ギブソン「記憶屋ジョニイ」
撮影:フランソワ・プロタ 
デザイン:シド・ミード
音楽: マイケル・ダナ
 
俳優:キアヌ・リーヴス(記憶屋ジョニー)
ビートたけし(多国籍犯罪組織「ヤクザ」の親分、タカハシ)
ディナ・メイヤー(ボディガード、ジェイン)
アイス・T(ロー・テクの指導者、Jボーン)
ドルフ・ラングレン(宣教師で殺し屋)
ヘンリー・ロリンズ(医師、スパイダー)
ウド・キア(エージェント、ラルフィ)
バルバラ・スコヴァ(ファーマコム社の創設者、アンナ・コールマン)

ストーリー用ライン


2021年。地球はどこもかしこも機械文明に覆い尽くされ、
大量の電磁波の影響と考えられる死の病、NAS(黒震病)に
人類の半分が冒されていた。
製薬を中心とした巨大複合企業、ファーマコムの開発した、NASの症状を抑える薬はあるものの、完治の技術は未だ開発されていない。

ジョニーは脳内に埋め込んだチップに、自らの幼少時の記憶と高額の報酬と引き替えに、データをインプットして運ぶ、「記憶屋」だ。データの正体は、安全のため記憶屋も与り知らぬところ。
親の顔も覚えておらず、苗字もわからない、ただのジョニーだ。

次の仕事の連絡がエージェントのラルフィから入る。
北京からアメリカのニューアーク・シティまで、極秘情報を
運ぶ。
データが膨大なため、メモリの拡張を済ませ、北京のホテルで
データを受け取った。
あまりにもでかい、300GBを超えるデータ量に、命の危険を感じるジョニー。
早く、DLしてなくては・・・。

だが、DL時に必要不可欠な暗号となる3つの画像が、ホテルを
襲撃したファーマコム社の手先、ヤクザたちによって奪われたり、
焼かれたりしてしまう。
ジョニーの手元には1枚しか・・・。これじゃDLできない!

ニューアークに到着したジョニーだが、エージェントがファーマコムの手先であることを知る。
DL不可能となれば、情報を取り出すには、ジョニーを捕らえ、首を切り落として持ち帰り、開頭して物理的に取り出す他ない。

かくして、追われる身となってしまったジョニー。
ひどい目眩と頭痛、忍び寄る死の影に怯えながら、NASの発病を理由に解雇され恨みを持っていたボディーガードのジェインと、反ファーマコム、反体制をスローガンに闘うアナーキスト集団、ロー・テクの主導者、Jボーンらに助けられ、どうにか脳を圧迫する
このデータをDLする方法はないかと必死に探るのだが・・・。

手下の相次ぐ失態に苛立つ、ヤクザの親分、タカハシは、一刻も早く依頼主ファーマコムにジョニーの脳を差し出せと、頼りない手下だけでは安心できず、別の殺し屋も雇う。

だが、タカハシの心を占めているのは、4年前、NASで亡くなった幼い娘の面影だけだった・・・。
ときおり、タカハシの端末に、謎めいた女性のイメージが浮かび上がり、部下任せではダメだと彼を激励し、また、慰めるのだった。
彼女は、ファーマコムの創設者、アンナだ。


やがて浮かび上がってくる真相。
そもそもジョニーにデータを運ばせた依頼主「Dr.オールカム」
とは誰なのか?北京で怯えながらデータをジョニーに
渡した連中の正体は?
何故、ファーマコムはオールカムの手にジョニーを渡すまいと
やっきになるのか?

やっとの思いで接触できたDr.オールカム。
だが、暗号の画像が揃っていない・・!
これではDLはやはり開頭手術しかないという。
ジョニーの命に別状はないそうだが、記憶力が極度に落ち、
いろいろな意味で保証はできないという。

DLしなくても膨大すぎるデータのせいで脳がやがて死ぬ。
DLするにも一か八かだなんて・・・。
ジョニー、ブチきれる。

そこへ殺し屋が・・!
Dr.オールカムも消されてしまった。
死の間際に、データの正体と、最後の頼みの綱、ジョーンズの名を
告げて・・・・・・。

ジェインは、NASの症状に苦しみながらも、最後の決戦へ向け、
再びJボーンのアジト、“ヘブン”へジョニーを連れてゆく。
なんとしてもジョーンズに逢わねば・・・!!

タカハシもヘブンを目指す。

決戦の火蓋が切って落とされた!!!


コメント用ライン


世間で酷評されまくっている本作、どれほどダメなのか
ワクワク観てみたら、なんだ、面白いじゃん。
お金かかってし豪華キャストだから、とS級を期待していると
コケます。
何をどう頑張っても、サイバーパンクですよ(愛)。
この世界の旗手、ギブソンが自分で脚本書いてますよ。
しかもデザイナーがシド・ミード(「ブレードランナー」等)ですよ。
ベリーすんごいサイケかつダーティで趣味に走ったB級ができるに決まってるぢゃないですか〜♪♪

一言で言えば、「トロン」の進化系、「マトリックス」の準備段階、って感じなのかな〜〜?

インターネット侵入に使うお道具は、ヘルメットと手袋。
あのヘルメットは「ニルヴァーナ」っぽいかな。
立体グラフィカルのインターフェイスは、「マイノリティ・リポート」でトム・クルーズがやってたのと似てますよね。

パントマイムだ〜(笑)とちょっと笑える動作で手を動かし
情報を手で言葉通りかき集めている姿が面白い。
そっかー、未来はキーボード要らないのな(≧∇≦)

「スターウォーズ」から伝統の、冒頭いきなり30秒強の
字幕による設定説明、ビデオおよびDVDの方は、一瞬理解できなかった場合、止めて読み直しましょう(苦笑)

SF小説を映画化するときに、よくできた作品だと、冒頭の
字幕説明ではなく、うまくキャラクターに喋らせたり、
観ているうちに、視覚的に理解させたり、と工夫するもんなんですが、これはもう直球。
滝のように前置きが流れます。
そこで???のままだと後がツラいので、映画館で観た方は
さぞかし大変だっただろうと('∀`;)

ところで、ジョニー・ネモニックは名前じゃありません。
なんで邦題が「JM」なのか理解不能。
ネモニックは、英和辞典をひけば小さな辞書でも載ってます。
にーもにっく、と発音、記憶の、という意味です。

そのまんま原題と同じで「記憶屋ジョニイ」のほうがカッコいいと
思いません?

この映画、他のサイバーパンクものに比べると、テーマ性が
やっぱり若干薄いというか、凡庸なのです。
技術や視覚的なものの追求に走り、「人間」がやっぱり描けていない。

機械文明への警鐘、人類が危機にあっても、なお儲けを優先させる
企業という“生き物”の不気味さ、恐ろしさ。
それでも地下組織(実際には言葉通り思いっきり地上(ヘブン)なのがナイス)で必死に闘う人々の姿、でも、機械文明にケンカ売ってる彼らとて、機械の力を借りねば何もできないシビアな現実。
アナログじゃなくて、ロー・テクっていう名称が辛辣。

でも、↑ これは斬新なテーマじゃない。95年にしてはね。

ちゃんと、人間の情についても触れているんですよ。
幼い娘をNASで失ったタカハシの虚無感(ガンダムのザビ状態だけど)、報酬と贅沢な暮らしのために、人が自分である証拠ですらある「記憶」を手放して根無し草として生きるジョニー。

「ダークシティ」では、主人公は自分の幼い頃の記憶、親に愛されて育った記憶を必死に求めます。
あの映画のよさは、そこにある。

本作では、タカハシの最後の行動の前置きがなく、充分に
気持ちは推測できるものの、唐突感が否めない。
ジョニーは、記憶力がなくなることには怯えているが、
失った記憶を取り戻すことには執心していない。

DVDだと、ジョニーの親が誰であったか、特典部分でどうも
説明されるらしいですね。
充分、そーだろーな、という見当がつく終わり方なので説明は蛇足ですが、むしろ、機械文明というヒヤリとした手触りで進んできた
だけに、最後くらい、ジョニーに、「記録運搬人」としての側面だけでない、また恋愛要素でもない、(むしろ恋愛要素のほうが邪魔かも)隔絶されて運命のいたずらか敵味方にわかれてしまった
母と息子の確執が解き放たれる場面が観たかったなぁ・・・。

記憶と記録にの差に関しては、この映画では重要なテーマとして
取り上げられていません。
(記憶と記録とアイデンティティーというテーマにはこだわっていて、「メメント」や「ニルヴァーナ」あたりでも何度か書いています)
「記憶屋」という名称ですが、自分は何を記憶させられたか
わからない仕組みなので、正確には「記録運搬人」ですよね。

記録を棄て、記憶を取り戻す、そういうラストだったら、
物語に奥行きが出ただろうにな、と思います。

そんなわけで、本作は心に響くモノは残念ながらありませんが、
やっぱりビジュアル的には観てて飽きない面白さがあるし、
音楽もU2らがガッチリ世界観を構築してくれますし、
衣装や小道具を楽しめる、1995年という時代を表す、
愛すべきB級SFだと思うのですよ。

Win95発売前ですから、2004年の今、観ると
機械文明ってほどか〜?ギガバイトなんて今じゃ凄くねぇ、とか
いろいろ時代を感じさせてくれます。当時はメガバイトでも雲の上だったような・・・・。
今、冷蔵庫に何が残っているかもふと思い出せない私は、
きっと1キロバイトもないんだろーな、記憶容量(自爆)

日本映画界の珍宝、ビートたけし(※北野でもキタノでもないです、TAKESHI、でした)の、ギラついてもいなく、
無口さがかえって怖いタイプの演技でもなく、軽口をペラペラたたきまくるでもなく、喪失感から魂が抜けた乾ききった男を無表情に演じている。

★小粒に可笑しいシーンの数々★

「東京の帝国ホテルでクリーニングしてもらったYシャツが着たぁぁぁぁい!!」とブチきれるキアヌ・リーブス

ジェインの鎖帷子のようなTシャツ(イメージはくのいち?)をはじめ、ロー・テクの皆さんのどことな〜く漬け物と梅干しの香りが漂う微妙な衣装

タカハシの部下の中国人?シンジ、髪型がポニーテール×お相撲さんの髷です。

部下のヘンな文字の入れ墨に「そんな漢字があるか!」と
ブチきれるビートたけし

タカハシの娘、岸田劉生の「麗子像」みたいでけっこうホラー。
でも、あの着物の着方は遊女ですよ〜w

広い心でツっこみいれながら観ましょう(笑)






2004年11月21日(日) 「ゴシカ」怨霊系怪奇オカルト。ホラーとしてもミステリーとしても半熟なんだが、主題歌Behind Blue Eyesにゴーンとキタ。

『ゴシカ』【GOTHIKA(中世的な、おどろおどろしい、不気味で暴力的な、から造語)】
監督:マチュー・カソヴィッツ 
脚本:セバスチャン・グティエレス 
撮影:マシュー・リバティーク 
音楽: ジョン・オットマン
主題歌:Behind Blue Eyes(Limp Bizkit)
 
俳優:ハル・ベリー(ミランダ・グレイ博士)
ロバート・ダウニー・Jr(ピート・グレアム博士)
ペネロペ・クルス(女囚、クロエ)
チャールズ・S・ダットン(ミランダの夫、ダグ)
ジョン・キャロル・リンチ(ダグの親友、ライアン保安官)
バーナード・ヒル(フィル)

ストーリー用ライン


世俗から隔離された森の奥に、古城のような風情でそそり立つ
精神病の女囚専門の刑務所。

ミランダは優秀な心理学者であり、夫はここの所長だ。
夫婦は仲睦まじく、ミランダの同僚のピートは彼女に想いを寄せるが、彼女は夫一筋の貞節な妻。ピートはそっと見守るだけだった。

ミランダは、今、担当している女囚クロエのカウンセリングに
行き詰まっていた。
精神に異常のある犯罪者は、あれこれ妄想を喋るものだが、
クロエの訴えはあまりにも突飛で執拗だった。
悪魔に陵辱され、父親の喉を切り裂いて殺したというのだ。

夫に励ましてもらい、少し元気を取り戻したミランダは、
ピートが夕食に誘うのも断り、熱心に研究室で仕事をしていた。
すると、停電・・・。このごろ、やけに多い・・・。

データも飛んでしまったし、今夜は仕事を諦め、プールで一泳ぎすると帰路についた。

・・酷い土砂降りで視界が悪く、道路も陥没してしまった。
警官に迂回路を教えてもらい、橋を渡り終えたそのとき。
ずぶ濡れで傷だらけ、服もズタズタの少女が道のど真ん中に!!

慌てて回避し、少女に駆け寄るミランダ。
レイプされたとおぼしき姿に、すぐに病院に連れていこうと
手を伸ばそうとした瞬間、少女は炎に包まれ、ミランダは
意識を失った・・・・・・・・。

ミランダが意識を取り戻したのは、その3日後。
あろうことか、自分が患者として女囚として独房に・・・!

ピートが担当医だという。脳波の異常について語る彼に、
夫を呼んで、とわめき散らすミランダ。
ピートは沈痛な面持ちでダグは死んだと告げる。

ミランダが夫のダグを斧で惨殺したというのだ。バラバラに
切り刻み、壁に「NOT ALONE」(ヒトリジャナイ)と血文字を
残し・・・。
ミランダの指紋も出ており、動機がないということ以外、
彼女が犯人としか思えない。

弁護士は、心神喪失を訴えるしか裁判に勝ち目はないが、
なにしろ職業が職業なだけに、狂人のフリをしているのでは、と
陪審員に思われる可能性が高い・・・と困惑している。

ミランダは怒り狂う。
自分は正気であり、異常者扱いするならピートも弁護士も信用しない、と憤慨するのだ・・・。

ミランダは、入浴中に突如、「NOT ALONE」と鋭い刃物で腕に刻まれ血まみれに。医師も看護婦も、どこからか持ち込んだ刃物で自傷したのだと主張し、投薬を増やされる。

彼女の独房に幾度となく訪れる、あのときの少女。
彼女は科学者だ。超常現象なんて信じない。
でも、理屈をこねていられる状況ではなくなってゆく・・・。

やがて、その少女は4年前に死んでいたことがわかった。
自殺だという・・・・。

少女の霊が独房のロックを解除した・・!
夜の監獄を駆け回るミランダが見たのは、独房でクロエが、
胸に炎に焼かれる女の入れ墨をした男に犯されている姿・・・!

NOT ALONE の意味するものは?
何が1人ではないというのか・・・?

ダグを殺したのは本当にミランダなのか?
だとしたら何故?

ミランダを苦しめる少女の亡霊は、彼女に何をさせようとしているのだろうか・・・??


ゴシカ 特別版 ◆20%OFF!<DVD> [DL-28380]



コメント用ライン


正直なところ、ストーリーは、怨霊という欧米人にはなじみの薄いゆえに薄気味悪いモノと、精神病棟というシチュエーションの
怖さをからめ、突発的な大音響とヒロインの金切り声の悲鳴を
多用した、B級感漂うできばえ。

B級ホラー好きの私だが、これでもかっていう作り手の愛が映画ににじんでいないと、愛すべき存在にならないのですよ。

亡霊に怯えながらも、亡霊の無念を晴らそうと恐怖に耐えつつ
頑張るというシチュエーションは、近年なら「アイ」が成功作。

古い古い精神病棟の恐怖感、閉塞感を活かしたサスペンスホラーの傑作には「セッション9」がすでにある。

この2つに共通するのは、「沈黙」「見えない」逆に「見たくないのに見えてしまう」、それから弱そうなヒロインが逃げようともがく哀れさ、怖さ。この子が何をしたっていうのよ、という
同情もわく。
それこそ、「シックス・センス」であどけない少年が怖いもの
に悩まされて、なんて可哀想なの!と、あの感じだ。

「ゴシカ」は、絶え間なく音がし、ヒロインはタフな女性で
亡霊にわめきちらし、実に逞しく行動する。
か弱くないヒロインがいくら悲鳴をあげても、絶対に負けそうもないようなヘンな安心感がともなってしまい、ハラハラしない。
・・・ハリウッド映画だからねぇ。
誰か助けて、と他力本願なおとなしいヒロインはウケないのだろう。

あ、他力本願なのはこの映画ではヒロインではなく、亡霊ですね。

「NOT ALONE」ヒトリジャナイ
ヒロインも、何が1人じゃないのか、次々に可能性を考え、
それらは両方とも結局、正解なわけですが、
私はミスリードしてました。

可能性A:ミランダは本当に精神病、多重人格、あるいは
統合失調症(分裂病)であった。故に「1人じゃない」

可能性B:ピートの横恋慕による邪魔モノ排除犯罪で、自分だけのものにするためにミランダに投薬し、裁判で心神喪失の主張を主治医としてし、無罪放免になったら結婚を申し込む。
ボクがついてる、「独りじゃない」

結論からいえば、ここで書いてるだけあって、2つともブー、です。
物語上、結局ほとんど活躍もせず悪さもしないピート・グレアム医師、せっかくロバート・ダウニー・Jrが美青年ぶりを発揮してくれているのに、もったいないですな。

最後まで、ヒロインは「独りで」闘ってました。
正確に言えば、亡霊にインスパイアされ2人で、ですが、亡霊が巻き込んでおいて、
「アナタハヒトリジャナイ」とNOT ALONE とメッセージ
されても、大迷惑で(笑)

いっそ、少女の亡霊をうんと哀れに描き、ミランダを傷つけたり脅さない方向で、ミランダの正義感に訴えるカタチで描いていれば、
きっと多くの方が感じた、ミランダは何も悪くないのに、という
不条理な怒りを感じなくて済んだんじゃないかなぁ・・・。

ラスト、アメリカの法律はどーなってんだ、は忘れましょう。
幾つか解釈はもちろん可能です。
心神喪失による殺人罪で刑務所の精神病棟に収監されても、完治した、と医師によって正式に認められれば出所は可能。
他の映画(「スリング・ブレイド」「15ミニッツ」など)
でも同じシチュエーションは出てきますので、無理無理な
設定ではないと思います。


というわけで、ストーリーそのものや、映像センスなどは、
これといって凄かったなぁという部分は正直いってありませんでしたが、俳優は楽しめました。

ハル・ベリーにしても、ペネロペ・クルスにしても、女囚なので
ノーメーク(のメーク('∀`;)にボッサボサ頭、囚人服。
男性陣には、目の保養になるシーンがほっとんどない、という
ことはあらかじめ申し上げておきまする。

綺麗に見せなくていい、というのは開放感もあるのかも。
2人とも、凄い形相で取り繕う余裕のない必死の人間の演技をみせてくれます。

私は、ジョン・キャロル・リンチが出てきた時点で、う・・・うさんくせぇ・・・!!と1人で大ウケ。
このひと、気弱な善人か、性格ねじれた嫌みなおっさんの役が
わりと多い。
今回は?
あまり拝みたくないなまっちろいセミ・ヌードが拝める、とだけ申し上げておきましょう・・・・。
ああ、ジョン・キャロル・リンチよ、アメリカ中産階級のくたびれた中年の代表者のようなあなたの風貌が大好きだ。


ふーん、という感じで終わった映画ですが、エンドクレジットで
流れるリンプ・ビズキットのBehind Blue Eyes、これが実に
イイ!!!(The Who のBehind Blue Eyesのカヴァーです)

DVDには特典として、映画のシーンからイメージしたビデオクリップがついています。実のところ、オバケ出さずとも、人間を全面に押しだし、
このビデオクリップのイメージ世界で1本、いい映画が創れそうだなと思うくらい。

映画のサントラは発売されてませんが、リンプのこの曲のシングルは輸入盤で買ってしまいました。


ここで、DVDの特典と同じものが観られます。
http://launch.yahoo.com/artist/videos.asp?artistID=1032861
Behind Blue Eyesを選択してください。

ザ・フーの名曲なのでご存じの方も多いと思いますが、
後半からLimp Bizkitらしいオルタナティヴなロックテイストが
強くなり、独特の雰囲気です。

歌詞がいいですよね。
とてもききとりやすいので、聴いていて心にうったえてくるものがあります。

この映画のわかりにくい部分を補完しているようにも思えるんですよ。

愛していたつもりだけど、あなたはそのひとの何を知っていたの?
愛していながら、そのひとの言葉を信じてはあげられないこともある。その苦痛とジレンマ。




2004年11月20日(土) 「NY式ハッピー・セラピー」ありえねー展開はおいといて、良心的なメッセージ性と豪華すぎるキャストが繰り出す笑いを楽しもう♪

『N.Y.式ハッピー・セラピー』【ANGER MANAGEMENT(怒り抑制セラピー)】2003年・米
監督:ピーター・シーガル
脚本:デヴィッド・ドーフマン
撮影:ドナルド・マカルパイン 
音楽:テディ・カステルッチ
 
出演: アダム・サンドラー(デイヴ)
ジャック・ニコルソン(怒り抑制セラピスト、バディ)
マリサ・トメイ(デイブの恋人、リンダ)
ジョン・タートゥーロ(セラピー仲間、デイブのパートナー、チャック)
リン・シングペン(ダニエル判事)
アレン・コヴァート(リンダの元カレ、アンドリュー)
ルイス・ガスマン(セラピー仲間、ゲイのルー)
クリスタ・アレン(セラピー仲間、レズのステイシー)
ジャヌアリー・ジョーンズ(セラピー仲間、レズのジーナ)
ウディ・ハレルソン(オカマの娼婦、ギャラクシア)
ヘザー・グラハム(バーの美女、ケンドラ)
ジョン・C・ライリー(元いじめっこで今坊さん、アーニー)
ハリー・ディーン・スタントン(盲目の爺さん)
 ルドルフ・W・ジュリアーニ(本人)
 ロバート・メイス・メリル(本人)
 ボブ・シェパード(本人)
 ジョン・マッケンロー(本人)

ストーリー用ライン


NY、ブルックリン育ちのデイブは、子供の頃からいじめられっ子。
大人になったデイブ、お仕事はペット用品のデザイン。今はデブネコを可愛く見せる洋服のカタログを手がけている。
でもまぁ、仕事に燃えているわけではない。
どうせいいものを作ったって、上司に手柄は横取りされるのだ。
気弱で自己主張ができず、今イチやる気のないデイブ、出世の見込みは薄い。

そんな冴えないデイブにも、リンダという可憐な恋人がいる。
おどおどしているデイブの尻を叩いて元気づけてくれる陽気でステキな恋人。
もちろん、デイブも彼女にベタ惚れなんだが、それを表現できない。キスも人前じゃできないし・・・・。
そんなデイブに、リンダはちょっと不満。もう交際が長いのに、
いったいいつになったらプロポーズしてくれることやら・・・。

さて、事件は出張のために乗った飛行機でおこった。
指定席なのに、横柄な若い男がどっかり座り込んでどいてくれない。とても丁寧に自分の席だと申し入れるデイブだが、「他にも空いてるじゃん」と無視される。
困惑するデイブに、気のよさそうな初老の男が隣が空いている、と
誘ってくれた。
仕方なく、誘われるままに座り、うたたねを始めるデイブ。

ところが、隣の陽気すぎるおっさんが映画を観てバカ笑い。
睡眠不足でツラいのに〜〜〜!
でも、抗議できないデイブ。
おっさんがしつこく誘うまま、仕方なく自分も一緒に映画を観ることに。スチュワーデスにイヤホンを頼むのだが、2度、3度と
声をかけても、同僚とのお喋りに夢中で相手にされない。

おっさんは早く映画を観ろとしつこい。ちょっと苛立ってきた
デイブは、「あの、」とスチュワーデスの腕に軽く触れた。

途端に、スチュワーデスが金切り声!
運悪く近くに警官もおり、暴行罪で逮捕されてしまうデイブであった・・・・。

判事はデイブの言い分を100%無視し、有罪判決。
刑を科すかわりに、「怒り抑制セラピー」を受けるよう命令される。

裁判所が斡旋するセラピストを訪ねると、なんと飛行機でバカ笑いしてたあのくそ爺ぃがセラピスト!!

だが、デイブはコトの元凶と逢っても怒らず、笑顔で、セラピーを
受けずに済むよう、サインしてほしいと懇願する。

セラピストのバディは、じゃ、一回だけでも受けるようにと
とても感じよく答えてくれた。

ちょっとホっとしたデイブ、一回だけだし、とお客さん気分で
セラピーに出席すると、まぁ一癖も二癖もある患者さんたちに
囲まれて・・・。

だが、デイブの不運はこれでは終わらなかった。
というより、これが始まりだったのだー!

またしても悪くないのに何故か暴行事件に巻き込まれてしまったデイブは、バディの密着セラピーを受けるハメに。
24時間、ベッドの中までバディが一緒w げんなり。

悪夢だ・・・。

会社にももちろんついてくるバディ、デスクのリンダの写真を見るなり、べっぴんだとニヤニヤ、おめめキラ〜ン☆
いやぁぁぁな予感・・・・・・・・・・・・・・。

こんなことが続いて、リンダともデートできない。
ただでさえ、彼女の元カレのハンサムエリート君、アンドリューが
再びリンダに迫っており、不安。

デイブは、少年時代からおちん○んの大きさにめちゃめちゃコンプレックスを持っており、超巨根(トイレで見ちゃった)のアンドリューに歪んだ嫉妬心を持っているのだ。

アンドリューだけじゃなくて、なんだよ、バディまでリンダに
アタック!?

焦るばっかりで、何もできないデイブに、リンダは背をむけてしまった・・・・・。

なんか、ハラたってきた。
どうも、バディはたびたび過激なセラピーで訴訟を起こされる問題児(?)であるらしいことを知ったデイブは、絶対シッポをつかんでやる、とジメジメした行動を開始するのだが、敵もサルもの引っ掻くもの、ちーっともデイブの思う通りにならない!!

き・・キレそう・・・。
でも・・・キレたことのないデイブは混乱と絶望のどん底に。

ああ、どうなってしまうのか、可哀想なデイブちゃん。


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コメント用ライン


フィンチャーの「ゲーム」を観てキレちゃった方は、この映画、
おすすめできません(汗
血圧が上がります、たぶん。

なーんでこんな目に遭わにゃならんのだ〜!とデイブが気の毒になり、理不尽すぎる!とイライラしてしまい、楽しめないかも。

あ、キレて途中でTVのリモコン投げつけそうになった方は、
この映画、ちゃんと最後まで観たほうがいいですよんw
だって、「怒り抑制セラピー」ですから(笑)

せっかく、もともとおとなしくてキレたことなんてないデイブを、
怒らせよう怒らせようとし向けてゆくバディの真の狙いは何なのか、あるいはやっぱりバディのほうが変人でデイブは被害者なのか・・・?

ジャック・ニコルソンの巧みな演技で、狡猾なクソ爺ぃにも
見えるし、ただの本当にアブナい危険人物にも見えるし、もしかしたら、天才的なセラピストなのかも、とも思えてしまう。

みんなツっこむよね。バディの危険人物っぷりに
「貴様が怒り抑制セラピーを受けろぉぉぉぉ!!」と。

この映画・・・っていうかねぇ、アダム・サンドラーの主演映画は基本的に、ジョークがコアなんですよ。
全世界に通用するギャグではなく、めりけん人が聞いたら
耳から脳みそ出そうなほど面白いジョークを連発しまくっているようなので、字幕の方のご苦労が忍ばれます。

それはアダムのせいではなく、文化圏の問題。

ちょっと前までは、とことん派手なリアクションと面白い顔で
押していた感じ(それも好き)があったアダムですが、PTA監督の「パンチドランク・ラブ」で演技派に転向!?
(この作品では、ほんとにキレやすくてアブナい男を好演)

いい感じで、跳び箱の踏み台をぐわしっと踏んで、この作品で
トンだな、という好印象。

根本的な解決を先送りにして、とりあえずのストレス解消で
どうにかこうにか世知辛い浮き世を渡っている現代人に、
いっぺん腹の底から言いたいこと言ってみ〜、と、
ポンと肩を叩いてくれるような作品だ。

しかしまぁ、俳優陣だけでもこれだけ豪華なのに、
製作総指揮も兼ねているアダム・サンドラーの人脈の豊富さの
おかげで、本人の役でアメリカの有名人が多数ご出演。

いろいろな楽しみ方ができるコメディだ。

個人的には、ルイス・ガスマンのカマっぽい身振りや話し方と、
ジョン・タトゥーロのカメレオン俳優っぷりがツボでした。

さぁご一緒に、
グ〜〜スフラバ〜〜、グ〜〜スフラバ〜。

みんなで歌いましょう、
あいふぃ〜るぷりてぃ〜〜〜♪♪



2004年11月19日(金) 「ニルヴァーナ」物語の切なさ重さと、映像や細部のコミカルさの不思議なバランスに魅惑される。イタリアンサイバーパンクの秀作!

『ニルヴァーナ』【NIRVANA(ゲーム名:涅槃)】1996年・イタリア=フランス
監督・原案:ガブリエレ・サルヴァトレス 
脚本: ガブリエレ・サルヴァトレス/ピノ・カカッチ 
グロリア・コルシア
撮影:イタロ・ペットリッチョーネ 
音楽:フェデリコ・デ・ロベルティス/マウロ・パガーニ 
SFX:デジタリア・グラフィック  
 
俳優:クリストファー・ランバート(人気ゲームクリエーター、ジミー)
ディエゴ・アバタントゥオーノ(ニルヴァーナのキャラクター、ソロ)
セルジオ・ルビーニ(凄腕ハッカー、ジョイスティック)
ステファニア・ロッカ(天才ハッカー、ナイマ)
エマニュエル・セイナー(ジミーの元恋人、リザ)
アマンダ・サンドレッリ(ニルヴァーナのキャラクター、マリア)

ストーリー用ライン


2050年、クリスマスを控えて賑わう都市部。
人気ゲームクリエーターのジミーは本社(オコサマ・スター社)の
データバンクに命がけでハッキングしながら、この3日間で自分の人生がすっかり様変わりしてしまったと回想する・・・。

3日前、12月21日。
ジミーはゲームで稼いだ金で豪奢な暮らし。だが、部屋に生気はなく、無機質で冷たい秘書コンピュータの声が響く。

クリスマスにあわせ、自分が開発したRPG型心理ゲーム“ニルヴァーナ”をオコサマ・スター社は発売予定だが、まだ仕上がっておらず、秘書が急かすが、ジミーは無気力だ。

恋人のリザが自分を棄て、修行の旅に出てどのくらい経つだろう。
心に穴が開いたまま、彼女の残したビデオレターを繰り返し眺めるだけのやるせない日々。

ジミーは景気づけに闇ルートで液体コカインを入手すると、
気をとりなおしコンピュータに向かう。
ニルヴァーナを起動して驚愕する!
自分の創ったゲームキャラクター、ソロが自我を持ち、ジミーに話しかけてくるのだ。
どうやら原因はウィルスらしい。
中華街で殺し屋に次々狙われては死に、また逃げ回る終わりなき日々に、ソロは絶望し、消去してほしい、と懇願するのだった。

愛を失い、生きる目的が曖昧になったジミーは、逃げ場のないメビウスのような世界に生きる苦しみに共鳴し、ソロをニルヴァーナもろとも消去するため、そして、リザを探すため、動き始める。

腕利きのハッカーの助けが必要だ。
そして、リザのビデオレターに、ジョイスティックに逢う、とメッセージがあったことから、治安の悪さでタクシー運転手も逃げ出す
アラブ人街、マラケシュを訪れる。

伝説的ハッカー、ジョイスティックには逢えたものの、クレジット・チップ(クレジットカード兼IDカード)から足がつき、
オコサマ・スター社から執拗に追われるはめに・・・!

なんとか敵をまき、ジョイスティックに話をつけようと、ジミーは
おいしい話を持ち出した。
オコサマ・スター社のデータバンクには、膨大な裏金がある。
データバンクにハッキングしてくれれば金は取り放題、というわけだ。

ジョイスティックは金に困っており、借金地獄の上に、ガタがきている両目の電子アイを新品に買い換えたい。ゾニーのカラー・アイが欲しいのだ。

自分1人じゃ無理だが、デビルと呼ばれる侵入防御システムと闘いハッキングできる、エンジェルと通称呼ばれる天才ハッカーがもう1人いれば・・・・天才クラスのナイマと組めるなら、引き受けてもいいという。

ジミーとジョイスティックは、追跡を逃れながら、ナイマとの接触に成功する。
青い髪の若く美しいナイマは、この話にノった。
もちろん、大金は魅力的だし、ハッカーとしての腕も鳴る、
そして・・・ナイマは繰り返していたハッキングのせいで
古い記憶がない。ジミーに恋をした。それはきっと初恋だった。


ナイマによれば、デビルをかわしつつデータバンクにハッキングするには、ある特殊で強力なウィルスが必要だという。

かくして3人は、ボンベイ・シティへ・・・・。
リザの足跡を辿り、ソロの苦しみを終わらせるために。

ニルヴァーナの中では、終わらない日々が繰り返されていた。
人々は話し、食べ、セックスし、生活していたが、
ゲームのメインキャラの1人であるらしい高級娼婦マリアは、仮想現実の証拠を見せられても信じようとはしないのだった。
ますます孤独になるソロ・・・。

それぞれの魂に安息の日は訪れるのだろうか・・・・・。


ニルヴァーナ

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コメント用ライン



無国籍風(ややアジアンチック)な闇に包まれた近未来の都市は
もちろん、1982年の「ブレードランナー」 からの影響がうかがえ、あの湿った暗さが好きな方にはたまらない美意識。

美意識といえば、「ザ・セル」がお好きな方には、本作も「ザ・セル」ほど露骨ではないものの、やはりボッシュのシュールレアリズムの
影響が見てとれるので、あの色彩感、歪んだ宗教美が好みだと
いう方にもオススメ。

ハリウッドでは近未来ダークSFが1つのジャンルとして確立しはじめる中、イタリアで誕生したこのスゲー作品が、その後のSFジャンルにどれほど大きな影響を与えたか、計り知れない。

1999年は仮想現実SFラッシュ。
「イグジステンズ」では、体感ゲームの中に入り込み、仮想現実と現実の境目がわからなくなってしまう不気味さを描いたホラーSFを。
「13F」では仮想現実の果てが出てくる。ソロがクローゼットの中で見た“この世の果て”がこの映画にも視覚的に出てくる。
そして、「13F」では、仮想現実の人々の尊厳や人権についても
触れられる。
これと僅かな時間差で「マトリックス」公開。

樹木が枝分かれして広がっていくように膨らみ細分化してゆく
SFの世界観。今後がとても楽しみだ。

さて、ニルヴァーナとは、ジミーの創ったゲーム名だが、
仏教用語では、日本人には「涅槃」のイメージだ。
一切の迷いを離れた不生不滅の悟りの境地。

インド仏教のニルヴァーナ(梵語)は、“消してなくす、なくなる”こと。ここから転じて、煩悩の火が消え去る=悟り、ということか。

手塚治虫の「火の鳥」でも出てくるが、涅槃に達するまで、永劫に転生しつづける。涅槃に達すれば、死と転生のメビウスの輪から
解放されるのだ。

ジミーの創作したソロを主人公としたゲームの目的が何なのかは
よくわからないが、ゲームという「閉じた世界」であることには
なんであろうが変わりなく、だがそれは、マリアの言うとおり、
現実も「果てが果てしなく遠いゆえに境目が見えないだけの
仮想世界」ではないとどこで判断できるのか・・・という側面がある。

この物語の全編を包む、失われてしまったものへの慕情、切なさ。
理解しあえないまま死に別れた2人の愛する人。
思い出と、そうであってくれたらいいのに、という叶わぬ願望が
交錯する。
「メメント」のコメントでもかつて触れたのだが、
記憶というのは、そのひとがそのひとであるという最後の砦。
アイデンティティー。
でも、記憶は、本人にとっての真実でしかない。
愛されていたという記憶、後悔してくれているという記憶、
相手は愛していなかったかもしれないし、後悔などしていないかも
しれない・・・・。

人間の一生の記憶が入った小さな針のようなチップ。
でも、記憶は、モノになったとたんに、記録に変わる。

記憶を持たない哀しい女が、記録を得て、代用として愛される切なさ。

サイバーパンクの体裁をとりながら、この映画の描く愛の世界は
深淵で静謐だ。

ソロも、ジミーも、外側から閉じられることでしか、
最終的な安息は得られない。
でも、ついにソロもジミーも繰り返しのメビウスからおりることが
できたのだ。哀しいけれど、不幸ではないのだと思う。




・・・・ってけっこうシリアスなんですけど、
なにせ「オコサマ・スター」に「ゾニー」「ゼガ」(他にもいっぱい)ですからね。

どーも、監督が中近東を旅していたときに、日本製の中古の携帯ゲーム機で遊ぶ現地の子供らをみて、コレだ!となんか閃いたらしいんですわ。

個人的に、「瞑想の邪魔だぁ!」と銃を乱射する過激な修行中の方ですとか、「バットマン」の車みたいに、運転するとき以外は
みっちり防護壁で覆われているゴツいタクシーですとか、1日2回ピザを届けるマフィアですとか、治安が悪いとか言いながら、
長蛇の列の立ち食い屋でビールをおかわりしても殺されないですとか、細かいところにツっこみをいれまくって楽しませていただきましたw

電子目玉を取り替える手術のシーンは、グロかったですね。
にちょ〜んという感じが大変グロうございました・・・・。






2004年11月18日(木) 「クロウ/飛翔伝説」これほど切なく哀感漂う詩的な仇討ち物語が他にあろうか。プロヤスらしい美意識と愛に溢れている。

『クロウ/飛翔伝説』【The Crow(カラス)】1994年・米
監督:アレックス・プロヤス
原作:ジェームズ・オバー
脚本:デイヴィッド・J・スコウ
   ジョン・シャーリー
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:グレーム・レヴェール

俳優:ブランドン・リー(エリック)
  アーニー・ハドソン(アルブレヒト巡査)
  マイケル・ウィンコット(悪の親玉ダラー)
  ロシェル・デイヴィス(サラ)
  デイヴィッド・パトリック・ケリー(Tバード)
  バイ・リン(ダラーの女)
  ローレンス・メイソン(ティンティン)
  マイケル・マッサー(ファンボーイ)
  ソフィア・シャイナス(エリックの婚約者シェリー)
  アンナ・トムソン(サラの母ダーラ)
  ジョン・ポリト(質屋ギデオン)
  トニー・トッド(ダラーの側近グランジ)

ストーリー用ライン


いつか、どこかの荒廃しきった都市。
時はハロウィン(万聖節)を翌日に控えた10月30日。
近年は忌まわしくも「悪魔の日」などと呼ばれるようになった。
犯罪組織が大がかりな放火を繰り返すからだ。

今夜も昨年と同じように街のあちこちに火の手があがり、荒んだ街を焼く炎が夜空を焦がす。
そしてあちこちで罪なき人々が殺戮される。

若い愛し合うカップル、エリックとシェリーも、犠牲者となった。
エリックは撃たれ、墜落して即死。
シェリーは輪姦されナイフで切りつけられ、苦しんだ果てに帰らぬ人となった。
2人は明日、挙式の予定だったのに。無惨に荒らされた部屋に、
純白の花嫁衣装が哀しく遺されていた・・・・。

巡査のアルブレヒトはこの悲惨な現場に駆けつけた少女、サラを
保護した。サラはろくでなしの母親のかわりにあの2人が家族同然に可愛がってくれていたのだった。

警察はまるで捜査などする気がない。
アルブレヒトは落胆する。

一年が過ぎた夜。
死の国の使者、カラスに導かれ、エリックは冷たい土の下から蘇った!!
カラスに導かれ、廃墟となった我が家にたどり着いたエリック。
蘇る忌まわしい記憶。

エリックは復讐の鬼と化した。
黒装束に着替え、道化のように白塗りに黒で化粧をすると、
カラスの導きに従って、愛しいシェリーを辱め惨殺した者たちを
地獄に送るため、夜空を翔け、路地を影のように走る!

やがて、チンピラたちの背後に浮かび上がる犯罪組織。
街を裏で牛耳るダラー一味を壊滅するまで、この復讐は終わらない!!

エリックの心は闇より暗かった。
だが、こんな汚れた街で、澄んだ魂のまま逞しく生きていたサラに再会する。
サラを守るためにも、悪を滅ぼさねば。

腐敗しきった警察組織からはじき出された正義漢、アルブレヒト元巡査の協力も得て、エリックは風のように悪を斬ってゆくのだが、
不死身のはずのエリックに弱点があることを、ダラーの女に
見破られてしまう・・・!!

救われない魂に安らぎのときは訪れるのだろうか・・・・。

コメント用ライン


ブルース・リーの遺児、ブランドン・リーの撮影中の事故死により、これが彼の遺作となってしまった。享年28歳。
作品は彼に捧げられている。

復讐ものは映画の伝統的ジャンルの1つだが、
大きくわけて、ドラマ系(頭脳戦で社会的に破滅させる、あるいは追いつめて殺す)と、アクション系(直接、武力行使で殺す)にわかれる。

そして、ドラマ系は大抵、重苦しいシリアスで陰惨な方向性の
ものが多くなる。
アクションの場合、ひたすら深刻にバイオレンスと非痛感を極めるか(「マッドマックス」「ブルドッグ」系)、胸くそ悪ぃ奴らをブっとばせぇ!と
ハデハデな銃撃戦や笑える武器の登場でコミカルな方向にもっていく爽快系(「デスペラード」系)に大きく二分される。

この「クロウ/飛翔伝説」は、悪役が凶悪というよりむしろ、人間離れした不気味さ(金が目当てではない愉快犯)で、そこはやっぱりアメコミの悪役だなぁと楽しい感じだが、主人公はひたすらに
哀感が漂う。

他の作品と明らかに違うのは、やはり正義の主人公が、生身でもなく、科学的な能力を身につけた超人でもなく、限りなく神秘的な
「棺桶から生き返った死者」だというところ。
ゾンビだが、腐ってもいないし身のこなしは(初めをのぞき)、
闇を縫うカラスのごとく流麗で、闇の妖精のごとし。

ダークヒーロー、エリックは生前、恋人が愛撫してくれたエリックとしての顔を捨て、容赦なき地獄の使者となるべく白塗りの化粧をし、復讐のために立ち上がる。

ブーツに皮のロングコートという闇の使者の出で立ちだが、
空を舞う死に神のように軽やかで鋭い流麗な身のこなしに
見惚れてしまう。

ドスン!ドカン!というゴツいマッチョマンの足音ではない。
オルタナティヴ、グランジミュージックに乗って駆け抜ける。

銃撃戦もあり、二丁拳銃使いのシーンもあるが、不思議と絶妙に
軽やかだ。その軽やかさは、血しぶきを極力避ける監督のセンスかもしれない。

目玉をえぐりとるなど残忍なシーンは、描写されない。
レイプシーンも、目を覆いたくなるほど酷いことがあったのだと十二分に推測させながら、生々しい現場は描かない。

「ダークシティ」といい、本作といい、プロヤス監督の創る
近未来テイストだがレトロな街並み、夜陰が支配する闇の世界を
舞台としたダーク・ファンタジーは実に美しい。

美意識と愛のある映画は素晴らしい。

この映画が、荒んだおどろおどろしい復讐劇に終わらないのは、
「愛」が全面に押し出されているからだ。
「死者への変わらぬ愛(サラの、エリック&シェリーへの愛、エリックのシェリーへの愛)」「死してなお、自分(エリック)が生きている者(サラ)から愛されている切ない喜び」「死者からの愛(シェリーも死してもなおエリックを愛している、2人は死の世界からも、サラを見守っていることを推測させるラスト)」

不覚にも美しく温かいラストシーンに泣けてしまった。
カラスの名演にも拍手である。

ブランドンの非業の死と重なって、全編が濃厚なタナトスに支配されている作品だが、微塵の不吉さも忌まわしさも残らない。

白塗りに黒メーク、貞子よろしくすだれのように垂れた夜露に
濡れた髪。よく考えるとかなり怖いはずだし、可笑しくすらあるはずの風貌なのに(他の誰かがやったらば)、
ブランドン・リーの圧倒的な「悲しみ」のオーラと演技力が、
コミカルにも気色悪くも感じさせない。

表情を殺すための化粧が、かえって嘆きの強さを伝えている。

「デスペラード」のようにギターを抱えたミュージシャンだが、
エリックはロッカー。エレキギターだ。
(ちなみに、エレキギターやギターケースから銃弾飛び出たりはしませんよ〜)


ほとんど彼のシーンは撮り終えていたので、デジタル合成で
完成させたという。空砲のはずの銃に実弾が混ざっていたという
なんとも怪しげな「事故」で帰らぬひととなってしまった
ブランドンへの追悼の想いが、丁寧な編集から伝わってくるようだ。

驚いたことに、まだDVD化されていない。
かほどに美しい作品、是非DVD化して後生に残してほしい。
アマゾンで、DVD化されたらお知らせする、というフォームがあったので申し込んだ。
時期は未定ではあるいが、まったく計画がないってわけでもないようだ。



2004年11月17日(水) 「バトルフィールド・アース」=(猿の惑星+サラマンダー)÷スターウォーズ+爆笑+ダサさ−かっこよさ 実に愛すべき駄作♪ 

『バトルフィールド・アース』【BATTLEFIELD EARTH(地球戦場)】2000年・米
監督: ロジャー・クリスチャン 
原作:L・ロン・ハバード
脚本: コリー・マンデル/J・デヴィッド・シャピロ 
撮影: ジャイルズ・ナットジェンズ 
音楽: エリア・クミラル
 
出演: ジョン・トラヴォルタ(サイクロ人、タール)
バリー・ペッパー(地球人リーダー、ジョニー)
フォレスト・ウィッテカー(サイクロ人、タールの部下、カー)
キム・コーツ(カルロ)
サビーヌ・カーセンティ(クリッシー)

ストーリー用ライン


3000年、地球。
高度な文明を持つ宇宙人、サイクロ人によって、地球が9分間で
滅び、長い年月が経った・・・・。

僅かに生き残った地球人は、文明も奪われ、原始的な生活で細々と小さな集落を各地に作り、ひっそりと暮らしていた。
外を出歩くと、空を飛ぶ物体にさらわれてしまうので、洞窟に籠もって息を殺して生きている。

ある日、洞窟に住んでいた若者ジョニーが、安心して暮らせる新天地を探し、長老の止めるのもきかず、恋人をのこして村を出た。

やがて他の集落の若者と合流するのだが、地球人狩りに遭い、
あえなく連れ去られてしまう。

酸素のない、妙なガスの充満したサイクロ人の基地。
そこで地球人たちは奴隷としてこきつかわれ、飼育されていた。

サイクロ人は、人類よりもずっと体格がよく、長い髪に、あちこちから生えている長い髭、ゴリラのような大きな手、鋭い爪という
恐ろしい容姿・・・・。
司令官のタールは、底意地の悪い腹黒男。
サイクロ人にも疎まれているが、その血も涙もない卑劣さゆえに、
誰も文句を言うものがいない。

ジョニーは、タールに取り入ることで、サイクロ人から地球を取り戻すべく、仲間たちと反撃の機会をうかがうのだが・・・・。


コメント用ライン


ラジー賞総なめ(笑)
でも、ここまで総なめすると、意図的な何かを感じる。
原作者のハバード氏が、新興宗教サイエントロジーの教祖だから
ってハナシも。
薬物に頼らず、自己啓発を、っていうダイアネティックスの提案者ですね。

ま、映画にはぜんっぜん関係ないので、それはおいといて。
ルーカスがトラボルタに持ち込んだ企画らしく、DVDの特典で、
監督もトラちゃんも熱弁をふるっていて、なかなか笑えます。

B級映画の悪役には絶対に必要不可欠な「高笑い」ですが、
「バーチュオシティ」のラッセル・クロウにも負けていません、
ジョン・トラボルタの「ハッハッハッハッハッハ!」
すげーーーー悪そうです。
すげーーーー腹黒そうです。
「フェイス/オフ」の時の悪役ぶりとは比較にならない嫌なヤツです(笑)なにせ、征服しにきた欲深い宇宙人ですからw
そしてトラちゃん、めっちゃくそ楽しそうです。

サイクロ人って名前でもう、ダメです(いや、ツボだって意味)。
文明進んでるのに、毛むくじゃらで笑えます。
なんかこう、毛がなければないほど、未来っぽいSFチックな感じがするじゃないですか。それを見事に裏切ってくれます。

彼らは地球の酸素がダメなので(じゃあ征服するなよ)、
いつも基地の外ではシンクロナイズドスイミングの選手の鼻栓を
もっと巨大化したような妙なモノをつけています。
地球人は基地の中には毒ガスが充満しているので、この鼻栓をつけます。ハンサム君も台無しです。
笑えます。

地球侵略の目的は、「金の発掘」です。
どうやら全宇宙的に金って価値あるみたいっすね。笑えます。

バリー・ペッパーが地球を宇宙人から奪還するリーダーです。
・・・・すげー弱そうです。
服装と髪型だけ、「ブレイブハート」のメル・ギブソンです。
でも弱そうです。
文明なくて刃物とか持ってないのに、地球人、皆さん髭がきれいに
剃られていたり、髪型がオシャレだったりします。
つっこんで遊びましょう。

そしてジョニーはそこそこリーダーシップと頭脳があるけど、ヒーローじゃありません。
実は、私、ここが好きなんです。
1人で地球を救っちゃいません。「アルマゲドン」みたく、精鋭メンバーでもないです。

烏合の衆が、自己犠牲も顧みず、文字通り、決死の覚悟で、
リーダーを支えながら、戦います。ここが好きです。

そして、悪役のほうがかっこいいです。これも好きです。
もっと正確に言うと、ダサかっちょいい、です。
クールじゃありません。アホみたいです。でもかっちょええ。

フォレスト・ウィテカー、猿の惑星メーク+狼男メークみたいな
顔で、最初、誰だ?と思いました。
彼はとってもオイシイ役ですね。
サイクロ星人の中で、観客が唯一、思わず同情して肩入れしてしまうキャラじゃないでしょうか。

いきなり、もう滅びかけてる地球は、「サラマンダー」的だし、
「2300年未来への旅」っぽいです。他にもいっぱいあることでしょう。デストピアを舞台にしたSFはいっぱいありますから。

個人的に、デパートのマネキンを見て、地球人の子孫が、
神を見た人間はああなった、と言っているあたり。
ガラスも、「神の石」です。

ああ、B級SFっていいなぁ。
DVD特典で、飛行機のハリボテを愛おしそうに見せながら熱っぽく語るところなんて、うん、そうかそうか、と微笑ましいw

真紫のサイクロ星にも大ウケ。あんまし文明進んでなさげです。
あの星で、「金(gold)」を何に使うのか、不思議なところが
ナイスです。よその星に高く売りつけるんでしょうかね。
ああ、金の鼻栓作るのかな〜?(爆)

あー、面白かった♪




2004年11月13日(土) 「ミスティック・リバー」明らかに政治批判映画。その分、人間ドラマは希薄。世の中は不条理だが、天に唾はきゃ落ちてくるのさ。

『ミスティック・リバー』【MYSTIC RIVER (秘密を抱いて幽玄に流るる川、という意味合いでいいだろう)】2003年・米

監督:クリント・イーストウッド 
原作:デニス・ルヘイン  『ミスティック・リバー』
脚本:ブライアン・ヘルゲランド 
撮影:トム・スターン
編集:ジョエル・コックス
音楽:クリント・イーストウッド 
 
俳優:ショーン・ペン(かつてチンピラだったジミー)
ティム・ロビンス(性犯罪のトラウマに苦しむデイブ)
ケヴィン・ベーコン(州警察、ショーン)
ローレンス・フィッシュバーン(パワーズ警部)
マーシャ・ゲイ・ハーデン(デイブの妻、セレステ)
ローラ・リニー(ジミーの末娘、アナベス)
エミー・ロッサム(ジミーの長女、ケイティ)
ケヴィン・チャップマン(ジミーの手下、サベッジ兄弟)
トム・グイリー(ケイティの恋人、ブレンダン)
スペンサー・トリート・クラーク(ブレンダンの弟、レイ)
アダム・ネルソン(ジミーの手下、サベッジ兄弟)
キャメロン・ボウエン(11歳のデイブ)
ジェイソン・ケリー(少年時代のジミー)
コナー・パオロ(少年時代のショーン)

ストーリー用ライン


貧民街。少年3人がホッケーごっこをして遊んでいる。
飽きた彼らは歩道の乾きかけのセメントに名前を書くイタズラを始める。
そそのかしたのはワルガキのジミー。ちょっとためらいつつも、
ショーンが続く。そして、嫌がっていたデイブがおそるおそる、DAまで書いたとき、警官と名乗る強面の男2人に注意を受ける。

デイブだけ、少しここから家が離れていた。男はデイブだけを車に押し込み、連れ去った。不安な気持ちで見送るしかない、少年2人・・・。

デイブは4日間、森の奥に監禁され、レイプされ続けた。
隙をみて命からがら逃げ出したデイブ。
窓の外から手をふるジミーとショーンに、デイブは手を振り返さず、カーテンを閉ざした・・・・・・。

十数年後・・・。
貧しさゆえに、嫌な思い出とともに、この街で暮らすしかない
彼らは、それぞれに傷を抱えたまま、大人になっていた。

デイブにはまだ幼い息子が1人。優しい妻と静かな3人暮らし。

ショーンは刑事になっており、州警察で激務をこなしているが、
妻はお腹に赤子を身ごもったまま家出したっきりだ。
日に何度となく、無言電話が妻からかかってくる。
電話のむこうで、妻は口を開こう、開こうとするが諦め切ってしまう。それでもひたすら話しかけつづけるショーン。

ジミーは今は表向きは小さな雑貨食料品店を営み、堅気の暮らし。
でも、若い頃はチンピラで、今でも影で街を牛耳っている。
愛情深い妻に、3人の娘。
長女ケイティは19歳、お年頃で、ジミーも何かと心配だが、
反抗的なところもなく、とてもよい娘に育った。
ケイティは前妻との子だ。
次女はそろそろ初聖体拝領を迎える9歳、末娘はまだ幼い。

女友達と夜遊びに行くと、倉庫にいるジミーに伝えにきたケイティを、機嫌よく見送ったジミー。娘を信頼しているのだ。
・・・だが、これが娘との最後の会話になろうとは・・・。

ケイティにはブレンダンというBFがいる。気の優しい、好青年だ。
だが、ジミーは何故か執拗なまでにブレンダンを忌み嫌う。
だから2人は内緒で交際していたのだ。
娘に気がある男を疎ましく思うようなレベルではなかった。

明日のデートの約束をして、ケイティとブレンダンは別れる。

その夜遅く・・・。
バーに一杯やりにきていたデイブは、カウンターに飛び乗って
酔って踊りまくるケイティを見て、最近の若いコは、とあきれる友人に相づちをうった。

深夜3時すぎ。
血まみれでデイブが帰宅する。怯えるセレステ、混乱して真っ青なデイブ。
強盗に襲撃され、切りつけられた、と傷を見せ手当をしてもらうが、病院行きは拒む。カっとなって、路面にひどく相手の頭を打ち付けた、殺したかもしれないと・・・。
セレステは怯、表面的には夫を励まし慰めながら、夫を恐れ、気持ちが離れてゆく・・・。

翌朝。
公園脇で、血まみれの車が発見された。
遺体は無惨な姿で、公園の奥で見つかった・・・。
ジミーの娘、ケイティだった・・・。

いったい、誰が、何故!!??
ジミーの胸は怒りと悲しみで張り裂けそうだった。

この事件が、近所に住みながらすっかり疎遠になっていたジミー、デイブ、ショーンの3人を、再び引き寄せることになる。

3人の軋んだ関係はどう転がり、運命的な結末を遂げるのか・・・・・。


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コメント用ライン


ちょっと、この映画には言わせてもらいたいことがある。

問題は、この映画がクリント・イーストウッドの映画だということ。
常に、弱きを助け、強きをくじき、正義が勝つということ、
そして、悪よりもさらに「強く」なければ正義の実現はないということ、そして時には「権力」に逆らって「ルール違反を覚悟で」
ゴリ押ししなければ法で裁けない悪は滅ぼせない・・・
そういう映画、彼の主演映画に(そして製作に関わった映画に)
多くないだろうか。

クリント・イーストウッドは、そのまま、「強く正しいアメリカ」
の象徴なのだ。

そこへ、これである。
映画にはいろいろな見方があって当然だが、本作はあざといまでに
政治的なメタファーが強いというのは、多くの方が感じたことではないだろうか。

11歳。

ジミー:スリル大好き、周囲はとばっちりをくらうが、カリスマ性でリーダー。
ショーン:正義感があり、いい子でいたいが、いまいちジミーの
押しの強さには逆らえない。
デイブ:直接的なジミーの被害者ではないが、結果論として
被害者

大人になって再会した3人。

ジミー:表向きは商売上手で名実ともに街の顔。昔はワルかった、そして実は今も裏では後ろ暗いことをしているが、立派な社会人のフリ。
だが、家族や兄弟、仕事仲間を愛する心はとても強い。同胞意識の強さ。そして、娘の初聖体拝領にうるうるするカトリックである。
人殺しだが信心深く(矛盾と自己正当化)、教会と国旗に敬意を払うということ。

ショーン:正義のために身を粉にして働くことで、過去のトラウマから逃げようとしている。とても立派な社会人で、後ろめたいことは何もないが、人望も薄く、存在感が薄い。
言うべきことがきちんと言えず、頼りない。
声と態度のでかい強引な同僚にいなされている。

デイブ:長い長い自分の中での闘いに苦しみ、心が病んできている。森から抜け出せない。
抑圧されたストレスとトラウマが、暴発して人を死にいたらしめる。

ジミー:同胞を守るため、同胞への復讐(9.11)のためなら、
犯罪行為も厭わない、証拠隠滅も手慣れたもの、「正義の遂行のためには、多少の誤爆もいたしかたなし、と開き直る強いアメリカ」

ショーン:正義の象徴のはずだが・・・。自らの存在意義は理解し、職務には誠実に励むが、もっとも見逃してはならないところを、圧力に押され、また、利害関係から、目をつぶる、「国連」

デイブ:抑圧された怒りが暴発。人道的に許されないことを
してしまう。家族、友人(同じ宗教の周辺諸国)にも理解されず、孤立し、追い込まれていく「イラク」

3人の名はコンクリートに刻まれ、それは生涯の堅い絆を示すように一見見えて、ジミー(米)とショーン(国連)は、微妙な共犯関係となり、一生、互いを監視し、縛りあうだろう。
デイブ(中東)の名は、その人の人格を表す「名前」になっておらず、意味をなさないものとして切り捨てられる。
存在も、切り捨てられる。

当然、クリント・イーストウッドは、辛辣な皮肉として
メッセージを発信したはずだ。そう信じたい。

だが、強きものが復讐の名のもとに、自らの銃で裁く、
「西部劇の正義」の王者のメッセージを、誤解する米国人は
いないのか?危険な賭けだな、という不快感。

日本人は、「ちゃんと、後味悪く感じた」人がほとんどではないだろうか?なんでよ、そんなの理不尽じゃないか、誰1人救われない(命だけでなく、魂も)じゃないか、なんなんだよ!
そういう、怒りや憤りを持てたなら、制作者の意図は通じている。


さて、政治批判を持ち込むには、ブラックコメディでやるのが基本。誤解が少ないからだ。
「ボーリング・フォー・コロンバイン」にしろ、「スリー・キングス」にしろ、笑えるから、いいのだ。

ブライアン・ヘルゲランドの脚本だというので、かなり期待していたのだが、ここは激しく期待はずれ。
もともと、犯人当てや真相の追求に力が入っていない(物語の
目的が違う)ので、当然、ミステリー要素は甘い。
では、濃厚に「人間」を描けたか?といえば、さぁ、どうだろう。
人物がことごとく、何らかのメタファーと化しており、人間味が
そこにはない。

冒頭、デイブを傷つけた大人は、豊かすぎて変態が増殖した自由の国、アメリカの毒素だ。
自分の力を見せつけたくてあんな提案をした11歳のジミーも、
アメリカの毒素だ。

運命はまわりまわって、2人の変態は獄死、ジミーは最愛の娘を殺される。長い長い長いヒモで、気づかぬうちに自らが絞めた首だ。
まさに天に唾。

これだけ象徴として描かれてしまうと、人間をコマにしたチェスのようで・・・・。

ヘルゲランドはもともと、若干まわりくどい脚本を書くように
いつも思ってはいたが、娯楽作だとつらくない。
今回は、辛かった。
くどくどと、同じ心理描写が繰り返され130分を超える。

妙に過大評価される演技にも、めずらしく文句つけたい。
いや、悪いのは俳優じゃないのだ。そこは誤解なく。
評価をするほうに、だ。また、映画を普通に楽しむ
一般の視聴者は、誰を凄いと賞賛しても200%自由だし、
感じ方は100人100色。
だが、「批評家」という看板をしょった方は、そうもゆくまい。

ハリウッドの映画は、わかりやすくてよいのだが、
顔を覆って泣く演技は難易度が低い。
廃人の演技もだ。

プロが賞賛するほどのすごい演技ってあったっけな。
心の奥にズシンと響くようなセリフまわしや、行間の演技。

敢えていうなら、いちばん存在感を薄くきちんと演じていた、
ケビン・ベーコンが秀逸だ。
本来、一番濃いキャラなのだが、押さえた演技というものを
知っている。
ミスティック・リバー。
それはショーンの心の中で密かに静謐にたたえたまま、
決して流れない川でもある。

ジミーの罪悪感は、甘言に洗い流された。
いや、もっと正確に言えば、ジミーのミスティック・リバーは
流れている、そして流れてゆく。
正当化、守った、復讐した、という大義名分のもとに、
今でなくても、いつか確実に流れさる。

独立記念日のパレードを「生き残った家族」で揃って
微笑んで見つめるのだ。
ショーンは、パレードはただ眺めていただけ、傍観者である。
秘密を握りつぶし、気に病みながらも、傍観するほかない。

父親を売った母親を一生憎悪するであろう幼い息子は、
パレードでうつむく。アメリカのお祭りなんて楽しくない。
母親は哀れっぽくすがるが息子には無視される。
スパイ<密告>した母親。CIAのメタファー。
これもまた、アメリカの毒素。

これがアカデミー賞でもてはやされたということは、
アメリカの映画人は、自国のイタいところを批判した精神に敬意を払ったということか?それなら、いいんだ。



2004年11月11日(木) 「コーンヘッズ」トンガリ頭の宇宙人、征服しにきた地球に墜落、お迎えこない。アメリカ中流小市民を夢見る宇宙人一家VS移民局!

『コーンヘッズ』【CONEHEADS】1993年・米
監督:スティーヴ・バロン 
原案:ダン・エイクロイド
脚本:ダン・エイクロイド/トム・ディヴィス/ボニー・ターナー/テリー・ターナー
撮影:フランシス・ケニー
音楽:デヴィッド・ニューマン
 
俳優:ダン・エイクロイド(ベイダー(地球名ドナルド・R・デ・チコ)
ジェーン・カーティン(妻プライマット (地球名マリー)
ミシェル・バーク(宇宙人夫妻の1人娘、コニー)
マイケル・マッキーン(移民局、シードリング)

ストーリー用ライン


地球のアメリカ領空を侵す怪しげな飛行物体が出現。
彼らは地球から26光年離れたレミュラク星から、地球征服の準備に
やってきた夫婦、ベイダー&プライマットの宇宙船だ。

シールドを慌ててかけ、レーダーから消えたはいいが、
あえなく墜落、NYの池にドボーン!

とりあえずモーテルに泊まり、とにかく母星から迎えが来るまで
地球人として生き延びようと決意。

彼らの特徴:頭は道路工事のコーンのごとく、三角錐状。
     言語センスは、かなり不思議。
     1本1本の歯も、コーン状にとんがっている。
     何でも喰う。
     けっこう礼儀正しく、フレンドリー。



器用なベイダーは家電製品修理の店で仕事にありつき、
見事な仕事っぷりで雇い主にいたく気に入られる。
店の裏手にあるトレイラーも貸してもらい、そこで夫婦は
暮らし始めた。

ぢつは、ベイダーは部品をちょろまかし、母星との交信機の修理部品にあてており、やっとこさ、母星の司令官と話ができた。

地球征服に失敗した役立たずに司令官はキビシー!
救援の船をよこしてやるのは、7ザール(何年だよ!?)後だ!とお怒りモードで通信を切られてしまう。

・・・しかたないですね。
とにかく、地球人としてっつーか、アメリカ人として暮らすために必要なもの、社会保険番号。
雇い主が、ベイダーの有能さを見込んで、違法で手配してくれた。

ドナルド・R・デ・チコという名も手に入れたし、
妻の腹にはベビートンガリが♪ 
さぁ、働いて稼いで、生活水準を上げるのダ!

しかし、移民局が黙っちゃいなかった。
デ・チコという名前の不法移民がいっぱいいる!!
闇ルートで死人の名前をたくさんの移民に売りつけたらしい。

出世にリーチがかかっているシードリングは、もう必死。
なんとかベイダー一家を検挙しようと奮戦するが、逃げられる。

そのうち、昇進してしまったシードリングは、デ・チコの件は
忘れてしまうのだった。

こうして平和な18年間が過ぎてゆく。
勤勉さのおかげで、郊外に庭付きのよい家も持ち、
1人娘のコニーも愛くるしく(※もちろん頭はトンガッてます)育ち、思春期や反抗期に親はちょっと苦労しながらも、幸せな日々。
地球人のBFもできました。まぁ、パパはそんなの気に入らないけども。

ベイダーはゴルフの腕もよく、夫婦して人付き合いのうまい彼らは
ご近所とのトラブルもなく、実に絵に描いたようなアメリカ中流家庭を築き上げていた。

だが、移民局のシードリングは、次の昇進に向けて、過去に放置したままのデ・チコ事件がネックになってしまい、ヒステリックに
再捜査を開始!

じわ・・・じわ・・・移民はアメリカから出て行け〜〜!とイヤな使命に燃える彼らの手が、立派なアメリカ市民の宇宙人一家に迫る!

そこへ、7ザールたったらしく、母星から唐突にお迎えにいくわよ宣言が!

でも・・・・娘のコニーには大ショックだ。
彼女の故郷はこの地球なのだし、愛する彼氏だっているのに。

だが、このままじゃ絶体絶命!

さぁどうする?どうなる?


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コメント用ライン


すげーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(爆笑)

ダン・エイクロイドの持ちネタを、映画化しちゃったという・・・。

トンガってるし、頭。
ヘルメットもトンがってるし。
でも、見た目に誰1人として、驚かないところがいい。
そこは、「アメリカ市民の懐の深さ」。

そして、宇宙人も、空飛んでりゃ空軍の管轄だが、アメリカにグリーンカードなしで住んでりゃ、移民局の管轄だ〜!
アメリカから(※地球からではないのがミソ)宇宙人は出ていけ!
という「アメリカ政府の心の狭さ」。

こんな皮肉もちゃ〜んと盛り込みつつ、とにかく笑える。

「こんにちは。」「ただいま」「おかえり」などはすべて、
「挨拶。(Greeting.)」

もう書き始めたらキリがないのでやめときますが、
字幕のセンスが絶妙なのですよ。

B級映画には欠かせない、ヘンな挨拶>「挨拶。」と、
ヘンな悲鳴>「にぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!??」

わたくし、完璧にこの悲鳴をマスターしてしまい、
家の中でショックな事態(ゴキ発見とか)に遭遇すると、
つぶれたひきがえるのような声で「にぁ〜〜〜!」と叫んで
おります。ついでに夫ともこれでハモり、遊んでおります・・・。

「不思議惑星キン・ザ・ザ」の「くー。」「きゅー。」
に負けてないっ!と思わず握り拳を固めた私(笑)

やっぱ、これをご覧になるときには、ハウス食品「とんがりコーン」をむしゃむしゃ食べながら、がおすすめですね。うん。

ただバカ騒ぎしてるだけじゃないですよ、ってかむしろ
騒いでいるのは、人間(※移民局)だけ。
とてもとても、平和にのどかに地球で勤勉に暮らす、アタマのトンがった宇宙人の生活を、どうぞお楽しみくださいw

「ケロロ軍曹」好きな方、イケるんじゃないでしょうか♪



2004年11月09日(火) 「しあわせな孤独」ドグマ95だけど異色ってか異端?順調なはずの人生が一瞬で狂ったら。人は脆くて哀しくて、でも逞しくて。

『しあわせな孤独』【ELSKER DIG FOR EVIGT/OPEN HEARTS(米題)2002年・デンマーク
★2003年デンマーク・アカデミー賞 最優秀作品賞・最優秀助演男優賞・最優秀助演女優賞
★2002年トロント国際映画祭 国際批評家連盟賞

監督・原案:スザンネ・ビエール
脚本:アナス・トーマス・イェンセン 
音楽:イェスパー・ヴィンゲ・レイスネール
 
俳優:ソニア・リクター(ヨアヒムの婚約者、セシリ)
マッツ・ミケルセン(マリーの夫、医師ニルス)
ニコライ・リー・カース(事故の被害者、ヨアヒム)
パプリカ・スティーン(ニルスの妻、事故の加害者、マリー)
スティーネ・ビェルレガード(ニルス、マリー夫妻の長女、スティーネ)

ストーリー用ライン



セシリは23歳のシェフ。ヨアヒムは地質学専攻の大学院生で、
もうじき博士課程がとれる。そしたら結婚するのだ。
ちょっと趣味の悪い婚約指輪も、ヨアヒムのユーモア溢れるお茶目な性格も、何もかも、愛すべき存在。
セシリとヨアヒムはとても幸福だった。

ある日、その幸福は一瞬で崩壊した。1秒前にはキスしてたのに。
鈍い衝撃音と、地面を赤く染める鮮血で・・・・・。

ヨアヒムはからくも一命を取り留めたが、首から下が麻痺。
回復の見込みはない。

話すことだけはできるヨアヒムは、愛するセシリに、医師に、看護婦に、怒鳴り散らし、当たり散らし、毒舌を吐く。
そうでなければ石のように押し黙ったまま。

憐れみは不愉快だと、別れを切り出すヨアヒム・・・。

セシリの胸は悲しみで押し潰れそう・・・。

一方、彼をこんな目に遭わせてしまった加害者側も、苦しんでいた。
ヨアヒムが入院している病院の別の科の医師、ニルスの妻、マリーが、車の中で、娘との口論に苛立って起こした事故だった。
思春期のスティーネはふさぎ込んで荒れ始める。
マリーは自分を責め、苦しむ。

ニルスはいてもたってもいられず、病院の待合室で放心状態の
セシリに、自分の連絡先を告げ、心から謝罪する。

セシリは、昼といわず夜といわず、ニルスの携帯に電話をかけて
泣くのだった。
マリーも、気の毒だから傍にいて話をきいてあげてと、夜中の電話にも怒らなかった。

申し訳なさと同情が、若く美しいセシリへの恋慕へと形をかえるのにはさして時間がかからなかった・・・。
家庭はやんちゃ盛りの男の子2人と思春期の娘の反抗期で落ち着かない。逃げ場がほしかった・・・。

セシリも、尽くしても罵詈雑言を浴びせられる日々に疲れ果て、
不能となったヨアヒムに二度と抱かれない切なさから、
魅力的なニルスにのめり込んでゆく・・・。
寂しさを埋めるだけのつもりだったけれど、坂道を転げ落ちるように恋に溺れた。

ヨアヒムは、あいかわらず病院で年配の看護婦に辛く当たり、
まだ現実を受け入れられないでいた・・・・・・。


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コメント用ライン


あれれ、ドグマ95認定作品(#28)なのに、BGMともとれる音楽が入っているし、えらく画質がよく揺れない。手持ちなのはわずかな揺れでわかるが。
デジタルカメラならではの機能だが、フィルムに特殊効果を
入れている。
小道具も調達している。オールロケなのはドグマ方式だけど。
ドグマ95の十戒をすべて守ってはいないけれど、この作品なら、
ドグマアレルギーの人でも安心して観られるだろう。
酔いません。

ドグマ形式で撮影されたシーン(突然、画像が暗く粗くなる)は、
“そうだったらいいのに・・・”という主にセシリの心の中の
映像だ。動けないヨアヒムが彼女を見つめて手をさしのべるシーンなど。
幻のほうを、ドキュメンタリー画質で撮るという試みは興味深い。

交通事故の加害者と被害者の苦悩、ときいて、ショーン・ペン監督の「クロッシング・ガード」のような復讐の展開になるのかと思ったのだが、セシリがニルスを虜にして家庭を崩壊させたのは、復讐ではなかった。

やっぱりハリウッドの映画とはもっていきかたが違うな・・・。
欧州ならではの、完成した自己責任、個人主義が漂う。
それと、テーマは違うのだけど、事故の加害者と被害者が
同じ線上の人生を歩む上でどうするのか、というところでは、
「息子のまなざし」とも関連性がある。


日本人には、納得のゆかない展開も多いかもしれない。
過失致傷罪にもならず、ヨアヒムのほうが悪いという警察。明らかに前を見ていなかったのはマリーなのに。

無論、浮かれて突然飛び出した彼にも落ち度はあったのだが、
前を見ていれば違ったはず。
でも、事故の責任については映画ではほとんど語られない。
でもそれでいいのだ。
この映画のテーマは、過去の出来事が「誰のせいか」ではなく、
これから「どうするか」。

実際には、傷害保険に入っていても、一生働けないヨアヒムに
支払う損害賠償と慰謝料だけで破産しかねない。
デンマークの保険事情はわからないので何ともいえないが、日本
なら、一生、加害者は借金地獄だろう。

なのに、
人を殺しかけたその日に、現場に居合わせた娘の誕生日祝いを
豪華なディナーで友人、親戚一家と祝っている。
この感覚は日本人には???ではあった。不謹慎という感覚が抜けているのか、それは日本的な感覚なのか・・・。

でも、ドグマらしい部分、「作為的なものを排除せよ」は
この作品の主幹だ。
偽善なし、奇跡なし、美談なし。
人間の醜さを自然光で撮るのがドグマなら、これもそうだ。

指1本動かすことのできなくなった若い男が、愛想よく振る舞えるか?下着姿の恋人に感覚のない体に泣きながらのしかかられて、
出て行け!と叫ぶほかにどんな言葉が?
殴ることも手足をバタつかせて枕を壁に投げることもできない、
その想像を絶するやり場のないマグマのような怒りと悲しみを、
あなたは責められますか?当たられた周囲のつらさもまた、
やりきれないし、ヨアヒムの痛みも「どうしていいかわからない」

はじめ、ヨアヒムは、まだ若い彼女に新しい人生を歩ませたくて
わざとつらくあたり、別れを切り出したのかと思った。
だが、違う。そこも日本のドラマなら「そのほうが君のためだ」
なんか言いそうだが。

もう抱いて快楽も幸福も与えてやれない女に、憐憫のまなざしをむけられ、一方的に何か「してもらう」ことしかできなくなった男の自尊心が傷つくからだ。

人生が足下から崩れ落ちるほどの事件に遭遇したとき、
人はすぐに対策と練り、冷静に解決してゆけるか?
それができるのは、とてもとても強靱な精神をもった人だけだ。

9.11のショックは、アメリカだけではない。
世界中に、特に欧米をどれほど震撼させたことか。
1秒前まで笑ってた、今夜も帰ってくるはずだった。

他人事じゃない。

人生に正解も近道もない。
彼らは、みな、間違った。悪かったのではなく、間違った。

孤独を肌で埋め合うことを「幸せ」だと錯覚した。
怒り、が最後の「人間らしさの砦」とばかり毒づく男もいた。
責められるのが怖くて自分の過ちを夫に謝罪してもらった妻がいた。
妻を、表面的に守ろう、自分が矢面に立とうとカッコをつけ、
結果的に妻子を深く傷つけた夫がいた。

彼らは悪いか?弱かったのは罪か?いいや、人間は脆く弱い。
後から、こうすればよかった、なんて誰にだって簡単に言える。

このリアリズムから目を背けてはいけない。

だが、ラストに向けて、大きな解決はなくとも、
「このままではダメだ」と全員が動き出そうとし始める。

独りになることで、自尊心を取り戻し始めた男がいる。
独りになることで、静かに過ちを精算しようとする男がいる。
独りになることで、AでもBでもない、新しい人生を探そうとする女がいる。
独りになることで、精神的に自立し、自分の頭でものを考えられる逞しさを得た女がいる。

独りは孤独だ。
でも、孤独は永遠に続くメビウスの輪ではない。
今、孤独なら、やがて、孤独でないという幸せを噛みしめることが
できる日が、遅かれ早かれ、訪れるということだ。

無傷なものは、傷つくことを恐れなければならない。
でも、傷ついたものは、癒える喜びを、同時に内包しているのだ。



2004年11月08日(月) 「ダークシティ」 キーファーの挙動不審な科学者っぷりもナイス。異星人=地球征服、とは限らない。A・プロヤスの傑作B級SF。

『ダークシティ』【DARK CITY】1998年・米
監督:アレックス・プロヤス
脚本:アレックス・プロヤス/レム・ドブス/デヴィッド・S・ゴイヤー
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
 
俳優:ルーファス・シーウェル(ジョン・マードック)
キーファー・サザーランド(シュレーバー博士)
ジェニファー・コネリー(エマ/アンナ)
ウィリアム・ハート(バムステッド警部)
リチャード・オブライエン(異星人、ミスター・ハンド)
イアン・リチャードソン(異星人、ミスター・ブック)
ブルース・スペンス(異星人、ミスター・ウォール)
コリン・フリールズ(ワレンスキ警部)

ストーリー用ライン


“チューン”という、物体を自由に操れる(移動だけでなく変形、消滅、また無から生み出すことも可能)能力を持つ無形の異星人たち。

かつて繁栄を極めたが、種の絶滅の危機に瀕し、故郷を捨て、
地球に目をつけた・・・・。

レトロな雰囲気の英国風な街。時代は未来でも現代でもなさそうだ。国もはっきりしない。

男がバスタブで目を覚ました。
ひどい目眩。すべって金魚鉢を壊してしまう。
男はそっと金魚をすくい、冷え切ったバスタブにはなしてやる。

部屋の隅に、全裸の女の死体が!!螺旋状にナイフで体じゅうに
傷をつけられている。
自分が・・???

電話が鳴る。精神科医だというシュレーバーという怪しげな男からだ。逃げろ、とひどく怯えた様子で言う。

男はホテルから逃げ出した。
黒衣に身を包んだ蒼白で無表情な男や子供が彼を追う・・・。


男は記憶をなくしていた。彼の名はジョン・マードックであるらしい。財布の免許証でわかった。免許証の住所に行き、ポケットの
鍵で入ると、そこが我が家らしく、妻らしき美しい女性が不安そうな面持ちで見つめている・・・・・。

このところ、娼婦ばかり連続で6人殺され、体に渦巻き模様の
傷をつけられる事件が。ジョンは容疑者として警察に追われて
いたのだ。

怪しげな能力を持つ男たち(異星人)に追われ、ジョンは咄嗟に彼らと同じ能力、チューンで応戦し、逃げのびるのだった。


異星人のアジトでは、なぜ人間がチューンできるのかと大問題に。
彼らに協力させられている科学者のシュレーバーは、実験が失敗した、と弁解する・・・。

真夜中の0時。
チューンタイムが始まる。
突然、ジョンとシュレーバーを除くすべての人間が眠りに落ちる。
車も電車も止まる・・・。

異星人たちは全員の能力を結集し、街の姿を変え始めた。
ビルが生える。変形する。ぐにゃぐにゃと・・・。

そして街に出た彼らはあちこちに家に侵入し、人々の記憶を操作している・・・・。パズルのように・・・。

ジョンは、この街で何がおこっているのか、自分に何かおこったのか、失った記憶を取り戻そうとするが・・・・。

鞄に入っていた、一枚の絵はがき。
太陽の輝くビーチ。自分はそこで生まれ育ったようだ。
なんとかビーチへ行こうとするが、
ビーチ行きの路面電車も地下鉄もあるのに、何故かたどり着けない。
タクシーの運転手に訊いても、ビーチへの行き方は忘れたという。

警察も次第にジョンを追いつめる。

いったい闇が支配する薄暗いこの街で、異星人は人間の記憶を用いて何を成し遂げようとしているのだろうか・・・・・??

そしてジョンの運命や如何に。


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コメント用ライン


アレックス・プロヤスでSFといえば、最近では「アイ、ロボット」が大人気? このヒト、エジプト出身なのだね。
プロヤス=近未来ダークファンタジーSFのイメージを定着させたといわれる「クロウ/飛翔伝説」も絶対観たい。


いいねぇ、いいねぇ、このダークレトロな街並み。
「ロスト・チルドレン」を彷彿とさせる石畳のレトロな街並み、
人々の装い。

敬愛する王子(貴族役多いからw)、ルーファス・シーウェル様のお美しさも堪能でき、
キワモノ怪優(褒め言葉)キーファー・サザーランドの病的な
演技も楽しめる。
1人、ものすんごくクールにキメてるウィリアム・ハートが渋い。
そしてジェニファー・コネリーはあいかわらずぶっとい眉毛がお美しい。ジェニファーは、実は「フェノミナ」しか観たことがなく、
あの頃はまだ少女だったから、本作での上品な匂い立つ色香にうっとりw

異星人のみなさん、死体を借りたゾンビさんたちですから!
そこがすでにツボ。
どうりで子供がいるはずだ。
名前がまたたまらない。「手さん」「壁さん」「本さん」だもんな〜。

って、こんなことばっかり描いていると、おちゃらけ映画だと
思われる危険性が(汗

ラストにかけての緊迫感、「え・・・!?」と、うすうす予想はしていたが、やっぱり驚く展開、そしてカタルシスすらドドーン!と
味わえる、あの眩しいラストシーン。

人間を知るにはアタマじゃなくてハートを調べなきゃね。
でも心臓でも脳でもなくてね。

人間は、やっぱり海に惹かれるのだ。
あらゆる生命の源、母なる海に。

いつか丸くなるかもしれない、そう思いながら幸福な思いで
観終えたのだった。

仮想世界SFは「マトリックス」ですっかりメジャーになったけど、この作品は「マトリックス」より前だ。
予算もスケールもCGのレベルも可愛らしいものだが、
描かれているテーマは、本作のほうがしっかりしていないだろうか。

仮想でも、そこに生きている人には現実。守りたい。
その想いは、「13F」にも通じるものがある。
レトロな大道具小道具とSFの調和は、それにしてもなんと美しいのだろう。



2004年11月07日(日) 「完全犯罪クラブ」歪んだ闇色の青春。犯人サイドか警察か、どっちかに焦点を絞ればなおよかったが・・・。

『完全犯罪クラブ』【MURDER BY NUMBERS(うーん、「ある連中による殺人」、かな?)2002年・米
監督:バーベット・シュローダー 
脚本:トニー・ゲイトン 
撮影:ルチアーノ・トヴォリ
音楽:クリント・マンセル 
 
俳優:サンドラ・ブロック(警部補、キャシー)
ベン・チャップリン(キャシーの相棒、サム)
ライアン・ゴズリング(殺人犯、リチャード)
マイケル・ピット(殺人犯、ジャスティン)
アグネス・ブルックナー(高校の女生徒、リサ)
クリス・ペン(高校の用務員、レイ)

ストーリー用ライン


カリフォルニア州、海辺の町、サン・ベニート。
断崖絶壁の廃墟で、今、2人の高校生が向かい合って拳銃自殺しようとカウントダウンをしはじめた。
完全犯罪か、死か。
自殺と犯罪によって人生は完成する、それが2人のモットーだった・・・。

数週間前、森の中の川原で女性の惨殺死体が発見された。
出血量から、殺害現場はここではない、指を切り取り持ち帰っていることから、異常者の線も考えられたが、性的な暴行は受けていない。死因は絞殺、死後に体中をメッタ刺しに・・だが躊躇いがちに・・されている・・・。

怨恨か、異常者か・・。

新米の相棒サムを伴って現場を訪れた警部補のキャシーは、
現場の死体をみて、プロとは思えないような動揺をみせる。
やがてその理由は明らかになるが・・・。

キャシーは若く美しい女性だが、同僚の男たちからは煙たがられている。他人にあまりにも辛辣で、行動は突飛で強引。
彼女の心をそこまで冷やしてしまった過去とは・・・。

さて、現場を丹念に見、幾つかの物証を手に入れた。
遺体にからんだカーペットの毛、ヒヒの毛。
そして遺体から少し離れたところに嘔吐物・・・・・。

実は、この犯罪は裕福だが人生に何の希望もない2人の高校生が
大人と警察、世の中への挑戦として仕組んだ「完全犯罪ゲーム」
だった。

リチャードは高級車を乗り回し、有力者の父親を持ち、自由に使える金は腐るほどある、リッチでハンサムでイケてる高校の有名人。

ジャスティンも家庭は裕福だが、リチャードと違うのは、
冴えないオタク風の風貌と根暗な性格。
頭脳明晰だが本の虫でコンピュータおたく、まず女子にモテそうもない。

2人の共通点は、虚しさ。そして愛なき家庭で育ったこと。
将来への希望も夢もなく、時間と金をもてあましていた。

2人は、表面的には赤の他人のフリをしながら、闇の中で
繋がっていた。
それは友情というよりは、仲間意識、そして相手より自分が優れていると誇示したいがゆえ・・・・。

2人は意図的に警察のミスリードを誘う物証を用意し、
見事に警察は・・・サムは・・・それに食いついた。
用意しておいた偽の犯人を殺し、事件は犯人の自殺としてクローズした。

だが、キャシーは納得がゆかない。
キャシーは2人の高校生にたどり着いていたが、上はキャシーを
精神科に送り、事件を閉めようとする。

そんな折、2人の高校生の間には、思春期特有の出来事を巡り、
ヒビが入りかけていた・・・・。

その頃、キャシーは私的な問題にも直面し苦悩していた・・・。


冒頭のような状況に2人は追い込まれ、短すぎる人生を自ら閉じるのだろうか?
それとも・・・・?


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コメント用ライン


ヒッチコックの「ロープ」はじめ、20年代のレオポルド&ローブ事件(知能指数高すぎの少年による綿密な殺人事件)をベースに映画化した作品は1つ2つじゃないようだが、本作はむしろ、つい数年前のダートマス事件のほうに近いかな。
自己顕示欲のための快楽殺人・・・。

主人公の2人はニーチェかぶれ。
でもなんぼアタマがよくても人生経験がともなっていないので、
かぶれ、の領域を出ていない。

ニーチェの超人論に陶酔しながら、石を投げたらその石は落ちてくる、ともニーチェはいっとることに気づいてないのか、都合のいい部分だけを拡大解釈しているのか・・・・。

神は死んだ。天国に救いはない。ならば現世で自らの力で望むものを得ろ。価値観は教会が与えてくれるのではない。
自ら、価値観を創り出せるものが超人である。
若いときは超越した存在にあこがれるものだ。
それが歪んだ方向にいかなければ問題ないのだが・・・。

少年たち、特にジャスティンはあたまでっかちの理論屋。
映画としては、よく伏線が張られており、ラストも
大どんでんがえしのように見えて、思い返せば・・・と
こじつけがない。

あの終わり方は、「穴」(ソーラ・バーチ主演)の逆バージョンみたいだ。
鬱屈した青春、歪んだ自己顕示欲・・・。


ところで、個人的には、サンドラ・ブロックを目玉にしたために、
警部補キャシーの物語なのか、歪んだ少年2人の物語なのか、
微妙にどっちつかずな感じが気になる。

キャシーのトラウマは、もったいぶって小出しに語られるほどは、
衝撃的ではない。サムにツっこまれたとおりなのだ。
賢ければもっとスマートに人生の再出発ができたはず。

でも、彼女の自己顕示欲の強さ、我の強さが生死の境をさまよわせる原因となった。

そういう意味で、犯人の少年たちと似ている部分はあるのだ。
他人を見下すことでしか、自分を保てないあやうい精神状態。

それを表現したかったのはわかる、わかるんだが、
そのぶん、少年2人の内面の描き方が中途半端になってしまったような感じが否めない。




2004年11月05日(金) 「チアーズ!」チアリーディングに燃える高校生の夢と恋と炎の情熱、女同士の嫉妬、もう青春フルコース♪

『チアーズ!』【BRING IT ON】2000年・米
監督:ペイトン・リード
脚本:ジェシカ・ベンディンガー
撮影:ショーン・マウラー 
音楽:クリストフ・ベック 
 
俳優:キルステン・ダンスト(トロスのチアリーダー、トーランス)
  エリザ・ドゥシュク(ミッシー)
  ジェシ・ブラッドフォード(ミッシーの兄、クリフ)
  リチャード・ヒルマン(トーランスのBF、アーロン)
  ガブリエル・ユニオン
  クレア・クレイマー
  ニコール・ビルダーバック
  ナティナ・リード
  ハントリー・リッター
  リンゼイ・スローン
  ビアンカ・カジリッチ 
  ホームズ・オズボーン
  コディ・マクマインズ 
  イアン・ロバーツ

ストーリー用ライン


太陽眩しいカリフォルニアのランチョ・カルネ・ハイスクール、夏。チアリーディングチーム、“トロス”の稽古場。
卒業した元チアリーダー(性格悪し)が、3年生の中から
後任を選ぶときが来た。

公正なる選挙のもとに?選出されたのは、トーランス。
技術はあるが、リーダーシップとなると、まだ不安要素が・・・。

気合い入れて初練習を始めたはいいが、メンバーに無理な注文をして大怪我をさせてしまう。
全国大会が近いというのに、欠員が出てしまった。


そこで急遽、オーディション。
転校生のミッシーは、翳りのある雰囲気で、一見、キャピキャピの
チアリーディングには向いていなさそう・・・。
だが、前の学校で体操の選手だった彼女の身のこなしの凄いこと!

技術優先で、仲間の反対を押し切り、ミッシーを新メンバーに
加えるトーランス。

だが、前チアリーダーが振り付けたステップで全国大会の練習中、
突如怒りだしたミッシーは黙って消えてしまう。

困惑したトーランスがミッシーに連れてゆかれたのは、
ロスにある黒人生徒ばかりの高校のチアリーティング、“クローヴァーズ”が稽古に励む体育館。

そこで目にした光景にトーランスは愕然!
ウチのと同じだ〜〜!!!

そう、前チアリーダーが、ビデオに盗撮しそのま〜んま自分の
チームに振り付けていたのだ。
なにしろ、クローヴァーズは貧しい学校のチームで、出場には
資金が足りず、大変な実力がありながら今まで出場したことがない。
裕福な白人家庭の子女ばかりのトロスが彼らを知らなかったのは
そのせいだった。

また盗みに来たのかと詰め寄られ、トーランスはアタマ真っ白。

だが、彼女を凹ませたのはそれだけではない。
チームのメンバーに事情を話すと、今更、もう変えられないと
開き直るのだ。

だが、トーランスはそんなの我慢ならない。
かといって、もう大会まで日がないのに自分でオリジナルの振り付けを考える自信がない。

そこでプロの振り付け師に依頼することに。
実はこれは暗黙の了解で反則だ。だが罰則はない。

チームは、リッチな親に援助を頼み、不足分は汗水たらしてアルバイト、どうにか資金を確保した。

そしてやってきたのは、ア〜〜ティスト、なカンジの天才風振り付け師・・・・。
なんか、ヘンな踊り・・・。

さて、いよいよ地区予選大会。
みっちり練習したし、オシャレ?な振り付けだし、パクってないし、さぁ実力みせるよ! と気合い充分。

ところがどっこい!!
ま〜さ〜か〜の落とし穴・・・・・・。

さて、どうする。ただでさえ危機的状況だというのに、
トーランスは終わっていない恋と始まってしまった恋との狭間に
揺れ、両方を失いそうだ。
仲間からはクーデターでリーダーを降りろと・・・。


その頃、予選をブッチギリで勝ち抜いたが、全国大会の出場資金のないクローヴァーズも諦めちゃいなかった・・・。

全米チアリーティング選手権まであと2週間・・・・・。

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コメント用ライン


ぴちぴちギャルの青春♪
いろんなコがいて、自分の青春時代と重なる。

やる気満々、でも空回り気味の熱血少女。トーランスみたいな
愛すべきキャラ。
大人っぽくてクール、ちょっと翳りのある風貌、頭脳明晰、スタイル抜群、運動神経抜群、でもちょっと人と関わるのが不器用なタイプ、ミッシーみたいに。
口先ばっかのハンサム君、アタマの中は女の子のスカートの中だけ、アーロンみたいな野郎。
辛辣でちょ〜っと周囲から浮き気味の真面目くん、でもホントは
ウブで優しい少年、クリフ。

チアリーティングのメンバーも、いるいる!こういうヤツ(笑)
と共感してしまう、いつもつるんで自分たちこそがイケてんのよ、
とカッコつけまくり、目立ちたいけど、責任負うのはカンベンって
カンジ〜? なイマドキギャルたち。

自分からは行動も思考もできず、流されまくりな面々・・・。

そんなコ、いなかった?
自分はどのタイプのコだった?

青春が遠くなった人にも、なんだかくすぐったいようなフレッシュさ。
今、青春まっさかりの人なら、もっと親身に応援したくなっちゃう!

私は無知だもんで、チアリーディングに男子生徒がいるのが
当たり前であることを知りませんでした。
だいたいは女子を高く持ち上げたり、ぽーんと投げたり、
力仕事役。
でも、クローヴァーズの黒人男子生徒は、自分たちも支えるだけでなく、肉体美を踊りで表現していて、観ていてわくわくw

チアリーディングって、ポンポン振って足でラインダンスとか
しながら声で応援するという希薄なイメージしか持っていなくて、
あんなにショーとしての性格の強い、もうダンス通り越して
サーカスレベルの芸だとは・・・・。圧巻!!

アメリカでは、単なる「女子による華やかな応援団」ではなく、
独立した表現型のスポーツとして認知されており、全米大会の
優勝賞金額もハンパでない。

ま、でも、チアに入ってる男子学生は、あまりチアに興味のない
女子からは、「ミニスカお尻ふりふり見たり触ったりできるからでしょ」と冷たい目で見られ(アーロンの新しい恋人の「ゲ!」って
顔・・・)、男子からは、「内心めっちゃ羨ましい〜、けど
なんか女々しくてヤだぜ」が本音みたいで(笑)

この映画は、女のコ(※心が女のコw)が観たら、トーランスや
ミッシーに共感してドキドキハラハラしながら共感して観られるだろうし、男のコ(含むおっさん)が観たら、釣れたての鮎より
ぴっちぴっちのぢょしこうせいの生脚、キュートなお尻フリフリに
鼻の下びろ〜〜ん、確実♪♪

一家揃って、スポーツの秋の夜長にビデオ鑑賞はいかが?
小学生から大人まで、それぞれの視点できっと、楽しめますヨ。

あのラストにも、私は納得。
青春は現在進行形。ハイ、ここで完了、ってもんじゃない。
彼女たちの未来を応援したくなる、爽やかな後味でした(゚ー゚*)

モチ、音楽はノリノリで最高!
日本でも、メインテーマの「ミッキー」を編曲したものが、
某バラエティ番組の中のチアーズパロディの曲として大ヒットしましたね(ってか丁度今(2004年秋)、ヒット中か)。
携帯の着信音にしている人もけっこういて。
子供たちの運動会の、応援団のショータイムに、この曲が使われていました。

ただ張り切ってるだけでなく、問題にぶつかるたびに、解決法を
真剣に考え、それもまた裏目に出て・・・でも諦めない。

裕福な白人家庭の育ちはよいが、少し甘やかされ気味の長女、というトーランスの役柄を、少しも嫌みなく、主演のキルステン・ダンストが好演していました。すこ〜〜〜し、「美女」とは言い難い、
愛嬌のある顔立ちがこの役にピッタリだったように思います。






2004年11月02日(火) 「ドラムライン」踊るマーチングバンドでガチンコ勝負!!ストーリーは目新しさがないが演奏シーンは聴き応え見応えバッチリ。

『ドラムライン』【DRUMLINE】2002年・米
監督:チャールズ・ストーン三世
原案:ショーン・シェップス
脚本:ティナ・ゴードン・キスム/ショーン・シェップス
撮影:シェーン・ハールバット 
音楽: ジョン・パウエル
 
俳優:ニック・キャノン(天才スネアドラマー、デヴォン)
 ゾーイ・サルダナ(ダンス部主将、レイラ)
 オーランド・ジョーンズ(リー監督)
レナード・ロバーツ(デヴォンのライバル、主将、ショーン)
GQ(ジェイソン)
ジェイソン・ウィーヴァー(アーネスト)
アール・C・ポインター(チャールズ)

ストーリー用ライン


ニューヨークのハーレム育ちのデヴォンは今日、高校を卒業した。
いろいろあったが、愛する母の支えもあり、この日を迎えた。
マーチングバンドの優秀なスネアドラマーだったデヴォンは、奨学生としてアトランタのA&T大学に入学を許可されたのだ。

デヴォンは出発前に、もう何年も逢っていない父の職場を訪れ、
卒業式には招待しなかったことを告げ、過去と決別するのだった。
父も、かつて一流のドラマーを目指していたが、挫折し、家族も捨てた・・・・。
成長した息子を、父は見分けることができなかった・・・。

緑豊かなアトランタ、A&T大学。
初めての寮生活、軍隊なみに厳しいマーチングバンドの訓練。
怖い監督、いかつい先輩・・・。
そして、胸焦がす恋。

デヴォンは、特待生だということで主将ら先輩からの風当たりも強い。しかもハーレム育ちの鼻っ柱の強さ。
テクニックなら誰にも負けない、キャプテンにだって負けないという自信過剰さはチームのまとまりを崩してゆく。

多額の賞金とOBのプライドのためにも、学長はデヴォンをチームからはずすことを許さない。
キャプテンも、デヴォンに恥をかかそうと大舞台で独断で彼を
ソロ奏者に任命してしまう。

だが監督の危惧した通り、デヴォンの自己顕示欲は暴走し、
大事な演奏会で他大学のチームと乱闘騒ぎに・・・・!

やがて、楽譜も読めないことが(一度聴いただけで覚えてしまうのだ)わかり、チームから追放されてしまうデヴォン。

恋人になったダンスチアリーダーのレイラも、親の前で大失態を演じたデヴォンに困惑し、離れていってしまう・・・・・。

そんな失意のデヴォンの元に、実家から小包が届いた。
ママのクッキーならわけてくれよ、と笑うルームメイトに微笑み
箱を開けると・・・・。
送り主は父。中身は何本かのカセットテープ。

デヴォンはチームに復帰して愛する音楽を、魂そのものである
ドラムを再び大舞台で奏でる日が来るのだろうか。

性格に難ありでも天才ならほしいとライバル校からも誘いが
来ていた・・・。

その頃。デヴォンを目の敵にしていたキャプテン、ショーンも、
一連の騒動の責任を感じ、苦悩していた・・・。

リー監督はただ静かに見守る。
全米No1のマーチングバンドを決定する大会が近づいてきていた・・・・。マーチングバンドの中でも、ドラムラインは別格であり、勝負の決め手となる。

デヴォンは何を学び、ショーンは何を学ぶのか。
そして親に縛られ自律できないレイラはどう変わるのか。
友情と恋と音楽とリズムが若者たちをアツくする!!


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コメント用ライン


ストーリーは、正当派も正当派。
親からの自立、精神的な自律、友情、尊敬、恋、情熱、夢。
挫折、痛手、苦悩、屈折、そして這い上がる。
その支えになるのは親であり友であり、恋人であり、そして、
この映画で特に重視したい、「師匠」「人生の先輩」の存在。

それをありきたりと言ってしまったら、青春映画はもう成り立たないのではないかとすら思う。
ラブコメがありきたりでお決まりの結末でありながら、次々に
創られ、愛されるのと似ているのだ、青春スポーツ映画は。

目新しさ、斬新さは、スポーツの中身で充分だ。
アメリカン・カレッジスタイルのマーチングバンドは、普段アメフトなどを観戦しない私を含め、比較的「珍しいもの」ではないだろうか。
しかも出演者の9割が黒人(しかも犯罪や貧困問題などの絡まない、高学歴で裕福な層の青少年)である。アトランタの大学という
舞台がよい。

キャスティングや映像芸術の部分に新鮮さが充分にあるので、
かえって物語の運びは安心感すら覚えるほど、清くてよい。

この物語はデヴォンが主役だが、ショーン(カインとアベル的な兄弟的存在)、リー監督(父性を補う存在)の視点も丁寧に描かれており、制作者の誠実さが見える。

初監督作品らしい初々しさがプラスに評価されてよい作品だ。

ラストは例えば『チアーズ』あたりと比較すると、ちょっと甘いかナとも思うが、実際のところ、スポーツもののラストは、負けるか同点か勝利かの3つしかないわけであり、どれを選んでも、すべての観客が満足することはない。

達成感を味わいつつ、汚い手を使おうとした(でも選手に罪はない)ライバルに勝たせず、負けさせず、次年度への希望と情熱を
感じさせる、なかなかよい幕切れだといえるだろう。

とにもかくにも、主役はドラムの響き、若者たちの踊りに託された躍動感だ。目で楽しみ、耳で堪能していただきたい。





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