恋愛日記



 飽和状態。




遺言を残して、いいですか?
君を置いていくのは辛いけど、
この世界は棘だらけ。

あぁ、弱い僕を許しておくれ。
きっと僕の首は椿のようにぽとりと落ちる。

さようなら、
さようなら。




2002年01月23日(水)



 午後。

―午後―

 きらきらきらきら。
 あたしは寝ているように見えるだろうか。目を閉じ、肩肘を付いて、微動だにしない様は、クラスメイトや先生からしても其れは寝ていると思われているのか。
 実際僕は何かを見ている。其れが何かなのかは知らない。
 名称が解からないだけじゃなく、実際そこに存在しているのかも解からない。
 其れは目の錯覚なのかもしれないけど、だけど確実に、あたしは何かを見ている。
「黒田君、起きなさい」
「・・・はい」
 別に寝ているわけじゃないけど、説明したら長くなるし、面倒臭い。
 先生達はもう忘れているんだろうな。それか知らないか、だ。こんなに綺麗なのを忘れるのは至極勿体無い。
 そしてあたしは再び瞼を下ろした。

 ざわざわと此処はいつも騒がしい。静かなのは授業中か、殆どの先生方がタイムカードを付けて帰宅した時位か。授業が終る度に、此処は生徒で溢れかえる。
 僕は5時間目の後、その教科担任に呼び出されて此処に来た。
「・・・居眠りの注意かな」
 一度目の注意の際は寝ていなかったとしても、再び目を閉じた後に睡魔が襲って、今度は寝てしまったとあらば、一度目の時の事も寝ていたと認識されるのは当然だ。
 けど言い訳をするなら、昼食後の授業は辛い。今日だって朝から部活の練習があって、昼休みに嘉子とバドミントンをやって。今のうちに体力を回復しておかなきゃ放課後の部活に備えられない。
 ちら、と先程先生が行った方に目を遣ると、なんとクラス担任まで連れて生徒の波を押し退け、やって来た。
 最悪。
「黒田」
 私立の先生って何でこう、結構な年の先生ばかりいるんだろう。それとも単にうちの学校がそうなだけなのか。判断の基準が解からないから、先生の呼び声にも心の中で苦笑しつつ、いつもの笑みを返した。
「お前まだ進路希望表出シてなかっただろ」
「ああ、はい」
「期日はとっくに過ぎてるンだよ〜」
 この担任はしゃがれた声で、少し訛って話す。
 何時の間にかさっきまで横にいた先生は、もう何処かへ行ってしまったようだ。授業のお小言無しで担任相手に話すなら、普通に聞き流せば早く終る。
 そう思いながら上の空でいると、いつもより強い口調で、話し始めた。
「大学に行くにシテも、そう書けばいいし、成績的に見てもお前は優秀なんだからイイトコだって狙えるよ」
 そんな風に言われるのは、嫌いだ。
「夢とか、なりたいモノとかあるだろ?だったら・・・」
「先生」
 嫌いだ。
「ユメなんて、有りません」
 そう言ってあたしは、職員室の扉に手を掛けた。
 廊下を歩きながら、我ながら軽率な事をしたと思った。何故あそこで感情的な部分が駆り出されたのか。もっと巧くあしらえる方法は幾らでもあるのに、本音を言ってしまったのは自分でも驚いている。
 焦っているのか。
 夢なんて、砂上の楼の様だ。その楼に登って天を仰ぎ、陽を夢をみても、足元から崩れていく。けれどきっと、其れを知らないから皆は夢をみる。容易く崩れる事を知ってしまったらそんなモノは抱けないと思うのは、あたしだけだろうか。
 無知は時に罪だが、樂である。
 ゆめなんて、ゆめなんて。
「・・・あぁ、ゆめなんて」
 だがあたしは、なりたい職業の事を『夢』なんて呼びたくは無い。そんなのは莫迦げている。

 教室に入るとタイミング良くチャイムが鳴って、直ぐに授業が始まった。
 一番窓側の列、前から3番目。窓から光が良く入る特等席。
 きらきらきらきら、光が入る。
「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける」
 昔、アナウンサーを目指していたと言うだけあって、活舌も発音も良く和歌を朗読する先生の声を聞きながら僕は、太陽にむかって瞼を閉じた。
「人はいさ心も知らず、の意味は下の注釈に書いてある通り・・・」
 目を閉じるのではなく、只、瞼を下ろす。
 きらきらきらきら。
 瞼を下ろしたまま、太陽を見る。別に難しい事じゃあない。意図的にしようと思えば、出来る。
 そうすると見えるのだ。いつも同じじゃないけど、赤い血潮のようなものだったり、スポットライトが差したような光だったり。
 そして時に、金箔が。
 まるで世界に金粉が降り注いだみたいに感じる時がある。
 きらきらきらきらと、とても綺麗に瞼の内側で光る其れは、何物にも形容し難い。
 夢に夢見るとは多分こんな感じで。
 だからあたしは、夢と呼ぶなら此れを呼びたい。
 夢、と。
「人の心は、さあ、どう変わってしまったかわからないが。と、言っているんだね」
 変わってしまったのだろうか、皆。
 この事を、誰が憶えているんだろうか。きっと幼い頃は少なからず意識していた筈なのに、段々と綺麗な事の意味を取り違えて、夢を夢と思わなくなって。
 忘れたくないこの想いを、いつかは僕も忘れてしまうんだろうか。
「忘れたくないよ・・・」
 考え方が古くて頭が固い先生達は、きっと忘れてしまった。
「黒田、起きなさい」
 だからあたしは憶えていよう。
 あたしだけは憶えておこう。
 そう、この夢を、ずっと抱いて。
「・・・はい」
 そして、瞼を上げた。

【END】




***独り言***
っつーか今の時期に進路表出して無かったら完璧アウトですって。留年?(笑)
今回は全然実録無いですが(あるとしたら呼び出しと居眠りとバドミントン位)ガッコで感じた事というか。
うちのガッコは週休二日制で今日は休みなんですけど!昨日書かなかった分、書いとかなきゃと思いまして!(爆)
あ〜…冬休み動いてなかったから久しぶりにバドミントンすると疲れて疲れて。
更に昨日は体育でドッジボールとかやっちゃたから、今日は朝起きた時からいろんなトコが筋肉痛です。
3連休なんで寝まくります。ゲームやってゲームやって寝ます。
では。


2002年01月12日(土)



 休み時間。

―休み時間―

「おい」
「おいって呼ばないでよ〜!今日そっちのクラスも補習ある?」
「あるある。だから待ってろよ」
「え〜?」
 もうこの学年の名物カップルのふたり。この二人に限っては、必要以上に体を寄せ合って話す姿を見ても、別段見苦しくも嫌味でもない。
 頬を包んで額を寄せたり、腰に手を回したりする仕草もスッキリしていて。なんだか和む。
「あ〜、またラビュラビュしてる〜」
「うん。ホホエマシイよね」
 友達の課題を必死に写すあたしは、二人の姿を見ていないにしても、話し声と気配でわかっている。
 彼女達が入り口の扉の横で話すのはそう珍しくない、というか普段の事だからだ。
「なんか、あの二人には別れてほしくないんだよね〜」
「・・・何で?」
「うん、あの二人が一緒にいないのが考えられないってーのもあるけど。あの雰囲気、好きだからさ〜」
「うん、そうだね」
 彼女等からはほわほわしてる、暖かい雰囲気を感じる。
「見てるだけでこっちも嬉しくなるってかさ〜」
「うん。わかるけど」
「ん?」
「手ェ動かしてね。チャイム鳴るよ」
 うわっ!と一声鳴くと、さかさかペンを走らせる。
 うん。けどホント羨ましいし。だってあたしは人前であんな風にいちゃつけないから。
「あ〜・・・先生に会いたい〜・・・」
 ごすっと頭上に痛みが走った。友達が英和辞典の角で叩いたんだ。また手を止めていたんだろうか、あたしは。
 けどきっと、あたしは丁度後ろ向きだからわからないけど、ダイレクトに二人が視界に入る彼女は、オレよりもっとそう思ってる筈だ。
 だって彼女の相手は後輩だし。
「あ、キスした」
「え?え?マジで?!」
 好奇心のカタマリと言われる彼女も、流石に振り向くのは彼女等に失礼だろうと思って堪えているのだが、やはり気になるみたいで。
 自分がしているわけでもないのに頬を赤らめ、身を乗り出して聞いてくる様は苦笑せざるをえない。
「ほっぺにだけどね〜」
「へー」
 何に対しての「へー」なのか。
 がらり、と扉が開く音がした。彼女の連れ合いが出ていくのがわかる。
「も〜、こっちばっか見ないでよ〜」
 さっきまで扉でいちゃついていた彼女はあたしの横の椅子を引いて座る。わくわくした気持ちを隠せないまま、ちらりと彼女の方を見ると。
「気になる〜ぅ?」
 にやり、と笑われた。
「そんな事無い無い!」
「ふう〜ん」
「へ〜え」
「うっわ〜!何だよ〜!!」
 そう言うと頬だけでなく、耳まで真っ赤にしてガバっと俯いた。ざかざかと物凄いスピードで答えを写す。その文字を見るとあたし以外の誰が解読できるのだろうかと思う程で。
 すると扉から再び、
「おい!」
「だから〜!おいって呼ばないでって言ったでしょ〜!」
 そう言うと椅子から立ち上がって彼の方へ歩み寄った。彼の手には今日使う英語の問題集があった。
「は〜・・・」
 会いたいなぁ〜。ぎゅ〜って、してほしいなぁ〜。
「「ねぇ」」
 声が、重複した。
 其れは勿論、あたしと友達ので。
「・・・どぞ」
 譲ってしまった。
「あたし、次の休み時間下の階行くから」
 吃驚。
 というか、素直すぎてオドロキ。
 けどなんかあの二人にあったかいのをいっぱいオスソワケしてもらったから、あたしも其れを伝えたいっつーのがあって。
 やっぱ彼女も同じだったんだと思うと。
「そっか」
 嬉しい。
 にへら〜と、顔がにやける。照れてる友人が可愛い。
 その指がオレの額を小突くと、バサッと問題集を奪い取られた。
「没収」
 そこには既に照れていた表情など微塵も無い。
「きゃ〜!なんでなんでなんで〜?!」
「はい。アチラヲ御覧下サイ」
 指を指された先には、廊下を歩いてくる先生が見える。
「オーマイガーーーーーッ!!」
 頭を抱えて叫ぶあたしの目の前に、これ見よがしと言わんばかりに問題集をチラつかせながら自分の席へ戻って行った。
 センセに怒られるのはもう目に見えているけど、
「早く終れ〜授業〜」
 ぽこん、と丸められた教科書で叩かれる。
「だあぁぁぁ!センセーそこさっき、もう殴られたのッッ!!」
 瞳に涙を湛えながら頭を抑えて勢いよく立ち上がった。
 ああ、もう。 早く終ってよ、授業。
 頼まれなくてもダッシュで駆けつけるから。
「は〜」
 呟きは、教室中に響き渡った。

【END】




***独り言***
はい。またまた半分(いや、殆ど)実録←こ〜ゆ〜のに当てはめるのってどうかと思う・・・。
他にも今日一日ずっと止まらなかった、しゃっくりネタとかあったんですけど(笑)


2002年01月09日(水)



 始業式。

―始業式―

「あ」
 下校中の並木道で、あたしはふと足を止めた。そして、鞄の中を漁ると急激に顔色が悪くなる。
 俺は何があったのか訳も判らず声を掛けた。
「どうした?」
「貰ったばっかなんだけど、今学期の予定表無くしたみたい」
「・・・何が知りたいんだ?」
 彼は落胆の表情を隠せず、眉間に皺を寄せて、鞄の中のクリアファイルから一枚の紙を抜き出した。
 今日は始業式で、その後教室で行ったHRの時間に配られたものだ。なのにもう無くすとは、一体何をしたのだか。
 彼のそんな思考を他所に、あたしはもう自分の予定表などどうでもよくって、鞄のチャックを締めながら鼻歌など歌っている。
 その選曲が『大井追っかけ音次郎』だという事は伏せておきたいけど。
「♪やっぱりね〜そうだろね〜しんどいね〜ェ未練だね〜」
「で、何が知りたいんだ」
「学力試験の日程〜」
「・・・は?」
 日程表に目を通していた目の前の男が、勢いよくあたしの方を見た。別に変な事は言ってないと思うんだけど。
 学力試験っていうのは、中間・期末試験とは違って、学年の順位がわかる様になっている。だから、好きだ。英・国・数の三教科しかないし。
「で、いつ?」
「いや、三学期は学力試験は無いぞ?」
「・・・え?!ホントに?え〜?!」
「三学期は学年末試験があるだけだ」
 其れと希望者だけは英検と漢検がある。三学期は、短いから。
「え〜?!じゃあ」
「最後だ。」
 間の抜けた顔をして、あたしは彼を見上げた。
「最後の試験だ」
 ああ、そうだ。
 もう卒業する。エスカレーター式でもない学校だけど、広い敷地の中で、ずっと一緒にいたけど。進級というのではなく、やはり、進学、就職で。
 そしてあたし達は、卒業する。
「忘れてた」
「呑気なヤツだ」
 余りにも自然に月日が流れていくから。判らなかった。あたしはここにずっといるんじゃないかと思っていた。
 部活も引退しても、別に大学を受験するわけじゃないし、専門学校に進む道が確保されているから、部に入り浸っていた。あのいつもの光景が、自然すぎるから。
「頑張るぞ」
 呟く。
「上に行くんだ、俺達は」
 うん。あんたが言っている事は抽象的過ぎて、漠然として、よく捉えられないけど。解かるよ。
 一歩一歩進んで行こう。ちゃんと土を踏みしめて。
 あたし達は確実に、昇っていく。
「最後の試験だ。手を抜かないんだぞ?」
「手ェ抜いたってあたしは先生の出す問題の予想つくし!嫌味?あーもうムカつく!」
 歩き出した彼は、あたしの方を向かずに苦笑する。
 足にかさりと当たった枯葉が、冬を確立していた。
「けど」
「?」
「頑張ろう」
 がんばろう、がんばろう。
 あたし達はここにいる。次へ進む。その時にあなたが横にいてくれたら。一緒に歩んでいけたら、最高だから。
 笑みを浮かべるあたしに、彼も其れで返す。
 いつもより早い下校時刻に戸惑いながら手を繋いだ。
「やるぞ〜試験!!」

【END】




半実録。
普段こんな会話してます…。


2002年01月08日(火)



 自己紹介

HN:繭
性別:女
誕生日:1986/01/01
生存地:神奈川

病名:サッカー狂症候群
属性:腐女子

蹴球:JUVENTUSが好き。冬の醍醐味は高校サッカー
デルピエロと松井大輔は偏愛。
活字:長野まゆみ、荻原規子、京極夏彦、北方謙三
漫画:羽海野チカ、高尾滋、高河ゆん

その他:酒と煙草と男に目が無い。
男の趣味は最悪ってことは自他共に承知済み。
厭世的で鬱気質のある人間です。

2002年01月01日(火)
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