シネマ*マシンガン
映画鑑賞言いたい放題覚え書き
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2003年12月28日(日) 【プライベート・ライアン】納得させてみろ

時おりしも第二次大戦のまっただなか、ノルマンディー作戦の影に遂行された実話に
材をとった脚本だとか。連合軍、ライアン4人兄弟のたったひとりの生き残りを救う
のが指令、ってその段階でちょっと待てよ、と思うのはひねくれすぎ?まさかそいつ
を美談にするんじゃないでしょうね、と思っていたのだが…やっちゃいましたねスピ
ルバーグ。

オープニングの戦闘描写でこの映画は終わってよかったと、厳しく言えばそう思いま
す。ラストシーンを見てほんとうにほんとうにあきれてしまいました。アメリカの正
義による戦争映画は、もういらないよと思いました。よい人生でも何でもまっとうす
りゃあいい。その理屈でこのわたしを納得させてみろ!とあくまで喧嘩腰の一本。

冒頭の戦闘シーンはほんとうにすごいです。『フルメタル・ジャケット』以来の怖い
映像でした。


2003年12月20日(土) 【ファム・ファタール】(自分の)運命を変える女

※ネタバレ注意!

あいかわらずヒッチコックを意識した(のか?)映像の幾多の仕掛けはいいとして、
ラストのどんでん返しはお口直しのつもりだろうか。「デジャヴュを表現した映画」
には見えないぞデ・パルマ監督。話が当初の目的からどんどん逸れていっているよう
に感じつつ、強引に見させられてしまったような映画。

「運命の女」って、関わると運命が変わってしまうようなカリスマチックな女性に使
われる言葉だと思うのだけど、これは自分の運命を自分の手で変える女なので、ちょっ
と違うかなあ…と思ってしまった。確かに周囲の人間の運命は変わったのかもしれな
いが、それは話の中心に据えられていないし、はっきりいって悪者の雑魚の運命がど
ーなろーといいじゃないの。ばたばたと付け加えられる種明かしにはかえって興醒め
だった。

主演のレベッカ・ローミン=ステイモスからはカリスマの匂いは感じられません。展
開も、ミステリアスというよりは振り回しているだけで全然シビれないんだよなあ。
うりふたつの女とか、飛行機の隣の席とか、あまりにもご都合的な部分もちょっとなあ。
カメラワークは大変よかったと思います。それで飽きずに最後まで見れたという感じ。


ブライアン・デ・パルマ好きへのお薦め度 ★★★


2003年12月15日(月) 【ヴァージン・スーサイズ】「今」しかない美学

美貌の五人姉妹が次々と謎の自殺を遂げる。と、書いてしまえばひとことですんで
しまうのですが、サスペンスとゆうよりは青春映画といいましょうか。
特別な事件がおこるでもなし、妖精めいた姉妹と、姉妹にほんのりあこがれを抱く
少年たちとのあわい交歓を、美しい映像でつづりながら話は進行していきます。し
かしとにかく、「死」の匂いがプンプン漂っていて、もういつ誰が死ぬのか、とは
らはらしてしまう。怖いとかそーゆーんではないのですが、アンニュイを薄衣のよ
うにまとった少女たちはきれいなんだけどこの世のひとではないよう。

少女期のひとつの病のようなものとして、「今」しかない美学があり、明日とか十
年後とかの幸福を願ったり待ったりするぐらいなら、すべてを終わらせるという刹
那的な考えがあります。姉妹はそんな美学をまっとうしたのかもー、などという考
えが見終わってからぽわーんと浮かんできたり。
なにがどうでも、あーなるしかなかったんだろうなあと感じてしまうお話です。ソ
フィア・コッポラの初監督作品。


何が入っているかわからなくても玉手箱を開けたいひとへのおすすめ度
★★★★


2003年12月12日(金) 【光の雨】そこに行きたかった

連合赤軍事件の映画を撮る監督と、演じる若者たちと、映画の完成を待たず失踪
する映画監督を軸に、劇中劇の手法を用いつつあさま山荘事件前の連合赤軍に
「何が」あったのかを描く。劇中劇の構成が、話の生臭みをうまく中和してい
る。

しかし大杉蓮が失踪する部分は時間が足りてないかも。そこはわかったようなわ
からんような。連合赤軍を演じる青年たちが役柄についてわかるとかわからない
とか、山本太郎のように分析してみたり、「自分がもしその中のひとりだったら
どうするか」を考えながら芝居をするという、そのへんの演出はおもしろいと思
いました。山本太郎と裕木奈江はなかなかすごかったし、浅野忠信似の池内万作
くんの醒めた熱演も非常に印象深いです。

これまで映画化されることが難しかった事件を、丹念に、かつ説教めいた話でも
なく、ヒューマニズムでべたっと汚したのでもなく、どちらかといえばややファ
ンタジックといってもいいぐらいに仕上げたのはすばらしいのではないか。
死者たちが雪の上で列をなして歩くシーンなど、好みは別れるかもしれないが私
はぼーぜんと見てしまいました。


2003年12月07日(日) 【ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ】きみこそロックだ

ジョン・キャメロン・ミッチェル全開。なんといってもヘドウィグが魅力ある人物
である。だからこそマイケル・ピット演じるトミー・ノーシスになんでそんなに入
れこむことになるのかなあ、と首をひねったのだが、お互い自分にはないものを相
手に求めていたってことなのだろう。全編にわたってヘドウィグの歌が心のどこか
微妙なところを掴みにくる。
途中さしこまれるアニメーションには少し不満が残る。ピーバス&バッドヘッドを
思わせるありがちな造型と展開。ピース。それを差し引いても愛すべきヘドウィグ
は見る価値あり。

ロックスピリットをもとめる方へのお薦め度 ★★★


2003年12月05日(金) 【ヴァニラ・スカイ】ほんとうに怖いのは?

※ネタバレあり、注意!

トムクルーズはケーハクなヤンエグを好演しているし、キャメロンディアスは
おっかねーグルーピーでいい感じだし、ペネロペもがんばって英語を話してい
るのですが、アレンジされたとはいえ夢オチってのはどうでしょう。
最後の方でバタバタと夢と現実の境界があきらかにされていきますが腑に落ち
ない点が多々あり。ラストはそれでいいのか?という気がするし、そもそもの
メインテーマが途中でわやくちゃになったんじゃないの、という印象が拭えず。
夢の世界より、つらくても彼女の生きている現実に戻る、というのはお手軽な
気がします。ほんとうに怖いものを見ていない感じ。

トム・クルーズ好きに対するお勧め度 ★★★


2003年12月01日(月) 【エンジェル・ダスト】演技だけで見せる恐怖

はやくも10年前の作品となるわけですが、まず映像が美しい。山手線を舞台とする
無差別連続殺人事件の、背景となる都心の情景を淡々と、渇いた感じに映し撮って
いて、都市を描く際の余分な要素(過剰な騒音や雑踏の表情)が省かれています。
映画やドラマの中のある種固定化された「東京」のイメージを脱しているのではな
いでしょうか。撮影は笠松則通。監督は石井聡互。

役柄上、ごもごもしゃべる若松武や、しっかりしてるんだかそうでもないんだかわ
からない南果歩など、観客が嫌悪感を持たざろうをえないような演出はなかなか、
昨今のサスペンスの音響にたよりがちーな姿勢とは裏腹でおもしろかったのですが
ラストが。わたしは納得できん。

公開された年が94年。地下鉄サリン事件以前。なんでもここに結びつけてしまって
はいけないのだけど、時代との符合を思わせる作品。


佐藤りえ |MAILHomePage

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