水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2003年12月30日(火) 2003年・こんな1年でした

重松清の「日曜日の夕刊」(新潮文庫)を読み終わらないうちに今年が終わりそうです。
12編の短編集の真ん中あたりで年を越すのは、少々不本意なんですが、諸事情に
より・・こんな年もあるということで・・。来年は「さかあがりの神様」から読む予定です。


2003年・こんな1年でした

ベスト短編集
本多孝好「MISSING」(双葉文庫、2003.02.04〜2003.02.10記)

ベストソング
有坂美香・吉良知彦「月迷風影」(NHK「十二国記」エンディングテーマ)
ASKA「心に花の咲く方へ」(テレビ東京「竜馬がゆく」主題歌)

ベストコスメ
マックスファクター「リンクル リーフ ジェリーズ」(これで目元がプルルン)
な、なんと、このすぐれもの、'03 Yahoo ! ビューティーベストコスメアワードの
スキンケア部門パック グランプリ!納得×納得



今年も読んでいただき ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
皆様にとって 2004年が良い年でありますように。


                   水野はるか


2003年12月27日(土) 重松清『寂しさ霜降り』

昨日より、一層せつなさレベルが上がっております。
「せつない話」、「せつない話・第2集」(どちらも光文社文庫)で、極上のせつない話を
セレクトしてくれた山田詠美さま、第3集の予定は?予定は?予定はーーー?
待ってるんです、第3集。第3集には、重松清をよろしくお願い致します。
いいですよ〜重松清。渋すぎず、重すぎず、暗すぎず。読みやすい!
浅田次郎が好きな人は、きっと、重松清もタイプ(使い方違う?笑)だと思います。

『寂しさ霜降り』──両親の離婚がきっかけで、激しく太ってしまった女の子が、
病気で余命いくばくもない父親のことを知り、過酷なダイエットを決意して──。

せつない。せつなすぎ。
ダイエットする女の子の心象風景は描かれず、妹の視点で語られていきます。
黙々とダイエットする姉は、父親を憎んでいるのか許しているのか、思い廻らせば
廻らすほど、せつなくなっていくんです。
普通、若い女の子がダイエットに励むのは、自分の恋愛のため(だと思う)なのに、
別れた父親の記憶にある、かつての姿に戻ろうとするなんて、、、嗚呼・・

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宅配便のピンポンでドアを開けたら外は小雪が舞ってました。
「ここに印鑑をお願いします」
「ハイ・ありがとうございましたー」

・・2004春夏カタログ
・・・・一気に新年になりました・・


2003年12月26日(金) 重松清『セプテンバー '81』

37歳の誕生日を迎えた朝、「ぼく」が思い出すのは19歳の誕生日に出会った女の子。
カラスのように黒ずくめの服を着た、長い髪の小柄な子。ひょんなことから、一緒に
一夜を過ごしたふたりは──。

ふぅー、せつないです。せつない話に弱いんです。
ナンパしても、「誘惑」より「懇願」になる主人公にせつなくなり、←母性本能かも
女の子のキツイ言葉に反論できない主人公にせつなくなり、←情けなさすぎ
ふたりが行った店に泣きたくなるほどせつなくなり、←なんだかねー、いやん
別れ際のせつなさっていったら、第三者が見たら・・・ ←読めばわかります

一番のせつなさは、たった一夜だったこと。
なのに、37歳になるまで18年間もずっと胸の奥に大切にしまわれてたなんて・・。
'81年の回想シーンを彩るのは、『セプテンバー』。
どんな曲なのかわからないんですが、振り返ると、思い出にはいつもメロディがあって、
口ずさむと、背中を押してもらってるような気がします。

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【今日の出来事】
来年3月にふたつの村が合併して誕生するはずだった新しい市の名付け親になり、
「名付け親認定証」までいただいていたのに、合併に向けての協議が整わず、
合併協議会解散=新しい市の誕生は不可能となった旨の文書が届きました。

他県のことゆえ、ここに至るまでの状況がまったくわからず、突然の知らせに、
驚くばかりです。新しい市は来年3月15日にスタートするということだったのに。。
ここまできて、取り止めですか!事情がわからないので、何とも言えませんが・・。
あのー、記念品のクオカード、既に使ってしまいました。これ、税金だったと思うと、
なんだか申し訳ありません。わたしと同じ名前を考えて、名付け親になった方々は
どんな気持ちでしょうか。。(名付け親は全国に数名)


2003年12月25日(木) 重松清『サマーキャンプへようこそ』

アウトドアが得意じゃない父親と、どこかさめてる小学5年生の「ぼく」が、
初めてキャンプに参加するのですが……。

キャンプ場で子供らしさを要求される「ぼく」は、父親より冷静にまわりの空気を
読んでいきます。頼もしい父親像に縛られる父親やおきまりの子供らしさを
押し付けるスタッフの言動に誰もが思い当たるところがあるのではないでしょうか。

子供にとっていい父親とは──カッコ悪くても構わないんです。
子供を愛しているかどうか、そこが問題なんですよ。
キャンプ場でスマートに振舞っている人は、キャンプ経験が豊富なだけ。
テントも料理も、やればやるほど上手になるのは当たりまえ。
もしくは、元ボーイスカウトです。
と、「ぼく」とパパを応援したくなりました。

父親は、完全無欠なんかじゃないありのままの姿でいいんです。でないと、子供にも
求めすぎてしまいます。

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けやき通りがまばゆく輝いています。
きれいです。車で通ると光のトンネル。歩いてみれば夢心地。窓から見たら・・
電気がもったいないような・・。


2003年12月22日(月) 重松清『桜桃忌の恋人』

大学の国文科に入った「オレ」は、クラス名簿を作る時、好きな作家欄に
太宰治を書いたことで、太宰に心酔する女子学生と親しくなります。
が、彼女は毎年6月半ば、太宰が玉川上水に身を投げた頃に自殺未遂を
繰り返すアブナイ人だったのです。
桜桃忌が近づき、自殺を考える彼女に「オレ」は──。

基本的に自殺は嫌いです。まぁ好き嫌いじゃないと思いますが。。
太宰治が好きだから自殺するとか、他人を心中に誘うとか、んもーーー!
怒りますよっ!← って、すでに血圧上昇中。
死んで行くひとは美しい、なんて思えないんです。

書き方次第で、すっごく暗く重い話になりそうなのに、明るさが見えるのは
面白いですね。計算されたアドリブが効いて、ポンポン弾んでます。
まじめなテーマをゴロよく歌うヒップポップ系。

好きな人がいるっていいですよね。自殺願望は困るけど。


2003年12月19日(金) 重松清『カーネーション』

あぅん、打ちのめされました。すごいです、部長!← だ、誰?(笑)
何がって、カリカリ削ぎ落とされた無駄のない文章と巧みな構成、人物配置、
おおおっ!のラストに、【これが短編小説なのだ宣言】された気分です。
嗚呼、3日間、チュクチュク反芻して浸ってました。
打ちのめされながらも、ホワホワンの毛布に包まれたような温かさ。
こういう読後感は久しぶりです。

電車の網棚に置き忘れられた一輪のカーネーションから始まる物語は、
偶然その存在に気づいた乗客たちの心模様を鮮やかに描きながら、こちらの
胸の中も覗いてきます。

お母さんはお元気ですか?最近、お母さんとどんなこと話してますか?

ハートウォーミングストーリーは嫌いという人にこそ、読んでほしい作品。
大嫌いだという人には読んでほしくない作品。← ファン心理の微妙なとこ

やさしさあふれる、なんて、安易な言葉を素直に口にしたくなってます。


2003年12月16日(火) 重松清『チマ男とガサ子』 

今週から重松清の「日曜日の夕刊」(新潮文庫)を読み始めました。

日常の些細な出来事をモチーフにした12編の最初は『チマ男とガサ子』。
あー、わかるわかる、こういう男性。チマ男という呼び方は初めて知りましたが、
几帳面すぎて、綺麗好きすぎて、女性が去っていくんです。見方によっては、
几帳面、綺麗好き、とっても良いことなのに、度が過ぎると・・ね。
あー、わかるわかる、こういう女性。ガサ子という呼び方はそのまんまですね。
約束は忘れる、時間にルーズ、都合良くルールを作る人。見方によっては、
おおからで、細かいことにとらわれず、とっても良いことなのに、こちらも・・。
そんな性格が全く逆なふたりの恋のお話。

チマ男(チマオ)が一生懸命考えたドライブプランが、ガサ子のちょっとした
ことで台無しに。でも、ふたりは──。

できすぎの感が拭えないけど、いい話。
好きになることに理由なんてないんです。
こちらが照れてしまうほど、ホッ。(70ホッ)


2003年12月12日(金) 吉本ばなな『窓の外』

「不倫と南米」(幻冬舎文庫)を読んできて、なななんとあっけなく最後の作品です。
本のタイトルが強烈なせいか、期待しすぎたようで、少々物足りなくもあり…。

男性作家が不倫を描くと、死の匂いがするものが多い(ような気がする)けれど、
女性作家が不倫を扱うと、自然に身をまかせてるような感じがします。
男性作家の不倫ものは逃げ道がなく、女性作家のそれは柔軟剤入り。
男にとって不倫で身を破滅させることはあっても、女にとって不倫はたまたま
飛び込んでしまった、ある愛のかたちなのかもしれません。

『窓の外』─ 夫と別居中の「私」が、結婚している男性と旅行するお話。
旅行中に相手が妻と離婚したことを知り──。

旅慣れた人と高いホテルに泊まって、食事をしたり、ヘリで滝を見に行ったり……
カテゴリーは不倫だけど、それがなにか?という顔ですね、きっと。
不倫ドロドロは嫌ですが、こう淡々としているのも複雑な気持ちです。

さっき、TVでヤワラちゃんの結婚式をチラと見たからかもしれません。
「病める時も悲しみの時も忠実な妻であることを誓います」…じーん。
結婚式の朝の気持ちを思い出したら、誰も不倫なんて考えないですよね。たぶん。

7編の中で一番印象的なのは……
イグアスの滝とミッションの遺跡の写真に圧倒されました!

「不倫と南米」は2000年第10回ドゥ マゴ文学賞受賞作品です。
この賞の特徴は、受賞作は、毎年「ひとりの選考委員」によって選ばれるということ。
(選考委員の任期は一年)このときの選考委員は安野光雅氏でした。

今日は長くなってしまいました。携帯電話でご覧の方、ゴメンね。


2003年12月10日(水) 吉本ばなな『日時計』

ブラジルに住む友人から流産したことを電話で聞き、少し前に彼女とパラグアイの
遺跡を旅したことを回想する「私」は、遺跡にあった巨大な日時計がいつの時代も
黙々と時を刻んでいたことを考えます。

人の一生も、ひとつの時代も、人が作る歴史も、時の流れのままに流れ流れて、
とどまることはできない── と、言ってしまうと、それまでだけど、いつかは誰もが
その道を通るんですよね。どんなに携帯電話が進化しても、医療技術が進歩
しても、人が死から逃れることはできないし、価値観も変わっていくんです。

うーん、一生なんて、儚いものです。
「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかた
は、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる事なし。」鴨長明の方丈記をふと
思い出しました。BGMは、愛燦燦とぉ〜♪美空ひばり登場。
そして、気になる気になる南米の遺跡たち。行きたい、行こう、行かなくちゃ、
vamos !


2003年12月07日(日) 吉本ばなな『ハチハニー』

ブエノスアイレスの五月広場で、軍事政権時に子供を殺された母親たちが
行進するのをながめている「私」は、その集団の中に自分の母に似ている人
を見つけ、風邪をひくといつも作ってくれた飲み物と優しい母を想います。

こういう飲み物って、お母さんの愛情そのものって感じですよね。
冬になると飲みたくなります。風邪ひいてなくても。

そして、夫の不倫を知り、別れを決意する主人公に、母親が電話で言ったのは、
「そんなことで」・・!そそそんなことですか、不倫ですよ!
このひとことで、五月広場の行進は、ひょーいと飛んでいきました。

不倫くらいで離婚しない方がいいのでしょうか?
不倫ごときで?不倫程度で?不倫なんかで?← しつこいって。笑

離婚を後悔する寂しさは、宮本輝の『夜桜』(「せつない話第2集・山田詠美編、
光文社文庫、2002.10.26記)で学習?済み。ただ一度の夫の不倫で離婚した
ことを一生悔やむ妻に、胸が雑巾絞り状態でした。

で、このハチハニー好きな主人公は、結局どうするんでしょうか?
どうもすっきりしません。飲み干したつもりが、カップの底に、はちみつが
残っていたように。


2003年12月04日(木) 吉本ばなな『プラタナス』

夫60歳、妻35歳 ── 歳の離れた夫婦が訪ねたのはメンドーサ。
にぎやかなブエノスアイレスとは少し違う、山が近い静かな街。
ふたりで過ごす穏やかな時間の中で、ふと、死がふたりをわける時を
考えます。

んー、25歳差ですか・・妻が60歳になる時には、夫85歳・・。
まぁ、歳を考えたら、夫が先に旅発つ可能性が高いわけで・・。
でも、どうしようもないんです。歳の差は縮められないんですから。

旅行!(海外ならなおのこと)というと、グングン、テンション高くなるわたし
にとって、こんなふうに年上の人としっとり過ごすのも悪くないなぁ〜
なんて、いろいろ想像しちゃいました。


いつか、必ず別れの時はくるけれど、ある種の安らぎの中にふたり続いて
入っていくようなものなんですよね。

シェイクスピア(あん、いきなりの登場で…)の『テンペスト』に、こんな言葉が
ありました。

「We are such staff as dreams are made on,
              and our little life is rounded with a sleep」

 ── わたしたちは夢と同じ材料で作られていて、
            わたしたちの小さな生は眠りに囲まれている ──


プラタナスの葉が風に舞う異国の街に、ひっそりと寄り添うふたりの姿が
よく似合います。


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