水野の図書室
Diary目次過去を読む未来を読む
皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2003年11月28日(金) 吉本ばなな『小さな闇』

ギターを買う父にくっついてブエノスアイレスに着いた「私」は、父を待つ間
エビータの墓地を訪ね、静かに流れる時間の中で、3年前に亡くなった母が
話してくれた心の奥底の小さな闇を思い出し──。

陽光きらめく南米の墓地で思い出すにはあまりにつらく悲しい母の過去です。
夫にも打ち明けなかったことを娘に話すなんて、、、、ひどい。。
夫婦は所詮他人で、娘は親子だから?
夫とは、楽しいこと、うれしいことは分かち合っても、ネガは見せたくない、
ということでしょうか。わかるようなわからないような・・。

ここまで重くなくても、誰にでも心の闇みたいなものはあるわけで、自分も
携えていけるなら、好きな人の闇も知りたいような気もします。
で、自分の闇は、というと、誰にも見せたくないです。ハイ。
弱みは見せたくないから。あーこうなると、主人公の母と一緒ですね。
好きな人には絶対、見せたくない。かなり強がりだと自己発見しました。

----------------------------------------------------------

今夜、早くも忘年会ひとつめなんです。今年まだ1ヶ月あるのに。
あまり飲めないので、会費分、たくさん食べてきまーす。
怒涛の出費シーズンの幕開け。心してかかります。笑


2003年11月25日(火) 吉本ばなな『最後の日』

亡き祖母に死ぬと予言された日をタンゴ愛好家の夫とアルゼンチンで過ごす「私」は、
夫への想いと生を静かに見つめ──。

せ、せつない。。こちらの胸もしめつけられます。
なんとなく過ぎていく日常。朝起きて夜眠り、日曜がきて月曜が始まり、秋が冬にかわり、
気がついたら一年があっという間。今日が最後の日だと知ったら、わたしは何をして、
誰を想うのだろうか・・なんて、句読点のない自分の日々に、ハッとさせられました。
反省します。(今日だけでも)もっとメリハリのある毎日にしよう!(来年から・微笑)

『電話』同様、『最後の日』も、主人公が愛しくてたまりません。
わたしの中では、愛しい女を描く作家といったら、山田詠美だったのですが、うーん、
吉本ばななも忘れちゃいけませんね。

ばなな、本名は真秀子(まほこ)。衝撃的なペンネームです。
一度聞いたら忘れられない名前です。「バナナ」じゃなくて「ばなな」で、好感度大。
ひらがな表記で印象が変わるものって多いですよー「タマゴ」より「たまご」とか、
「リンゴ」より「りんご」とかね。おいしそーになります。(ならない?)


2003年11月23日(日) 吉本ばなな『電話』

寒くなってくると、どこか暖かいところへ行きたくなります。
ここ数年、南米に興味がありまして、いつか行きたいと考えています。
わたしにとって南米のイメージは、エネルギッシュな街と人。
行くと元気になれるような気がします。(いつも元気だネーと言われてますが・笑)

そんな今の気分にぴったりな本を見つけました。吉本ばなな「不倫と南米」
!わお!タイトルに南米が!そして不倫ものですか?ドロドロはイヤですが、
南米は魅力的。7編入りで写真とイラストも豊富です。旅の行程表つきですから、
行く時、参考になるかも。どうやら、作者が南米を旅して書いた短編集のようです。

はじめの作品は『電話』── 仕事でアルゼンチン、ブエノスアイレスを訪ねた「私」
に突然届いた電話は、不倫相手の妻から彼の交通事故死を知らせるものでした。
ふたりの思い出を抱きしめて、彼の冥福を祈る「私」に届いた次の電話は──。

もーとにかく、主人公が「愛しい」のひとことにつきます。
回想する思い出が、これまたカワユイのです。ドロドロがなくてホッ。
でも、、奥さんのこと考えると……かわいそー。。。

わたしが奥さんなら、夫の愛人にこんな電話はしたくないですね。
わたしが主人公なら、愛人の妻をこんなふうには思いたくないです。
わたしが彼なら、妻に愛人の存在がばれるようなことはしたくないし・・うーむ。
ないないづくしで、共感できない部分が大きいのに、けなげな「私」から目が離せません。
原マスミの独特の雰囲気をもつイラストも必見。“南米”って、感じ。


2003年11月18日(火) 有栖川有栖『201号室の災厄』

「暗い宿」(角川文庫)の悼尾を飾るのは、東京の高級ホテルです。

ホテルの廊下で、火村先生、来日中のロックスターと出会ってしまいます。
で、ひょんなことから、殺人事件に巻き込まれて、もー大変!
201号室にふたりきり(正確には、3人?)になったロックスターと火村先生は
理詰めで話し合います。事件を解く鍵は──。

緊迫したふたりのやりとりにドキドキ。火村先生、今夜も冴えてます。
期待以上に饒舌で、意外なほど冷静で、読みごたえたっぷり。面白かったです。
ただ、緻密な論理展開で謎が解けても、あと味はモヤモヤ。
殺人事件ですから、すっきりなんてするはずないんです。
なくした指輪を見つけるのとは訳が違いますよね。

4編の中で、最もあとをひくのは、表題作の『暗い宿』でしょうか。
夜の中心に向かって吸い込まれていくような感覚が、忘れられません。
ホント!んなおおげさなーって思うなら、読んでみてくださいまし。

【有栖川有栖は夜を描く】…と心メモして作者のあとがきに目を通したら、次に
書評家、川出正樹氏が、有栖川有栖は夜と旅を描く作家だと解説してました。
そうそう、まったく同感です。

去年読んだ『夜汽車は走る』(「ジュリエットの悲鳴」、角川文庫、2002.1.14記)は
「水野の図書室」おすすめの逸品。夜を感じます。


2003年11月16日(日) 有栖川有栖『異形の客』

泊まった宿に、こんなお客がいたら、帰りたくなるかもしれません。
顔全体に包帯を巻き、帽子を目深にかぶり、大きなマスクで口元を覆い、
黒い革手袋にトレンチコート── あやしーあやしすぎる!
有栖は次の作品に日本旅館を登場させたいと考え、取材を兼ねて泊まった
宝塚の温泉旅館で、“異形の客”が離れの間に泊まっていることを知ります。
翌日、離れの間で男の絞殺死体が発見され──。

んー、情景がなんとなくコナン風です。どんなに顔を隠す必要があっても、
ここまでやったら、まわりから注目されるばかりでしょ〜。
なぜ、顔を隠していたかは、、まぁ読んでいただきたいのですが、逃亡中の
犯人説の解説がていねいすぎるほどていねいで、ちょっとイライラ。

駅の通路に、指名手配されている人のポスターが、ずっーと貼られているのを
思い出しました。もしかして、すぐ近所で暮らしているのかもしれません。怖!

ラスト、火村と犯人の対決が印象的です。火村先生、カッコいい!
このシャープさ、密室での偽装縊死(いし)の真相に柳井警部、有栖と挑んだ
『壺中庵(こちゅうあん)殺人事件』(「大密室」新潮文庫、2002.02.14記)での
活躍がよみがえります。ますます火村先生のファンになりました♪


2003年11月12日(水) 有栖川有栖『ホテル・ラフレシア』

昨日読んだ『暗い宿』が、奈良県吉野郡の鉄道廃線跡の辺鄙な土地にあったのに
対し、『ホテル・ラフレシア』は、石垣島の高級リゾートホテルです。
どちらか選ぶなら(誰も聞いてませんが・笑)即決!ホテル・ラフレシア〜♪
名前からしてゴージャスではありませんか。南の島の高級ホ・テ・ル。

ホテルで行われるミステリー劇を見て、宿泊者が真相を推理するイベントに招待
された有栖、火村、編集者の片桐は、ラフレシアの魅力にとりつかれたある夫婦と
出会い──。

イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が計算された厚さで挟まれ、まばゆさ
を放つリゾートホテルに、美しくも怖い影を生じさせています。
「ホテル・カリフォルニア」の歌詞って、哲学的なんですねー!
こういう歌だったのねーと、感心×感心。へぇ〜。。
明日、純ちゃん(仮)に教えてあげよーっと。

ところで、ミステリー劇の密室トリックが……簡単すぎませんか?
いえ、主役は「ホテル・カリフォルニア」だから、謎解き難易度はこのくらいで
いいのかな。。と、考えて気がつきました。ここは、ホテル・ラフレシア。
すっかり、ホテル・カリフォルニアが記憶に刻まれたようです。深く強く哀しく。


2003年11月11日(火) 有栖川有栖『暗い宿』

せつない恋物語が続いたあとに無性に読みたくなるミステリは、
マロンケーキのあとのエスプレッソのようだ・・ちょっと違うかも。笑

「暗い宿」(角川文庫)は、いわくつきの宿で起こる事件に臨床犯罪学者の
火村英生と推理作家の有栖川有栖が挑む短編集です。
4編の最初が『暗い宿』!わーいきなり表題作。読書欲が高まります〜。

気ままなひとり旅にでた有栖川有栖は、初めて訪れた村で熱をだし、廃業
した旅館に泊めてもらったのですが、ふとんの中で耳を澄ましていると、
階下からスコップで土を掘るような音が──。1週間後、その旅館の床下から
白骨死体が発見されたことを新聞で知った有栖は、火村と共に再び、その地
へ向かいます。

登場人物が少ないので、犯人はすぐに見当がつき、やっぱりねという展開に。
!これはきっと、犯人探しより他のとこに注目してほしい!ということね。
(なんてプラス思考な読者なのだ!)

この作品、夜の闇より暗いような宿の描写にゾクゾク。
怖いと思いながら、土を掘る音が聞こえないかと、耳を澄ましていました。
すると、読んでいくうちに、ホントに聞こえるような気がするんです。
だ、誰?土掘ってるのは……。うちのまわりに土なんてないのに……。


2003年11月06日(木) 田辺聖子『雪の降るまで』

去年、「せつない話・第2集、山田詠美編」(光文社文庫)で読んでいました。
(2002.10.21記)また、こうして会えるなんて、嬉しいですね。
昼は平凡な女事務員(←OLと微妙に違う)が密かに楽しむ人生とは──。
というお話。

この短編集、「ジョゼと虎と魚たち」には年上の女と若い男の組合せがわりと
多かったのですが、最後の作品では、46歳・独身女性と51歳・妻あり男性の
物語にためいきです。もー、この男性、余裕があって素敵です。

ガツガツ、セカセカ、ソワソワ、モジモジ、オドオド、ギラギラ、ヘラヘラが
ぜーんぜん、見えません。まぁ、51歳だからかもしれませんけど。
いえ、そのくらいだと、クタクタ、ネトネト、ヘナヘナ、ジトジト系になっても
おかしくないのに。でしょ?

料理屋で、美味しいものを食べながら、少し淫らな会話に微笑みを交わす
ふたりには、若い恋人たちにはない、しっとりとした恋の風情があって・・。
うーん、おとなの恋ってことですかぁ〜。不倫うんぬんは超越するのか・・。

歳をとるのも悪くないような気になりました。
がんばらなくちゃ!←何を?笑


2003年11月04日(火) 田辺聖子『男たちはマフィンが嫌い』

どことなく、森瑤子の非日常的セレブ恋愛小説の匂いがします。
田辺聖子も別荘小説を書くんですね。

恋人の別荘で、彼が来るのをひとり待つ女。仕事に追われる彼は予定が
たたず、別荘に用心棒として甥の大学生を行かせたら──。

森瑤子お得意のラブ・フィールドを思わせます。
しかーし、森瑤子と田辺聖子に決定的な違いが!それは一目で明らか。

森瑤子の描く恋人は・・「愛してるよ」と薄い唇で囁く。
田辺聖子の方は・・「好きやねん、愛してるデ」とぼてっとした唇で甘えてくる。
唇ひとつで、それぞれの恋人をすぐ浮かべられるなんて面白いです。
唇って重要なパーツなんですねー。

主人公、ミミにもっと妖艶さがほしかったような・・大学生にもっとピュアな
ところを期待してたような・・うーん、どうもすっきりしません。
ふたりの会話がありきたりすぎて、ちょっと残念。
別荘は、一般の読者にとって、特別な場所、異次元空間なんですよ。
つまり、別荘での男女の会話は、120%別荘バージョンにしてほしいところ。
庭の大理石像、手にはカンパリなど別荘アイテムがいろいろ出てくるのに、
別荘にいる感じがしないのは、なぜ?
わたしにとっては、別荘=森瑤子のイメージが強すぎるのかもしれません。


2003年11月02日(日) 田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』

映画の公式ページはこちら

足が悪いジョゼは、祖母が押す車椅子で外出中に偶然恒夫と出会います。
恒夫は、勝気なジョゼに心惹かれ──。

強さと弱さが見え隠れする魅力的なジョゼが池脇千鶴ちゃん(大好き!)、
ジョゼをあたたかくつつむ恒夫が妻夫木聡クン(♪)で、いい予感。

脚本の渡辺あやさんは投稿シナリオがデビューのきっかけになった方で、
こちらも興味あります。くるりの主題歌にもわくわく。

映画を観る前に原作は読まないという方には、ムリにすすめはしません。
人それぞれのスタイルですから。
でも、映画の後で、ぜひ小説の世界にも浸ってほしいです。
原作を知らないのは、材料がわからない料理に舌鼓を打つようなもの。
うまくいえないけど、原作あっての映画ですもん。

で、小説の感想ですか?
                  ── うん、胸がいっぱい。


2003年11月01日(土) 田辺聖子『いけどられて』

離婚を決めた夫婦の最後の1日って、どんな感じなんでしょ・・。
愛し合ったふたりだから、憎みあったり罵りあったり、なんてイヤだけど、
笑顔で握手も不自然だし、あいさつくらいはきちんとするべきだろうし・・。
家具とかはどうやって分けたらいいのか・・考えるだけで疲れます。

短編集「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫)第六話は、ある夫婦の最後の日。
夫の浮気相手が妊娠→結婚をせまる女の子→妻に詫びて離婚を頼む夫
と、こういうケースは世間ではありそうですが、小説では意外に少ないんです。

たいていは、夫は自分の社会的立場を考え、浮気相手を……します。
もしくは、夫の窮地を知った妻が、安定した家庭を守るために、浮気相手を
呼び出し、夫と別れてと頼むのですが、若い(はお約束)女の礼儀知らずな
態度にカッとなり……。西日が射す取調室で「殺すつもりはなかったんです」
とさめざめと泣くことになります。ミステリなら、このパターンですね。

『いけどられて』の妻は、物わかりが良すぎるというか、夫の情けなさに
母性愛を刺激されたのか、夫にとっては好都合なありがたい妻です。
こんなに優しい奥さん、他にいませんよ〜。考え直した方がいいって、夫!

それにしても、『いけどられて』って・・・。
なんとなく、、、、、、、、ほら、、、その、、、・・・・アダルトチックぅ。

鷺沢萠『ほんとうの夏』(「君はこの国を好きか」新潮文庫収録、2002.1.6記)
のタイトルが、当初『もっと、もっと』だったことを思い出しました。やん。


水野はるか |MAIL
Myエンピツ追加

My追加