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キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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2015年08月29日(土) 一年以上が経っていた。


書きたいこと、書けることは沢山ある。

けれど昔より、
感情を、
想いを、
言葉にして吐き出したいという願望が極端に減ってしまった。
私は、それがとても哀しい。




Aさんとお別れをした。


それを「別れ」と呼ぶのはおかしいとも思う。
「付き合っている」定義にも私達は入っていなかったのだから。


世間の道徳に反して恋をしている人たちが、相手のことを
「彼」や「彼女」と呼ぶことが、私には理解できなかったし
腑に落ちなかった。
私は、Aさんの彼女だと思ったことなんて、一度もない。
『私は単に遊ばれているのだ』と必死に思っていた。
それは正しかったとも言えるし、間違っているとも言えると思う。

Aさんは3年以上も、私と一緒に居てくれた。



世間的に見たら単なる愚か者であることは理解している。
「好き」という気持ちが病気であることも分かっている。

私はAさんに対して、『好き』を飛び越えて『愛している』という感情を持っていた。



ただ一緒にいたかった。
若いころの恋のように、「ただ抱いて欲しい」なんて思わなかった。
むしろ抱かれたくないとすら思った。
ただ一緒に居て、美味しいご飯が食べられればそれで良かった。
一緒に眠れることができれば、最高の幸せだった。



Aさんのいる世界が好きだった。
強くてまっすぐで、あなたの世界には間違いはない。
私は「恋」という病気が終わっても、
それでもAさんのそばに居たかった。



Aさんの好きなところ。

裏表がないところ。
芯があって、ぶれないところ。
ムードメーカーなところ。
笑い方がとても可愛いところ。
仕事に没頭するところ。
優先順位の一番が、仕事であるところ。
ビールでも発泡酒でも気にしないところ。
酔うと眠ってしまうところ。
私にお酒を強要しないところ。
見栄を張らないところ。
なのに私にお金を出させないところ。
稀に、私にご馳走させてくれるところ。
誕生日に律儀にプレゼントをくれるところ。
ギターが大好きなところ。
男性には厳しく、女性にはとびきり甘いところ。
一緒にご飯を食べてくれるところ。
私の大好きなお寿司を買ってきてくれるところ。
私の前で熟睡してくれるところ。
私の前で無理をしないところ。
綺麗好きなところ。
ヒゲが薄いところ。


さらさらの短髪。
ビール腹で出てるおなか。
首のにおい。
歳の割に白髪が無い黒髪。
高すぎない背丈。
細すぎない腕。
匂いのしない足。
磨き上げたピカピカの靴。
重い鞄。
ギターへの情熱。
母親への愛情。
仕事仲間への愛情。
私への愛情。



たのしかったこと。
かなしかったこと。
Aさんからもらった嬉しかった言葉。
Aさんからもらったティファニー。


忘れそうで、忘れられない。


でも私は誰よりも知ってる。
Aさんが全てのことを、すぐに忘れて行くこと。
だから、私とのことも、すぐに忘れるだろう。



最後に、Aさんと花火大会にでかけた。
「最後」と分かっていたのは私だけだったけど。

好きな人と行く花火大会が大好きで大好きで仕方無くて、
でも私からは「一緒に行きたい」なんて言えなくて。
でもAさんは、律儀でかっこいいから、
いつの間にか花火大会のチケットを用意してくれていた。


当日、一緒に食べたいものを買出しに行って、
夏の街を、人混みの中を、一緒に歩いた。

花火が始まるまでの夕暮れを一緒に過ごした。
Aさんは珍しく、「癒されるなー」と言っていた。
わたしも。
ううん、私は。「幸せだなぁ」と思っていた。


「幸せすぎて、明日死んでもいい。明日死にたい。」
と私が言うと、「なんだよそれ。」とAさんは笑ってた。


あなたの居ない世界なんて、
私には生きている意味など、きっと見つけられない。
それでも心臓は動くし、息はするのだけれど
私のそこには、ココロなど存在しない。




わたしね。
Aさんから愛されてるなんて、信じたことなかったよ。
信じないようにしていたんだよ。
Aさんを信じ切って、離れることが怖くなるのが、ずっと怖かった。


でも少しは愛されてたんだなって、思ってもいいかなぁなんて
思ったこともあったよ。


私の前でくつろいでいる姿をみたとき。
私を抱けないと分かっていても、会いにきてくれたとき。
私のすきな食べ物を買ってきてくれたとき。
体調をいつも心配してくれたとき。
我慢できずに淋しいと告げた時、笑わせてくれたとき。
仕事でボロボロに疲れていても、時間のかかる私の家まできてくれたとき。
誕生日プレゼントを一生懸命選んでくれたとき。
誕生日でもないのに、腕時計を贈ってくれたとき。
花火大会に、3回も連れて行ってくれたとき。
恋の病気が終わっても、私に会いにきてくれたとき。


そんな瞬間、少しだけ信じてしまったよ。
少しだけ、信じても良かったかな。



3年間、私にとって、Aさんが全てだった。
未来の私が笑っても、それでも後悔しないほど。



来世でもしも会えるなら、
死ぬまで一緒に居たい。
一緒のお墓に入るんだ。







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